内定が決まった訓練生にインタビューする「内定おめでとうシリーズ」。第6弾の今回は、約半年の訓練を経て航空会社の関連会社に内定した、イイハラさんにお話伺いました。
イイハラさん(20代・男性)
大学院卒業後、一般枠で製薬会社やデイサービスなど4社で勤務。4社目で同僚から発達障害*の疑いがあると言われて受診。発達障害の診断を受けて2015年12月、Kaien横浜に入所した。障害者枠での就職活動を経て、大手航空会社の関連会社に就職。
周囲との関わりの中で特性に気付き、就活の方向性も決めていった
内定おめでとうございます。まずは率直なお気持ちをお聞かせください。
とにかくうれしいですね。Kaienに通いだして、こんな感じでいけたらと考えていた予定の通り、スムーズに就活も進んだと思います。スタッフさんたちとキャリアカウンセリングで話し合っていく中で、「こういう流れでいけたらいいね」という方向性をつけていきました。今までの課題を洗い出して、自分はどういう特性があるのだろうと見直したのが最初の3カ月でした。大体3カ月くらい経った時にそろそろ書類作成を始めようかとなりまして、面接会がある時期に向けて、スタッフさんたちから「そろそろ始めようか」と背中を押されるような感じで、企業の目星をつけて応募を始めたのが大体4カ月経ったくらいで、その後内定が決まりました。訓練期間は大体半年間でした。
簡単な自己紹介と、Kaienで訓練をしようと思った経緯を教えてください。
大学院を出まして、その後派遣社員という形で製薬企業に2社勤めたのですが、ちょっとうまくいかなくて仕事を辞めてしまって、それでインターンという形でインターネット通販の会社に勤めました。ここでは事務の仕事が中心だったので、自分ではうまくいったかなと思うのですけど、インターンの期間が終わった後、そのまま就職とはいきませんでした。次にデイサービスで大体9カ月程介護職で働きました。働いている最中にスタッフの人から発達障害の疑いがあると言われて、病院で診察を受けてみました。そこで発達障害の診断を受けて、介護の仕事を続けるのは難しいということで退職し、Kaienで訓練を始めることになりました。
私の障害特性ですが、突発的な事象への対応が苦手です。例えば、とっさに電話に出なければならない時とか、周りに目を配りながら他のこともするとか、そういったことです。特にデイサービスでは、まさにそういったことがありました。利用者さんの対応をしながら、他の利用者さんの様子も見る、ということがうまくいかなかったです。
グループワーク業務を通じての成長
Kaienの訓練の中で、印象的だったことを教えてください。
週替の事務作業で勤怠データを入力する作業があって、まずデータを入力して、その後グループ内でチェックをして、各自メンバーのミスがどれくらいあったかなどをみたのですが、自分は他のメンバーに比べてミスの件数や割合が少なかったです。そこで自分は、こうした業務を正確に、ある程度のスピードをもって行うのが得意なのだと気付かされました。こうしたことから、自分の強みに改めて気付くことができました。
事務などのデータ入力は得意なのですが、逆に自分が補いたいと思ったのは、その計画に関することです。計画を立てることはできても、その後のフォローがうまくいきませんでした。計画を立てたことをやっていく上で、例えばちょっとずれが生じてしまったりすると、そこを自分で修正するのが難しかったです。
自分の中でも、キャリアカウンセリング担当のスタッフさんとも、そのあたりが課題だよねと、まず取り組むことになりました。計画よりも早いペースで進み過ぎてしまうとやることがなくなってしまったり、逆に遅いと終わりそうもなくなってどうしようと、ちょっとパニックのようになってしまうことが、前の仕事ではありました。それを計画的に、時間を守ってやっていくという大変さがありました。
例えば、他の方との共同作業をする中で、大変だったことはありますか?
他の人がどの程度進んでいるのかが一目でわからないと、フォローに入っていいのか、逆に自分ができなそうな時にフォローに入ってもらえるのか、少し不安になってしまいます。特に自分がリーダー役をしなくてはいけなくなった時に、他のメンバーの作業やペースなど進捗を把握したり、グループ全体の進み具合などを見て、その後の方針や見通しをつけるというのが少し苦手だと思いました。
初めの計画を立てることはすごく得意なのですけど、他の人と仕事する中で、自分と他の方の進捗にずれが生じてくると、計画通りにいくかどうか不安になってしまうところがあります。そのあたりはこれからも課題かなと思います。またグループの人数が多くなってくると、より難しいと感じます。
訓練を通じて仕事をする上での自信を得られた
訓練を通じて、課題だと思っていた部分で変わったところはありましたか?
計画の立て方やそのあとの見直しは、毎日計画を立てて、それに対してどの程度進んだかをチェックして、その上で必要があればどう修正していくか、スタッフの方々とも話をしながら決めていきました。そうすることで、計画通りにいかなかった時の対応や、報告・連絡、他の人との話し合いができるようになってきました。
こんなことを質問していいのかという迷いが今まであったのですけれども、それがだいぶ軽減されてきたかなと思います。きちんと確認を取るべきところは確認を取らないといけないと思いました。
Kaienを利用する前と利用した後で、ご自身が考える変化はありましたか?
入所前は、気持ちの面では、本当に自分はこれでいいのかな、きちんと仕事ができるのかなと思っていました。以前の職場では、失敗すると厳しい口調で注意されることなどがあって、自分はもうダメなのではないかと思って自信を無くしてしまうこともあったのですが、Kaienに来て、「けっこうできるじゃん」などと周りの人から褒めてもらえたりしました。自分の良い所を見つめたりとか、自分が苦手だと思った部分を克服したりしたことで褒められることも増えたし、それが自分の自信にもつながりました。
新しいやり方を愚直に繰り返す
最後に、今後の仕事についての期待感と、後輩に対するメッセージをお願いします。
安定して働けるようにすることでしょうか。今まで1年以上続けて働いたことがなかったので。精神的にも安定した形で働けたらと思います。精神的にというのは、前の職場では周りの人たちから厳しいことを言われてかなり落ち込むことが多かったので、そういうことがなくという意味も含めてです。順調にいけばいいなと思っています。
訓練を始めて最初のうちは、自分のやり方を変えることに対して抵抗のようなものがあると思います。自分も一時期、それで苦しんだり大変だった部分がありました。でもそういう場合にも愚直に繰り返すことでしょうか。今まで抱えていた自分の課題に対して、新しいやり方を何回も、少し辛くても繰り返していけば、自然と体がついてきて慣れてきてできるようになるし、自信がついてくるのではないかなと思います。訓練生の皆さんもたぶん面接で、訓練で学んだことをよく聞かれると思いますが、しっかり訓練を受けていればそういう質問にも胸を張って答えることができるようになると思います。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます