リワークプログラムとは?内容や費用、メリットや効果などを解説

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リワークとは、「retern to work(復職)」の略語で、いわゆる和製英語です。リワークは、うつ病や適応障害など心の病気を抱える休職者の職場復帰を支援することを目的としています。。主に医療機関や公的機関などで実施されており、さまざまなプログラムがあります。

リワークプログラムの利用を考えている方は、実際にどのようなプログラムがあって、どれくらいの費用がかかるのかなど気になる点は多いでしょう。以下では、リワークの利用対象者やプログラムの内容、利用期間、利用するメリットなどについて詳しく解説します。

リワークプログラムとは?

冒頭でも触れた通り、リワークプログラムとは、うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの不調によって休職している人の社会復帰を支援するためのプログラムです。リワーク支援プログラムや復職支援プログラム、職場復帰プログラムともいいます。

医療機関や障害者職業センター、就労移行支援事業所などに通院・通所して支援を受けるか、あるいは所属している事業所内で受けることとなります。

リワークプログラムでは、職場復帰に必要となる下記のような点を強化・支援するプログラムへの参加が可能です。

  • 生活リズムの構築と体調や気分の自己管理
  • 基礎体力・集中力・持久力などの向上
  • ストレス対処法の習得など再発防止のための学習

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「休職者の職場復帰をサポートする職場復帰(リワーク)支援のご案内

リワークプログラムはどんな人が利用できる?

リワークプログラムを利用できるのは次のような要件を満たす人です。

  • うつ病などの精神疾患による休職状態であること
  • 本人、職場ともに復職の意思があり、リワークの支援を希望していること
  • 休職期間がおよそ半年以上であること
  • 回復期にあり、症状が安定していること
  • 服薬などの自己管理ができていること
  • 主治医が、対象者の職場復帰に向けての活動及び職業センターの支援を受けることを認めていること

満たすべき要件は、実施団体によって多少異なるため、利用の際には確認しましょう。

例えば、休職中の人だけでなく、退職・離職している人を対象にしているケースもあります。

また、地域障害者支援センターのリワークの利用では、雇用保険の加入者であることが条件となるため、公務員は利用できません。医療機関、就労移行事業所でのリワークは公務員でも利用可能です。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「2023年度メンタルヘルスセミナー メンタル不調による休職者の職場復帰について-そのポイントとリワーク(職場復帰)支援の実際-

リワークプログラムは大きく4種類に分けられる

リワークは、実施団体によって大きく4種類に分けられます。

  • 医療機関でのリワーク
  • 就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)でのリワーク
  • 障害者職業センターでのリワーク
  • 職場でのリワーク

詳しくは次の通りです。

医療機関でのリワーク

医療機関でのリワークは、精神科や心療内科といった医療機関が実施し、病状の安定や回復、再休職の予防などを目的とした医学的リハビリテーションが受けられるものです。

医療機関でのリワークの特徴は、医師、看護師、保健師、臨床心理士などの医療の専門家による心理療法や作業訓練が受けられることです。症状の改善や再発の防止、ストレス対処法について医学的・具体的な相談ができます。

就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)でのリワーク

就労移行支援事業所でのリワークは、福祉施設や民間機関などに通所して、職場で使える実践的なスキルの習得や就労に向けた相談、職場復帰後の定着のサポートを受けられるものです。

就労移行支援事業所のリワークの特徴は、休職中の方の復職サポートはもちろんのこと、現在仕事に就いていない人の就労サポートを主に手がけている点といえます。また、うつ病などの精神的な疾患を抱えた方だけでなく、発達障害*や身体障害など幅広い障害の方に対応している点も特徴といえるでしょう。

なお、障害福祉サービスでのリワークとしては、「自立支援(生活訓練)」も活用できます。

「自立訓練(生活訓練)」とは、障害のある方が自立した生活を送るための訓練を行う障害福祉サービスです。この自立支援(生活訓練)でも、同じようにリワークプログラムを利用できます。

障害者職業センターでのリワーク

障害者職業センターが実施するリワークは、職リハリワークとも呼ばれ、休職中の本人と雇用主、主治医の3者の意見をすり合わせて作成された職場復帰プランを受けることができるものです。

障害者職業センターのリワークの特徴は、障害のある方に向けた支援だけでなく、復職先の事業主に対しても支援をする点です。

なお、地域障害者職業センターは各都道府県に1カ所以上は設けられているものの、他のリワーク実施施設と比べて数が少なく、場所によっては通いにくいといった点や、公務員が利用できない点も特徴といえるでしょう。

職場でのリワーク

職場でのリワークとは、企業が所属する社員に対して実施するリワークプログラムのことです。

厚生労働省では、メンタルヘルス不調により休業した労働者に対する職場復帰を促進するためのマニュアルである「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を企業に周知させてきました。

このマニュアルの中で、厚生労働省は、企業に対し、休職者が通常業務へ戻るまでの流れを「職場復帰支援プログラム」として策定するように求めています。

そのため、例えば、自社内に医療機関や専門部署を持つ企業などでは、自社独自に職場復帰訓練制度を実施しているケースがあります。また、企業によっては、従業員支援プログラム(EAP)という従業員の精神的・身体的不調のケアを行うプログラムをアウトソーシングで導入するケースもあります。

リワークプログラムの期間はどれくらい?

リワークの期間は、実施団体の種類によって異なります。実施団体別のリワークの利用期間の目安は下記の通りです。

  • 医療機関でのリワーク:3~7ヶ月
  • 就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)でのリワーク:最長2年間
  • 障害者職業センターでのリワーク:4~6ヶ月

医療機関のリワークは、短い場合は数週間、長い場合は年単位といったケースも見られます。就労移行支援サービスは最長2年間、支援の継続が必要と認められればさらに1年延長が可能です。就労移行支援サービスは転職にも利用できるものですが、リワークに利用する場合は、数ヶ月の利用で復職となるケースも多く見られます。

参考:

一般社団法人日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムとは

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「リワーク支援の利用に関するQ&A

代表的なリワークのプログラム内容

リワークでは一体どのようなプログラムが行われているのか気になっている人も少なくないでしょう。以下では、代表的なリワークプログラムの内容を解説します。

自己分析

自己分析は、自分の症状や体調について、自身でチェックし管理する能力を身に着けるための方法です。

提供されるチェックシートなどを使って、日々、どのような場面で自分がストレスを感じやすいかを把握します。ストレスを感じやすい原因を探るとともに、なぜストレスと感じるのか自分の考え方の癖も探り、さらには、なぜ休職にいたったのかという原因も見極めていきます。

自分のストレス要因や考え方の癖を知り、再び休職をしないための対策を考えて実行するためにも、この自己分析が重要といえるでしょう。

認知行動療法

認知行動療法とは、物の捉え方や考え方といった「認知」に働きかけてバランスを取り、ストレスを軽減し気持ちを楽にする方法です。

ストレスを感じる出来事が起きた際には、「頭に浮かんだ考え(認知)」、「気持ち(感情)」、「体の反応(身体)」、「振る舞い(行動)」という4つの側面で影響を受けます。このうち、自分の意思でコントロールできるのは、「認知」と「行動」の部分です。

特にこの「認知」について、柔軟性に欠けた極端な考え方にとらわれていると、感情に悪影響を与えストレスを感じてしまいます。認知行動療法ではこの極端なとらえ方をしている認知を、柔軟に変えていくことで改善を図ります。

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ソーシャルスキルトレーニング(SST)

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、「Social Skills Training(社会生活技能訓練)」のことで、認知行動療法の一つです。SSTは、主に対人関係についての認知に働きかけ、コミュニケーション能力の向上を図ります。

例えば「こんなシチュエーションではどうすればいいの?」ということを学ぶために、実際にグループワーク形式でその場面を設定し、お手本を見ながら真似をして学びます。グループワークのため、参加者同士で互いの物事のとらえ方についてフィードバックができ、広い視野で物事をとらえられるようになります。

オフィスワーク・オフィストレーニング

オフィスワーク・オフィストレーニングとは、復職後の業務に似た作業内容や環境で作業訓練を行うことです。

例えばパソコンを使ったデスクワークや軽作業など、職場で行う業務に近い作業を行い、集中力、正確性、作業耐性などを高めます。スキルアップや資格取得に向けた学習も可能です。

集団での行動となるため、人と接することに慣れるほか、一定の場所に通所・通院することで、通勤に向けた訓練にもなります。

グループワーク・レクリエーション

グループワーク・レクリエーションとは、数人のグループで共同作業の業務やスポーツやゲームといったイベントに取り組むことです。

集団での仕事や余興に取り組むことで、メンバー同士の関係性に配慮して行動する対人スキルや、意見をうまく伝えたり聞き取ったりするコミュニケーション能力を養えます。また、スポーツなどのレクリエーションは体力の向上やストレス解消にも役立ちます。

キャリアデザイン

キャリアデザインとは、自身の今までのキャリアを振り返り、今後どのようなキャリアを形成していくか考えるプログラムです。

これまでの仕事で培われたスキルや自身の特性を改めて確認し、これからどのような仕事にどのような姿勢で取り組み、職業人生を築き上げていきたいかを明らかにしていきます。

キャリアデザインは、一般的にスタッフと1対1で行われ、アドバイスを受けながら進めます。

リワークプログラムにかかる費用はどれくらい?

リワークにかかる費用は、リワークの種類によって異なります。以下で詳しく解説します。

医療機関でのリワーク

医療機関でのリワークでは、医療費が費用としてかかります。ただし、保険診療の範囲内で提供されるため、原則として3割負担で利用可能です。なお、自立支援医療制度を利用すると、1割負担で利用できます。

自立支援医療制度とは、障害の治療にかかる医療費の自己負担額の一部を公費で負担してもらえる制度です。うつ病や統合失調症などの精神疾患でリワークを受ける場合に利用可能です。

リワークにかかる医療費は医療機関によっても異なりますが、3割負担で1日2,000円~3,000円程度です。自立支援医療制度を活用すると1割負担となるため、おおよそ1日700円~1,000円の負担となります。

参考:

厚生労働省「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み

東邦大学医療センター佐倉病院 メンタルヘルスクリニック「職場復帰支援プログラム(リワークデイケア)のご案内

NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「リワークデイケアについて

就労移行支援事業所でのリワーク

就労移行支援事業所でのリワークでは利用料が発生しますが、原則として利用料の9割は行政負担で、利用者は1割を事業所に支払います。

ただし、実際には、世帯収入によって負担する上限額が決まっているため、約9割の人が無料で利用しています。有料で利用する場合も、年収が約670万円以下の世帯であれば9,300円で住みます。

【障害福祉サービスの自己負担の上限】

世帯の収入状況負担上限月額
生活保護受給世帯0円
市町村民税非課税世帯0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます。9,300円
上記以外37,200円

出典:厚生労働省「障害者の利用者負担

実際の自分の負担上限額がいくらになるかは、お住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口で確認することができます。

就労移行支援事業所の利用料については「就労移行支援の利用料はどれくらい?申し込み手続き・対象者・利用期間などもQ&A形式で紹介」の記事も参考にしてください。

障害者職業センターでのリワーク

障害者職業センターでのリワークは、独立行政法人高齢・障害・求職支援機構により各県に1カ所以上設置されている地域障害者職業センターが実施するリワークで、基本的に無料です。

利用者に利用料は発生しません。なお、交通費や昼食費などの施設の利用以外の費用は自己負担です。

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「リワーク支援の利用に関するQ&A

職場でのリワーク

職場でのリワークは、企業内の専門部署で実施されるものや、企業内で外部のEAPサービスを利用して実施されるものもありますが、基本的に費用は企業が負担します。

そのため、リワークプログラムの利用者は、無料で利用できます。費用の自己負担はありません。

リワークプログラムは意味がない?利用するメリットや効果とは?

リワークプログラムを利用することには、さまざまなメリットがあります。以下ではリワークのメリットを紹介します。

生活リズムを整えられる

リワークを利用すると生活リズムを整えることができ、復職につなげやすくなります。

休職中はまず、時間に縛られることなく体を休めることが大切であるため、生活リズムが乱れてしまうことが少なくありません。一度生活リズムが乱れてしまうと、自分の努力だけで生活リズムを整えることは簡単ではありません。その点、リワークを活用すると、決まった日時に通所することで、生活リズムを自然と取り戻しやすくなります。

セルフケアの方法を学ぶことができる

セルフケアの方法を学ぶことができるのもリワークのメリットといえます。せっかく復職を果たしても、休職前と同様にストレスへの対処法が身に着いていないと、再びストレスを抱えて体調を崩しかねません。

リワークでは、自己分析や認知行動療法などのプログラムを通して、ストレスの対処法を学ぶことができます。セルフケアの方法を習得できるため、復職後も自身でストレスに対処できるようになり、体調不良を避けられるようになります。

基礎体力や集中力の向上につながる

リワークでは、プログラムを通して基礎体力や集中力を向上できることもメリットです。

リワーク施設に通所してオフィスワークなどのトレーニングを受けることで、基礎体力や集中力が養われます。復職に向けた体力づくりやスキルの向上が自然にできるため、復職への抵抗感も薄れ、復職しやすくなります。

専門的なスタッフから客観的なアドバイスがもらえる

専門的なスタッフから客観的なアドバイスがもらえるのもリワークのメリットです。

復職に当たって、体調面はもちろん、就業面、生活面についての不安はつきません。しかし、リワークでは、医療面や、就業、生活面においてそれぞれの分野の専門スタッフがおり、客観的かつ具体的なアドバイスを受けることが可能です。

専門スタッフのサポートが受けられることもリワークの大きなメリットといえるでしょう。

リワークの利用の流れ

リワークの利用の流れをまとめると下記の通りです。利用の際の参考にしてください。

1.主治医に相談

まずは主治医に、リワークの利用について相談してみましょう。リワークは復職を目的として利用するため、症状が安定・回復していて復職が可能かどうかの判断がまず必要となります。

2.利用先の事業所を決める

主治医から復職の許可が出れば、職場やリワーク施設と相談しながら利用するリワーク施設を決めます。事業所ごとにプログラムや利用料が異なるため、見学会などに参加して、事業所を実際に見比べて決めることがおすすめです。

3.手続きを行う

利用先が決まれば、所定の手続きを行います。多くの場合、主治医の診断書や職場復帰に向けた支援計画書が必要となるため、事前に利用施設に必要な書類などを確認して手続きをしましょう。

就労移行支援・自立訓練(生活訓練)でのリワークをご検討中の方はKaienにご相談ください

リワークプログラムとは、うつ病などのメンタルヘルスの不調を抱える休職者の職場復帰を支援する制度のことです。

事業所によって受けられるプログラムや利用料金が異なるため、利用に際しては、実際に事業所を見学するなどして自分に合った所を選ぶことがおすすめです。

復職や再就職に不安があり、就労移行支援について興味がある、あるいは自立訓練(生活訓練)から考えてみたいといった場合には、Kaienにご相談ください。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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