仕事や人間関係などにおいて強いストレスが溜まると、適応障害を発症して日常生活に支障をきたしてしまう場合があります。適応障害の改善には、ストレスが溜まる環境から離れることが必要です。しかし休職や転職をするとしても、また働き始めて症状が現れたらどうしようと、不安に思う人もいるかもしれません。
本記事では、適応障害の概要や仕事の困りごとや対策方法について解説します。向いている仕事を探すためのポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
適応障害とは
適応障害とは、仕事や人間関係などでストレスが溜まることにより、心身のバランスが崩れて日常生活に支障をきたしている状態を指します。残業時間が月100時間を超えるなど、過酷な労働条件やハラスメントが横行している職場環境等に身をおいている場合は要注意です。
こうした心身に負荷がかかる環境で仕事を続けると業務効率も下がり、ミスやイライラなどにより業務に悪影響を及ぼす可能性があります。これらがさらにストレスとなり、症状が悪化する場合もあるため、症状が出始めたら早めの休養や医療機関への受診が重要です。
適応障害の原因と症状
適応障害は、遺伝と環境要因により引き起こされると言われています。つまり本人のストレス耐性とストレス度合いから、許容範囲以上にストレスがかかった場合に適応障害になると考えられます。
適応障害の代表的な症状は以下の通りです。
- 憂うつな気分が続く
- 不安が強くなる
- 不眠や食欲不振
- 倦怠感
- 自尊心の低下
これらの症状はストレスのかかる環境から離れることで改善されるケースがほとんどです。仕事や職場環境にストレスを感じている場合、無理をして働き続けると症状の悪化を招く恐れがあるため、まずは休養を心がけましょう。
適応障害と発達障害の関連性
ストレスのある環境から離れたにも関わらず、あらゆる状況でくり返し適応障害になってしまう場合、その適応障害は二次障害の可能性があります。二次障害とは、元々ある病気の影響により引き起こされる二次的な障害のことです。
適応障害の場合は、発達障害*が関連している傾向にあります。発達障害とは生まれつき一定の特性を持つ精神障害の一種で、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)などが挙げられます。
これらの障害はコミュニケーションやうっかりミスが多いといった障害の特性により、職場で浮いてしまったり、必要以上にストレスを感じてしまったりするケースが少なくありません。こうしたストレスが適応障害を引き起こすトリガーとなるため、適応障害の治療だけでなく、発達障害など二次障害の要因となる病気への対処も必要です。
ただし、二次障害である適応障害の症状が重い場合には、発達障害の特性に対するアプローチより先に、適応障害への対応を優先することが重要になります。
適応障害の治療
医療機関を受診して適応障害と診断された場合、治療はストレスを軽減させ、心身を回復させるのが優先です。そのため仕事を続けている場合には、休職など休養を勧められることもあるでしょう。また、必要に応じて薬物療法を行うこともあります。
また、職場復帰の支援としてリワークの利用を勧められるケースもあります。リワークは医療の一環であり、症状の改善や再発の予防を目的として行われる支援の総称です。自己管理や生活リズムの構築などをサポートし、困りごとに対する解決策やストレスの対処法を習得する作業訓練やプログラムが実施されます。
適応障害に関しては、ストレス要因から離れてゆっくり心身を休めることが改善への近道です。まずは適切な休養をとり、就労に対する意欲が戻ってきたら、復職や転職などを視野に考えてみましょう。
適応障害により生じる仕事の困りごと
適応障害のまま仕事を続けている場合、抑うつや集中力の低下などにより、作業中のミスや人間関係のトラブルが起こりやすくなります。また、不眠や倦怠感などの身体的な症状が現れると出社自体が困難になり、働き続けることが難しくなるケースも少なくありません。
適応障害はストレスにより症状が引き起こされるため、まずは職場や業務の何にストレスを感じているのか、傾向を探る必要があります。ストレス要因に対する自己理解を深め、適切な対処法をとるようにしましょう。
適応障害の方に向いている仕事はない?
適応障害で就労から離れた場合、次こそは自分に向いている仕事を見つけて働きたいと思うでしょう。しかし、適応障害に向いている仕事というものは、そもそもありません。
適応障害というのは本来、不適応になった場所(職場)から離れれば改善されるものです。ストレスのある環境から離れても困りごとが解消されない場合は、発達障害など生まれつきの特性によるものと考えられます。
つまり、適応障害に向いている仕事ではなく、生まれつきの特性に合わせた働き方や向いている仕事を選ぶことが大切なのです。
適応障害の方の働き方や配慮の求め方のポイント
適応障害が二次障害である場合や、ストレスを感じやすい人の場合、働き方の工夫や適切な配慮が必要になります。適応障害の方の困りごとや症状は人それぞれ異なりますが、一般的な働きやすい環境として、以下が挙げられます。
- 人間関係のストレスが少ない
- 自分のペースで働ける
- 障害に理解がある
例えば上記を満たす働き方としておすすめなのが、在宅ワークや裁量制の仕事です。職種であれば、単純作業やコミュニケーション機会の少ない事務職や製造業などは、働きやすいと感じる人が多いでしょう。
ただしこれらはあくまで一例であり、すべての人に当てはまるわけではありません。自分の症状や特性を考慮し、無理なく続けられる仕事や働き方を選んでください。
適応障害の方の仕事探しは就労移行支援の利用がおすすめ
自分に合っている仕事が分かっても、実際に職探しとなると工数も多く、適応障害の症状がありながらの就活は困難を極めます。そんなあなたにおすすめなのが、就労移行支援サービスの利用です。
就労移行支援とは、障害のある方を対象に就労全般をサポートする支援サービスであり、全国各地にある就労移行支援事業所で行っています。通所型で原則2年間という期間が設けられていますが、あらゆる職業を体験できる職業訓練や就活支援などにより、適職に出会うチャンスや可能性が広がるのは大きなメリットでしょう。
就労移行支援事業所は、力を入れているサポート内容や得意分野などがそれぞれ異なります。雰囲気やスタッフとの相性も含めて、見学などを通して自分に合った就労移行支援を検討してみましょう。
就労移行支援のサポート内容
Kaienは発達障害に特化した就労移行支援を実施しています。適応障害が二次障害の場合は、生まれつきの特性に対するアプローチも大切です。Kaienは50人以上の発達障害の方の支援経験のあるスタッフや、社会福祉士などの有資格者等、障害に対するあらゆる専門知識と経験を持つ支援員があなたの特性に合わせたサポートを行います。
Kaienの主な支援内容は以下の通りです。
- 100職種を超える職業訓練
- 独自の充実したカリキュラム
- 豊富な求人を扱う就活サポート
- 手厚い定着支援
適職に出会うためにはまず、さまざまな職種と出会い、経験を積むことが大切です。Kaienの職業訓練は、一般職から専門職まであらゆる実践的な職種を体験できます。
困りごとに対するスキルの習得やビジネスマナーを学ぶ講座など、カリキュラムが充実しているのも魅力です。就活においても、障害に理解のある200以上の企業と連携し、他社にはない独自求人を含む豊富な求人を取り揃えています。
就職後も、働いてから生じる生活や仕事の悩みに親身に寄り添い、職場との橋渡し役となってあなたをサポートします。
また、希望がある場合にはリワークの利用も可能です。就労移行支援の場合、就労後のサポートまで一貫して行うため、職場復帰が定着しやすいのもメリットです。まずはKaienの雰囲気やサポート内容をより知っていただくため、ぜひ見学会や体験会にお越しください。すべて無料で随時開催されていますので、ご連絡をお待ちしております。
就労移行支援で自分に合った仕事探しを!
適応障害がある場合は、ストレスのある環境から離れて心身ともにゆっくり休むことが大切です。ストレス要因から離れたにも関わらず、適応障害が改善されない場合は、発達障害などの生まれつきの特性が関係している可能性があります。
特性に合わせた困りごとの対処法や、自分に向いている仕事を探すには就労移行支援の利用がおすすめです。休養をとって就労に対するモチベーションが高まったら、ぜひ利用を検討してみましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
監修者コメント
適応障害はコラム本文にありましたように、特定の原因(例:仕事のノルマがきつすぎる、上司との人間関係)によって不安、不眠、抑うつ気分などの精神症状が起きるものです。ですので、休職したり異動したりすることで「理論的には」問題解決が図れます。
ここで「理論的には」と括弧つきにしたのは、環境を変えても症状が良くならない方がいるからです。この場合、適応障害より深いところにあるこころの問題を探る必要があります。昔はパーソナリティ障害といって、思春期ごろに形成された認知行動のパターンが原因で、どこに行ってもだれと会ってもうまくいかないのではないか、と考えられた時代がありました。思春期の育て直しとしての精神分析が1960-70年代に流行したのは、そういう背景があったのです。
現在はパーソナリティ障害の頻度は低くなり、代わりに発達障害が大きな問題となっています。なぜ発達障害が増えているのか、はっきりした原因は分かりません。電子メールやSNSによって他人とのコミュニケーション様式が変わったことに原因を求める考え方もあります。名古屋大の鈴木國文教授はアンディ・ウォーホルを発達障害の時代の先駆けと捉え(2021/3/26、愛知医科大学精神科学講座コラム)、ウォーホルのように頑なに自分の過去を語らず、既製品(例えばキャンベルのスープ缶)を使って繰り返しキャンバスに描いていく方法が、現代社会を見越した表現様式だったと述べていらっしゃいます。
話が脱線してしまいましたが、ご自身の診断について良く主治医にお聞きになって、仕事探しに役立ててくださいね。
監修:中川 潤(医師)
東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。