大学を中退したらどうなる?メリット・デメリットと中退後の選択肢をご紹介

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大学に通うことや周囲の人とのコミュニケーション、毎日の勉強などに大きな負担やストレスを感じると、中退を考える人も多いでしょう。中退という選択肢を考え始めたときに気になるのが、「中退後の生活がどうなるのか」ですよね。

この記事では、中退後の選択肢や大学中退のメリット・デメリットなどを紹介します。大学生活に悩んだときの相談先や支援制度についても紹介しているので、中退を検討している人はぜひ参考にしてください。

大学を中退している人はどれくらいいる?

大学を中退しようか迷っている人は、どのくらいの学生が中退を選んでいるのかが気になるポイントではないでしょうか。

はじめに、大学を中退した人の数と割合、中退に至った理由などを紹介します。

大学中退者の数と割合

文部科学省では各大学における授業の実施方針などを調査しており、その中で中退した学生の人数や割合についても調査しています。令和3年度の調査では、大学院を含む大学の中退者数は57,875人でした。これは、全体の1.95%の割合です。

令和2年度は57,913人(1.95%)の学生が大学を中退しており、毎年少なくない人数の学生が中退を選んでいることがわかります。

参考:文部科学省「大学等における令和4年度前期の授業の実施方針等に関する調査及び学生の修学状況(中退・休学)等に関する調査の結果について(周知)」

大学中退の理由

前述の文部科学省の調査では、中退の理由についても調査しています。令和3年度の最も多い中退理由は「転学等」で、全体の16.3%でした。次いで多い理由は「学生生活不適応・修学意欲低下」で、全体の15.7%を占めます。

「転学等」と「学生生活不適応・修学意欲低下」の割合にそれほど大きな開きはなく、多くの学生が学生生活への負担を感じて中退を選んでいることがわかります。

その背景には、生きづらさや学びづらさを抱える学生が多いことが推測できるでしょう。現在大学の中退を考えている人の中にも、さまざまな事情から「大学生活がうまく送れない」と感じている人が多いのではないでしょうか。

参考:文部科学省「大学等における令和4年度前期の授業の実施方針等に関する調査及び学生の修学状況(中退・休学)等に関する調査の結果について(周知)」

発達障害と大学中退の関係

発達障害*を持つ人から、大学の中退について相談を受けるケースも少なくありません。発達障害の特性によって、大学生活で次のような悩みを持つ人が多くいるためです。

  • スケジュール管理ができずに勉強についていけない
  • レポートの提出期限に遅れてしまう
  • ノートを取るのに時間がかかる
  • 手書きでノートを取るのが難しい
  • 先生や周囲の学生とうまくコミュニケーションが取れない
  • ゼミやサークルでその場の空気が読めない など

このような発達障害の特性は見落とされることも多く、周囲の気づきや配慮が受けられないために本人に大きなストレスや負担がかかってしまうケースがあります。その結果、大学に通うのが難しくなったり、精神疾患を引き起こしてしまったりすることで、中退してしまう人も多いのです。

参考:発達障害情報・支援センター「大学生活」

大学中退後の選択肢

大学を中退したあとの生活には、次のような選択肢があります。

  • 正社員・公務員として働く
  • アルバイトや契約社員として働く
  • 資格を獲得する
  • 別の学校に通い直す
  • 留学する
  • 起業する

それぞれの選択肢について、以下で詳しく見ていきましょう。

正社員・公務員として働く

大学中退後の進路として、多くの人が働くことを考えているのではないでしょうか。その中のひとつが、正社員もしくは公務員として働くという選択肢です。正社員や公務員は安定したイメージがあるため、目指す人も多いでしょう。

大学を中退すると、就職活動では高卒の扱いになります。大卒の求人には応募できないため、高卒可の求人の中から希望に合うものを探してみましょう。

公務員になりたい場合は、公務員試験を受ける必要があります。高卒で受けられる公務員試験も多くあるため、公務員を希望する人は国や自治体の公務員試験について調べてみましょう。

アルバイトや契約社員として働く

正社員や公務員として働くのが難しいと感じる人や、自由度の高い働き方をしたい人は、アルバイトや契約社員として働くという選択肢があります。正社員や公務員試験よりも採用のハードルが低く、中退後すぐに働き始められる可能性が高いのがメリットです。

心身の不調が理由で大学を中退する場合、中退後すぐにフルタイムで働くのは負担が大きいと感じる人も多いはず。シフト制のアルバイトなら、自分の体調に合わせて短時間から働き始められます。

資格を獲得する

就きたい職や興味のある分野があるなら、資格を獲得するために勉強するのもよいでしょう。資格が必須の職に就きたい場合は、中退して資格取得のための勉強に専念するのも選択肢のひとつです。

大学に通いながら資格の勉強をする方法もありますが、中退を検討するほど大学生活を負担に感じている人にとっては、大学と資格の勉強を両立するのが難しいケースも少なくありません。特に生きづらさや学びづらさを感じている人は、大学に通うだけで心と身体が疲れてしまい、帰宅後や休日に資格の勉強をするのは難しいでしょう。

このような場合は、大学中退後に資格のための勉強に本格的に取り組むという選択肢もあります。

別の学校に通い直す

通っている大学の雰囲気や勉強内容が自分には合わないと感じる場合、別の学校に通い直す人もいます。実際、前述の文部科学省の調査では、最も多い退学理由が「転学等」でした。

他に学びたいことや就きたい職が見つかったなら、それに合う大学や専門学校への転学を検討してみましょう。環境が変わったり希望する分野の勉強に取り組んだりすることで、大学生活で感じていた負担やストレスを減らせる可能性があります。

留学する

「海外で学びたいことがある」「日本の大学の文化や環境に馴染めない」という人は、留学という選択肢もあります。海外の文化や価値観に触れることができ、外国語のスキルも身につくので、充実した生活が送れるでしょう。

ただし、留学するには言語の壁やお金の問題など、ハードルが高いのも事実です。勢いや「なんとなく」といった理由で留学を決めてしまうと、かえって負担やストレスが大きくなる可能性もあるため、全員におすすめできる選択肢ではありません。

起業する

中退後の働き方として、起業するのも選択肢のひとつです。中には「大学在学中に始めた事業が軌道に乗ってきたから、事業に集中するために中退する」という人もいるかもしれません。

起業するのに学歴は関係なく、採用試験などを受ける必要もないため、自分が行動すればいつでも始められるのが起業の大きなメリットです。ただし、起業するにはアイデアやスキルが必要で、起業したからといって全員が成功できるわけではない点に注意が必要です。

大学を中退するメリット

大学中退にはマイナスなイメージがあるかもしれませんが、次のようなメリットもあります。

  • 自分のやりたいことに集中できる
  • 大学の人間関係から開放される
  • 学費を払う必要がなくなる

ここでは、大学を中退するメリットについて詳しく見ていきましょう。

自分のやりたいことに集中できる

大学に通っている間は、授業や勉強に多くの時間を拘束されます。具体的にどのくらいの時間を拘束されるかは大学や学科などによって異なりますが、実験や実習、課題などで「自由な時間がほとんどない」というケースもあります。大学の勉強の他にやりたいことがある人は、なかなかやりたいことに時間をかけられずもどかしく感じるでしょう。

大学を中退すると、当然ながら大学に時間を拘束されることはありません。そのため、自分のやりたいことに集中できるのが大きなメリットです。勉強や課題に追われることなく、すべての時間を自分のために使うことができます。

大学の人間関係から開放される

先生や周囲の学生との関係に大きなストレスを感じている人にとって、大学の人間関係から開放されるのは中退の最も大きなメリットでしょう。大学を中退してしまえば、そのコミュニティの人との関わりはなくなります。

