心理検査について聞いたことがあり、一度受けてみたいと思っている人もいるかもしれません。しかし、いざ検査を受けるとなると「どのように調べるのか」「検査で何がわかるのか」「どこで受けられるのか」など、いろいろな疑問が浮かぶのではないでしょうか。
本記事では、心理検査の概要や検査の種類、検査費用や検査の流れを解説します。心理検査は診療だけでなく、自己理解や生活改善などにも役立つ方法です。心理検査を受けるか迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
心理検査とは
心理検査は、個人の心理的な特性や状態を評価するためのテストです。知能や性格、行動などの特徴を理解し、必要な支援や治療を提供するために行われます。
具体的には、以下のような内容がわかります。
- どれくらい物事を理解し、問題を解決する力があるか
- どんな性格を持っているのか
- どのような行動をとる傾向があるか
- 他の人との関わり方やコミュニケーションの取り方
- 何が原因で困っているのか、どんなサポートが必要か
心理検査は大きく分けると「知能・発達検査」「人格検査」「認知機能検査」の3つに分類されています。
- 知能・発達検査
- 人格検査
- 認知機能検査
具体的な検査方法は後ほど説明します。
心理検査を受けるメリット
心理検査というと「医師が病気を診断するためのもの」というイメージがあるかもしれません。しかし心理検査を受けると、自分の特徴や能力の凸凹について理解が深まったり、生活を送りやすくするためのヒントが見つかったりするメリットもあります。
自分の特徴や能力の凸凹について理解が深まる
心理検査を受けることで、自分の特性や能力の得意・不得意が明確になります。
人間には「自分の知っている自分」だけでなく、「他人が知っている自分」や「誰も気づいていない自分(無意識)」が存在します。心理検査を行うことで、これらの側面を知るヒントになるでしょう。
普段生活しているだけでは気づかない自分の特徴や能力について理解を深められるのが、心理検査を受けるメリットです。
生活を送りやすくするためのヒントが見つかる
自己理解が深まると、日常生活や社会生活をよりよく変えていけます。例えば、集中力が続かない場合、短い時間でのタスク管理を工夫するなど、具体的な対応策を講じられるでしょう。
必要な支援・サポートを得やすくなるのもメリットです。例えば発達障害*の方の中には、ささいな音が気になって仕方がないという特性を持つ人がいます。このような際に心理検査の診断結果があれば、静かな場所にデスクを設けるといった合理的な配慮を、職場に求めやすくなるでしょう。
心理的な特徴は人に伝わりにくいものですが、客観的な検査結果があれば、第三者に理解を求めやすくなります。
知能・発達検査の種類
知能・発達検査は、個人の知能や発達状況を評価するための検査です。これらの検査は、学習能力や問題解決能力、発達の度合いを客観的に測定することを目的としています。
知能検査は、主に注意力や記憶力、語彙力といった知的能力を測定するための検査です。知能指数(IQ)を算出し、個人の知的能力がどの程度かを数値で表現します。
一方、発達検査は、子どもの心身の発達状態を多角的に評価するための検査です。発達指数(DQ)を算出し、認知能力や社会性、運動能力などの発達度合いを数値化します。
次項から、知能・発達検査の種類として、WAIS-Ⅳ、新版K式発達検査、田中ビネー知能検査Vを解説します。
WAIS-Ⅳ
WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー)は、発達障害や知的障害の評価に用いられることが多い、成人向けの知能検査です。この検査では、4つの主要な指標を測定し、総合的な知能指数(IQ)を算出します。
【4つの指標】
指標 | 検査項目 | 例 |
---|---|---|
言語理解 | 言葉を使って情報を理解し、表現する能力 | 質問に対する答えや、言葉の意味を理解する力 |
知覚推理 | 目で見た情報をもとに問題を解決する能力 | 図形を見てパターンを見つける力や、物の配置を考える力 |
ワーキングメモリー | 短い時間内に情報を記憶し、その情報を操作する能力 | 数字を逆に言う課題や、簡単な計算をする力 |
処理速度 | 簡単な課題を速く正確に行う能力 | シンボルを見てすばやく反応する力や、決められたルールに従って作業を進める力 |
