Kaienで実施しているプログラムの一つである『ようこそ先輩』は、Kaienの就労移行支援を修了し、実際に働かれている先輩方の生のお話を聴ける会です。本記事は、そのインタビュー動画の内容を編集し、記事にまとめています。
今回取り上げるのは、「撮り鉄」「乗り鉄」「模型鉄」の3つを制覇している大の鉄道好きのkz.鉄道先輩。困難さを感じながらも、希望の会社への就職、現在の職場での定着を実現しているその真相について、詳しく伺いました。
インタビュー実施日:2024年4月6日
普通と違うと思っていたら発達障害*でした
子どもの頃から周りからは変わった人、独特な人と言われていました。苦労したのは、対人関係です。社会人になった今でもそうなのですが、自分は発言内容がとげとげしくなってしまったり、極端な考えを持っていたりするので、度々人と言い合いになることがあります。過去には、仲良かった友達のことを誤解し、仲たがいしてしまうこともありました。
障害について分かったのは、2018年5月頃。今から6年くらい前です。当時、私は一般枠で就職活動をしていたのですが、面接で苦戦してしまい、受けた企業すべてからお祈りメッセージが届きました。そこで何かおかしいなと思って、自分はもしかして普通とは違うのではと気になったんです。その後、心療内科で診察を受けたら、医師からASD(自閉症スペクトラム)という診断を告げられました。
知った時は、正直やっぱりねと思いました。けど、意外とすんなり受け入れることができたんです。おかしいなという違和感は、当たっていたんだなと思いましたね。
私の特性は、大きく分けると2つあると思っています。まず1つ目は、ひとつのことに集中すると、時間を忘れてしまうほどに没頭してしまうこと。2つ目は、周囲の状況を把握して、適切な行動を取るのが難しいことです。
特に2つ目の特性は、急に話に割り込んでしまったり、相手の気持ちや状況を考えずに自分が思うままに言葉にしてしまったり、というようなところがあります。おそらくこのことが、当時面接が上手くいかなかったことに関係しているのではと思っています。
職業訓練の経験が今の仕事に活きている
職業訓練を始めたのは、やっぱり就活が上手くいかなかったことがきっかけです。その時に自分が発達障害だということが分かったので、もっと自分に合った仕事を見つけたいと思ったんです。
あと、私はもともとKaienのガクプロ(Kaienが実施する大学生・専門学校生向けの就職支援プログラム)を利用していて、そこで自己分析や就職活動の仕方、ビジネススキルなど、いろいろなことを学びました。
また、就労移行の方にいくと職業訓練があることはもちろんですが、履歴書添削や面接対策などを経験豊富な講師の方々が対応してくださることがとても良いと思いました。
職業訓練の中で特に印象に残っているのは、「オンライン店舗」という業務です。いらなくなった雑誌や本を取り扱っていて、検品作業や梱包、送り状の作成、棚卸などを行いました。ちなみに現職では在庫管理などを行っているのですが、オンライン店舗の経験がすごく役に立っていると感じています。
苦手なことに真摯に向き合うことが成功の秘訣
――当時の就活の軸を教えてください。
一番は職業訓練との整合性です。訓練で学んだことをそのまま活かせる仕事が良いと思いました。実習でも、「訓練での経験が通用するか」という視点を持って、それを確認しながら取り組んでいました。そういったことが結果的に今の仕事につながっています。
――就活でやっておいて良かったことはありますか?
面接対策と履歴書の添削です。
面接においては、まず自分は本当にコミュニケーションが苦手で、特に言葉選びが上手くできません。本番で面接官に対して失礼な回答をしてしまって、それで誤解を生んでしまうのが嫌だったので、毎回講師の方に言動を細かくチェックしてもらっていました。
履歴書の添削は、していただいて本当に良かったと思っています。自分だけで書くと誤字脱字が多くて…。実際に読み返してみるとよく分からない部分もありました。その度に経験豊富な講師の方に見てもらい、適切な言葉に修正していただきました。
――就活で苦労したことは何ですか?