ただ、人間関係のストレスを理由に中退を考えている場合、「専門のカウンセリングを受ける」「学科やゼミの変更について大学に相談する」といった選択肢もあります。せっかく入学した大学を卒業したいと考える人も多いでしょうから、中退を決断する前に話しやすい人や専門機関に相談してみるのもおすすめです。

学費を払う必要がなくなる

大学を中退すると、それ以降の学費を払う必要はありません。年間の学費は、国立大学で約50万円、私立大学になると100万円以上かかることもあります。このように大学の学費は決して安くはないため、学費がかからなくなるのは経済的に大きなメリットです。

大学に行くのがストレスになるなら、中退して就職することで収入を得るという選択肢もあるでしょう。

大学を中退するデメリット

大学を中退するメリットを紹介しましたが、やはりデメリットも少なくありません。大学中退を検討している人は、次のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。

  • 就職が不利になる場合がある
  • 面接などで中退について聞かれることが多い
  • 奨学金の返済が始まる
  • 大学の施設や大学生向けのサービスを利用できなくなる
  • 大学の友人・知人と疎遠になる場合がある

これらのデメリットについて、以下で具体的に解説します。

就職が不利になる場合がある

大学を中退して就職しようと考えている人は、就職の際に中退が不利に働く場合があることに注意してください。中退の理由によっては「すぐに投げ出してしまう人」「仕事もすぐにやめてしまうのでは」といった印象を与える可能性があります。

また、大学を中退すると最終学歴が高卒になります。大卒と高卒では、求人数や給与に差が出てしまうのが現実です。中退後に就職を希望する人は、就きたい職や企業の求人を中退前にチェックしておきましょう。就職のために中退したのに、実際には希望の職につけないという可能性もあります。

面接などで中退について聞かれることが多い

就職活動では履歴書を提出する必要があり、大学を中退したことも記載しなければなりません。そのため、面接の際には中退した理由について聞かれることが多くなります。家庭の事情や経済的理由といったやむを得ない事情でない場合、中退理由によっては先方にマイナスなイメージを与えてしまう可能性があるため、注意が必要です。

中退を選ぶ理由は人それぞれですが、就職を希望する人は前述の就職が不利になる場合もある点も踏まえて、慎重に検討するようにしましょう。

奨学金の返済が始まる

奨学金を借りている人は、大学を中退したタイミングで返済が始まる点にも注意してください。奨学金の返済を滞納すると、利子がついて返済額が多くなってしまうおそれがあります。事情によっては返済の猶予や減額が認められることもありますが、基本的には「中退したらすぐ返済が始まる」と考えておきましょう。

大学を中退すると、前述のようにスムーズに就職できないケースもあります。そんな中で奨学金の返済がスタートすると、経済的な負担や心理的なストレスが大きくなってしまいます。奨学金を借りている人は、中退後の収入の見込みと毎月の返済額も考慮したうえで中退について考えなければなりません。

大学の施設や大学生向けのサービスを利用できなくなる

大学を中退すると、当然ながら大学生向けのサービスは利用できなくなります。奨学金や大学の図書館、キャリアセンターでの相談や各種学割など、大小さまざまな影響があります。これらの制度や施設、サービスをよく利用している人にとっては、大きなデメリットになるでしょう。

中退を考えている人は、大学の施設や学生向けのサービスなどをどのくらい利用しているか、自分の普段の生活を振り返ってみてください。これらの利用頻度が高い人ほど、中退後の影響は大きくなります。

大学の友人・知人と疎遠になる場合がある

大学を中退すると、大学の友人・知人とは疎遠になるケースも珍しくありません。もちろん中退後も会いたい人とは連絡を取り続けることはできますが、「なんとなく気まずい」「生活リズムが合わない」といった理由で自然と距離ができる可能性もあります。

