療育手帳とは?対象者や等級の判定基準、申請までの流れと取得メリットを解説

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知的発達症(知的障害)の方が療育手帳を取得したいと思っても、福祉関係の手続きは条件が多く複雑になりがちで、手続きの進め方などでつまづいてしまうもの。申請前に、療育手帳の概要や手続きの流れを知っておくと安心です。療育手帳を取得するメリットもあるので、事前に知っておくと役立つでしょう。

そこでこの記事では、療育手帳の対象者と判定基準、取得するメリットや申請までの流れを分かりやすく解説します。

療育手帳とは

療育手帳とは、3種類ある障害者手帳の1つです。違いをまとめたのが以下の表です。

療育手帳身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳
対象者知的発達症(知的障害)のある方視覚や聴覚、肢体などの身体的な障害のある方うつ病や統合失調症、発達障害*といった精神障害を持っている人

療育手帳の対象となる知的発達症(知的障害)とは、知的能力と社会生活への適応機能が年齢に対して遅れた水準にとどまる障害です。知的発達症(知的障害)はおおむね18歳までに発症するため、多くの人は子どものうちに療育手帳を取得します。

ちなみに「療育手帳」は、自治体によって異なる名称が用いられている場合があります。例えば横浜市や東京都では「愛の手帳」、青森県や名古屋市では「愛護手帳」など名称はさまざまです。

療育手帳の対象者

療育手帳の交付対象になるのは、児童相談所または知的障害者更生相談所において知的発達症(知的障害)があると判定された方です。対象者が18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所の管轄になります。

このとき、知的発達症(知的障害)の診断は医療機関で行われますが、診断内容を踏まえたうえで福祉的な視点も加味し、管轄の児童相談所または知的障害者更生相談所が改めて判定を行います。これは、知的能力と日常生活における活動能力が必ずしも並行せず、援助内容の決定に個別判断を要するためです。

発達障害の方は取得できる?

療育手帳の対象者はあくまで知的発達症(知的障害)がある方に限られます。発達障害であっても知的な遅れを伴わない場合は精神障害者保健福祉手帳のみ対象になります。

ただし、発達障害の方で知的な遅れも伴う場合は療育手帳も取得可能です。精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の両方の交付条件を満たしていれば、2つの障害者手帳を取得することもできます。

療育手帳の等級の判定基準

療育手帳は必要な支援内容を決めるために、障害の程度や特性に応じて「A(重度)」と「B(それ以外)」に区分されます。AとBの判定基準は以下のとおりです。

  • Aの判定基準
    ①知能指数がおおむね35以下であって、次のいずれかに該当する者
    ・食事、着脱衣、排便および洗面等日常生活の介助を必要とする
    ・異食、興奮などの問題行動を有する
    ②知能指数がおおむね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者
  • Bの判定基準
    Aの判定基準に該当しないが知的障害がある者

判定基準は自治体によってさらに細分化されている場合があります。例えば東京都では1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)の4段階、大阪府ではA(重度)、B1(中度)、B2(軽度)の3段階に区分されています。

このような地域における違いは、認定基準に差が生じたり、統計情報の正確性を欠いたりといった問題につながっています。この現状は厚生労働省でも課題に挙がっており、療育手帳の基準統一化に向けて調査検討が進められています。

療育手帳を取得するメリット

療育手帳を取得すると、主に以下のようなメリットがあります。

  • 障害に合わせた配慮や支援を受けやすい
  • 障害者控除など税金の優遇がある
  • さまざまな割引制度を利用できる

それぞれ詳しく解説します。

障害に合わせた配慮や支援を受けやすい

療育手帳は知的障害があることを証明できるため、障害に合わせた配慮や支援をスムーズに受けられるようになります。療育手帳がない場合、必要な支援を受けようとしたときに、その都度、医師の診断書や意見書などを求められるのが一般的です。療育手帳があれば、こうした手間と時間をなくせます。

例えば、ハローワークで障害者向けの求人(障害者雇用)に応募する際は、障害者手帳が必要です。療育手帳を示せば、障害者雇用について知識や経験を持ったスタッフに相談に乗ってもらい、障害者雇用の求人を紹介してもらったり、障害の特性に向く職種についてアドバイスを受けたりできます。

また、就労支援制度の利用も可能です。就労支援制度とは、障害を持つ人を支援する制度の1つで、就職に必要な訓練や日常生活の指導、就労先の紹介などを通じて一般就労を目指せる制度です。こちらの制度は必ずしも障害者手帳を必要としませんが、障害者手帳があればスムーズに利用を開始できるでしょう。

障害者控除など税金の優遇がある

療育手帳を取得すると、所得税法において障害者控除を受けられます。給与やアルバイトなどの所得から障害者控除分を差し引けるため、所得税や住民税、健康保険料などが少なくなります。

控除額は以下のとおりです。療育手帳の「それ以外(B)」の方は障害者、「重度(A)」の方は特別障害者です。また、特別障害者の子どもを育てている保護者の方などは同居特別障害者として控除を受けられます。

区分控除額
障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者75万円

出典:国税庁「No.1160 障害者控除」

このほか要件を満たすと、以下のような税制優遇を受けられます。

  • 相続税の額から一定の金額を差し引ける相続者控除
  • 一定額の預貯金に対する利子が非課税となるマル優(少額預金等利子非課税)制度
  • 自動車税(軽自動車税)環境性能割・自動車税種別割の減免

さまざまな割引制度を利用できる

療育手帳を取得すると、以下のような割引制度を利用できます。割引制度は自治体によって違いますので、行政のホームページで最新情報をご確認ください。

【横浜市の例】

A1(最重度)A2(重度)B1(中度)B2(軽度)
鉄道運賃の割引
運賃の割引(バス・地下鉄)
バス・地下鉄特別乗車券の交付
タクシー料金の割引
福祉タクシー利用券の交付××
有料道路通行料金の割引××
運賃の割引(国内航空)
水道料金等の減免××
NHK受信料の免除(非課税世帯)

参考:横浜市「愛の手帳」

障害者雇用に応募できる

障害者雇用とは、障害者手帳を取得している方を対象に、一般雇用とは別枠で企業や自治体が障害のある方を雇用することです。あらかじめ職務内容や職場環境などの条件を調整できるので、一般雇用よりも負担の少ない働き方ができます。

ただ障害者雇用の場合、負担が少ない分専門性のある仕事や責任のある仕事に就きにくい場合があります。

Kaienの就労移行支援ではこの課題を解決するために、200以上の企業と連携した多様な求人情報を提供しています。コンサルやIT・ハイテク、金融・保険といった専門性が高い業界への就職実績もあり、給与額は3人に1人が20万円以上を受け取っています。

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療育手帳の取得にデメリットはある?

療育手帳の取得によるデメリットは特にありません。取得によって多くのサポートを受けられるようになりますが、取得でサポートを失うようなことはありません。

なかには障害者であることを周囲に知られることを不安に思う方がいるかもしれません。しかし、療育手帳の取得は外部から通知されることはなく、あくまで自分が伝えなければ他者が知り得ることはありません。

取得のデメリットを強いて挙げるとすれば、手続きのために医療機関や行政窓口などへ行く必要があったり、2年おきに更新が必要だったりといった手間がかかることです。とはいえ、取得によって受けられるようになるメリットと比べれば、デメリットというほどではないでしょう。

療育手帳を取得するまでの流れ

療育手帳を取得する手順は、大きく分けると以下の3ステップです。

  • 自治体の窓口で申請する
  • 療育手帳の判定を受ける
  • 療育手帳を受け取る

各ステップを解説します。

必要書類を用意して自治体の窓口へ申請

まずはお住まいの市区町村の役所に行き、療育手帳の申請が可能なのか、どのような手続きや書類が必要かを確認しておきましょう。自治体によって必要な書類や記入方法が違うため、いきなり申請しに行くのではなく、一度相談したほうがよいでしょう。

申請することになった場合は、自治体の指示に従い、主に以下の書類を準備します。

申請書・「療育手帳交付(再交付)・再判定申請書」など・自治体によって書類や記入方法が異なる
証明写真・縦4cm×3cm・カラーまたはモノクロ
身分証明書・マイナンバーカード、保険証やパスポートなど
その他・母子手帳や幼少期の様子がわかる資料

マイナンバー法の改正により、2023年2月から療養手帳はマイナンバーに連携されるようになりました。手帳の取得を希望する方のマイナンバーカードまたはマイナンバー(個人番号)を確認できる書類と、申請者の身分証明書の両方を持参してください。

療育手帳の判定を受ける

申請が受理されると、療育手帳の対象者かどうかの判定を受けます。判定を受ける場所は、18歳未満の人は児童相談所、18歳以上の人は地域支援室が基本です。

判定を担当するのは精神科医や心理判定員、小児科医などの専門家です。これらの専門家から知能検査や心理検査、本人との面談、保護者からの聞き取りなどを受け、通常、数時間程度で終了します。保護者の方が準備しておくことは特にありませんが、発育状況や現在の困りごとなどをまとめておくとよいでしょう。

その後、専門家同士が話し合い、必要に応じて主治医にヒアリングしたり、幼稚園や学校などに出向いて様子を聞いたりするなどして総合的に審査された結果、交付の可否と等級が決まります。

療育手帳を受け取る

審査の結果が出ると、本人または保護者宛てに連絡が入ります。審査結果が出るまでには、申請から2ヶ月〜3ヶ月程度かかると考えておきましょう。

交付が認められたら、福祉課窓口や福祉保健センターなど指定の窓口に出向いて療育手帳を受け取ります。この際、利用できるサービスや割引制度などについても聞いておくとよいでしょう。

なお、交付が認められなかった場合にも通知が届くので、あまりにも遅い場合には問い合わせをしてください。

療育手帳の利用期限と更新方法

療育手帳は原則2年ごとの更新が必要です。申請から判定まで2〜3ヶ月かかる場合もあるので早めに手続きをしておきましょう。多くの自治体では2〜3ヶ月前から更新を受け付けています。

このとき18歳以上の人に限っては、障害の状況からみて再判定までの期間を2年以上としてもよいことになっています。実際に自治体によっては再判定までの期間を長くとっている場合があります。

ちなみに、更新時には障害の程度の再確認が行われるので、更新に伴って療育手帳の等級が変わる可能性があります。

必要に応じて療育手帳の取得を検討してみよう

療育手帳は知的障害のある方が利用できる制度です。療育手帳を取得すれば、さまざまなサービスや割引、税制優遇などを受けられます。デメリットは特にありませんので、要件を満たせそうな場合はお住まいの市区町村の窓口に相談に行くとよいでしょう。

療育手帳をお持ちの方が利用できる制度の1つが、本記事でも紹介した就労移行支援です。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


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