やっぱり面接ですね。特に面接官の質問に対して、適切な言葉を選びながら回答することに非常に苦労しました。しかし、練習を繰り返し行ったことによって、本番の面接でもスラスラと言葉が出るようになり、失礼な言葉を使うことはなくなりました。
失敗を素直に認められる人が成長していける
今の会社は、2024年4月1日で入社5年目に突入します。初めの3年間は契約社員だったのですが、4年目からは晴れて正社員になることができました。
通常なら、2年の契約後に正社員登用になるところ、当日はコロナによる業績不振の影響で1年契約期間が延長になったのです。しかし、それでも真面目に働き続けた結果が今につながっています。
働いている会社は、衣料品や雑貨系統のものを取り扱っています。そこで私は、店舗展示用の備品の梱包や出荷、店舗から返された備品の荷受けや在庫管理などを担当しています。
――現職に決めた理由は何ですか?
少し前にお話しましたが、今の仕事は職業訓練で取り組んでいた内容を活かせる仕事だったからです。職業訓練での経験のおかげで、業務スキルの部分でも就活でアピールすることができましたし、そのことが内定につながったひとつの理由だと思っています。
――職場での配慮事項について教えてください
今の職場では、想定外なことが多く起こります。例えば急に備品の出荷依頼があったり、これ今日中に出しておいてみたいなことだったり。私は突発的なことに対応することがあまり得意ではないので、その時は気持ちを落ち着かせるための時間をいただいています。
また、配慮事項とは少し異なりますが、会社側が毎週末に一度1on1を設定してくださっていて、そこで仕事中の様子や言葉遣いなどの振り返りを行っています。フィードバックをいただけるので、非常に役立っています。その他にも、ジョブコーチの方とも月1で面談をすることができます。
――働いていて嬉しかったこと/やりがいに感じたこと、逆に苦労したこと/辛かったことがあれば教えてください
嬉しかったことは、入社して3年目の時に、作業スピードが入社直後よりも速くなったと褒められたことです。自分にとってのやりがいになりました。スピードが速くなったのはシンプルに慣れだと思いますね。
苦労したことは、ミスを素直に受け入れることです。入社して1年目から2年目の間までは、まだ学生気分が抜け切れていなくて…。仕事でミスをした時にそれを認めることができず、ふて腐れた態度を取ってしまうようなことがありました。たぶんかっこつけている部分があったのだと思います。
けど、途中から素直にミスを認めないことは、自分にとっても良くないことに気が付いたんです。それからは。自分がミスをした時は、「すみません」「気を付けます」と素直に謝り、次の作業をする時はミスを繰り返さないように意識するようになりました。
自身の努力と周囲の協力でさらなるステップアップへ
――働く上で日頃から心掛けていることはありますか?
やっぱり自分がミスをしてしまった時は、素直に受け入れることですね。
あとは、作業をする上で確認しておきたいことがあれば、必ず質問をするようにしています。今でもそうなのですが、私は周りに確認をせずに独断で行動をしてしまうところがあります。それを減らすためにも、「質問・確認」をすることを心掛けています。
――3年後、5年後の目標はありますか?
まずは、自分の苦手、主に言葉遣いや仕事中の集中力をさらに改善していけるようにしたいです。あとは、周りの社員と上手くコミュニケーションを取りながら、協力して業務に当たれるようにしたいです。加えて、今の仕事に対して、ありがたさを感じながら働けるようになりたいですね。
――最後に皆さんに向けてメッセージはありますか?
私は就職活動は、”探検”と”冒険”だと思っています。Kaienでの職業訓練やスタッフ、講師から学んだ知識やスキルを自分のリュック(脳)に入れて、本当に働きたいという意思を持って面接と実習に臨めば、必ず努力は報われます。これから面接と実習を控えている訓練生の方はぜひその意思を持って臨んでいただき、無事に内定をもらえるように頑張ってほしいです。心より応援しています。
所属拠点:Kaien東神奈川
利用期間:2019年2月~2020年5月
※インタビュー内容については、表現を一部改変しています
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています
~付録~
Kz.鉄道先輩自らが撮影し、提供してくださった鉄道と模型のお写真です。