他人が怒られても自分が傷つく…”誤爆”への対応を教えて

発達障害の人の視点で議論してもらいました ~キスド会 2017年9月 開催報告~
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 在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。今回は「自分ではない別の人が怒られているのに、なぜか自分が傷つくことへの回避法」について議論しました。

 

発達障害の人に一般的? 他人の落ち込みが伝染する

Aさん) 私は、冷たい反応をされるといちいち傷付いてしまうということに結構困っています。被害妄想といますか、分かってるんですよ自分の中では。上司の機嫌が悪くて他人を怒っている時にでも、私のせいじゃないんですけどストレスを感じるんですよね。嫌な気持ちにすごいなるんです。例えば、上司がすごくいらついていて手をパーン(本当に音を鳴らす)ってやった時に、私が「のろまだから、そんな感じなのかな」とか自分に関連づけてしまう癖があります。理性・論理では「自分は関係ない」と思うんですけど、どうしても感情を引っ張られてしまうところがあります。同じようなことが皆さんにもあるのかと、あるとしたら皆さんどう処理しているのかなと思いました。

スタッフ) うん、なるほど。僕が「誤爆」って言っているものですね。

Aさん) あるんですね。そういう言葉。

スタッフ) いや、僕が勝手に作ったんですけど。

Aさん) ああ(笑)

スタッフ) Kaienに通ってくる人見ると、その人が怒られているわけではないんだけど、同じくらい気分が落ち込んでしまう人がいるのは確かですね。ご本人が怒られた過去と結びついているのだろうなと感じています。あるいは自分じゃないけど、例えば父親に母親がずーっと怒られているのを見て育ったとかでしょうか。自分自身が言葉や暴力でのDVを受けているわけではないのだけど、間接的に様子をいっぱい見ていて、その場面が実は呼び起されているのかとかでしょうね。そもそも発達障害の人は自分と他人の区別が付きづらい、全体の文脈を捉えづらいから常にビクビクしていることもあるとは思います。皆さん、Aさんと同じようなことはありますか?

Bさん) 解決法ではないんですけど、私も生きてる中で、他の人に大きい声出されるとか、物を手荒に扱われるというのは、凄いビクッとするし、怖いです。

Cさん) 私も解決策はないんですけど、よくそういうことがあります。誰か虐められてる人を見たりすると、勝手にこっちが傷ついてしまいます。その人を虐めるんだったら、私を虐めてくださいみたいな状態になってしまって、それで怒っている人が段々落ち着くんだったら「私お願いします」みたいな感じで関係ないのに、出てきてしまう感じです。常に何かに対して、「ごめんなさい」を言い続けてる感じがあるので、もし対処法があったら知りたいです。

Dさん) 要するに全然じゃない関係のない人たちのコミュニケーションによって自分が影響されて、それをどうしようって感じですよね。

特性として理性的に感情を排除する方法

Eさん) 私もすごいあります。何かその場面を何度も何度もリピートして思い出しちゃうってのが辛いです。対処法になっているかわからないですけれども、私がやっていることとしては、とにかく家族に話す、です。「こういうのがあって、本当に嫌だった」と話します。そうすると家族から「そういう人って思っておけばいいんだよ」て言われることが多いです。でも結局解決せずに、その場面が映像でまた思い起こされちゃうことが多くて、やっぱり結構つらいんですけれどもね。

Fさん) 僕はドクターに一回聞いたことがあったんですよ。そしたら、被害を大きく拡大解釈しちゃう事自体がASDの特徴っていう風におっしゃっていました。なので発達障害という診断を受けてからは、ASDの病気の影響でだという風に考えるようにしています。

スタッフ) 発達障害の特性だから仕方ない、ということで気持ちが収まるということですか?

Fさん) 100%収まるわけではないですけど、前よりはちょっとは気が楽になりました。

スタッフ) なるほど。あなたが感じている痛みはそこまで大きくなく、例えで言うと双眼鏡で見ているから大きく見えるだけ。実際はそんな大きなものじゃないと理性的に考え直すということですね。

「人の関係は修復する」ということを信じる方法

Gさん) 私も似たようなことがあるんですが、人を観察することで冷静さを取り戻しています。ある人たちがやり合っていたんですよ。普段仲いい2人がです。その時その場面だけ切り取ってみると、関係が悪くなっているなって私も気になりました。その場にいたので尚更です。ただ、次の日にはなんか普通に冗談を言い合うというやり合う仲に戻っていたんですね。2人は2人ならではの方法で解決したと仲直りしたと思うんですけど、安心できる関係にV字回復するみたいなところをちゃんと目撃すると、「そうかこういう風に修復出来るんだ」ってことが分かるんですよ。そういう風に出来るだけ人を細かく観察するようにするといいのかなと思いました。

Aさん) なるほどですね。今そのHさんのお話を聞きながら思ったのが”修復”って言葉です。その”修復”という言葉が自分の中で響きました。私は今までは人間関係を一度悪くしたら修復しなかったんです。ずっとそのまま…そのトラウマを持ってきているのかなって。でも、修復する人もいるんだっていう今意見を聞いて、「そうだ!」って思いました。やっぱり自分のトラウマって直結していたのかなって。

Hさん) 自分の場合は、今行っている作業にひたすら集中することが対策です。例えば仕事をやっている場合だったら、チェックをする作業だったら、ひたすらチェックを厳重にして、嫌なことは頭に入れないようにするということですね。他にも、ちょっと休憩でお手洗いに行く際も、ひたすら「トイレに行く」っていう行動だけを意識して目の前の作業だけを行っています。

Aさん) 私の会社って社内チャットというのがあるんです。誰かが怒られてしまって、その人から「助けて」という愚痴が来ると、自分も傷ついた経験が多いから優しい言葉かけるじゃないですか。なるべく気を使って、相手を傷つけないようにしてるうちに、自分もどんどんその感情の波に飲まれてしまっていくんですね。相手から発声した愚痴をどう受け止めてその相手を傷つけないようにケアをすることと、自分の感情を引っ張られないようにしなきゃいけないって言う両立が難しいです。

Dさん) さっき話した別の話題(自分のこだわり・物差しを他人に押し付けている?)とすごく似ていると思うんですよ。なんとかしようとしてるんですよね、自分とは関係のない二人の間を。コミュニケーションがすごい上手で人徳もある人は、自分に関係ない関係が揉めても、介入して解決出来る人はいると思います。ただ、そういう力が弱い人はそこに首を突っ込まないほうが良いと思うのです。今回で言うとケアをしてあげないとという感情、さっきの話ではお弁当のやりとりはダメだみたいな感覚、そういう自分に関係ない他者同士の関係で動くのはあんまりよくないのかなという風には思います。

マインドフルネス 自分の感覚を感じ直すという方法

Iさん) 今のお話を伺ってると、嫌なことを見てしまった、聞いてしまった時に、その事を考えることで自分の存在というのが薄れていってるような気がするんですね。例えばほかの人の反応を見て、あの人が不機嫌なんだって思い始めちゃうと、その人がいかに自分を責めてくるかみたいな、感じですね。その中でも自分の存在というのがなくなっちゃってる。なので、解決になるか分からないですけど、外的な刺激で、例えば暖かい飲み物をコップに入れてそれを触ってみる。その時に「暖かい…」って感じる気持ち、それって絶対あると思うんです。その時に他のことを考える波というのが一瞬であったとしても止まっていると思うんですね。そういうところで自分を感じていくこと。美味しい食べ物食べて「あっ、美味しいな」って一瞬思うだけでもその波って止まると思います。自分の存在が薄れちゃっているときは、そういう自分だけ感じる刺激を入れていくことで、徐々に嫌な思いを分散させていくみたいなのは出来るかなと思っています。

スタッフ) すごいですね。マインドフルネス的な考え。

Fさん) 私もマインドフルネスのこと思い出しました。要するにそれなんですよね。肩をこうゆっくり回しますって心の中で思いながらゆっくり回して、回し終わったら終わりますってじゃあ次は○○ますみたいな感じ。ヨガに近いんですけど、ちょっと説明が難しいです。そういう風に「これは自分の感覚だ」っていう感覚をしっかり取り戻せば、良いと思いますね。

スタッフ) 体と感覚と一回紐づけてあげて、観念的な攻撃されちゃってる自分から、もう一回自分を取り戻すみたいな感じなんですかね。すごいですね。

Jさん) すごい意見の後で申し訳ないんですけど、先程のチャットで相談を受けたときに、自分で考えて文字を打つと自分の言葉で言っちゃうので、わざとネットの文章などをコピペしてやっています。そうすれば自分が引きずられすぎない感じがします。あいづちを打つとか相手を傷つけない対応を、コピペでし続けるってことをやれれば、前向きな解決をしつつ、自分は手一杯にならないと思うのです。

Kさん) 私も結構引きずられるタイプです。誰かが怒られている場にいるだけで、その人以上に自分の方がダメージを受けてたりしていました。でも最近転職して環境が変わったんですね。新しい職場でも怒る人は確実にいるんですけど、その時にその上の人がその人のフォローをしてたんですよ、みんなの前で。「大丈夫か、最近」みたいなことです。それを聞いたときに私の落ち込みも一緒に回復したんです。誰かをフォローしているのを見るっていうのがすごい効果テキメンで、回復するなというのがあったので、フォローしてくれる人がいるといいかもしれないですね。

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※Kaienでは、職業訓練や求人紹介を通じて適職を一緒に探す「就労移行支援」や、自立に向けた基礎力を養う「自立訓練(生活訓練)」、学生向けの「ガクプロ」などを通じて、発達障害やグレーゾーンの方の就労支援を行っています。今回のテーマである自他の区別についてもそれぞれのサービスで専門スタッフが対応しています。


監修者コメント

なかなか示唆に富んだ内容です。発達障害の人で、自他の境界が曖昧としているために、他人が怒られていても自分が傷ついているように感じる人がいます。また、それを恐れるがゆえに、より強固に自分の殻に閉じこもってしまう人もいます。自他の境界をどう見極め、拒絶ではなく融和していくのか、というのは誰にでも当てはまる人生のテーマです。

例えば、患者さんが僕のことを憎み、しかし、通院する中で、関係が修復されることがあります。そういう時に症状がぐっと良くなることもしばしばです。人との関係が修復する場面を、僕ら医療従事者はもっと立ち合い、取り込み、学んでいく必要がありますね。


監修 : 益田 裕介 (医師)

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