ハローワークで受けられる障害者向けの就労支援とは?メリットと注意点も解説

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ハローワークでは、障害者向けの就労支援が提供されていますが、どのような支援が受けられるのか気になる方も多いでしょう。この記事では、ハローワークが行う支援内容について詳しく解説します。また、ハローワーク以外で活用できる支援制度として「就労移行支援」も紹介します。

障害者の方が自分に合った職場に就職するためには、これらの就職支援の上手な活用が欠かせません。ぜひ最後までご覧ください。

ハローワークとは?

ハローワーク(公共職業安定所)は、厚生労働省が運営する全国規模の就職支援機関です。全国に544カ所(2024年4月時点)の拠点があり、さまざまな雇用サービスを無料で提供しています。

具体的なサービスとして、以下が挙げられます。

求人情報の提供

豊富な求人情報を提供しています。ハローワークでの検索・閲覧のほか、インターネットサービスを通じて自宅からでも利用が可能です。

求人事業所への紹介

応募したい企業が決まった場合、ハローワークから紹介状を発行し、面接日時や応募手続きについてサポートします。

応募書類や面接の支援

応募書類(履歴書や職務経歴書)の添削や面接の指導も行っており、模擬面接を通じた練習機会も提供しています。

支援セミナーの実施

就職活動に関する各種セミナーを開催しており、ビジネスマナーや応募書類作成、面接対策などが学べます。

職業訓練(ハロートレーニング)の案内

就職に必要なスキルを身につけるための職業訓練(ハロートレーニング)も案内しています。希望する職種に応じたスキルアップが可能です。

ハローワークの障害者向け就労支援

ハローワークには、障害をお持ちの方の相談に専門的に応じる「障害者に関する窓口」があります。この窓口では、前述したハローワークの一般的なサービスに加えて、以下の障害者を支援するサービスを受けられます。

  • 職業相談・職業紹介
  • 関係機関との連携
  • トライアル雇用
  • ジョブコーチによる支援
  • 障害者就職面接会
  • 委託訓練

それぞれのサービスについて、利用者側の視点で紹介します。

職業相談・職業紹介

職業相談・職業紹介(障害者援助部門)では、障害のある方が仕事に関する情報を入手し、適切な職業に出会うためのサポートを受けられます。

具体的には、どのような仕事が自分に合っているかわからない場合に、障害の特性や過去の経験を基に、適性に合った職業に関するアドバイスが受けられます。

また、面接に対して不安がある場合は、必要に応じて企業に対して配慮を要請したり、ハローワークの担当者に面接同行を頼んだりすることも可能です。

関係機関との連携

ハローワークや福祉機関では、障害のある方に対して、より専門的な支援が必要な場合に関係機関との連携を行っています。連携機関として、以下が挙げられます。

  • 地域障害者職業センター:職業リハビリテーション(働くための訓練やサポート)を提供
  • 障害者就業・生活支援センター:就労支援だけでなく、生活面のサポートも含めた総合的な支援を行う機関
  • 職業訓練校:特定の職種に必要な技術を学ぶ施設
  • 就労移行支援事業所:障害者が一般就労に向けてスキルを習得するための支援を提供する施設

ハローワークは上記の支援機関の利用案内とあっせんを担当しています。就労移行支援については後ほど詳しく説明します。

トライアル雇用

トライアル雇用は、障害者が一定期間(原則3カ月)試行雇用され、適性や業務遂行の可能性を確認する制度です。企業と労働者が互いに理解を深め、無期雇用への移行を促進することを目的としています。

トライアル雇用を利用するメリットは、実際の業務を通じて、長く働けそうか見極められる点です。例えば、転職回数が多い方や就労経験のない方、離職期間が長い方などが利用しています。

また、障害の程度が重く、業務内容や職場環境とのマッチングが特に重要になる方にも、トライアル雇用が有益です。

ジョブコーチによる支援

ジョブコーチは、障害者の職場適応を支援する専門家です。障害者が職場での業務を円滑にこなせるよう、職場内外でのサポートを行います。ジョブコーチの支援が必要な場合、ハローワークから地域障害者職業センターに取り次いでもらえます。

ジョブコーチを利用するメリットは、職場での同僚や上司との関わり方や作業の進め方、業務上の課題を解決する方法などのアドバイスを受けられる点です。また、事業主に対して、障害特性に合わせた指示の出し方や、障害者が力を発揮できる職場作りなどの提案も行ってもらえます。

障害者就職面接会

障害者就職面接会は、複数の企業と直接面接できる場を提供するイベントです。特に合同就職面接会には多くの企業が参加し、一度に複数の企業から話を聞いたり、面接を受けたりできます。

障害者就職面接会は多種多様な企業が参加するため、視野を広げる貴重な機会です。求職者の中には、面接の仕方を学ぶ場として活用する人もいます。

障害者就職面接会はハローワークが主催するほかに、自治体や労働局などと協力して開催されるケースもあります。いずれの場合も、通常、ハローワーク経由での予約が必要です。

委託訓練

委託訓練とは、国と都道府県などが民間教育訓練機関や学校教育機関などに、就職支援事業を委託して実施する訓練です。この委託訓練は、国や都道府県が実施している公共職業訓練と同等に扱われます。

公共職業訓練には、離職者向け、在職者向け、学卒者向け、障害者向けの4種類があります。このうち障害者向けの公共職業訓練の一つが、障害者委託訓練です。

障害者委託訓練は、障害者の方に特化した訓練により、短期間で就職に必要な知識やスキルを習得することを目的としています。

具体的な訓練コースの例は以下のとおりです。

  • 知識・技能習得訓練コース:就職に必要な基礎的な知識や技能を学ぶコース
  • 日本版デュアルシステム:職場実習と座学を一体化し、実践的なスキルを身につけるコース
  • 実践能力習得訓練コース:企業での実習を通じて、職場環境での実践的なスキルを習得するコース
  • e-ラーニングコース:通所が困難な方を対象に、インターネットを活用してIT技能を学ぶコース
  • 在職者訓練コース:すでに就職している障害者が、職域拡大やスキルアップを目的に受ける訓練コース

障害者手帳がなくても、ハローワークで求職申込を行い、訓練受講の推薦を受けた方であれば参加できます。また、障害者の方が通常の離職者向け、在職者向け、学卒者向けの訓練を受けることも可能です。

ハローワークのメリットと注意点

ハローワークには、一般の求人サイトでは少ない障害者向けの求人が多い傾向があります。ハローワークは無料で求人を掲載できることもあり、障害者の方を雇用したい企業が積極的に利用しています。

さらにハローワークの障害者専門窓口には、障害に対して知識を持つ専門の相談員が常駐しており、障害の特性に合わせた支援を受けることが可能です。これにより、求職者は一人ひとりに合ったサポートを受けながら、就職活動ができます。

ただし、サポート範囲が限られる点に注意が必要です。ハローワークは主に求人情報の提供や就職相談が中心であり、後ほど説明する就労移行支援と異なり、職業訓練や職場定着支援のような包括的なサポートは提供していません。

ハローワークでは職業訓練そのものは提供しておらず、あくまで訓練機関へのあっせんにとどまります。専門的な訓練を受けたい場合、別途訓練機関に通う必要があります。

総合的なサポートが受けたい方には就労移行支援がおすすめ

総合的なサポートを受けたい方には、就労移行支援がおすすめです。ハローワークとの違いを以下にまとめました。

就労移行支援ハローワーク
職業訓練×(あっせんのみ)
特性・適性の把握×
企業実習×
求人情報の紹介△(障害者向けの求人に特化)〇(豊富な求人情報)
就職活動支援◎(個別の手厚い支援)〇(情報提供中心)
内定先との業務調整〇(企業との調整あり)×
職場定着サポート〇(継続的フォロー)×

詳しい内容について解説します。

就労移行支援とは?

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて提供される福祉サービスです。障害のある方が一般就労を目指して実践的な知識やスキルを習得することを支援します。

就労移行支援を利用できる方は、65歳未満の障害者で、一般就労を希望しており、知識やスキルの向上、実習、職場探しなどを通じて適性に合った職場での就労が見込まれる方です。利用期間は原則として通算2年間までですが、延長が認められる場合もあります。

ただし、就職中や就学中の方は基本的に利用できません。ハローワークとの併用は可能です。

就労移行支援で受けられる支援

就労移行支援では、障害者一人ひとりに合わせた個別サポートが行われます。障害の特性や程度が異なる利用者に対し、画一的なプログラムではなく、個別のニーズに合わせて柔軟に対応してもらえる点がメリットです。

主なサービスをまとめると以下のとおりです。

  • 職業訓練:就労に必要な知識やスキルを身につけるための訓練
  • 特性・適性の把握:自身の障害特性や職業適性を把握し、適切な職場環境を見つけるサポート
  • 職場実習:実際の企業での実習を通じて、実践的な仕事の経験を積む実習
  • 就職活動支援:応募書類の作成や面接対策など、就職活動全般のサポート
  • 職場定着サポート:就職後、職場での継続的な支援を受け、職場に適応するためのフォロー

このように、就労移行支援は障害者一人ひとりに合わせた個別の支援を提供し、就職活動から就職後の定着までをサポートする包括的なサービスです。

ハローワークや就労移行支援をうまく活用しよう

ハローワークと就労移行支援は、障害者の方の就活に利用できるサービスです。ハローワークには障害者向けの窓口があり、職業相談や専門機関の紹介などのサポートを受けられる点が魅力です。

一方、就労移行支援では、職業訓練から職場実習、就職後のフォローまで総合的なサポートを受けられます。自分に合った仕事をじっくりと探し、職場定着まで支援を受けたい方に特におすすめです。

Kaienの就労移行支援は、発達障害*や精神障害の方に特化した専門的な支援を提供しています。

  • 100種類以上の職業体験を通じた、実践的な職業訓練を実施。未経験分野でも安心して挑戦できます。
  • 自己理解や社会スキル向上のための50以上の講座が用意され、対人関係や職場適応に役立ちます。
  • 200社以上の障害理解のある企業と独自の求人連携があり、適性に合った職場を紹介します。

さらに、Kaienでは就職後の定着支援にも注力しており、3年半にわたるフォローやSNSを活用したサポートにより、長期的な安定就労が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます