発達障害の可能性は無限大!独創的な感性を大好きな創作活動に活かす

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子どもの頃からひたすら面白い、楽しい子だと言われることが多かったです。普通に話していても、それが誰かにとっては面白おかしく聞こえるようなのですが、それで周りの人が笑ってくれるのがとても楽しいんです――。

そう話すのは、現在Kaienの就労移行支援で訓練を行っているKさん。ご自身の特性と、得意を活かして取り組んでいる創作活動について詳しく語っていただきました。

(取材日時:2024年5月29日)

集中力が続くかは ”いかに興奮できるか” で決まる

ずっと周りと違うと思ってきました。けど、そのおかげで目立つことができたし、自然と学校の友達からも覚えてもらうことができたんです。私自身も、自分には自分だけの独特な何かがあって、それが強烈なイメージを放っていると思っています。

自分が発達障害*であることは、大学入学後に母から伝えられました。その時はただ仕方ないと思いました。

私の特性は、「自分の興味がないことに対して、集中力が続かないこと」です。これは最近になって強く感じるようになりました。例えば、PC業務では30〜45分くらい経つと、どうしても眠くなってしまって、身体が固まってしまうことがあります。おそらくこれは、PC業務に対して、興味がそこまで向かないというところから来ているのだと思います。

今はそれを防ぐための対策として、30〜45分くらいに一度、5分の休憩をするようになりました。対策を取り入れるようになってからは、多少はましになったと思います。

一方で、興味のあること、私の場合だと昔から何かを作るのが大好きなので、手先を使うような作業には集中して取り組むことができます。(集中できる)基準は ”興奮できるか” どうかだと思います。そうなると、PC業務の時とは違って全く眠くなる気配がなく、何十分でも作業を続けることができます。

「未知の存在」はロマンに溢れている!

大学では「微細藻類の培養」を行っていました。微細藻類というのは、光合成の能力を持つ微生物のことです。そういった微生物を培地の中で分裂させて、どんどん増やしていくということに取り組んでいました。

その研究をしようと思ったのは、高校時代からその分野に強い興味を持っていたからです。微生物学を専攻していたのですが、高校の中ではずっと校内1位という良い成績を残していました。

微細藻類の魅力は、”人間からかけ離れた未知の存在”というところにあります。ロマンを感じるんです。人間から近い種類と言えば、犬や猫、サルとか哺乳類だと思いますが、そこから鳥や魚、爬虫類とどんどんかけ離れていって、虫や植物、そのさらに向こう側にいるのが細菌や微生物という存在になります。

細菌に興味を持ったのは、生物の先生が「スリランカの赤い雨」という本を教えてくれたことがきっかけです。当時、私は宇宙生物に興味を持っていたのですが、そのスリランカの赤い雨には、宇宙から来た細菌なのではという話があったんですね。それを聞いて、そうした未知の存在というものに、より面白さを感じるようになりました。

今は当時よりは熱は収まったのですが、宇宙生物がどんなカタチをしているのか、想像を膨らませることが楽しいです。例えば、光のない世界ではどんな感覚を持って暮らしているのか、生態系はどうなっているのか、光合成ではなく星の地下から湧き出るエネルギーか何かを生産して分解し、循環しているのではないかと想像が膨らむんです。

有り余るアイデアを世の中に発信したい

(Kさんの小学生時代の作品①)

私の今の趣味は創作活動です。私はとにかく想像を巡らせて、それを何らかのカタチにすることが好きです。主に漫画や小説、動画などを制作していて、作品には「地球に訪れる火星人」を主人公として登場させています。

特に動画は、YouTubeでもアップをしていて、今はチャンネル登録者数が1000人を超えています。あとは申請をするだけで、収益化が始まるという状態ですね。今はX(旧Twitter)などのSNSでも作品を公開をしているので、たくさんの方に見てもらえるのが嬉しいです。

基本的には、1日に1作品のペースで作っていて、それを毎日公開するようにしています。自分の携帯とPCを手に入れるまでは、ひたすらアナログの時代でしたが、それらと出会ったことによって世界がぐっと広がりました。これまでは、クラスのみんなに見てもらって喜んでいましたが、今はより多くの人に自分の作品を見てもらいたいと強く思っています。

これまで創作したもので特に印象に残っているのは、小学生の時に描いた油絵です。その時は3枚ほど描いたのですが、絵画教室の先生もその出来にとても驚いていて、家族からも良い評価を得られました。油絵なので、何日かかけて完成させたのですが、時間をかけた分価値のあるものが作れたと思っています。

苦手なことを目立たなくして、得意なことはより伸ばして

             (Kさんが実際に制作された作品)

今後は、自分の特性である「集中力のなさ」を目立たないようにしていきたいです。自分には何ができて何ができないのかを今一度見つめ直し、できないことがあればそれを克服していくために動くということを大切にしています。できないことを放置してしまえば、向上心がないとみなされてしまう可能性もあるので。

就活においても、克服すべきことからはちゃんと逃げずに、取り組んでいきたいと思っています。得意な手先を動かすような職に就けるのが一番ですが、苦手なPC業務であっても定期的に休める方法があるところ(配慮が求められるところ)を目指していきたいです。

創作活動においては、自分の中でまだ眠っている想像をどんどんカタチにしていきたいです。せっかく思いついたのに作品に反映できないのはもったいないので、それらを次々に展開していき、また新たに誰かのハートをつかんでいくことが今の夢です。



(Kさんの小学生時代の作品②)


(Kさんの小学生時代の作品③)



*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われています。

この記事では、「発達障害がありながらも、自分らしく前向きに生きられている方」をテーマとして、Kaienのご利用者にインタビューしたものを掲載しています。