Kaien秋葉原スタッフの鈴木です。
今回は記事を2回に分けて、発達障害に特化した当社の職業訓練でどのように「働く意欲」を身につけることができるかについてお話ししたいと思います。前半は、自己効力感が意欲を生み出す鍵になるというお話です。
就活でアピールするべきなのは「意欲」と「能力」
Kaienの職業訓練では、応募書類や面接で「意欲」と「能力」をアピールしてくださいとお伝えしています。企業は選考で応募者の「今できること」と「働き始めた後の伸びしろ」を見ています。伸びしろは選考の時点では予想することしかできませんので、書類に書かれていることや面接で話している様子から、成長できそうな人かどうか判断することになります。
一般枠・障害者枠に関わらず、多くの職業訓練では「能力」を底上げするためにPCスキルなど業務で使える技術を学べるようにプログラムが組まれています。一方で、「意欲」を底上げしましょうというプログラムがあるという話はあまり聞いたことがありません。多くの人は「意欲の持ち方」を学ばなくても、就活や就労に必要な意欲を身につけることができるからかもしれません。
意欲の持ちづらさの原因は「想像力の難しさ」と「成功体験のなさ」
しかし発達障害のある人の中には、これまでに経験したことがないことに対して意欲を持ちづらい人が一定数います。自閉スペクトラム症の特性の1つに「想像力を働かせるのが難しい」ことがありますが、まだ働いたことのないので働く必要性を腹の底からは感じられない人や、職歴のある人でも次はどのような職場ならばうまく働くことができそうかイメージできない人もいます。
また想像力の問題以外にも、これまでの学校生活や職業人生でうまくいかなかった経験がネックになっていることもあります。勉強が苦手だったり仕事でミスが多かったりで、親や上司から叱責され続けてきた人も少なくありません。そのため、また今回の就活や就労でもうまくいかないんじゃないか、自分が何か努力しても結果など伴わないのではないかと、後ろ向きな気持ちになる人も残念ながらいます。
このようなことから、就活で意欲をアピールするのが難しかったり、そもそも就活すること自体にモチベーションが持てない人がいます。(さらに言うと、働きたいという希望があっても、職業訓練に来るまでの意欲が持てず、訓練に参加できていない方もおそらく多くいらっしゃるのだと思います。)
模擬職場で仕事を知り、小さな成功体験を積み重ねて「自己効力感」に
意欲をうまく持てない発達障害の人に働くための意欲を伝える。これは本当に難しいことです。私たちも日々の訓練の中で試行錯誤しています。
想像がしづらい特性に対しては、模擬職場形式で実際の職場にとても近い形で業務を行ってもらい、「働くってこんなこと」「事務や軽作業ってこんな仕事」とイメージしてもらえるようにしています。そこで「毎日職場(訓練)に通えた」「上司(役の講師)に自分から質問できた」「グループ作業でチームに貢献できた」など小さな成功体験を積み重ねることで、自分も働けるかもしれない、自分もこういうことなら職場で役に立つことができるかもしれないという自信をつけていただけるように働きかけています。
「自分はやればできる」と考えられる力のことを「自己効力感」というそうですが、この自己効力感が就労意欲に直結しているということを、自信を持った訓練生の行動がみるみる変わっていく様子を見ていて強く感じます。
後半の記事では、この自己効力感をKaienの訓練でどのように高めようとしているかを、「対話」をキーワードにしてお話しします。