在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害*のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマはここ数年増えている、新卒で障害者雇用で大企業に入社する発達障害のある学生からの質問です。
目次
新入社員研修 一般雇用と障害者雇用は分けられるの?
Aさん) 今大学4年です。障害者雇用で4月から働くことになっています。入社後すぐに一般雇用と合同で研修を受ける予定です。在職者の皆さん、入社後の研修はどういう感じでしたか?
Bさん) 自分は15年以上前に新卒入社しました。時代が違うので参考にならないかなぁと思いますけれども…大企業だから障害者雇用の方も新卒の研修時に一緒にいたと思うのですが、全く覚えていないですね。
Aさん) 研修内容は一緒だったですか?
Bさん) おそらく一緒だったと思います。障害者雇用だからといっても分かれていなかったと思います。入社後にどういう仕事をするかによって研修内容は変わるかもしれません。
Cさん) 私も新卒でこの春、障害者雇用で入社します。この間人事の人と面談したときに研修に関する資料をもらいました。その時「分けて行いますか?」ということは聞かれませんでした。普通に一般雇用も障害者雇用も研修は一緒にするそうです。ただ「グループ行動するときに障害者雇用であることみんなに伝えたほうがやりやすいなら伝えますよ」と人事の人からは聞かれました。
Aさん) 私もそういう書類をもらってきました。そのときに確認すればよかったのですが、特に障害者雇用の人が別で研修を受けると書いていなかったので、あえてこの場で話題にしてみました。
スタッフ) 入社後の研修をするということ自体が障害者雇用では珍しいと思います。多くの障害者雇用は研修はないと思います。職場である程度のオリエンテーションが有るかもしれません。でも、会社がどうしてできたとか、いろいろな営業所や工場に行って業務を学ぶとか、実際に違う職種を体験してみるとか、新卒の入社後の研修でするようなことは、障害者雇用ではしないと思います。今回、AさんやCさんの場合は、入社後に数週間から数ヶ月かけて研修するということ。おそらく障害者雇用向けに作られたものではないだろうなということです。
Dさん) アドバイスになっているかわからないですけれども、僕は最初に入社したのは1000人ぐらいの規模の企業でした。技術的なところも教わりましたけれども、ほとんど役に立たないというか、どっちかというと同期のつながりを作るというか、現場に入る前の一ステップという位置づけであって、あまり専門的なことはやらなかったというか。会社の設立の話とか、ビジネスマナーとか、一般的に社会人が受ける研修が主でした。
Aさん) それをみんなでまとまってやるんですね。
Dさん) そうです。なのでそんなに障害者だから受けなくても良い、一般雇用だから受けたほうが良い、という区別のない内容なので、会社にはよると思うのですが、一括りにして受けさせたほうが会社としても良いし、コスト的にもかからないということなんじゃないかなと思います。
研修時、同期社員に障害のことを伝えるべき?
Aさん) 一般雇用の人として振る舞ったほうが良いのでしょうか?
Dさん) どうでしょうね。少なくとも受講の内容は、一般雇用の人じゃないと理解できない、ということではないと思うのですよ。だから、障害者雇用とわざわざ伝える必要はないのではないでしょうか。
スタッフ) Cさんも先程、研修のときに自分に障害があるかを同期の人に伝えるか、聞かれたということでしたね。
Cさん) それを親に相談したら、そこに100人以上集まる。グループが5・6人の人だとしても、その人達だけに言っても広まる可能性がある。
Bさん) そうでしょうね。
Cさん) どうせ数週間後にはみんな全国に散っちゃうんだから、言う必要はあるのかな、と親は言っていました。
Eさん) できれば言わないほうが良いと思います。言わないがために精神的に追い込まれるようだったら考えたほうが良いでしょうけれどもね。
寮生活が数カ月ある研修 炊事洗濯への準備は?
Aさん) ありがとうございます。加えて、その研修のときに寮・研修所で暮らします。過去に研修じゃなくても、異動先などで寮生活をした方はいますか?
スタッフ) 一人暮らしへの不安ですか?それとも何人かの部屋でというところへの不安ですか?
Aさん) 両方です。二人一組ですし、掃除洗濯など自分でするそうです。
Fさん) 僕は中高が寮生活でした。郷に入っては郷に従うしかないですね。自分でルールを作れない部分が多いですから。
スタッフ) そんなに長くはない?
Aさん) 2ヶ月ぐらいですね。
Cさん) 一人部屋はないんですか?
Aさん) 二人部屋しかないです。
Fさん) 相手の人とどれだけ仲良くなれるかだとは思います。そうしたら助け合えますからね。
Dさん) 同部屋の人とは食事も一緒にとか、常に行動を共にすることを求められるのですか?たまたま同じ部屋にいるだけですか?
Aさん) 多分初めのほうだと思います。同じ仕事をするからこそということで、グループがわけられていて、そのグループの中のひとりとわけられると思います。
スタッフ) 仲良くなれないとしても2ヶ月ですよね。同部屋の相手に迷惑をかけないように気をつける程度で良いと思います。仲良くなろうとしすぎてそれに集中したら研修の期間つらいですからね。
Aさん) 寮生活では同部屋との関係がどうなっちゃうのかというのもそうですが、自分自身、家の手伝いとかしなかったので、炊事洗濯とかしていなかったので、それが来月までに完ぺきにできるかどうか。完ぺきじゃなくても最低限のことが出来るかという不安があります。
Gさん) 家事をするというのは出来ていたほうが良いと思います。準備・段取りは家事にたくさんあるので発達障害の人の苦手なことの訓練にものすごく良いので、今時間があるのだったら今のうちからでもやっておいてよいのではないでしょうか?
Aさん) 親からは料理まではしなくても良いと言われました。せめて洗濯とか掃除ができれば良いと思いますね。
Gさん) 親御さんは段階を踏んでということだと思いますね。最終的には料理もある程度できたほうが良いと思いますが、まずは洗濯掃除ということなのではないでしょうか?たしかに数ヶ月しか無いんだったら心配することでもないと思いますよ。 食事もカップラーメンなどでなんとかなるはずです。
ちょっと解説
トイレの設備で配慮される、通勤で車を使って良いと配慮される、仕事に直接関係する以外の部分で配慮される、等、身体障害の方への配慮と違い、Kaien・ガクプロを経由して障害者雇用で働く発達障害のある人の場合は仕事の本質的なところで配慮されている事が多めです。例えば、口頭指示を受けるのが苦手だから必ずメールやメモなどで指示を受ける。計画立てが苦手だから上司が段どってくれる。大勢の中で発言ができないから会議は出なくてよいなどです。
ただし、今後、新卒で入る障害者雇用の人の場合、一般雇用と似た働きが求められるケースも出てきそうです。なぜならこれまで新卒の障害者雇用は身体障害者の独壇場でしたが、ここ数年発達障害の人が受かるケースが増えているためです。この新卒雇用は身体障害の人を受け入れていたことが多いので発達障害の人も一般雇用と同じような入社研修を受けたり、仕事内容も一般雇用の社員と似たようなことである割合が高いと思います。
今回のご相談も今までの発達障害の人が感じた障害者雇用で働くことへの戸惑いとは違うものも含まれていました。当社としても初めてのことが多く、今後随時状況を配信していきたいと思います。
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監修者コメント
新人研修は、企業によってはまだまだ「根性試し」みたいなことをするところもあると聞いています。外部に委託し、わざわざ「意地悪」を経験させに行くところもあります。
いきなり、そういうものを経験すると驚いてしまいますが、あらかじめ聞いておくと、心構えもできるかもしれません。あまりにもひどいところは入社自体を検討し直すのでしょうが…。
僕がいた防衛医大でもマンガみたいなことがありました。他の企業でも検索すると色々出てきます。今は面白い時代ですね。内容を予め想定し、意図を理解し、心の備えをしておきましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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