知能指数(IQ)は、上記の指標の結果を総合して算出される数値です。この数値は、個人の全体的な知的能力を示します。高いIQは学習や問題解決における強みを示し、低いIQは特定の支援やサポートが必要であることを示す場合があります。
WAIS-Ⅳについては下記記事で詳しく紹介しておりますので、ぜひご参考ください
関連記事:知能検査とは? 大人の知能検査 WAIS-Ⅳ を読み解く
新版K式発達検査
新版K式発達検査は、0歳から成人までの発達状態を評価するための心理検査です。発達の遅れや偏りを多面的に評価できるため、特に発達障害の診断やサポートに役立てられています。
新版K式発達検査は、以下の3つの領域を評価します。
領域 | 検査項目 | 例 |
---|---|---|
姿勢・運動 | 体を動かす力やバランスを取る力 | 歩行やジャンプなどをできる力 |
認知・適応 | 物事を理解する力や考える力 | パズルを解いたり、色や形を見分けたりする力 |
言語・社会 | 言葉を使って話す力や聞く力、社会的な適応能力 | 質問に答えたり、話を理解したりする力 |
新版K式発達検査は、子どもが遊んでいるように感じられる課題を使って検査を行うため、自然な行動を観察できるのが特徴です。また、日本の言語や文化に合わせて考案されているため、日本人の検査に適しています。
田中ビネー知能検査V
田中ビネー知能検査は、フランスのビネーが開発した検査をもとに日本の心理学者の田中寛一が作成した、知能を評価するための心理検査です。
田中ビネー知能検査Vは年齢によって検査内容が異なります。
【2歳~14歳】
検査項目 | 内容 |
---|---|
知能指数(IQ) | 知能の発達レベルを数値で表したもの |
精神年齢(MA) | 実年齢に対して知能の発達度合いを示したもの |
【14歳以上】
検査項目 | 内容 |
---|---|
結晶性領域 | 言語や知識に関する能力 |
流動性領域 | 問題解決や創造的な能力 |
記憶領域 | 情報を記憶し、保持する能力 |
論理推理領域 | 論理的な推論や分析の能力 |
田中ビネー知能検査Vは年齢ごとに問題が分類されているため、発達の進行を他の子どもと比較しやすいのが特徴です。また、検査の結果だけでなく、検査中の行動も観察して記録することで、子どもの特性を総合的に理解できます。
人格検査の種類
知能・発達検査が物事を理解する力や問題解決能力を調べるのに対し、人格検査は性格や物事の捉え方を調べる検査です。日常生活や職場での行動パターン、思考のくせ、感情の動きなど、内面的な特徴を多角的に理解するために用いられます。
知能・発達検査は、心理的な問題や精神疾患の診断、治療計画の作成に役立つ方法です。また、検査を受ける側としては、自分の性格特性を理解し、強みや課題を把握するために役立つでしょう。例えば、職業適性を見極めるために、人格検査は効果的です。
具体的な検査種類として、投影法、作業検査法、質問紙法の3つを紹介します。
投影法
投影法では、正解がない、あいまいな図形や文章を提示し、自由に反応してもらいます。その反応をデータとして集め、無意識の性格傾向を理解することを目的とします。
例えば「ロールシャッハテスト」は、図版を見せ、それが何に見えるかを自由に答えてもらう投影法の検査です。また、SCT(文章完成テスト)では、未完成の文章を完成させてもらい、書き方や筆跡、行間から性格傾向を判断します。
投影法の長所は、深い意識(前意識・無意識)を捉えやすいことと、社会的な常識や文化の影響を受けにくいことです。短所としては、結果を数値化しにくく、検査者の主観が影響しやすい点が挙げられます。
作業検査法
作業検査法は、一定の簡単な作業を行わせて、その様子や結果を分析することで人格の特性を理解する心理検査です。
代表的なものにはクレペリン精神作業検査法やベンダー・ゲシュタルトテストがあります。
クレペリン精神作業検査法
連続して簡単な計算問題を解くことで、作業効率や注意力、持続力などを評価する方法です。この検査によって、精神的な疲労度や集中力の変化を把握できます。
ベンダー・ゲシュタルトテスト
特定の図形を模写することで視覚と運動の協応性を評価する方法です。
作業検査法は、発達障害や脳の機能障害を検出するために役立てられています。また、発達障害の傾向がある方が、自身の特性を具体的に理解するためにも有効です。
質問紙法
