就労移行支援事業所 横浜事業所の大野です。
僕はもともと人材派遣会社で10年ほどキャリアカウンセラーをしていたのですが、「就職に困難を感じている人たちとの距離感がもう少し近くに感じられるところで仕事がしたいな」と思い、約3年前にKaienに転職しました。
前の会社と比べてどうだ、というのは全くないのですが、本当に転職してよかったなと思います。業務を通じて、仕事のやりがいというものを毎日のように感じられているのですが、先日は特に心に沁みることがあったのでここで共有します。
就活の労苦を語り合う? 「発達障害*」×「就活」座談会
Kaienの職業訓練プログラムには、自分の特性に合った仕事を体験的に見つけることを目的とした模擬職場プログラムのほかに、就活やビジネススキルを学ぶ講座形式のプログラムがあります。
先日の就活講座では『「発達障害」×「就活」座談会』を実施しました。数名のグループに分かれ、就活に関する困りごとや成功体験を語りあい、日々の苦労を話し・共感しあいながら癒しの場としつつ、それぞれの経験からの学びを共有することを目的としています。
実は現在、横浜事業所はうれしいことに内定ラッシュです。3月・4月からの勤務開始を待つ内定者が10名近くもいる状態です。であれば、ぜひその成功体験をみんなに共有してもらいたいと思い、各グループに内定者をバランスよく配置して、内定を目指して就活中の人や、これから就活を始めていく利用者の悩みや相談に内定者が乗ってもらう、という立て付けで座談会を実施することとしました。
不採用通知は内定獲得に向けた意味ある一歩
座談会がひと段落したところで、内定者たちのアドバイスや成功体験で一番何が印象に残ったかを参加者に聞いてみました。多くの人が挙げたのは、「不採用の通知はしんどかった。でもしんどかった分だけ、自分と向き合い、成長することができたと思う」という体験談でした。
面接練習を何度も繰り返し、万全の準備で臨んだ面接ほど不採用の通知は自分を否定されたような気持ちになり落ち込んでしまいます。でもその分だけ、「なぜ自分は仕事をしたいのか」、「本当にやりたい仕事ってなんだろう」と自らに問いかけ、自分を見つめなおす機会になったんだ、と内定者の皆さんは異口同音に仲間に語ってくれていました。
その日、内定に至るまでの道のりをグループディスカッションで話してくれた数名の訓練生のうちで、1社で内定になった人は一人もいません。具体的な応募者数を聞くと、15社、18社、なかには30社を超える苦労人もいました。でも「納得感のある内定をもらった今なら不採用だった応募ひとつひとつの書類作成や面接に意味があったと自信を持って言うことができる」。その言葉に、不採用通知に落ち込んでいる参加者や、これから就活を始めようと思っているけど不安な参加者は、きっとあと一歩、もう一歩を踏み出す勇気をもらったことだろうと思います。
内定まで頑張りきることができる環境
Kaienの利用説明会 でも毎回お伝えしていることですが、発達障害のあるなしに関わらず就職活動を一人で乗り切るというのは誰にとっても難しいものです。何度も何度も「お祈りメール」をもらいながら内定までモチベーションを維持できる人は相当強いハートを持っている人なのでしょう。実際「就活の失敗」は「職場でのトラブル」「病気」に続く、引きこもりのきっかけの第3位(約20%)なのだそうです。みんながみんな、そう強いわけではないのですよね。
でも、ここには自分と同じような生きづらさを持っている人がたくさんいて、自分と同じように就職を目指して頑張っている。だから自分ももうひと踏ん張りしてみよう、勇気をもってアタックしよう。そう思える「場の力」があることが、Kaienを利用する大きなメリットだと僕は感じています。
これから働き始めるのかと、いま働いているかの多少の違いはあれ、「働く」ということをテーマに毎日のように四苦八苦・七転八倒しているのは、僕も同じです。「支援者」などと肩ひじを張らずに日々働く中での気付きや学びを、等身大で職業訓練やキャリアカウンセリングの場でお伝えできるような、そんな関わり方がこれからもできたらいいな、と感じた一日でした。
《関連リンク》
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます