言葉に詰まるのはなぜ?吃音症の特徴や仕事での工夫・対処法について解説

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人に話しかけられたときや人前で発表しなければならないときなどに、どうしても言葉が出てこなくて困ったことがある人も多いのではないでしょうか。言葉に詰まる原因はさまざまですが、代表的な原因のひとつとして吃音症が挙げられます。

この記事では、言葉がスムーズに出てこない吃音症について解説します。吃音症の種類や治療法、吃音症の方が働くうえでの工夫や対処法などを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

言葉に詰まる原因はさまざま

「話したいと思っているのに言葉が出てこない」という症状には、さまざまな原因が考えられます。代表的な原因のひとつは、冒頭で紹介した吃音症です。

吃音症以外の原因としては、自閉スペクトラム症(ASD)が挙げられます。ASDの方は話しかけられた内容を頭の中で処理し、自分が話すことを考えるまでに時間がかかることがあります。その場で状況を判断する知覚統合という能力が低い傾向にあり、これも言葉に詰まる原因です。また、緊張する場所や慣れていない場所など、特定の場面で言葉が詰まることもあります。

思うように話せないと「吃音症なのでは」と考える人が多いかもしれません。しかし、ASDなど他に原因がある可能性もあります。今回は吃音症について解説しますが、自己判断で決めつけないことが大切です。

吃音症とは?大人の吃音症もある?

吃音症とは、話すときに言葉がスムーズに出てこない症状です。最初の音の繰り返しや引き伸ばし、話し始めの言葉に詰まってしまうといった特徴があります。

これは子どもによく見られる症状で、成長するにつれて改善する人も少なくありません。その一方で、大人になってからも吃音症に悩む人は多く、大人でも100人に1人は吃音の症状があると報告されています。

子どもの頃から吃音の症状があり、大人になっても症状が続いている場合は、発達障害者支援法に基づいた支援の対象です。自治体に申請すれば障害者手帳を取得できる可能性があるため、必要に応じて障害者手帳の取得も検討してみましょう。

関連記事:障害者手帳とは?取得するメリットや申請方法、受けられる支援などを解説

吃音症の特徴

吃音症の症状は、繰り返し・引き伸ばし・ブロックの主に3種類です。それぞれ次のような特徴があります。

  • 繰り返し:「お、お、おはよう」のように最初の音を繰り返してしまう症状
  • 引き伸ばし:「おーーーはよう」のように最初の音が伸びてしまう症状
  • ブロック:「……っおはよう」のように最初の音がなかなか発せない症状

加えて、上記のような症状が出ないように意識することで、次のような言動が生じるケースもあります。

  • 助走:「えーと、あのー」のように話し始めに意味のない言葉が入ってしまう
  • 置き換え:言いたい単語とは別の単語に言い変えてしまう
  • 回避:話すことをやめる、もしくは話す場所に行くのをやめてしまう

いずれかの症状しか出ない人もいれば、複数の症状が併発する人もいます。また、上記のような話し方に関する症状に加えて、身体の一部が力んだり手足が動いてしまったりすることもあります。

年齢ごとの吃音症の特徴

吃音症の特徴は、年齢に応じて変化するといわれています。ここでは、「幼児期」「学童期〜思春期」「成人期」で見られる吃音症の特徴について、それぞれ紹介します。

幼児期

2歳から4歳ごろの幼児期の吃音症には、繰り返しや引き伸ばしの症状がよく見られます。多くの幼児にはスムーズに言葉が出にくい症状が見られ、幼児期の2〜5%が吃音症を発症するともいわれています。また、幼児期の吃音症は、成長とともに自然と症状がなくなるケースも少なくありません。

学童期〜思春期

学童期とは、6歳から12歳ごろの小学校に通う年齢のことです。この時期の吃音症は、ブロックの症状が多く見られるのが特徴です。また、スムーズに話すために置き換えなどの工夫が始まる時期でもあります。

思春期は、12歳から18歳ごろの年齢層です。学童期に身につけた工夫により、一見すると吃音の症状が出ていないように見える人もいます。また、置き換えに加えて、回避行動を取る人も多く見られる年齢です。

成人期

成人期とは、18歳以上の年齢を指します。幼児期に発症した吃音症は成長とともに症状がなくなるケースが多いものの、成人期の1%の人には吃音の症状が残るといわれています。

成人期でも思春期と同様に回避行動を取る人が多くいますが、働き始めると回避が難しい場面も少なくありません。そのため、後述する「吃音症の方ができる仕事での工夫や対処法」で紹介するような対応が必要になるケースが多くあります。

吃音症の症状が出やすい場面とは?

吃音症の症状は、精神的なプレッシャーや緊張がある場面で出やすくなると考えられています。

例えば、苦手な言葉を発さなければならないときや、周囲の目が気になるときは、吃音症の症状が出やすくなる人が多いでしょう。不安を感じたときや、「どもりたくない」と吃音を強く意識してしまったときにも症状が出やすくなります。

また、大勢の人の前で話さなければならない場面や電話での会話が苦手だという人も少なくありません。

吃音症の種類と原因

吃音症は、「発達性吃音」と「獲得性吃音」の2種類があります。ここでは、吃音症の種類と原因について詳しく見ていきましょう。

発達性吃音

発達性吃音は2〜4歳ごろに発症することが多い吃音症で、成長とともに症状が解消する人も少なくありません。吃音症の9割は、この発達性吃音に分類されます。

発達性吃音の原因は明確にはわかっていませんが、考えられる原因として次の3つが挙げられます。

  • 体質的(遺伝的)要因:本人の体質によるもの
  • 発達的要因は:身体や認知などの急激な発達によるもの
  • 環境要因:周囲の人との関係やこれまでの体験によるもの

獲得性吃音

獲得性吃音は特定の原因によって発症する吃音症で、「獲得性神経原性吃音」と「獲得性心因性吃音」の2種類があります。

獲得性神経原性吃音は、脳卒中や認知症といった脳や神経の病気、頭のケガや薬物の使用などが原因となる吃音症です。事故で頭を打った人や薬物中毒の人に吃音の症状が現れた場合、獲得性神経原性吃音に該当します。

一方、獲得性心因性吃音はストレスやトラウマによって発症する吃音です。ストレスやトラウマの原因となった事象に似ている場面で、吃音の症状が出やすいと言われています。

吃音症の診断と治療法

吃音症は、医療機関で診断が受けられます。具体的には精神科・心療内科・耳鼻咽喉科などで診断が受けられますが、「これらの科ならすべての医療機関で吃音の診断が受けられる」とは言い切れないので注意してください。まずは、近隣の地域に吃音症について詳しい医療機関がないか調べてみましょう。

吃音症の診断は「DSM-5」に基づいて行われ、正式名称は「小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害」です。DSM-5はアメリカ精神医学会が作成したもので、精神疾患の診断基準として国際的に用いられています。

吃音症に確立された治療法はありませんが、言語聴覚士による指導・支援によって症状を和らげられる可能性があります。言語聴覚士による指導・支援は耳鼻咽喉科やリハビリテーション科で受けられますが、すべての医療機関が対応しているわけではありません。

吃音症の治療が受けられるかどうかは、事前に問い合わせが必要です。

吃音症の方ができる仕事での工夫や対処法

吃音症があることで、仕事に支障を感じる人も多いでしょう。吃音症を抱えながら仕事に取り組むには、工夫や対処法を知っておくことが大切です。

ここでは、吃音症の方ができる仕事での工夫や対処法を紹介するので、ぜひ実践してみてください。

話すことにこだわり過ぎない

吃音症があると、「うまく話せないかもしれない」と考えてしまいがちです。吃音症を意識しすぎると、緊張によってかえって症状が強く出ることがあるため、話すことにこだわり過ぎないようにしましょう。

「うまく話す」のではなく、「相手に伝える」ことを意識してみてください。会話への緊張が和らぎ、話しやすくなる可能性があります。会話にジェスチャーを交えたり、会話のあとでメールなど文章で補足したりするのもおすすめです。どうしても言葉が出ないときは、筆談を依頼するという方法もあります。

周囲へ吃音について伝える

吃音症について周囲の人に伝え、業務内容やコミュニケーション方法を変えてもらうなど、働く環境を調整する方法もあります。「どのようなときに症状が出やすいのか」「どのような配慮があると働きやすいか」など具体的なポイントを伝えることで、周囲の理解が得やすくなります。

ただし、吃音についてあまり人に知られたくないという人もいるでしょう。話しやすい上司や同僚がいるなら、まずはその人に相談してみてください。上司や同僚に相談しづらい場合は、産業医や社内カウンセラーなどの窓口を活用するのがおすすめです。

吃音症への対応は、「スムーズに話せなくても言い終わるまで待つ」「言葉を勝手に補足しない」「順番に発言できるような安心できる環境を整える」など、周囲の人が意識すべきポイントも多くあります。周囲の人に適した対応をとってもらえるよう、協力を依頼してみましょう。

人前で話す練習をする

吃音の症状は、特に人前で話す場面や注目を浴びる場面で強く出やすいといわれています。これは、精神的なプレッシャーや緊張が症状を引き起こす一因となるためです。

プレッシャーや緊張を和らげるために、日頃から人前で話す練習を重ねておきましょう。少しずつ状況に慣れていくことで緊張を感じにくくなり、吃音の症状が出にくくなる可能性があります。

練習でスムーズに話せるようになると、成功体験を得て自信がつくというメリットもあります。吃音症の方が働く際には、こうした練習や成功体験の積み重ねも有効な対策のひとつです。

支援をうまく利用する

吃音症は発達障害者支援法に基づく支援の対象になっているため、各種支援が受けられます。就労に関する支援制度である、障害者雇用や就労移行支援などの活用を検討してみましょう。

障害者雇用は企業に対して一定割合以上の障害者を雇用するよう定める制度で、障害者手帳を持っていれば障害者雇用枠の求人に応募できます。障害を持つ方の雇用を前提としているため、それぞれの特性に応じた配慮や理解を得やすい職場で働けるのがメリットです。

就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すときに利用できる支援サービスで、就職に必要なスキルを習得するための訓練や就職活動のサポートなどが受けられます。

これから仕事を探したいという人は、これら支援制度を活用してみてはいかがでしょうか。

吃音症の人に対して周囲の人ができることとは?

吃音症の人と会話をする際に周囲の人が心がけるべきことは、まず「最後までゆっくり聞くこと」です。吃音症の人が話し終わるのを待たずに話し方を指示したり、言いたいことを先取りしてしまったりすると、相手の自信を損ねることにつながりかねません。相手が話している間は、途中で言葉を遮らずに落ち着いて聞く姿勢が大切です。

また、「ゆっくりでいいよ」「焦らないで」などの声かけも逆効果になる場合があります。吃音症の人は焦っているのではなく、言葉に詰まるという症状が出ているだけです。そのため、励ましのつもりの声かけも、かえってプレッシャーを感じさせる可能性があります。

ただし、「最後まで話を聞いてほしい」「言葉に詰まったら助け舟を出してほしい」「筆談に切り替えたい」など、考え方や要望は人それぞれです。相手との関係性を築き、要望を聞きながらの対応が求められます。

ひとりで抱え込まず、周囲や専門機関に相談してみよう

吃音症に悩んでいる方は、ひとりで抱え込まずに周囲や専門機関に相談してみましょう。職場での悩みや不安は、上司や同僚、産業医などに話すことで解決策が見つかる可能性があります。

これから就職を目指す方は、障害者雇用や就労移行支援など就労に関する支援制度の活用がおすすめです。適切な支援を受けながら、自分らしく働ける職場を探しましょう。

就労移行支援を利用したいと考えている方は、ぜひKaienにご相談ください。Kaienでは発達障害*の強みを活かした就労移行支援を実施していて、多様な業界への就職実績があります。見学・個別相談会も実施しているので、わからないことや不安なことがある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群といわれます。

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