難病・指定難病とはどんな病気?仕事探しのポイントや利用できる就労支援制度を解説

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難病のある方が仕事を探す際、治療と仕事を両立できるのか、どの程度の勤務時間が適切なのかと悩むことも多いでしょう。無理なく働ける未来を実現するためにも、就労支援機関などを上手に活用しながら自分に合った仕事を探すことが大切です。

この記事では、難病と指定難病の定義や、難病のある方が仕事を探す際のポイント、利用できる就労支援機関などを紹介します。

難病とは

難病とは、発病した場合に長期間の療養が必要となる、治療法の確立していない病気の総称です。発病のメカニズムがまだ解明されておらず、難病は完治が難しいといわれています。ただし、定期的な通院や服薬などにより軽症を維持している方も少なくありません。

2015年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」、いわゆる「難病法」が施行されました。難病法において、難病は以下4つの条件を満たす病気として定義されています。

  • 発病の原因が解明されていない
  • 希少な疾患である(がんや精神疾患、アレルギーなど、個別の施策体系が確立している疾患は含まれない)
  • 治療方法が確立していない
  • 長期の療養が必要

指定難病とは

難病の中でも、難病法において医療費の助成対象に指定されている疾患を「指定難病」といいます。指定難病には、上記4つの難病の定義を満たしたうえで、さらに以下2つの要件を満たすことが求められます。

  • 本邦における患者数が一定の人数(人口の0.1%程度)に達しない
  • 客観的な診断基準(またはそれに準ずる基準)が確立している

患者数の多い指定難病

2024年4月時点で、341の疾患が指定難病に認定されています。そのうち、患者数の多い代表的な指定難病に以下の3つが挙げられます。

  • パーキンソン病
  • 潰瘍性大腸炎
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)

パーキンソン病は、筋固縮やふるえといった症状が出て体を動かしにくくなる疾患です。潰瘍性大腸炎は大腸や小腸の粘膜に生じた慢性の炎症や潰瘍により、腹痛や血便、下痢といった症状が持続します。全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫の異常によって関節炎や発熱、全身倦怠感などが起こりやすくなる疾患です。

発達障害は難病指定されている?

発達障害*の一種として、レット症候群が難病指定されています。レット症候群は生後6ヶ月~3歳頃までに自閉症状や退行現象などが見られる疾患で、発症するのはほとんど女児であることが知られています。

以前まで、レット症候群は広汎性発達障害に分類されていました。しかし、精神疾患の診断基準が最新のDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)になった際、レット症候群を除く広汎性発達障害が「自閉スペクトラム症(ASD)」として1つに統合されたのです。

その結果、レット症候群は自閉スペクトラム症と一線を画す、特殊な疾患として扱われるようになりました。ちなみに、自閉スペクトラム症には「自閉症」「アスペルガー症候群」「小児期崩壊性障害」「特定不能の広汎性障害」などが含まれています。

難病のある方が仕事を探すポイント

難病があっても、デスクワークなどを中心とした企業に勤めている方は少なくありません。しかし、仕事で無理をすると症状が悪化してしまう恐れもあります。難病のある方は、体の負担を考慮した働き方ができる仕事に就くことが、長く働き続けるためには重要です。

ここでは、難病のある方が仕事を探す際のポイントを2つ紹介します。

主治医や専門家に相談

難病のある方が仕事を探すときには、まず主治医や専門家に相談し、働ける状態なのかどうかを確かめることが大切です。検討している仕事の内容や具体的な勤務時間などを伝え、無理なく働けるのか、働ける場合はどの程度の休憩時間が必要なのかといったことを相談しましょう。

自己判断で仕事を始めた結果、安定していた症状が悪化する恐れもあります。適切な治療方針を立ててもらう意味でも、働きたいと感じたときはまず主治医や専門家に相談することが先決です。

利用できる就労支援機関を知る

難病のある方が、働きやすい職場を探すときに利用できるのが就労支援機関です。就労支援機関とは、障害や難病のある方の就職を支援したり、障害のある方を雇用する企業にサービスを提供したりしている機関のことです。

再就職や復職、転職を検討している場合には、利用できる就労支援機関を知り、積極的に活用してみましょう。

難病のある方が利用できる就労支援機関

就労支援機関では難病のある方の転職や再就職に向けて、職業訓練や職業紹介などの支援を行っています。就労支援機関の代表例として挙げられるのが、以下に挙げる5つの支援機関です。

ここからは、難病のある方が利用できる就労支援機関の特徴や、その支援内容について詳しく解説します。

ハローワーク(公共職業安定所)

求人紹介や雇用保険の手続きを実施しているハローワーク(公共職業安定所)では、難病のある方に対しても無理なく働ける仕事の紹介などを行っています。

難病のある方はハローワークに設置されている「難病患者就職サポーター」のサービスが利用できます。難病相談支援センターと連携を取り、難病のある方の就職や在職中に難病を発症した方の雇用継続などを支援します。面接に付き添う、企業への難病の伝え方を指導するといった形で、難病のある方の仕事探しをサポートしてくれるのが特徴です。

ただし難病患者就職サポーターはすべての安定所に配置されているわけではありません。そのため、利用予定の安定所に前もって確認しておくと安心です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方の就労に関する支援を行っている施設です。具体的には、専門的な職業リハビリテーションの提供や就職相談、職業能力を評価したうえでの支援計画の策定といった業務を実施しています。

地域障害者職業センターは各都道府県に配置されているため、近傍の施設で相談してみるとよいでしょう。

難病相談支援センター

難病相談支援センターは、難病のある方やそのご家族の相談に応じて必要な助言や支援を提供する専門機関です。難病のある方の療養生活を支え、維持向上することを目的としており、各都道府県と指定都市に設置されています。

難病相談支援センターでは、ハローワークなどと連携して難病のある方の就労を支援する活動も行なっています。専門機関ならではの細やかなサポートで、症状に合わせた働き方や疾患を管理する方法などについても助言してくれるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、就労や生活に関する総合的な支援を通して、障害や難病のある方の職業生活の自立・安定を目指す施設です。就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどと連携しながら、職業準備訓練や特性に合った職務選定といった形で就労支援を行なっています。

2024年4月現在、全国に337のセンターが設置されているので、お住まいの地域で通いやすいところを探してみましょう。

就労移行支援

就労移行支援とは就労を希望している、障害や難病のある方を支援する福祉サービスです。

就労移行支援事業所が全国に設置されており、難病のある方はそこで職業訓練や就活支援といったサポートが受けられます。それぞれの希望や症状に応じて個別の支援計画が立案され、無理なく働ける職場を紹介してもらえます。

難病のある方の就職が決まった後で、職場への定着をサポートするのも就労移行支援の一環です。事業所スタッフが定期的に職場を訪れ、困りごとはないか、ペース配分は適切かといったことを確認しながら、働きやすい環境になるようアシストします。

難病のある方の仕事探しは就労移行支援がおすすめ

Kaienでは障害や難病のある方を対象に就労移行支援を行っており、約2,000人の就職実績があります。Kaienの主な支援内容は以下の通りです。

  • 豊富なカリキュラム
  • 実践的な職業訓練
  • 障害に理解のある企業と連携した就活支援
  • 就職後も安心の定着支援

Kaienの独自カリキュラムは内容が豊富で、ビジネススキルやソーシャルスキルの育成から、ディスカッションを通してのキャリア・プランニングまで用意しています。職業訓練では100種類以上の職種が体験できるため、自分に合った仕事を見つけやすいでしょう。

またKaienでは、障害や難病に理解のある企業200社以上と連携しています。一人ひとりに担当カウンセラーがつき、サポートを受けながら充実した求人の中から働きやすい職場を探せるのが魅力です。

面接練習や職業訓練を経て就職した後も、業務上の困りごとや生活上の問題をサポートする定着支援を実施しています。症状に合わせた働き方ができる職場を探している方は、ぜひKaienをご利用ください。

無理せず働くために就労支援機関を有効活用しよう

難病のある方が仕事を探すときは、主治医や専門家に相談したうえで適切な働き方を検討することが重要です。問題なく働ける状態であれば、ハローワークや就労移行支援などの就労支援機関を活用して自分に合った就職先を見つけるとよいでしょう。

Kaienは職業訓練や就活支援といったサービスが充実しており、就業後も定期的な職場訪問などを通して職場への定着を支援します。無理せず働き続けるためにも、難病のある方は就労支援機関をぜひ有効活用してください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

難病・指定難病については医療費助成、障害者手帳取得や障害年金受給などの福祉制度が提供されています。もし難病・指定難病の診断を受けたら、主治医・スタッフ・ソーシャルワーカーなどにご相談いただき、これらのサービスを受けることをお勧めします。

心療内科クリニックで難病・指定難病の方の診療をすることはそれほど多くありません。メンタルヘルス領域で指定されている病気は、本コラムにもありましたレット症候群の他に多くのてんかんや前頭側頭葉変性症がありますが、いずれも症状が重く、身体疾患の合併があり、病院を受診されることが多いためです。

ただし、難病・指定難病を持つ方の就労支援は厚労省が力を入れており、今後もサービスの充実が期待されます。積極的に情報を取得して、ご自身に合った就労を目指しましょう。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。