Kaien横浜の石川です。当社の就労移行支援利用者の就職実績と、発達障害*のある人の就職トレンドを毎月お伝えしている「Kaienマンスリーレポート」。今回は7月分のデータをもとにお話ししていきます。
入所から就職までの平均期間が5か月に
7月の就職者数は7人でした!この時期は、4月・5月にピークだった採用活動が一段落という企業様も多い中、大健闘です。おめでとうございます!
4月からの就職者数はこれで66人。昨年度を上回るペースを維持しています。
今回目立ったのが、入所から就職までの早さです。7月に就職された方々の平均訓練期間は約5か月でした。全国平均18カ月(※各種公式データをもとに当社が独自に算定)のなんと3分の1以下です。
もちろん、早ければいいというものではありません。しかし、利用者のほとんどが訓練期間は収入がなく、蓄えを切り崩したり、親御さんの経済的支援や失業保険などに頼っています。「一日も早く働きたい」という方にとって、就職スピードの実績は気になるところではないでしょうか。
Kaienの就職スピードの秘訣
就職が早く決まる方が多いのは、求人と利用者のマッチングがうまくいっているからです。理由は大きく3つあると思っています。
Kaien修了生が勤める企業様からのオファーが多い
一番は「修了生の頑張り」のおかげです。Kaienにいただく求人の多くは「〇〇さんがとてもよくやってくれているので、ぜひまた誰かご紹介してください」というリピートです。スタッフとしても、’〇〇さんの特性や人柄に似たタイプの人’を具体的にメージしやすく、求める人物像に近い利用者を紹介することができます。
適性を見極める訓練プログラムが充実している
Kaienで展開しているのは、数千名の発達障害の方に直接伺った経験談をもとに、ゼロから作り上げたオリジナルのプログラムで、30種類以上の職業に対応しています。目的は「こなす」ことではなく、「向いてる仕事を見極める」ことです。経理・人事、軽作業、など職種はもちろん、得意・不得意を作業レベルにまで分解してアセスメントします。
スタッフのバックグラウンドが多彩
Kaienの特徴でもあるのですが、スタッフの職歴が多彩です。IT企業、メーカー、公務員、劇団、病院、学校、学習塾等々…。かくいう私もテレビ局出身です。スタッフそれぞれに詳しい業界があり、この利用者ならあの仕事に向いていそう、この求人だったらあの利用者に合いそう、そんな具体的なイメージをもって薦めることができます。
しかし実際には、多くの就労移行支援事業所が苦戦しているのが現状です。全国の事業所の35%が開所以来、就職実績がゼロという数字が出ています。(厚生労働省障害福祉課調べ) 求人数の地域格差もありますが、各事業所がカラーを打ち出し、実績を積み重ねていくのは簡単ではないといえます。
”適材適所”を可能にするハブでありたい
なぜKaienが実績を伸ばし続けているのか。
その理由のひとつが、発達障害者に特化しているだけではなく、その’適材適所’を明確に目指しているからだと自負しています。就労移行事業を始めて8年目。利用者・修了生・ご家族・企業の方々…と関わってくださる方は増え続けています。こうしてネットワークが広がり選択の余地が生まれたことで、やっと可能となっていることでもあります。Kaienはそのハブでありたいと願っています。
”発達障害者の適材適所”について、希望を感じる動きもあります。
法定雇用率は満たしているが、この仕事は発達障害がある方のほうが向くのではないか、と求人のご相談を頂くことが増えていることです。最近も、非常に細かい医療機器を加工するお仕事について、「清潔さや細部へのこだわり」と「繰り返しへの耐性」が求められるので、どなたかいい方いませんか?とのお話をいただきました。私たちスタッフには、向きそうな利用者の顔がすぐに浮かびました。雇用率達成のためではなく、生産性向上のために声をかけていただけるのは、’適材適所化’を進めるうえで理想だと感じています。
TEENSから”特性と適職”をテーマにした本が出版されました
適材適所は、発達障害の有無に限らず、多くの職場が抱える課題です。私自身、前職で不遇の人をたくさん見てきました。いきいきと能力を発揮する発達障害者がむしろ成功モデルとなり、幅広い就労の現場で広がるといい。私たちはそんな願いも持っています。
先月発売の当社TEENSスタッフによる本「発達障害の子のためのハローワーク」でも、特性ごとに向くお仕事を160種類にわたり紹介しています。お子さんや親御さんはもちろん、在職中、これから就職を目指すという大人にも十分参考になる内容です。ぜひお手にとっていただければと思います。
- 出版日:2017年7月24日
- 出版社:合同出版
- 監修:鈴木慶太(当社代表取締役) 飯島さなえ(当社 教育事業担当執行役員)
- 著・編集:TEENS執筆チーム
- URL:Amazonサイト
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます