大人の発達障害の専門相談窓口はある?無料で利用できる支援先を紹介

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発達障害*¹とは、生まれつき脳機能の発達がアンバランスで、日常生活や社会生活のさまざまな場面で困難が生じる状態のことです。大人になってから自分が発達障害であることに気づく場合もあるため、支援機関など相談できる場所を知っておくと安心でしょう。

この記事では、大人の発達障害の診断方法や無料で利用できる相談窓口などを紹介します。就労に役立つサービスについても解説しているため、発達障害の特性により仕事で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

大人になってから発達障害に気づくことはある?

生まれつき脳の機能発達に偏った部分があり、日常生活に支障をきたす状態が発達障害です。特に、大学生以上の年齢になってから気づく発達障害のことを「大人の発達障害」といいます。

子どものうちは自身の特性に自覚がないまま過ごすこともありますが、社会人になって職場などで曖昧なルールや複雑な人間関係に直面し、発達障害の特性に気づくケースも少なくありません。

発達障害にはADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの種類がありますが、大人の発達障害に該当しやすいのはASDです。不注意や多動といった特性のあるADHDは一人でも気づきやすい一方、ASDは他者との関係の中で症状が顕著に現れる傾向にあります。学校ではルールや役割分担などがはっきりしているためASDの特徴が出づらいですが、働くようになると曖昧なルールや空気を読むことが難しくなり、自身の特性に気づくようになります。

発達障害の種類と特性

発達障害は大きく以下の3つが挙げられます。

  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如多動症)
  • LD/SLD(学習障害*²/限局性学習症)

それぞれの特徴を知ることで、発達障害への理解はより深められます。自分が発達障害ではないかと悩んでいる方は、どの特性に当てはまるのかを確かめてみるとよいでしょう。

ここからは、それぞれの発達障害の概要と特性について解説します。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)は、他者とのコミュニケーションの難しさや、独特のこだわりといった特性が見られるのが特徴です。人との関わりが苦手な傾向にあり、興味の対象が狭い範囲に限られる場合も多くあります。

ASDの方が働く上で直面しやすい困りごととして、以下のようなものが挙げられます。

  • 相手の感情がわからない
  • 空気が読めず、チームでの作業を苦手とする
  • 必要以上に自分のやり方にこだわってしまう
  • 音や照明などの刺激に敏感、もしくは鈍感
  • 先の予定がわからないと不安を感じる など

大人になり、職場でのコミュニケーションがうまくいかずに自分がASDであると気づくケースも珍しくありません。ASDの方にはこだわりが強い特性があるため、自分に合った仕事を見つければ活躍できる可能性が高いです。

ADHD(注意欠如多動症)

ADHD(注意欠如多動症)は、不注意や多動、衝動的な行動などを特徴とします。子どものADHDでは多動性が、大人になると不注意が目につきやすい傾向にあるのが一般的です。

ADHDの方が働く上で直面しやすい困りごととして、以下のようなものが挙げられます。

  • 計画を立てたり、管理したりするのが苦手
  • 衝動的な言動で周囲の人を困惑させる
  • うっかりミスが多い
  • 仕事中に集中力が持続しない など

ADHDの方が大人になり、不注意によるミスなどが頻発すると、働くこと自体が困難になる場合もあります。職場の環境にうまく適応できず、うつ病などの二次障害につながってしまうケースも少なくありません。

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)とは、読み・書き・計算などの学習を極端に苦手とする状態のことです。苦手とするのは特定の課題のみで、全体的な理解力に問題はない点が知的障害とは異なります。

LD/SLDの方が働く上で直面しやすい困りごととして、以下のようなものが挙げられます。

  • マニュアルを読んで理解するのが難しい
  • 会議中に素早くメモを取れない
  • お金の計算ができない
  • 誤字脱字が目立つ など

LD/SLDは突然大人になってからなることはありません。子どもの頃は単に特定の科目が苦手なだけだと思っているケースが多いため、見過ごされることも多いです。

大人の発達障害の診断方法

発達障害の診断は医療機関の精神科または心療内科で行います。また、発達障害の診断基準にはDSMが参照されることが多いです。

DSMはアメリカ精神医学会が発行している精神疾患の診断・統計マニュアルで、1952年発行の初版から改訂を続け、現在はDSM-5-TRが最新のものとして使われています。

発達障害の詳しい診断基準はこちらの記事を参照ください。

発達障害の診断基準とは? DSM-5から見る発達障害

なおDSM-5-TRからは、「認知機能や言語の障害を伴わない人は、欠陥を隠すために多大な努力をしている可能性がある」ことなどがASDの診断的特徴に加えられ、多角的に診断する必要性が強調されています。

発達障害のグレーゾーンとは

グレーゾーンとは、発達障害の症状や特性は見られるものの、診断基準をすべて満たしていないために確定診断が出ていない状態のことです。いくつかの診断基準は満たしているため、グレーゾーンといえど程度が軽いとは一概にいえません。

確定診断が出ていなくても、仕事での指示が通りづらい、人間関係がうまくいかないといった悩みを抱えている方も少なくありません。自覚がないものの周囲が気づいて困っている場合や、日常生活や社会生活を送るのが困難で悩みを抱えている方は、専門機関に相談するなどして状況の改善を図ることをおすすめします。

発達障害の方が無料で利用できる相談先

発達障害の方は、専門機関などで第三者に相談することで困りごとなどの問題解決につながるかもしれません。ここからは、発達障害の方が無料で利用できる相談先を7つ紹介します。自分に合った相談先を見つけ、プロのアドバイスを有効活用するとよいでしょう。

なお、ここで紹介する相談先の中には未診断(グレーゾーン)の方でも利用可能なところもあるため、ぜひ参考にしてみてください。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターでは、発達障害のある方を対象に総合的な支援を行っています。基本的に無料で利用でき、各都道府県や政令指定都市に設置されています。発達障害の診断を受けている方だけでなく、グレーゾーンの方も利用可能です。

発達障害の方が日常的に困っていることや職場での人間関係など、幅広い相談に応じてくれます。保健や医療、労働などの関係機関と連携し、地域の支援ネットワークを活用して総合的なサポートを行うのが特徴です。

発達障害者支援センターのサービス内容は施設によって異なるため、利用の前に確認しておくことをおすすめします。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の雇用の安定を促進し、職業生活における自立を支援する専門機関です。

2024年4月1日時点で全国に337箇所設置されており、利用に障害者手帳は必要ありません。未診断であっても社会生活を送るのが困難な場合は相談を受け付ける可能性があるため、近隣の事業所に確かめてみるとよいでしょう。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は厚生労働省が運営する職業紹介所で、障害の有無に関わらず求職中の方に求人紹介や就職支援といったサービスを提供しています。

ハローワークには障害者相談窓口を設けているところもあり、専門知識を備えた担当者が在籍しているため、障害がある方のサポートも万全です。無料で利用でき、就職後の定着サポートなども受けられるため、積極的に活用するのがおすすめです。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターでは、障害のある方を対象に専門的な職業リハビリテーションサービスを実施しています。具体的なサービス内容は、講座の受講とグループワークを通じたスキルの習得や就職に向けての相談、職場復帰の支援などが挙げられます。

各都道府県に設置されており、ハローワークなどとの密接な連携があるため、就職や職場復帰、障害者雇用を検討している方におすすめの機関です。

地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーションは、15~49歳の方を対象に就労に関する支援を行っている機関です。就労に関する悩みを抱えている方の相談に乗り、利用者が職場に定着するまでの全面的なバックアップを実施しています。

2022年時点で全国に177箇所設置されており、総利用件数は49.9万件です。障害の有無は問われないため、誰でも利用できます。

当事者会・自助グループ

当事者会では、障害のある方同士が集まって支え合い、差別や偏見をなくすための社会活動などを行っています。自助グループについても、ひきこもりなどの問題を抱える当事者同士が結びつき、メンバーと体験を共有して問題と向かい合うことを目的としています。

当事者会や自助グループに参加したい場合は、役場や保健所、精神保健福祉センターなどの行政機関に問い合わせ、居住している地域に団体があるかどうか確かめてみてください。

親の会

親の会は、病気や障害のある子どもを育てる親が集まり、子どもとその家族のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上を目指して活動を行っている団体です。会員同士の相互交流や情報交換を通じて親睦を深めたり、実際的な手助けを得たりすることができます。福祉制度の改善などを目指し、社会に対して働きかける活動に取り組む場合もあります。

発達障害の方の仕事に関する支援先

大人の発達障害の場合、仕事に関して悩みを抱えるケースも珍しくありません。発達障害の方が仕事に関する支援を受けられる代表的なサービスが、「就労移行支援」と「就労継続支援」です。両者の支援内容を知り、適切な形で利用することで自分に合った働き方が実現しやすくなります。

ここからは、就労移行支援と就労継続支援のそれぞれの概要を見ていきましょう。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業での就業を希望する障害のある方を対象に、職業訓練や就活支援を行うサービスのことです。利用の際には障害福祉サービス受給者証が必要になりますが、障害者手帳の有無は問われません。

利用者は、基本的に就労移行支援の事業所に通いながら就労に必要な知識やスキルを習得することになります。利用可能期間は2年間で、収入にもよりますが多くの場合は無料で利用できます。

就労継続支援

就労継続支援は、障害のある方に働く場を紹介または提供するためのサービスです。就労に必要な知識やスキルの習得を目指す就労移行支援とは、実際に就労の機会を提供するという点で異なります。

就労継続支援は、雇用契約を交わすA型と交わさないB型の2種類に分けられます。どちらも職業指導や生活支援などのサービスを受けられますが、B型の場合は工賃に最低賃金が保証されません。利用期間の定めはなく、自分のペースで続けられるメリットがあります。

Kaienの就労移行支援

Kaienでは発達障害に特化した就労移行支援を行っており、充実したプログラムで障害のある方の就労をサポートしています。職業訓練では100種類以上の職種を体験でき、特性に合った仕事を見つけるうえで役に立ちます。カリキュラムを通じてビジネススキルやソーシャルスキル、PCスキルを磨けるため、選べる職業の選択肢も増やせるでしょう。

就活支援においては、発達障害に理解のある200社以上の企業と提携しており、独自の求人を豊富に紹介できることもKaienならではの魅力です。専門的な知識のある担当カウンセラーと相談しながら、自分にとって働きやすい職場を探すことができます。

就職面接での特性の伝え方なども学べ、就業後の定着支援も充実しています。大人の発達障害により仕事で悩んでいる方は、就職率86%のKaienの就労移行支援をぜひご検討ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

Kaienでは、障害のある方を対象に自立訓練(生活訓練)も実施しています。自立訓練(生活訓練)は、まだ働く自信がない、生活リズムが安定していないという方におすすめです。利用者は実践的なプログラムを通じて自立のために必要なスキルを習得していきます。

発達障害の特性理解や得意不得意の見つめ直し、自立生活のためのスキル習得、カウンセリングなど、実践的なプログラムを通して自立への一歩を踏み出していきます。

Kaienではこれらを講座と実践プロジェクト、担当スタッフとの1対1のカウンセリングを通して習得していくのが特徴です。就労の前に、まずは身辺の自立を図り将来を再設計したいという方は、Kaienの自立訓練(生活訓練)の利用をご検討ください。

大人の発達障害は早めに専門の窓口に相談を

発達障害の特性は人によってさまざまで、場合によっては大人になるまで気づかないこともあります。大人の発達障害で悩みを抱えている方は、発達障害者支援センターなどの専門機関に早めに相談して状況の改善を図るとよいでしょう。

発達障害が原因で就職できずに悩んでいる方や仕事が長続きしない場合は、就労移行支援サービスの利用が役に立ちます。発達障害の方に特化したKaienの就労移行支援や自立訓練(生活訓練)を積極的に利用し、一般企業での就労に向けて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます

監修者コメント

大人(成人)の発達障害が知られるようになり、多くの方が相談を希望するようになりました。本コラムにあったように、発達障害支援センターや精神保健福祉センターなどは頼りになる相談窓口です。また、メンタルクリニックでも精神保健福祉士(PSW)が勤務して患者さんの相談に乗れるようなところがあります。そこでは患者さんの悩みを整理して、利用すべき制度や施設の紹介をしてくれるでしょう。例えば制度としては自立支援、障害者手帳、あるいは障害者年金など、施設としてはデイケア、リワークプログラム、作業所、就労支援施設などです。

子どもの発達障害では、家庭、スクールカウンセラー、療育センター、児童相談所、メンタルクリニックなどが連携して取りこぼしのないケアができるようになっています。これに対して大人の発達障害では企業や職場で協力してくださることが少なく、退職に至ってしまい、再就職まで長い年月を要することが少なくありません。機会損失を防ぐためにも、大人の発達障害に対するケアの充実が官民ともに求められます。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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