MSPA(発達障害の要支援ガイド:Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD)

支援が必要な発達障害の特性が分かる検査
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MSPAとは?

MSPAは「診断」ではなく「支援」を目的に、生活現場でのニーズを重視した評価尺度で、京都大学の船曳康子先生が開発しました。「エムスパ」と読みます。MSPAは発達障害*の診断のために用いる、というよりも、本人の特性を生活上の困難さという視点で整理し、適切な支援につなげるための検査であると考えられます。

診断前でも検査を受けることができます。むしろMSPAは、診断までに長期の待機時間を必要とする発達障害診療の現状を改善すべく、「診断ありき」の遠回りな支援を打開し、個人の特性の評価を通して生活の中で可能な支援をできるだけ早く開始するために開発されました。

MSPAは専門家が一方的に評価するものではありません。検査を受ける当事者に関する多角的な情報を収集しながら、検査者と当事者が共同で特性チャートを作成します。また、検査を受ける当事者だけでなく、養育者、学校の先生や会社の上司など当事者と日常的にかかわる人にも情報提供をしてもらいながら評価します。聞き取りの情報には、成育歴なども含まれます。

検査の対象は幼時から大人まで幅広く、その人の生来の特性、生涯にわたり変動しにくい部分を様々な情報から抽出して評価します。そのため、どの年齢で検査を受けたとしても、基本的には評価に大きな変動は起こりません。

ポイントは、「診断名」をベースにせず、本人の特性を支援の必要性という観点で示すことができるという点です。MSPAを「共通言語」として本人や周囲の支援者・支援機関がスムーズに連携することができます。また、MSPAの結果を本人のライフスタイルが変わる際(例えば進級・進学など)に引き継いでいくことは、切れ目なくニーズに応じた支援を受けるために役立ちます。

MSPAは診療報酬450点です。関心のある方はお近くの発達障害の診断ができる医療機関にお問い合わせください。評価には専門的な知識が必要で、かつ、現状では専門の研修会を受講した方が扱うことができます。

MSPAで示される困りごとの項目

MSPAでは障害のある当事者が困りやすい要素とその要支援度をレーダーチャートで示します。

チャートは、「コミュニケーション」、「集団適応力」、「共感性」、「こだわり」、「感覚」、「反復運動」、「粗大運動」、「微細協調運動」、「不注意」、「多動」、「衝動性」、「睡眠リズム」、「学習」、「言語発達」、の全14項目で構成されています。

各項目は自閉スペクトラム症にかかわるもの、運動にかかわるもの、注意欠如・多動症にかかわるもの、それ以外のものにわけることができます。

各項目は大きく5段階(①気になる点はない、②多少気になる点はあるが通常の生活環境において困らない、③本人の工夫や周囲の一定の配慮で集団生活に適応する、④大幅な個別の配慮で集団生活に適応する、⑤集団の流れに入るより個人単位の支援が優先され、日常生活自体に特別な支援が必要となる)で評価されます。

発達障害のある人の場合、診断名は同じでも、人によって特性は様々です。特性ごとに項目がわかれていることで、診断名にこだわらない本人の特性理解が可能です。

MSPAの結果をどのように活用する?

例えば、船曳先生監修の書籍で紹介されている、就労移行支援の現場での活用例を見てみましょう。

まず、MSPAでの評価のために成育歴や他の心理検査の所見、二次障害等の状態、さらに本人の就労観、就労場面での特性が関連したエピソードなどの情報を収集します。情報収集ののちに専門家がMSPAを評定し、評定内容を本人にフィードバックします。このフィードバックの中で、本人が自分の生活上の困りごとや自分にとって働きやすい環境、職場で必要な配慮などを整理することで、自己理解を深めることができます。

繰り返しになりますが、MSPAは発達障害の診断のためのツールというよりも、生活の中の困りごとを整理し、適切な支援に役立てるための道具です。結果はレーダーチャートで視覚的にもわかりやすいので、検査を受けた本人はもちろん、家族や職場の上司などのご本人とのかかわりが深い方に結果を共有することで、共通理解のもとでサポートをすることができます。

【参考】船曳康子(著)MSPA(発達障害の要支援度評価尺度)の理解と活用.勁草書房.2018

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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