特に、「友人や知人が大学生活を楽しんでいるのに、自分は中退後の就職が決まっていない」のような状況になると、連絡をしづらいと感じる人も多いでしょう。中退前は連絡を取り続けるつもりでいたとしても、これまでどおりの関係を続けられるとは限りません。

大学の中退に関する相談先

大学生活や中退について、一人で悩みを抱え込むのは良くありません。「大学に行きづらい」「中退したほうがいいかもしれない」と悩んでいる人には、次のような相談先があります。

  • 学生支援センター・学生相談室
  • 保健管理センター
  • 医療機関

それぞれどのような相談ができる機関なのか、以下で紹介します。

学生支援センター・学生相談室

学生支援センター・学生相談室は大学生活についてさまざまな相談ができる場所で、各大学に設置されています。周囲とのコミュニケーションや学習の進め方、進路など、不安に感じることや悩んでいることを何でも相談できます。

専任の教員や臨床心理士の資格を持つカウンセラー、キャリアカウンセラーなどが在籍しているので、それぞれの悩みに応じて専門知識を踏まえながら解決策を一緒に考えてもらえるでしょう。

保健管理センター

大学生活でのストレスが多いと心身に不調が出ることもあるため、保健管理センターに相談するのも選択肢のひとつです。大学に設置されている保健管理センターは病気やケガをしたときに行く場所というイメージがあるかもしれませんが、普段の大学生活や体調などに関する悩みについても相談できます。

必要に応じて外部の医療機関を紹介してもらえるので、「心や身体に不調を感じるけど、どの病院に行けばわからない」といった場合にも、保健管理センターに相談してみるのがおすすめです。

医療機関

継続的な治療が必要な場合や、発達障害など生きづらさにつながる特性がある場合には、医療機関に相談してみてください。今の自分の状態を医師に診断してもらい、適切な治療や対策を行うことで、症状の改善や生きづらさの緩和につながる可能性があります。

近年では、大学生や社会人になってから発達障害に気づく人も少なくありません。コミュニケーションがうまく取れなかったり、計画的に学習を進められなかったりする場合には、発達障害の特性が関係しているケースもあります。

中退を考えるほど生きづらさや学びづらさを感じている人は、一度医療機関を受診してみましょう。適切な診断が受けられれば、自分に必要な支援制度やサポートを見つけやすくなります。

就職が不安な人は就労移行支援の利用もおすすめ

「大学を中退する決意を固めている」「すでに大学を中退した」といった場合、多くの人が就職活動を見据えているかと思います。しかし、就職先が見つかるのか不安な人もいるでしょう。

中退後の就職が不安な人は、就労移行支援を活用するという選択肢もあります。就労移行支援とは、発達障害を含め障害を持つ人の就労を支援する障害福祉サービスです。それぞれの障害特性に応じた職業訓練や日常生活に関する指導が受けられ、就活支援や就職後の定着支援も受けられます。

また、日常生活に不安を感じる人には、自立支援(生活訓練)という障害福祉サービスもあります。自立支援(生活訓練)は、自立した日常生活や社会生活を送るために必要な支援や訓練が受けられる制度です。

このような各種支援制度が用意されているため、必要に応じて活用してみてくださいね。

大学中退の良い面・悪い面を理解して、自分にあった選択を

大学中退には、メリットもあればデメリットもあります。中退のデメリットは決して少なくないため、これからの進路を考えながら慎重に選択しましょう。特に生きづらさや学びづらさを感じている人は、一人で決断せずに周囲の人や大学、医療機関に相談することが大切です。

発達障害など生きづらさを抱えている人の就職活動では、就労移行支援や自立支援(生活訓練)を利用するという選択肢もあります。特性に応じた支援が受けられるので、ぜひ活用してみてくださいね。

Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)を実施しています。発達障害(グレーゾーンを含む)のある大学生・専門学校生向けの支援プログラム「ガクプロ」も実施しているので、大学生活に悩んでいる人はお気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群といわれます。