在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害*のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは前回に引き続きコミュニケーション。先天的(発達障害由来)の苦手さと、後天的な苦手さを話し合いました。
先天的な苦手さか?後天的な苦手さか?
Aさん: 私は今でこそコールセンターで10年働いていて、喋ることを仕事にしているともいえるのですが、小学校の後半から高校を卒業するぐらいまで、特定の相手としか喋れなかったんです。と言うのは教室でいろいろな人がいる場面では、自分はいろいろ喋りたいのですけれども、自分の興味と周りの興味が全然合わない。言ったら言ったで、自分は積極奇異が強かったので、何かするとすぐ笑われてしまうんですね、どんどん殻に閉じこもっていってしまったんです。
そこから、抜け出せたのは大学時代。一人暮らしをしながら進学した先で、自分が好きだと思っているところを良いじゃないと言ってくれる人がいたりとか、今度こういうイベントもあるから言ってみると誘ってくれる人も出てきて。ちょっとずつちょっとずつ、人の輪が増えてきたんですね。仕事を抜いたプライベートの場、損得のない場で友達の輪が増えたことで、自分の好きなことを言っても良いんだという気持ちが増えてきたので、それで喋れるようになりました。
Bさん: 私も話す機会を増やすためには趣味が一番だと思っています。自分の興味関心の世界を通して人の輪に入っていくのは良いと思うのですね。
Aさん: 好きなものが一個あるとそれが救いになるかもしれない。
Cさん: 発達系の人と、話していてよく思うことが、今の話とすごくかぶります。本人はコミュニケーションが取れませんとか、言葉がうまく出てきませんというのだけれども、それは本当に発達障害の特性なのか、対人恐怖とか不安症での特性なのかによって、対処法が大きく違うと思うのですね。ただ言葉が出ないとか、コミュニケーションが取れない、と漠然と自己分析するのではなくて、なんでそうなるのかを捉えないと適切な対処法は出てこないかなと思います。
スタッフ: その人の喋る能力が100だとすると、Kaienに来る方って本当に本来の100を発揮しているか疑問ということですよね。今までの人生で失敗体験から消極的になって、60とか50とか40になっている人もいる。だからまず自分本来の力まで戻すことで、コミュニケーションの力をだいぶ実感できるのではないかということですね。
Dさん: 自分の場合は社交不安に近いと思っています。他人と話はそれなりにあうんです。相手の人もいい人なのでそれなりに接してくれるんですよ。ただ内心不安がすごくて、色々と話している間にもこんなこと言って大丈夫かなと考えながら話しているのですごく疲れるんです。なので機嫌や調子が悪い時は、人と話したくないな、と思うことがたくさんあります。自分に良くしてくれている人はいっぱいいるので、自分勝手に避けちゃって悪いかなとか、避けることでなおさら周囲に悪く思われるんじゃないかな、とか。そう思うと、つらいですね。
好かれたいのか?嫌われたくないのか?
Bさん: 友達って増やしたいですか?
Dさん: 別に増やしたくはないですね。ほどほどの人数は維持したいですけれども。
Bさん: 聞いていると増やしたいように聞こえていたので質問しました。僕は職場で浮きます。忘年会みたいな行事には呼ばれますけれども、上司や同僚からは「ちょっと帰り飲んでいく?」というような声はかけられない。でも僕はそれを苦にしないので。そんな感じで職場環境を考えたほうが良いかもしれない。
スタッフ: 僕も全く声をかけられないですよ。
一同: 爆笑
スタッフ: でももし不安が強いタイプだとしたら、今いる友達もいなくなっちゃうかもしれないとか、そのために技術を高め無いといけないとか、そういう不安があるかもしれないですね。
Dさん: どちらかというと、好かれたいのではなく、嫌われたくないが強いですね。一回嫌われたと思ったら、自分は完全に拒絶されたと思って、今度は自分から拒否してしまうタイプです。
Cさん: 嫌われたくないと思うのは、私の場合はその後必ず攻撃が来るからなんですけれども、ただ嫌われたくないのか、次の段階の前兆として嫌われるというのがあるから怖いのか、どっちですか?
Dさん: 漠然とした嫌われ恐怖に近いですね。後にどうこうというよりも、場当たり的に近いんですかね。嫌という感情や嫌な空気感にものすごく敏感で。例えば同僚が起こられているにしても、ガンガン嫌な空気を感じてしまって。
スタッフ: そうね。誤爆みたいな感じで、自分が怒られていないのに、沈んでいく人は多いですよね。
Dさん: はい。そうなんです。
Cさん: なぜ攻撃されないのに嫌われるのが嫌なんですか?
Dさん: 攻撃と言うか、自分が否定されていると勝手に思っちゃう。無意識的に思っちゃう感じです。存在否定ではないのですが、被害妄想 兼 加害妄想という感じですね。
Eさん: 好きの反対が無関心というのが有りますよね。攻撃されるから何かしらの興味があって攻撃されるので、それ以上に嫌われているから無視されているのじゃないかと私は思ってしまいます。
Cさん: 私は無関心になってくれたらハッピーですけれどもね。定型発達の人は無関心になるのが出来ないのですか?例えば陰口になっちゃったりとか、嘲笑したりとか、仕事の連絡をあえて回さないとか、会議の変更日を伝えないとか、やるじゃないですか。嫌いなら嫌いで関わらなきゃ良いのに、なぜ関わろうとするんですか?
Dさん: 自分が嫌だと思う気持ちをぶつけているのに近いんですかね。無関心でいるというのはエネルギーを使うので。内側に溜まっちゃうのではけ口にしているのかなぁと自分は思っています。
Cさん: だけど関わったらあいつやっぱり嫌いとなりますよね。
Dさん: そこは場当たり的なんでしょうね。そのいっときの感情で他人にぶつけてくる。
スタッフ: いわゆる定型発達の人は対人力があるので、一度人間関係がこじれても修復する力があることが多いでしょう。なので多少、コミュニケーションで失敗しても大丈夫という安心感があるのかもしれません。発達障害の人はそこが苦手な人が多くて、一度壊れてしまうとそれきりになってしまうようなことが多い、なので普段から対人関係でのビクビクが強いような気がします。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
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監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックリンク 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
監修者コメント
コミュニケーションが不得手なのは、能力なのか、場数を踏んでいないせいなのか、不安がストッパーになっているのか、様々な理由が挙げられていましたが、どれか一つが原因ではなく、おそらく全てが要因となっているのでしょう。しかし、この場では致命的なほどの能力不足は指摘されていないので、恐れずに場数を踏んでいこうよ、という結論になっているのかなと思います。能力の問題については、考えても仕方がないので、後者について考えていくほうが建設的ですね。しかし、後者だけ考えていると「自分の甘えなのか」と悩んでしまうこともあるので、そこは「能力不足だから仕方ないよな」と開き直る方が良かったり。うまく切り替えて、自分を責めないことが重要ですね。