Kaien社長の鈴木です。
毎年恒例「発達障害の人の就業実態調査」
今週から年に一度の大規模調査をしています。発達障害の方向けの「就業実態調査」です。アンケートはすでに当社の利用者などに配布済み。今回収を待っているところです。(ネットでの公開はしないクローズドのアンケートとなっています)
毎年300人規模の回答を頂いています。過去2年の結果は下記。
今年 n=500 を狙っています
今年も似たようなアンケートにしていますが、これまでの就労移行支援の修了生中心のデータから、広く発達障害で職探しをしている人に規模を広げました。
できれば500人のデータが集まればなと狙っております。〆切まで2週間を切った現時点(12月4日)で200人弱から回答を得ています。
今回まとめる文章は、まだ分析をしておらず、いわゆるりんごとオレンジを比べるような比較対象がややずれている可能性がある(例えば就労移行に通っている人とそれ以外の層は年齢が微妙にずれている)のですが、そうした補正をしたとしても、傾向が出そうだなぁという印象です。
就労移行支援通所組に高い項目は?
就労移行支援に通っている人と、そうでない人。前者が高い項目は
- 家族との関係(就労移行支援に通う人は家族に様々サポートしてもらっていて関係が良い場合が多い!?)
- 経済的な満足度(同じ理由で、就職活動にフルタイムで取り組めるためには、経済的にある程度安定している必要がある!?)
- 精神的な安定度(就活は先の見えないトンネルに入ったような不安定な状態になりがち。それに立ち向かえている就労移行支援通所組は精神的に安定している!?逆に言うと、なかなか就活をする勇気が出ない人が実は多い!?)
- 人生全般への満足度(上記などと重なりますが、通所していない組は満足度が低く、様々なフラストレーション・挫折感があることがわかる)
という感じです。
福祉に繋がれる人は幸福度が高い?
つまり印象として、当社の福祉サービスに繋がっている人は、障害があっても、安定した家庭があり、(でも結婚していない人、お付き合いしていない人が、どちらのセグメントでも圧倒的に多いのですが)、経済的に見通しがそこそこあり、精神的に安定した状態で、自分の人生もニュートラルまたはポジティブに感じている人たちである。
一方で福祉に繋がりづらい人は、(案外結婚したりパートナー・お付き合い関係ではむしろ高い満足度を予備調査では示していますが)、家庭環境や経済状態、精神状態ではかなり強い不安や不満がある層だということがざっくりと感じられるところです。
繰り返しですが、まだデータが入り始めたところであり、比較対象としては適切ではないのですが、そもそも福祉って弱者のためにあるのに、それにすら繋がれない社会ってどういうものなんだろうという…悲しさを感じるところです。またそういった層にアウトリーチしていくのが当社の役割なのか、あるいは今来ている人たちをまずしっかりと明るい人生を一緒に切り開いて、今絶望を感じている人にも徐々に明かりが届くような一助としようというアプローチをすべきなのか。そのあたりは改めて考えていきたいなと思った次第です。
アンケート分析は年末に予定
アンケートは今月中旬まで行いますので、時間があれば年末に分析結果を共有したいと思います。ただしデータセットが大きくなるのでしっかりした分析は他の社員に任せようかなぁ・・・とも思っており、何段階化に分けて発表していくかもしれません。
ということで引き続きKaienをよろしくお願いします!
文責: 鈴木慶太 ㈱Kaien代表取締役
長男の診断を機に発達障害に特化した就労支援企業Kaienを2009年に起業。放課後等デイサービス TEENS、大学生向けの就活サークル ガクプロ、就労移行支援 Kaien の立ち上げを通じて、これまで1,000人以上の発達障害の人たちの就職支援に現場で携わる。日本精神神経学会・日本LD学会等への登壇や『月刊精神科』、『臨床心理学』、『労働の科学』等の専門誌への寄稿多数。文科省の第1・2回障害のある学生の修学支援に関する検討会委員。著書に『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ』(河出書房新社)、『発達障害の子のためのハローワーク』(合同出版)、『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』(大和書房)。東京大学経済学部卒・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修了(MBA)。星槎大学共生科学部 特任教授 。 代表メッセージ ・ メディア掲載歴・社長ブログ一覧