職業訓練とは?種類やコース、受講のメリットから申し込みの流れまで解説

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「仕事を探しているけれど、資格や技能が特にない」「就職活動をスムーズに進めるためにスキルアップしたい」などと考えている求職者の方は多いのではないでしょうか。

このような時、無料で活用できる公的な制度が職業訓練です。この記事では職業訓練の種類やコース、利用できる条件、活用するメリット、申し込みの流れについて解説します。

まずは労働局が所管する「職業訓練」。その後、障害福祉サービスにおける就労移行支援や自立訓練(生活訓練)で「職業訓練」を行うケースをご紹介します。

職業訓練とは

職業訓練は、就職に役立つ知識やスキルを習得するための公的な制度です。ハローワーク(公共職業安定所)や職業訓練校、民間の教育機関や専門学校、オンライン学習(eラーニング)などにおいて、基本的に無料で受けられます。

職業訓練を活用するパターンとしては、次の3つが挙げられます。

  • 失業した人が、新たな職場で必要とされるスキルを身につけるため
  • 学校を卒業したばかりの人が、就職に役立つ実践的なスキルを身につけるため
  • 就業中の人が、新たな分野でのキャリアを目指してスキルを習得するため

目的によって、利用する職業訓練の種類やコースが変わります。

職業訓練の種類

職業訓練は、公共職業訓練と求職者支援訓練の2種類に分けられます。公共職業訓練とは、失業保険を受給している求職者が、必要な技能や知識を習得するために受ける職業訓練です。一方で求職者支援訓練は、失業保険を受給できない求職者が利用する職業訓練です。

それぞれ詳しく解説します。

公共職業訓練

公共職業訓練とは、主に雇用保険(失業保険)を受給している求職者を対象に、就職に必要なスキルや知識を習得するために行われる公的な訓練です。これらの訓練は、国(ポリテクセンター)や都道府県(職業能力開発校)、都道府県が委託した民間機関で受けられます。

公共職業訓練には、下表のように一般の離職者、障害をお持ちの離職者、在職者、学卒者に向けた4つの制度があります。

離職者向け障害者向け在職者向け学卒者向け
対象者雇用保険の受給資格のある人雇用保険の受給資格のある人高卒者など在職労働者
受講費用無料(テキスト代などを除く)有料
実施機関・ポリテクセンター・職業能力開発校・民間機関・職業能力開発校・障害者支援機関・民間機関・ポリテクセンター・職業能力開発校・ポリテクセンター・職業能力開発校
訓練期間おおむね3ヶ月~2年おおむね3ヶ月~1年1年または2年2~5日
手当基本手当(失業手当)+500円/訓練日+寄宿手当なし

求職者支援訓練

求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない求職者(受給が終わった方を含む)を対象に、就職に必要なスキルや知識を習得するための職業訓練です。

対象者ハローワークの求職者で雇用保険(失業保険)を受給できない人
受講費用無料(テキスト代などを除く)
実施機関民間機関
訓練期間2ヶ月~6ヶ月
手当受講手当(月10万円)+通所手当+寄宿手当

手当を受けるには、本収入が月8万円以下で、世帯収入が月30万円以下という条件があります。本収入が12万円以下、世帯収入が月34万円以下を満たす場合は、通所手当のみ受け取れます。

公共職業訓練と求職者支援訓練の主な違いは以下の通りです。

公共職業訓練求職者支援訓練
主な対象者と費用・雇用保険受給者かつ求職者(無料)・雇用保険受給者かつ障害をお持ちの求職者(無料)・在職者(有料)・学卒者(有料)雇用保険を受給できない求職者(無料)
実施機関ポリテクセンター、職業能力開発校、民間機関民間機関
訓練期間対象者によって異なる2ヶ月~6ヶ月

基本的には、現在の状況によって利用できる職業訓練の種類が決まります。不明な点があればハローワークなどの公的な就職支援機関に相談するとよいでしょう。

職業訓練で受けられるコース

職業訓練で受けられるコースは、ものづくりやIT関連、一般事務など幅広い分野から選べます。

【コース例】

  • 介護サービス科
  • OA事務科
  • 医療事務科
  • 電気設備技術科
  • 生産設備メンテナンス科
  • 工場管理技術科(電気保全)
  • 組込みソフトウェア科
  • スマート情報システム科
  • ICTエンジニア科

これらのコースでは、専門的な知識や技術が学べます。関連する資格を取得しやすくなるでしょう。受けられるコースは機関によって異なるため、地域の訓練機関を調べてみるとよいでしょう。

参考:ハローワーク「訓練検索・一覧」

職業訓練を利用するメリット

職業訓練を受けるメリットは、経済的な負担を抑えながら、就職の可能性を広げられることです。ここでは、就職支援や給付金、通所による生活リズムの改善の3つに分けてメリットを解説します。

無料で就職の支援を受けられる

公共職業訓練や求職者支援訓練は、就職に必要なスキルや資格を無料で習得できる制度です。テキスト代などは自己負担となるものの、訓練自体の費用は基本的にかかりません。経済的な負担を抑えながら、就職に有利なスキルを身につけられます。

さらに、訓練を受講することで、ハローワークや訓練実施機関による就職支援を受けられることも大きなメリットです。訓練期間中および修了後にキャリアコンサルティングや職業紹介が行われ、就職活動をサポートしてくれます。

給付金の支給を受けられる

公共職業訓練を利用する雇用保険受給者は、雇用保険(失業手当)を受けながらの職業訓練が可能です。もしも訓練中に所定給付日数が終了した場合は、訓練終了まで受給を延長できます。

また、要件を満たすと各種手当も受け取れます。

公共職業訓練※雇用保険の受給資格のある人求職者支援訓練
受講手当訓練を実施した1日あたり500円月10万円
通所手当訓練期間までの交通費訓練期間までの交通費
寄宿手当原則1万700円(上限)※訓練のために遠隔地に行く場合や通所が困難な場合

生活リズムを整えやすい

職業訓練を始めると、一般的に数ヶ月~2年の間、教育機関に通い続けます。この期間が、社会人に必要な規則正しい生活を整えるのに役立ちます。

なぜなら、職業訓練のスケジュールは、学校の時間割と似ている部分があるからです。朝から夕方まで訓練を受けて座学や実習などを行います。

スケジュールに従って受講するうちに、日中に活発に活動し、夜に休息を取るという自然な生活リズムができるでしょう。

職業訓練の申し込みの流れ

職業訓練に申し込んで受講を始めるまでの手順は以下の通りです。

  1. ハローワークで求職申し込み・職業相談

最寄りのハローワークで求職申し込みを行い、希望する職業訓練コースについて相談します。

  1. 訓練の受講申し込み

訓練コースが決まったら、受講申込書を記入し、ハローワークの窓口に提出します。同時に職業訓練受講給付金の申請を行うことも可能です。申込書と一緒に、本人確認書類や失業保険受給者証などの必要書類を準備します。

  1. 面接・筆記試験などを受験

訓練機関によっては、受講前に面接や筆記試験が課されます。試験の日時や内容は、訓練機関の案内で確認してください。

  1. 受講あっせん

訓練機関からの合格通知を受け取った後、ハローワークで受講あっせんの手続きを行います。この手続きにより、正式に訓練の受講が決まります。

以上の手順を踏むことで、職業訓練の受講が可能になります。

障害を持っている方が利用できる職業訓練や就労サポート

障害をお持ちの方の中には、訓練内容の柔軟な調整や特別なサポートを必要とする場合があります。このような時は、障害者職業能力開発校での職業訓練を検討するとよいでしょう。また、職業訓練以外の福祉サービスとして、就職移行支援や自立訓練(生活訓練)も利用できます。

障害者職業能力開発校

障害者職業能力開発校は、一般の公共職業能力開発施設での職業訓練が難しい障害者の方のための施設です。障害の特性に配慮した職業訓練を受けられます。障害者職業能力開発校以外にも、職業リハビリテーションセンターや障害者向けコースのある一般の職業能力開発校でも受講可能です。

障害者職業能力開発校では、個々の特性やニーズ、能力に応じた個別の訓練プログラムが提供されます。このプログラムでは、就労に必要な日常生活スキルや社会適応スキルの訓練も選べることが特徴です。

職業スキルの習得のための実践的な訓練は、バリアフリー環境や教材や機器の工夫などの特別な配慮がある点を除いて、一般的なプログラムと基本的には変わりません。ITスキルや製造技術、デザイン、介護など、幅広い職種に対応したコースが用意されています。

就労移行支援

就労移行支援は、一般就労を希望する障害者の方の就労を支援する福祉サービスです。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書があり、市区町村が必要と認めれば利用できます。例えば、発達障害*の診断を受けていないグレーゾーンの方でも利用可能です。

就労移行支援では、国から認可を受けた就労移行支援事業所に通って支援を受けます。具体的には、職業訓練と就活支援、定着支援の3つです。

職業訓練では、事業所内での座学や訓練、企業での実習を通じて、働くためのスキルやマナーを習得できます。内容は事業所によって違いますが、オフィス事務やIT・デザインなどの幅広い職種の実践的な訓練がある点では、公的な職業訓練と変わりません。

しかし、就労移行支援の中には、発達障害に特化した事業所のように、特定の分野に強みを持つ事業所もあります。こうした事業所では、より質の高い訓練を受けられることがメリットです。

就活支援では、個々の特性に合った求人紹介や、応募書類の作成や面接対策のサポートを受けられます。また、定着支援では、就職後の職場での困りごとを相談したり、合理的な配慮を求める職場訪問を頼んだりできます。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を送れるよう、身体機能や生活能力の向上を目的とした訓練を提供する福祉サービスです。就職を目的とする必要はなく、「生活の基礎をつくる」「障害の強み・弱みを理解する」といった目的でも活用できます。

自立訓練(生活訓練)を実施しているのは、先述した就労移行支援事業所です。ただし、就労移行支援と自立訓練を同時に利用することはできません。

具体的な訓練内容としては、食事の準備や掃除、金銭管理、セルフケアなど、生活の基礎となるスキル習得の訓練が挙げられます。また、社会参加に必要なコミュニケーション能力や人間関係の構築方法なども代表的な訓練内容です。

自身にあった職業訓練を活用しよう

職業訓練は多くの人が無料で利用でき、就職につながるスキルを獲得できる有益な制度です。自分の希望や特性に合った職業に就くために、職業訓練を活用してはいかがでしょうか。

職業訓練には障害者向けの支援もありますが、民間のサービスを活用することで、より個別のニーズに合った訓練を受ける選択肢もあります。

Kaienは、発達障害の方に特化した就労移行支援事業所です。例えば、不注意の特性があるADHDの方や読み書きが苦手なLDの方などに対して、障害の強み・弱みを考慮した職業訓練を行っています。

また、ストレス対処や感情コントロール、生活リズムの整え方などを学べる自立訓練(生活訓練)も提供しています。一般就労を目指す際に、ぜひお気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。