就労継続支援A型とB型の違いとは?仕事内容や給与など8つの観点で解説

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就労支援サービスの利用を検討している場合、「就労継続支援A型とB型は、何が違うの?」と疑問に思うこともあるでしょう。

就労継続支援A型と就労継続支援B型とは、同じ就労継続支援サービスですが、対象となる人や雇用契約の有無など異なる点がいくつかあります。利用するうえで特に知っておきたい仕事内容や給与などの8つのポイントから詳しく解説します。

後半では、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)との違いも紹介しますので、自分に合った就労支援を選びたい方は、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。

就労継続支援A型とB型の違いを8つの観点から比較

就労継続支援とは、一般企業などの通常の事業所に雇用されることが困難である者に対して、働く機会を提供したり、就労に必要な知識・能力を向上させるための訓練を提供したりすることです。

就労継続支援にはA型とB型の2つのサービス形態があり、その違いについて、仕事内容や給与など8つの観点から比較・解説します。

対象者

就労継続支援A型とB型は、共に、一般企業における就労が困難な人を対象としているという点では共通です。しかし、A型では、その中でも、雇用契約を結んで働ける人を対象としており、B型では、雇用契約を結んで働くことが困難な人を対象としているといった点で異なります。

また、就労継続支援B型の対象者には年齢制限はありませんが、A型の利用対象者は、原則18歳以上65歳未満となっている点でも異なります。(ただし、2018年より65歳以上でも一定の要件を満たせばA型の利用が可能となりました)

なお、障害者総合支援法の定めによる就労継続支援A型とB型の利用対象者の詳細は下記の通りとなっています。

【就労継続支援A型とB型の対象者】

就労継続支援A型就労継続支援B型
対象者就労移行支援を利用したものの企業雇用に結びつかなかった人特別支援学校を卒業して就職活動をしたものの企業雇用に結びつかなかった人 就労経験はあるが、現に雇用状態にない人就労経験はあるが年齢や体力の面で企業雇用が困難な人50歳に達した人または障害基礎年金1級受給者上記に該当しない人で、就労移行支援事業者などによるアセスメントにより、就労面の課題が把握されている人

参考:厚生労働省「障害者の就労支援について

利用者数

就労継続支援A型とB型とでは、利用者数についても大きく異なります。下記は、就労継続支援A型とB型の2023年3月時点の利用者数です。就労継続支援B型の方がA型の約4倍もの利用者数となっています。

【就労継続支援A型・B型の利用者数(2023年12月時点)】

就労継続支援A型就労継続支援B型
利用者数約8.9万人約34.8万人

就労継続支援B型の利用者数が多い理由の一つには、B型の事業所数の方が17,059ヶ所と、A型の事業所数4,575ヶ所よりも多いことが挙げられます。

参考:厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」

雇用契約

就労継続支援A型とB型の大きな違いとして、A型の利用者は、支援事業所と雇用契約を結んで働くのに対し、B型の利用者は雇用契約を結ばずに働く点が挙げられます。

【就労継続支援A型・B型の雇用契約の有無】

就労継続支援A型就労継続支援B型
事業所との雇用契約ありなし

就労継続支援A型では、雇用契約があるため、最低賃金が保障される一方で、決められた勤務日時のもとで安定して働くことができます。一方、B型の方は、雇用契約がないため最低賃金の保証はないものの、障害や体調にあわせて自分のペースで働くことが可能です。

仕事内容

就労継続支援A型とB型の仕事内容については、勤め先の事業所によってさまざまです。

ただし、就労継続支援A型の方は、一般企業の仕事内容と大きく変わらないといえるでしょう。仕事内容として、例えば、 パソコンによる入力作業、飲食店での接客・調理などといったものが挙げられます。

一方の就労継続支援B型は、雇用契約を結ばないため、軽作業の仕事が多い傾向にあります。仕事内容として例えば、部品加工、製品に刺繍をする手工芸、農作業が挙げられます。

【就労継続支援A型・B型の仕事内容の例】

就労継続支援A型就労継続支援B型
仕事内容の例パソコンによるデータ入力など事務作業飲食店の調理・ホールスタッフ車部品などの加工WEBデザイン・制作ホテルの清掃部品加工製品刺繍など手工芸農作業パンやクッキーなどの製菓作業衣類のクリーニング

給与

先ほども触れましたが、給与面では、就労継続支援A型は雇用契約を結んで働くため、最低賃金が保障されます。さらに、安定して就業できるためB型よりも長時間働くこととなり、平均給与がB型よりも高くなる傾向にあります。

一方、就労継続支援B型は雇用契約を結ばないため最低賃金は保障されず、労働時間も体調に合わせて短時間になる傾向があり、A型に比べて平均給与は低くなりがちです。

【就労継続支援A型・B型の平均給与】

就労継続支援A型就労継続支援B型
平均給与最低賃金の保証がある2022年度平均給料(月額)は83,551 円最低賃金の保証なし。労働時間などに応じた工賃が支払われる2022年度平均工賃(月額)は17,031 円

参考:厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)の実績について

利用期間

就労継続支援A型・B型ともに、利用期間について特に制限はありません。

ただし、就労継続支援A型については、事業所と雇用契約を結ぶため、雇用契約に期限があり、その後の契約更新がない場合は、利用がその期限内に限られることがあります。

【就労継続支援A型・B型の利用期間】

就労継続支援A型就労継続支援B型
利用期間制限なし
(※ただし雇用契約に期限がある場合もある)
制限なし

参考:厚生労働省「障害者の就労支援について

利用料

就労継続支援A型およびB型では、利用者は給与や工賃を受け取りつつ働くものの、障害福祉サービスを利用することとなるため、利用料がかかります。

就労継続支援A型およびB型の利用料の自己負担額については、前年の世帯収入に応じて上限があります。利用料の自己負担額の上限は下記の通りです。

【障害福祉サービスの自己負担の上限(月額)】

世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯(※1)0円
一般1市町村民税課税世帯(所得割16万円未満(※2))※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます。(※3)9,300円
一般2上記以外37,200円

※1 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が約300万円以下の世帯が対象。

※2 収入が約670万円以下の世帯が対象。

※3 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

出典:厚生労働省「障害者の利用者負担

生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯の場合は、利用料は無料ですが、それ以外の場合は9,300円あるいは37,200円が上限となります。

一般就労への移行率

就労継続支援A型・B型などの利用を終えた人のうち、その後一般企業に就職した人の割合を、「一般就労への移行率」といいます。

就労継続支援A型およびB型とでは、一般就労への移行率が異なります。就労継続支援A型の一般就労への移行率は26.2%で、B型の10.7%の2倍以上です。A型の方が、一般企業への就労につながりやすくなっています。

【就労継続支援A型・B型の一般就労への移行率(2022年実績)】

就労継続支援A型就労継続支援B型
一般就労への移行率26.2%10.7%

参考:厚生労働省「就労施策の対象となる障害者/地域の流れ

就労移行支援とは?自立訓練(生活訓練)とは?

障害福祉サービスには、就労継続支援A型やB型のほかに、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)というものもあります。それぞれのサービスの特徴について解説します。

就労移行支援とは

就労移行支援とは、一般企業などへの就労を希望する18歳以上65歳未満の障害者の、一般企業への就労を支援する目的で行われるものです。一般就労に向けた作業実習や訓練の提供、職場探し、就職後の定着支援を行います。なお、65歳以上でも一定の要件を満たせば利用可能です。

就労移行支援では、下記のような支援を行います。

【就労移行支援の内容】

  • 生産活動や職場体験などの活動機会を提供
  • 就労に必要な知識・能力の向上に必要な訓練の提供
  • 適性に応じた職場探し
  • 就職後の職場定着に向けてのサポート

就労移行支援の標準的な利用期間は2年間です。ただし、延長の必要性が認められれば、最長1年延長できます。

参考:厚生労働省「就労移行支援事業

自立訓練(生活訓練)とは

自立訓練(生活訓練)とは、障害のある人が自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、生活能力の向上のために必要な訓練を行うことです。身体障害、知的障害、精神障害の区別なく利用可能です。

自立訓練(生活訓練)は、支援施設に通って訓練を受ける通所型、あるいはスタッフの訪問を受けて自宅で訓練する訪問型、支援施設に泊まって訓練を受ける宿泊型とがあります。

自立訓練(生活訓練)では、下記のような支援を受けられます。

【自立訓練(生活訓練)のプログラム例】

  • 入浴や排せつ、食事、洗濯、掃除など日常生活のために必要な訓練
  • お金の使い方などの金銭管理に必要な訓練
  • コミュニケーションスキルを高める訓練
  • ストレスのコントロール方法の習得

参考:厚生労働省「自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について≪論点等≫

就労継続支援と就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の違いとは?

就労継続支援と就労移行支援の大きな違いは、就労継続支援が働く機会を提供するのに対し、就労移行支援は一般企業への就労に向けた支援を行う点です。

就労継続支援と自立訓練(生活訓練)では、就労継続支援が働く場の提供といった就労支援であるのに対し、自立訓練は、自立した生活を送るための訓練・支援である点が異なります。

その他の就労継続支援A型やB型、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)の違いをまとめると次の表の通りです。利用者数は就労継続支援B型が多いものの、一般就労への移行率が圧倒的に高いのは就労移行支援といえます。

【就労継続支援と就労移行支援の違い】

就労継続支援A型就労継続支援B型就労移行支援自立訓練(生活訓練)
対象者一般企業などでの雇用が困難で、雇用契約に基づく就労が可能である者65歳未満(要件を満たせば65歳以上も可)一般企業などでの雇用が困難で、雇用契約に基づく就労も困難な者年齢制限なし一般企業などに雇用されることが可能な者65歳未満(要件を満たせば65歳以上も可)地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上の訓練が必要な障害者65歳未満
利用者数約8.9万人(2023年12月実績)約34.8万人(2023年12月実績)約3.6万人(2023年12月実績)約1.2万人(2020年4月実績)
雇用契約ありなしなしなし
仕事内容パソコンでの事務作業や部品加工など、一般企業と同様の仕事部品加工、農作業などの軽作業就労に向けたマナー、スキル、知識の習得自立した生活に向けた生活能力の訓練・習得
給与(2022年度実績)83,551 円(月額平均)17,031 円(月額平均)なしなし
利用期間制限なし制限なし最長2年2年(長期間入院をしていた場合は3年)
利用料所得に応じて無料、あるいは上限あり所得に応じて無料、あるいは上限あり所得に応じて無料、あるいは上限あり所得に応じて無料、あるいは上限あり
一般就労への移行率26.2%(2022年実績)10.7%(2022年実績)57.2%(2022年実績)3.1%(2015年実績)

参考:厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」

参考:厚生労働省「就労施策の対象となる障害者/地域の流れ

参考:厚生労働省「自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について≪論点等≫

参考:厚生労働省「就労系サービス共通の報酬・基準について

違いを理解して自分にあったサービスを選ぼう

就労継続支援A型とB型との大きな違いは、働く機会を得る際に、雇用契約を結ぶかどうかという点といえます。雇用契約の有無のため、受け取る給与・工賃の額にも大きな差が出るといえるでしょう。

就労継続支援は一般企業での就労が困難な場合に受ける支援サービスですが、やはり一般企業への就労を目指したいという場合には、就労移行支援サービスの利用がおすすめです。

就労移行支援は、就労継続支援と並行して受けることはできないものの、就労継続支援の後に、あるいは、就労継続支援の前に利用することは可能です。もちろん就労移行支援のみを活用することもできます。

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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。