質問紙法は一般的なアンケートのように、「はい」や「いいえ」といった選択肢を選んで回答してもらい、意識的な心理的特徴を把握するための方法です。結果の数値化が容易なため、客観的な比較がしやすいという特徴があります。また、集団実施が可能で、多くの人を一度に検査できるのもメリットです。
一方で、質問に対する回答が自己申告に基づくため、回答者の言語能力や理解力によって結果が変わりやすい傾向があります。また、意識的な回答が中心になるため、無意識の心理的特徴をあまり把握できません。
認知機能検査の種類
認知機能は、記憶、注意、言語、問題解決などの日常生活で必要な知的スキルです。これが低下すると、日常生活や仕事に支障をきたします。
認知機能検査は、認知機能の低下や異常を早期に発見し、適切な対策を講じるために行います。例えば、発達障害がある方は、不注意や他者の感情が読めないといった特定の側面に課題があることが珍しくありません。認知機能検査を受けることで、どの部分に困難があるのかを詳しく把握し、個別の教育プランや生活支援プランを作成できます。
主要な認知機能検査の一つが、HDS-R(長谷川式認知症スケール)です。HDS-Rは簡単な質問に答える形式で記憶力や注意力を評価できるため、認知症のスクリーニングテストとして広く使われています。また、ADAS(アルツハイマー病評価スケール)は、認知機能のさまざまな側面を詳しく測定できる方法です。
心理検査が受けられる場所と検査費用
心理検査は、主に病院や支援機関で受けられます。
病院の場合、心療内科や精神科を受診することが一般的です。これらの科では、専門医が診断と検査を行います。病院での心理検査の費用は、検査の種類や病院によって異なりますが、数千円から数万円程度が目安です。
また、精神障害や知的障害などの診断や支援を提供する支援機関でも、心理検査を受けられます。支援機関は、「まず自分の得意・不得意を知りたい」「心理検査を受けるか迷っているので相談したい」といった方におすすめです。
支援機関の費用は、発達障害者支援センターのような公的機関では、無料で受けられる場合があります。民間の支援機関の費用は幅がありますが、数千円から数万円程度が目安です。
以下の記事では、心理検査が受けられる場所と検査費用を解説しておりますので、ご参考ください。
関連記事:心理検査とは
心理検査の流れ
医療機関で心理検査を受ける手順について解説します。心理検査は段階的に進められ、以下のステップを踏みます。
- 初回面接・カウンセリング
最初にカウンセリングを行い、現在困っていることやこれまでの経緯について話を伺います。この段階で、どの心理検査が最も役立つかを判断します。 - 心理検査
心理検査を実施します。検査は数時間かかることがあり、負担を軽減するために2日から3日に分けて行うことも一般的です。また、自宅でアンケート方式の心理検査を行うこともあります。 - 追加の心理検査
追加の心理検査が必要な場合、複数回にわたり検査を行います。これにより、より詳細な評価が可能になります。 - フィードバック
検査結果を分析し、カウンセリングの中で担当心理士と結果を共有します。これに基づいて、今後のカウンセリング方針や生活改善の方法を考えます。必要に応じて、検査結果をかかりつけの病院や職場に提供することも可能です。 - 他の医療機関の紹介
検査結果に基づいて、他の医療機関を紹介することがあります。
心理検査で自己理解を深めよう
心理検査は、個人の心理的な特性や状態を評価するための重要なツールです。知能や性格、行動などの特徴を理解し、必要な支援や治療の基礎情報を得ることができます。また、自己理解が深まり、日常生活や社会生活をより良くするヒントを得られる場合も多いでしょう。
「Kaien」では、本記事で紹介したWAIS-Ⅳと、その低年齢層向けといえるWISC-Ⅳが受けられる「Kaien心理検査特急便」を提供しています。
【対象年齢:】
・WAIS-Ⅳ:16歳〜90歳
・WISC-Ⅳ:5歳0カ月〜16歳11カ月
【検査内容】
検査は1~2回の来所で行い、多くの方が1回で済みます。検査時間は1~2時間程度です。結果は検査から1週間程度でお届けし、オンライン面談(Zoom)で専門家が詳しく説明します。
【費用】
4万円
検査を受ける方の負担が少ない方法となっていますので、自己理解や生活改善などのために、お気軽にご活用ください。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます