特別支援学校とは?対象者や卒業後の進路、就職への影響などを解説

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特別支援学校は、障害があり通常学級での学習や生活が難しい方の進学先の1つです。しかし、特別支援学校の対象となる障害や入学の流れなど不明点が多い場合や、卒業後の進路や就職に不安がある方もいるでしょう。

本記事では、特別支援学校の概要や特徴、入学対象者、入学までのおおまかな流れと卒業後の進路、就職への影響などについて解説します。障害がある方の就職をサポートする就労支援サービスも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

特別支援学校とは?

特別支援学校は、障害があり学習や生活に困難がある子どものための学校です。障害のある子どもの自立や社会参加を見据え、必要な知識技能を得るための指導や支援を行います。教育内容は幼稚園、小学校、中学校または高等学校に準じ、個々に合わせて進められます。

なお、2007年の法改正により養護学校・盲学校・ろう学校はすべて特別支援学校に統一されており、複数の障害に対応した特別支援学校の設置が容易となりました。特別支援学校ではさまざまな教育的ニーズや各地域の実情に応じた対応が可能となり、きめ細かい教育の充実が期待されています。

特別支援学校の特徴

特別支援学校は、障害のある子どもが個々のペースで適切な学びを得るため、少人数学級編制を実施しているのが大きな特徴です。障害の種類や程度に応じ、教育的ニーズに適した指導や支援を提供するため、特別支援学校の生徒数は小学部や中学部では1学級あたり6名、高等部では8名を標準として編成されます。また、2つ以上の障害がある生徒で学級編成する場合は、1クラスあたり3名が基準です。

少人数学級編制で進める教育環境により、個々のペースに合わせた学習や生活面の指導ができ、より丁寧な支援を受けられます。併せて、将来の自立や社会参加を視野に、学校教育に準じた授業に加えて自立活動の支援も重視しています。

特別支援学校の教育環境や授業内容については、以下で詳しく紹介しています。

特別支援学校とは?発達障害も対象となる?教育内容や進路についても紹介

特別支援学級や通級との違い

障害のある子どもが学ぶ環境は特別支援学校だけでなく、特別支援学級や通級など多様な場があります。

特別支援学級は小学校・中学校に設置された、障害のある子どものための学級です。一般的に特別支援学校よりも障害の程度が軽い生徒が所属しますが、特別支援学校と同様に障害による学習や生活面の困りごとを克服し、自立や社会参加を見据えて学校教育に準じた教育が提供されます。

対象者は知的障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障害者、自閉症者、情緒障害者です。

通級は小学校・中学校・高等学校において、通常学級の授業におおむね参加できる生徒に一部障害に応じた特別指導を行う指導形態です。特別支援学級と異なり、通級には知的障害のある生徒は対象に含まれていません。知的障害は日常生活において継続的な支援を必要とする場面が多くあるため、部分的な特別指導を行う通級の指導形態とはなじみにくいことが理由です。

一方で特別支援学級では対象外だったADHD(注意欠如多動症)やSLD / LD(限局性学習/学習障害)のある生徒が、通級の対象者に含まれます。

特別支援学校の入学対象者

特別支援学校の入学対象者は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱者(身体虚弱者を含む)です。加えて、障害の程度が就学基準に該当しているかも入学対象の基準になります。

例えば視覚障害は、「両目の視力がおおむね0.3未満、またはメガネやコンタクトレンズを使用しても通常の文字や図形の認識が困難」など、障害の種類により具体的な入学条件が異なります。詳細は以下を参照ください。

文部科学省「障害のある児童生徒の就学先決定について

発達障害がある子どもの入学は可能?

発達障害*は現状、特別支援学校の入学対象には含まれていません。そのため、発達障害がある子どもは特別支援学級や通級、通常学級などが一般的な進学の選択肢です。ただし、発達障害と知的障害の併存がある場合は、就学相談の結果によって入学可能なケースもあります。

とはいえ発達障害のある子どもは、通常学級や通級に在籍するのが一般的です。ただ発達障害の特性により不適応が起こり、いじめや不登校につながらないよう現在は「特別支援教育」が強化されているのが特徴です。文部科学省でも特別支援教育の重要性が明言されており、今後の拡充も期待されています。

特別支援学校への入学までの流れ

特別支援学校への入学は、4月の入学に向け約1年前から準備を進めていきます。就学予定の約1年前の4月頃から就学相談説明会の告知が掲載されるため、まずは就学相談説明会に参加し、就学相談の申し込みを行いましょう。

その後、就学相談を通じ特別支援学校の見学・説明会に参加し、10月頃までに就学先を決定します。就学先の決定後は特別支援学校の就学時健診を受け、翌年の1月頃に学校指定通知書を受け取り、入学説明会に参加、4月に入学というのがおおまかな流れです。より詳しいスケジュールは、地域の教育センターなどのホームページから確認しておきましょう。

就学先の決定は、特別支援学校での教育や支援内容が子どもの障害の状態に応じているか、必要な教育的ニーズに合うかを考慮し、本人や保護者、専門家の意見なども取り入れながら総合的な観点で教育委員会が判断します。

特別支援学校を卒業した後の進路

文部科学省の「学校基本調査」によると、2022年3月の特別支援学校高等部を卒業した生徒の進路は進学(大学・短大など)、就職、社会福祉施設等への入所・通所、教育訓練機関等への入学、その他(家事手伝い・進路未定など)に分かれています。全体の割合で見ると大学などへの進学率は低く、就職や社会福祉施設等への入所を選択する方が多いようです。

ここでは特別支援学校卒業後の進路について、大学進学を検討する場合や、就職を選択をする際のポイントと注意点などを解説します。

大学へ進学する

障害のある方でも学問に対する適性があり、学ぶことが好きな場合は進学を目指す選択もあるでしょう。しかし、先の「学校基本調査」によると特別支援学校高等部卒業後の大学進学率は1.9%と、一般的な大学進学率に比べると低い割合であり、進学のハードルが高いのも事実といえます。

また、大学のレベルについていくことが厳しい状況に置かれる可能性も少なくありません。進学は、入学後にさまざまな困りごとが生じるケースがあることなども踏まえて検討しましょう。大学進学を目指す場合は、就学相談の段階から特別支援学校側と進学に関する話し合いを行い、準備を進めていくことが大切です。

なお、特別支援学校在籍の場合、受験自体の可否が大学により判断されることもある点に注意が必要です。そのため、特別支援学校の中等部を卒業した方や高等部を中退した方が、大学受験資格を得るために高認試験を受けるケースも見受けられます。

就職する

特別支援学校卒業後は就職を目指す方も多く、先の「学校基本調査」によると29.9%の方が就職を選択しています。これは、特別支援学校の就職支援の手厚さが大きな理由です。就職する際の選択肢も多いため、障害のある方で卒業後に就職を目指したい方やその親御さんにとって、充実した就職支援を強みとする特別支援学校への進学はより良い選択といえるでしょう。

特別支援学校を卒業したら就職に影響はある?

特別支援学校高等部を卒業すると、最終学歴は「特別支援学校高等部卒」となります。一般的な高卒とは異なることから、就職に影響があるのではと不安に感じることもあるのではないでしょうか。

しかし、就職時に高校名を調べる企業があったとしても、参考程度である場合がほとんどです。加えて特別支援学校から就職する際は、就職の選択肢が多く手厚い就職サポートが受けられるため、むしろ就職に強いといえます。特別支援学校を卒業することによる就職への悪い影響は考えにくいでしょう。

就職をする場合の選択肢

特別支援学校卒業後に就職する場合、選択肢として障害者雇用、福祉的就労、就労支援サービス等の利用が挙げられます。それぞれ働き方や雇用条件などが異なるので、自分の希望や特性に合った雇用方法を選択しましょう。

ここでは、各選択肢の概要を詳しく解説していきます。

障害者雇用

障害のある方で障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用の対象となります。障害者雇用は障害のある方が働きやすい環境を整え、合理的配慮や差別禁止を求めて誰もが活躍できる共生社会を目指すために作られた雇用制度です。

なお、企業の雇用条件を満たしている方であれば、障害がある方も一般雇用へ応募できます。しかし、一般雇用は求人数が多いなどのメリットが多い一方、障害の特性への理解や配慮を得にくい場合があり、就職後の定着率も低い傾向にあります。障害者雇用よりも一般雇用は離職につながる可能性がある面も考慮し、働き方を選択することが大切です。

福祉的就労

福祉的就労とは、障害のある方が就労継続支援を受けながら働くことです。就労継続支援にはA型とB型の2種類があり、一般企業への就職が難しい方に働く場の提供や、個々に合った働き方ができるよう支援をおこないます。

就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結び、働くうえでのサポートを受けながら継続的に就労します。時給制で最低賃金以上の賃金を得ることができ、社会保険への加入も可能です。

就労継続支援B型は、継続的な就労が難しい障害のある方に就労の機会を提供します。雇用契約を結ばず、無理のない範囲での短時間就労をおこない、労働時間に合った工賃を得ることができます。

就労支援サービス等の利用

就労支援サービスは、障害者手帳の有無に関わらず障害により就労が困難と認められた場合に利用できます。先述の就労継続支援のほか、就労移行支援や就労定着支援も就労支援サービスの1つです。

就労移行支援では、一般企業での就労を目指す方に、就職に向けた準備や就職活動のサポートをおこなっています。就労定着支援では、就労移行支援などを経て入職後、継続的な就労に向けて業務や生活面などでの困りごとが起きた際に、必要な支援を受けられます。

特別支援学校を卒業後、一般企業への就職に向けて準備を整えていきたい方は、就労移行支援の利用を検討しましょう。

Kaienの就労移行支援

特別支援学校を卒業後に、就労移行支援を利用して一般企業への就職を目指したいと考えている方は、Kaienの就労移行支援がおすすめです。Kaienの就労移行支援を利用した方々は、ITやサービス、金融、不動産など多様な業種・業界で活躍しています。1年後の離職率はわずか9%に留まり、継続的に就労している方が多いのも特徴です。

kaienの就労移行支援では、100職種以上の実践的な職業訓練を通して自分に合う適職を見つけることができます。50講座以上の社会スキル・自己理解講座を毎日開催しているため、障害の理解や就職に向けたさまざまな対策も万全です。さらには障害に理解のある200社を超える企業と連携し、独自求人を含むバラエティに富んだ求人を紹介できます。就職後も最長3年半の就労定着支援があり、就職準備から就職活動、安定就労まで一貫したサポートが可能です。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

生活リズムが安定していない、コミュニケーションに不安があるなど、働く自信がまだ持てない方は、自立訓練(生活訓練)を利用するのも選択肢の1つです。

Kaienの自立訓練(生活訓練)では、ソーシャルスキルを講座で学び、実践的なプロジェクトを通して自立生活に向けた課題の解決や将来設計に取り組んでいきます。日々の実践プロジェクトはカウンセリングを通じて振り返りながら進めていくため、不安や疑問を相談しながら、将来の目標や自分の強みを見つけられるでしょう。

一人暮らしなど自立した生活をするためのスキルを身につけたい方、障害の理解を深め周囲との関わり方などを学びたい方、将来の進路を考えていきたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

特別支援学校を卒業した後の進路は後悔のない選択を

特別支援学校は障害のある方の自立した生活や社会参加を見据え、個々に応じた支援や指導を提供する場です。就職支援が充実しているため、特別支援学校を卒業後の就職に対する不安や心配は少なく、むしろ手厚いサポートを受けながら就職を目指せるでしょう。

特別支援学校を卒業した後の進路は、就職の他に大学進学や就労支援サービスの利用など、それぞれに適した選択をしていくことになります。どのような進路が自分に合っているのか、周囲とよく相談と検討を重ね、後悔のない選択をしましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます