在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害*のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは疲れやすい発達障害の人が職場で上手に休憩をとったり自分の疲れを把握するための方法についてです。
ゲームのようにHPで体力を把握したい!
Aさん) 体力の見極め方を聞きたいです。自分が体力がないと思っても、目の前にゲージがあってHPがゲームみたいに下がっていくのが見えないと、自分の疲れがわかりません。みなさんはそういうことは有りますか?
スタッフ) HPというのはヒットポイント、ですね?
Aさん) はい。
Bさん) それは精神的なものですか?それとも肉体的なものですか?
Aさん) 精神は常にすり減っているので…
一同) 笑
Aさん) 体力的なところだと思います。家に帰って気づいたら疲れている。疲れているのがわかっても動いちゃう。
Cさん) わかります。家事をしていて、でもいつの間に手が止まっていて、「あっ・・・」って。そうならないと体力がゼロだと気づけないことが有ります。その時はやりかけのことはやらないといけないけれども、やりかけのものを途中にしておくことは本当に苦しいけど、最近はやりかけのものを放っておいて寝られるようになりましたけれども、今までできませんでした。
スタッフ) こだわり、完璧主義なものが、悪い方向に働いちゃっているんですね。
Cさん) それもありますね。
マイルールで休憩や有給休暇を取る
Dさん) ゲージが自分の中に見えていないのは心配しなくても良いと思います。でもゲージという形ではなく、今日10時間動いているからそろそろ休もうとか、頭で対抗していくのが良いのかなと思いました。
Aさん) 例えば、何回同じ作業をしたら休むとか?
Dさん) そうそう。ゲージが見えるようになる努力をするよりも、2時間働いたから休むとか、そういう形が良いと思います。
Bさん) ゲージだけで考えると、ゼロになったときに無意識のうちに倒れていたことがありますからね。
Cさん) 私は障害特性を履歴書に書いて応募しています。そのときに「小休憩をこまめにとって対応しています」というのを障害特性に書いて、それで応募しています。面接の時も確認して「トイレ休憩が多い程度の感じです」と話をして理解してもらっています。障害者枠の場合はその程度は対応してもらえることが多いと思います。
Aさん) 企業には私も伝えているのですが、それでもどうしても頑張り過ぎちゃうんじゃないかなと不安があります。
Cさん) 上司や人事は倒れることが心配だと思うから。
Aさん) 疲れたとなるとすごく休憩を取る気がしています。それをちょっと自分で踏ん張らないといけないという気持ちもあります。踏ん張りと休憩の見極めがすごく難しい。
Eさん) あんまり疲れているんだったら、休憩ではなくて、その日一日休んじゃうというのはどうでしょうか。
Aさん) あー。
Eさん) 僕の業界(IT)は特にそうなんですけれども、倒れる人が多いので。結構配慮されているというか。みんなあまり休んだことに対してああだこうだ言われないんです。倒れた人に対して、あいつどうなっているの?、と心配してくれることが多いです。
感覚鈍麻とこだわり・強迫性・完璧主義が合わせて出て来る
Fさん) 私も含めて、疲れているとか、お腹が空いているとか、まだこれだけ踏ん張れるという調子を感じられない悩みが多いですよね。例えば身体は疲れているけれども、頭は動いちゃうとか、3食食事をとることを忘れて最終的に倒れちゃうとか、発達障害の人には感覚の鈍さが有る気がします。
Eさん) 頑張っちゃうという感じなのですか?周りから期待されているので、本当は休みたいけれども、やっちゃうみたいな。
Aさん) 期待されてというよりも…完璧主義なのかな。
Fさん) Aさんの場合は強迫性も少し有るのかなぁと。
スタッフ) 感覚の鈍麻に加えて、先程出たように、こだわりとか、強迫性、のようなものが掛け算で現れるのでしょうね。
Cさん) そこを「働かなきゃいけない」という強迫から、「休まないといけない」という強迫に切り替えるというか。私はそれで最近そうしています。というかそうせざるを得ない。
Fさん) 数字で見える方法としては、検温とか脈を測るとか、そういうので一定のメソッドを作れないのかと思っているのですよね。
Aさん) 唾液でストレスチェックが出来ると聞きました。
スタッフ) ウェアラブル系のアプリだと、健康・ヘルス関係は盛り上がっていますよね。便利にはなるかもしれないですね。睡眠を測るなんて昔は医療機関で大変な機材とお金がかかったのに、今は簡易にアプリでできる部分もありますからね。
Fさん) そっか、そういうの、あるんですね。
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監修者コメント
発達障害の人で、休むのが苦手な人は大変多いです。記事にもあるように「こだわり」「疲れに鈍感」「過集中」などの特徴が関係しているのではないか、と思います。
競馬のレースでも集団のペースにあわせて走る方が、馬は体力も温存でき、大負けはしないです。一番先に走り出た馬は独走を続けられず、一着はなかなかありません。
競馬の場合は勝たないと意味がないですが、人生・仕事の場合は大負けしなければ良いので、多くの人は周囲の動きを見ながら、体力の温存を考えつつ、仕事をしています。
一生懸命働くことも大事ですが、余力を残しつつ仕事をすることも大事なこと。苦手かもしれませんが、そういう観点で周囲の動きにも関心を持つようにしてください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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