発達障害×公務員 障害者雇用で働くための傾向と対策

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このページでは発達障害*の方が障害者雇用で公務員を目指すために

公務員試験の経緯
求人の探し方と試験対策
適性と配慮の受け方

などを取り上げます。

【注目】現役公務員に聞く「発達障害×公務員」


(2021年9月24日配信)

障害者雇用×公務員 これまでの歴史から

障害者雇用の「後進地」だった公的機関 

もともと公務員は障害者雇用の後進地でした。実際、知的障害と精神障害は正規職員の募集対象から外され、身体障害のみの採用となっていたからです。このため知的障害や精神障害の障害者手帳保有者は、臨時採用という契約社員の身分で、延長が無い3年程度の求人しか受けられませんでした。

水増し問題で激変

その流れが変わったのが、2018年に発覚した「障害者雇用水増し問題」です。具体的には国や地方自治体などの公共団体で、約3,500人もの雇用が水増しされていました。障害者雇用は本来、障害者手帳の保有者しかその数に換算できません。しかし「障害者手帳の確認が厚生労働省の通知に記載されていなかった」ことから、各省庁が独自に障害の判定をしていました。中には本人にすら確認しておらず、健康診断で異常が確認された人を障害換算していたケースもあったため、世論から強い批判を受けました。(※ちなみに民間企業は、以前から障害者手帳の確認をした上で、労働局に障害者雇用数を報告しています。)

主な変化は2つ

国会でも取り上げられたこの問題。この後1・2年ほどで官公庁における障害者雇用に大きな変化が2つ起きました。

  • 精神・知的に正規職員への応募の道が開かれるケースが増えました。水増し問題以前から徐々に見られていましたが、その傾向が一気に広がったと言えます。発達障害の人も知的もしくは精神に含まれますので、公務員への門戸が大きく広がりました。
  • 2019年に一斉採用試験が行われました。これにより各省庁・地方自治体で雇用率が大幅に改善しました。ここで発達障害の人も大量に採用されました。

現在の雇用率

令和2年度(2020年度)に発表された公的機関の障害者雇用率は下記の通りです。

千人単位で不足していた国は既に法定雇用率である2.5%をオーバーしているだけではなく、ほとんどの機関(45機関中44機関)で法定雇用数を達成しています。都道府県レベルの地方公共団体でも同様の傾向が見られます。

雇用数の観点から、まだ改善の余地が大きく残されているのが、市町村と教育委員会です。以前よりは改善はしているものの、まだ雇用数を達成していない自治体や教育委員会が残されていることがわかります。

知っておきたい 現在の障害者雇用の公務員 試験と働き方

実際に障害者雇用の公務員として働きたい方のために、試験と働き方を中心にまとめます。

求人はどこで探す?

2019年の一斉試験が行われたときは人事院のサイトで募集がされましたが、今後は大規模開催の採用イベントは開催されないようです。

このため、人事院のサイトに都度公開される情報をこまめに確認するか、地方自治体の場合は各市区町村の採用情報をチェックしていく必要があります。しかし一つ一つの市区町村をチェックするのは現実的ではありません。公務員の試験情報を扱った民間のまとめサイトを利用すると便利でしょう。

ちなみに、臨時職員(雇用の定めのある有期契約)の公務員の求人情報はハローワークや公的機関から連絡を受けた就労移行支援事業所などで確認することができます。

どんな試験がある?

選考は「書類」「筆記(教養・作文)」「面接」の三段階です。

「書類」は民間企業とは大きな違いはなく、一般的なものですので、特別な対応は必要ないでしょう。

「筆記試験」は民間の障害者雇用では稀であるため、ある程度の試験対策が必要となるでしょう。しかしいわゆる一般雇用の公務員試験のように何か月、場合によっては年単位で準備を重ねるようなものではありません。

課題としては教養と作文の二つに分かれます。教養は過去問のうち事務職で使われているものなどを見ておくとよいでしょう。書店などで問題集を見たり、ウェブで公開されているものもあります。公務員試験の専門学校に通うのも一つの手です。しかし実際、教養はそれまでの学力が大きくものをいうため、事前準備で点数をあげることは至難の業でしょう。このため、比較的取り組みやすい課題が出る作文でしっかりと自分の考えを表現するための練習を重ねるとよいでしょう。就労移行支援などで準備ができます。

「面接」も民間企業とは大きな違いはないでしょう。面接官が複数いるケースが多いと思われます。事前に模擬面接を十分にしておきましょう。

(※なお臨時職員の採用試験は「筆記試験」は無い一方で、「実習選考」が含まれます。面接が苦手なタイプでも、実際に働く姿を見てもらえるためにアピールの方法が広がります)

どんなタイプの人が適性がある?

民間部門の障害者雇用と違い、筆記試験があり、一方で実習選考がありません。このため、より学力があり、より論理的に軽やかにしゃべれる人が合格しやすい印象があります。

具体的には、偏差値が高めな大学を卒業予定の新卒の学生。筆記試験なども日々行っていて違和感を覚えずに対策できるのが良いでしょう。あるいは民間企業に就職後に機会を伺う方もいます。それほど臨機応変に話せなかったり、試験で高い点数が取れないタイプでも、それまでの実績で安定度や、社会人としての振る舞いをアピールできるからです。しかし、就職活動が働きながら、かつ長期になることが多いため、余暇にリサーチできる力やタフな精神力が求められることになります。

臨時職員でキャリアを積む道もゼロではありません。しかし通常、自治体の臨時職員で障害者枠は他の民間企業で受かりづらい人を積極的に採用することが多いです(例:東京都のチャレンジ雇用)。このため全く別枠となる正規職員の試験に合格することは非常に難しいというのが実際のところです。臨時職員からのルートは現実的ではないと考えておいたほうが良いでしょう。

どんな仕事をしている?どんな配慮が得られる?

障害者雇用で働く公務員の方の仕事は様々です。一口に公務員と言っても、一般枠の人と同じように、電話を取り、複数同時作業をしながら、残業もして、とバリバリ働くことを期待される部署もあるようです。一方で、比較的単純業務が多く、ファイリングやデータ入力・チェックなど、役所に多いペーパーワーク・紙の裁きなどを主に担当している人もいます。また臨時職員の人を中心にシュレッダーなどの軽作業で働く人もいます。

何よりも気を付けたいのが公務員というイメージから職務内容を決めつけないということです。自治体や職場によって期待される職務内容が違いますので、事前に担当部署に直接問い合わせるなどして、自分が働きやすい職場なのかを確認するようにしましょう。

配慮についても同様です。非常に細かく支援を受けられるところがある一方で、普通に働くことを求められているのではないかと悩む人もいらっしゃいます。できれば就労定着支援などの外部の支援者を定期的に呼び、上司と自分の間の理解や認識のずれを補ってもらうようにしましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。障害者雇用で公務員として働く道は数年前よりも非常に身近になりました。特に発達障害の方に大きく門戸が開かれています。しかし2019年に行われた選考でほとんどの空き枠が埋まったため、一時期に比べると採用数は減っています。今後は補充的な採用試験が行われ続けますので、希望を失わず、こつこつと応募し続けることが必要でしょう。

就職活動の伴走には就労移行支援をお勧めしています。学生の方はKaienの場合はガクプロという就活支援プログラムもあります。書類選考や筆記試験(教養)はそれほど特殊な対策は不要ですが、作文や面接は支援者の力を借りながら準備していきましょう。

また仕事内容は職場によって様々です。事前に確認するとともに、配慮がどの程度受けられるかも確認しましょう。定着支援は就労定着支援事業所などを頼って、職場で自分が孤立しないようにしましょう。

参考記事:障害者枠で公務員になるには

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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