在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害*のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回のテーマは発達障害の人は「自己中心的」なのかについて議論しました。
発達障害の人は”I”以外を主語にして考えるのが苦手
Aさん) たぶん私たちって”I”で生きてる人たちなんですよ。アイってLoveじゃなくて、「私」の”I”として生きてる人たち。だけど、姉とか友達とかの話を聞いていると、主語が常に「誰かが」で生きてる気がするんですね。説明書や仕様書を読んでも書いた人が何を求めてるのかとか、上司からの指示を受けても上司はどうしたいのか自然に理解するというか。それが、いわゆる「暗黙の了解」なのかなと私は思っています。
スタッフ) はい。そうだと思います。でも、その定型発達といわれる人も主語は”I”として生きているんだと思います。自分がうまく物事を運ぶためには、他人がどう考えているか読み取らないといけないから、常に他人がどう考えるかを意識して動いているだけでしょう。
Aさん) それって汚くないですか(笑)。
スタッフ) 汚くないです(笑)。自分がこう動きたいと意識しているからこそ、他人の動きが気になるだけです。自分の動きはコントロールできますが、他人はコントロールできないこと多いですから。だから他人のことを考えてる時間が長いんだと思います。
Aさん) つまり自分の目的達成のためには、他人をうまく用いないといけないから、他人を常に見ている。
スタッフ) そうです。
Aさん) やばい。今すごい鳥肌が立ってる(笑)。
スタッフ) でもそういうものですよ。
Aさん) こわーい、と思って(笑)。
スタッフ) だから、自己中心的なのは、発達障害であろうとなかろうと、変わりないっていえば変わりないです。
定型発達の人が自然に他人の考えを理解する仕組みはどうなってるの?
Aさん) でも不思議なのは、なんで他人の考えることが、ビッとわかるんですか? それが不思議。
スタッフ) どう言えばいいかわからないです。息をどう吸ってるんですかと言われるのとほとんど一緒です。
Aさん) はー。
スタッフ) 息をどうやって吸っているか解説するのは難しいですよね。自然にできませんか? と言いたくなると思います。それと一緒です。「なんで他人の考えることがわかるの?」って言われたら、「わかるから」という答えにしかならないんですよ。
Aさん) それは小さい頃からできているんですか?
スタッフ) たぶん。だから人の気持ちが分からない人がいる事自体が想像しづらいことなんですね。ウチのマンションの下に、「素敵だね、人の気持ちを読める人」という標語が貼られていて(笑)。
Aさん) ひどい(笑)。人の気持ちを読めない人は素敵じゃないんだ(笑)。
スタッフ) 「人の気持ちを読むのは自然にできる」っていうのが前提にある標語なんでしょうね。僕もこの世界(発達障害の人の特性)を知らなかったら、「いい標語だな」と思ったかもしれません。
Aさん) アスペルガーの人はみんな悪い人ってことじゃないですか(笑)。
Bさん) 僕から見ると、定型発達の人たち全員じゃないんでしょうけど、何度か会話をしてると仲良くなりますよね。また久しぶりに会っても会話が弾んでいる。ぼくにはできないことがごく自然にできてるようにみえるんです。そこは、それこそ何故できるとの聞かれても困る、みたいな世界なんですよねきっと。
スタッフ) はい。
Bさん) 僕、今、職場の同じデスクの島に結構顔が広い人なぁという女性がいます。彼女は久しぶりに会った人とさっと会話が弾むんですよね。羨ましいとも思いつつ、でもそうじゃない人生をずっと歩んでるから、別にいいやって思ったりしています。
スタッフ) そうですね、なんでできるのと言われても、特に考えなくても久しぶりに会った人とも話しているうちに共鳴するポイントが見つかるのでしょうね。
Bさん) そうですね(笑)。私は通じる人としか会話が通じないので(笑)。
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監修者コメント
「自分は人の気持ちがわかっていないのかもしれない」ということを指摘されると、あたかも自分が人間ではない何かだと言われているようで、稲妻が走るような衝撃を受けると思います。また差別されているような、悲しみも感じると思います。なので、最近はそういう言葉を使うのを控えるようにしています。
僕自身の考えとしては、発達障害の人であっても、人の気持ちがわからないとは思わず、苦手なんだろうと思っています。生物学的な断絶があるとは思えず、あくまでグラデーションだと思っています。
だいたい、相手の気持ちを読み取るのが得意な詐欺師は相手の気持ちがわからないからできる芸当だし、人生について深い理解のある芸術家や学者にはそもそもASDが多いというのも有名な話だし、ASDだから人の気持ちが分からないというのも、なんだか変な議論だなと思います。
ASDの人は相手の気持ちを取り込むのに時間がかかったり、間違いやすいだけなんですよね。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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