リワークセンターとは?何をするところ?利用対象者や申請方法、メリットを解説

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精神的な病気や強いストレスで休職してから復職する際には、リワークセンターでの支援が受けられる場合があります。

身体的・精神的に安定してきて復職したいと思っても、自分ひとりではどのようにリハビリをしたらよいかわからない場合や、スムーズに職場に戻って働けるか不安な場合もあるでしょう。

本記事では、リワークセンターで受けられる支援の内容や利用できる対象者、申込みから支援を受けるまでの流れ、リワークセンターのメリットなどを解説します。

リワークとはどんな意味?リワーク支援って?

リワークは「return to work」の略称で、気分障害や重度のストレスなど精神面の事情で休職している人が、職場に復帰して働くことを意味します。また、こうした人々がスムーズに仕事に戻れるようサポートするサービスを「リワーク支援」と呼びます。

心に不調を抱えて休職した人にとっては、通勤や職場の人とのコミュニケーションなど、仕事にまつわる一つ一つの物事がストレスに感じてしまうでしょう。

リワーク支援では、心の不調を再発させないための心理療法やスキルのサポート、久しぶりの集団生活にうまく適応するためのレクリエーションなど、段階に合わせて無理なく復職できるようにさまざまな指導やアドバイスを行います。

また、リワーク支援を受けるために決まった時間に施設に通うことそのものが、通勤するための訓練にもなります。

リワークやリワーク支援について、詳しくはこちらもご参照ください。

リワークとは?受けられる場所や就労移行支援との違いも解説

リワークセンターとはリワーク支援を行う場所

リワークセンターは、休職中の方が職場に復帰できるようリワーク支援を行う場所です。再び仕事に戻りたいという希望があれば、20代から50代まで幅広い年齢の人が利用できます。

リワークセンターにはカウンセラーや医療従事者などのスタッフが常駐しており、心理的なケアや仕事上のスキルを身につける訓練などを行います。リワークセンターは全国に存在しているため、通いやすさや施設の特徴を考慮して自分に合った施設を選びましょう。

リワークセンターの実施主体には以下のような種類があり、それぞれリワーク支援の内容や対象者が異なります。

  • クリニックや病院などの医療機関
  • 各企業
  • 就労移行支援事業所

たとえば、うつ病や統合失調症など精神症状が現れている人は、医療従事者によるケアもあわせて受ける必要があります。医療機関が運営するリワークセンターや、精神科や心療内科と連携しているリワークセンターのほうが良いケースもあるでしょう。

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)といった特性がある場合、それを考慮して適切な支援を提供してくれる施設を選ぶことも重要です。

リワークセンターを利用できる対象者

リワークセンターを利用できる主な対象者は、病気やストレスなどの事情で一度職場を離れ、再び仕事に戻りたいと考えている人です。特にうつ病や不安障害など、復職に対して心理面の課題を抱える人が多く利用しています。

休職ではなく退職している場合も、リワークセンターの種類によっては利用できる場合があります。

なおリワークセンターの運営主体によって、利用できる対象者に違いがあるため、休職の理由や精神疾患、その他の持病や発達障害の有無などの特性を踏まえて適切な施設を選びましょう。

医療機関のリワークセンターの場合

医療機関のリワークセンターは病院やクリニックの中に併設されていることが多く、うつ病や適応障害など精神面の病気で休職した人の職場復帰や再休職の予防、病状の回復といったサポートを行います。

利用可能な対象者はその医療機関の患者だけではなく、他の医療機関からの紹介を受けた人や、初診でリワーク支援が必要と診断された人も利用可能です。

医師やカウンセラーなど、精神疾患に関する知識を持つスタッフがリワークプログラムを提供するため、病状に合わせた適切な治療やサポートを受けられます。

中でも、リワーク認定施設は、一般社団法人日本うつ病リワーク協会により精神疾患を抱える患者向けのリワークセンターとして一定の基準を満たしていると認定された施設です。

参照:リワーク認定施設|一般社団法人日本うつ病リワーク協会

職場のリワークセンターの場合

職場のリワークセンターは主に大企業や公的機関などで導入されており、病気やストレスで休職した社員がスムーズに職場復帰できるようサポートすることが目的です。

対象者は基本的にその企業の社員で、部署や役職に関係なく健康上の理由で休職している全ての社員が利用可能です。

内部にリワーク支援の専門部署がある企業や医療機関と連携している企業もあり、休職者それぞれの心身の状態に合わせたプログラムが提供されます。

なお、厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、休職した社員が業務へ復帰するまでの一般的な流れや、各ステップで行うべき支援の内容などが解説されています。

参照:厚生労働省「職場復帰支援の手引き」

就労移行支援・自立訓練(生活訓練)のリワークセンターの場合

就労移行支援事業所のリワークセンターは、障害者総合支援法に基づくサービスの一環として、精神的な疾患や発達障害といった特性のある人向けにリワーク支援を行う施設です。職場への復帰や再就職のために必要なスキルや体力を徐々に回復させるサポートを受けられます。

対象者は、精神的な疾患や発達障害などの特性があり、働く意欲はあるけれども一般の職場に戻るためには準備が必要な人です。就労移行支援のリワークセンターでは、ビジネスマナーのレクチャーやコミュニケーションスキルの向上、履歴書の書き方や面接練習など、基礎的なスキルの訓練も受けられます。

職場復帰後もフォローアップしてくれる施設もあるため、長期的に働くためのサポートを受けられる点も特徴です。特性を活かした職場の紹介を受けられる場合もあります。

リワークセンターでリワーク支援を受けるための流れ

ここでは、リワークセンターでリワーク支援を受けるための流れを、以下の5ステップに分けて解説します。

  • 近隣のリワークセンターの情報を収集する
  • 申し込みをして初回相談とカウンセリングを受ける
  • 主治医に診断書を書いてもらい支援スタッフが支援計画を作成する
  • リワークセンターでリワーク支援が開始する
  • 職場復帰のための支援を受ける

近隣のリワークセンターの情報を収集する

まずは、近隣にどのようなリワークセンターがあるのか情報を収集しましょう。

通院している医療機関や、ハローワークなどの公的機関からリワークセンターを紹介してもらえる場合もありますが、情報を集めて自分に合ったセンターを見つけることも重要です。

インターネットで「リワークセンター+地域名」で検索すると、近隣の施設を見つけられます。各リワークセンターのホームページを閲覧し、提供しているプログラムや支援の特徴、掲載写真、口コミなどを確認してみるのもよいでしょう。

リワークセンターによっては、利用者向けに説明会や見学会を実施している場合もあります。施設の雰囲気やスタッフの対応などを直接確認できるので、気になる施設があれば参加してみましょう。

1人で説明会に参加するのが不安なら、家族や信頼の置ける支援者と一緒に参加できる施設を探してみるのも一つの方法です。

申し込みをして初回相談とカウンセリングを受ける

申し込みたいリワークセンターが決まったら、まず電話やインターネットで初回相談・カウンセリングの予約を取りましょう。

初回相談では、利用者ご自身の現在の状態や職場復帰に対する不安、病気の状況やストレスを抱えることになった経緯などを話します。リワーク支援を利用する目的や今後どのように職場に戻りたいか、またキャリアプランなどについて聞かれることもあるでしょう。

リワークセンターでのカウンセリングの目的は、利用者の状況を正しく理解し、適切なサポートプランを立てることです。無理なく職場復帰を進めるため、また自分に合ったリワーク支援を受けるためにも、自分の思いや状況を正確かつ率直に伝えましょう。

主治医に診断書を書いてもらい支援スタッフが支援計画を作成する

初回相談・カウンセリングが終わったら、主治医に書いてもらった診断書をもとに支援スタッフが支援計画を作成します。

診断書には、病気の状態や職場復帰のために必要なサポートが詳しく記載されます。この診断書の内容とカウンセリング内容を踏まえて、リワークセンターのスタッフと主治医が連携して、無理なく進められるリワークプログラムを作成します。

なお、発達障害の診断がない場合やグレーゾーンの場合も、障害福祉サービス受給者証が取得できればリワーク支援を受けられるケースがあります。利用可能な人の条件は施設によっても異なりますので、ご自身がリワーク支援を受けられるか気になる場合は、相談会などで尋ねてみましょう。

リワークセンターでリワーク支援が開始する

主治医の診断書とカウンセリングをもとに立てられた支援計画に合意が得られたら、計画に沿ったリワークセンターでの支援が開始されます。リワークセンターに通い、支援や訓練を受けましょう。

ここでは、支援内容の例を簡単にご紹介します。

  • 認知行動療法などの心理的な支援
  • 適職診断
  • 職場復帰に必要なスキルの訓練
  • ストレス管理の方法
  • コミュニケーションスキルの向上
  • 集団生活に慣れるためのグループワーク
  • 体力を回復させるためのリハビリ
  • 生活リズムを整える訓練

支援はスタッフやカウンセラーと定期的に相談しながら進められ、必要に応じてプランの見直しが行われます。

リワークセンターは自信を持って職場に復帰できるように利用者をサポートする場所ですので、焦らずに自分のペースで取り組んでいくのが大切です。

職場復帰のための支援を受ける

基本的な訓練がある程度進んだら職場復帰に向けた実践的な支援を行い、具体的に復職や再就職を目指す段階に入ります。

以下、実際の支援内容の例をご紹介します。

  • 復職時期の調整
  • 面接訓練
  • 履歴書や自己PRなどの添削
  • 職場紹介
  • 復職後の勤務継続のための支援

リワークセンターでは面接での話し方や自己PRの書き方など、実際の書類審査や採用面接に備えた訓練が受けられます。面接に自信のない人でも、模擬面接を通してフィードバックを受けながら改善点を確認できるのが特徴です。

また、求人情報の探し方や利用者の特性に合わせた職場紹介などの支援も行います。ハローワークや企業との連携を通じて再就職をサポートしてくれる場合もあります。

職場復帰した後のフォローアップに対応している施設もあるため、新しい環境になじめるか不安な場合でも心強いサポートが受けられるでしょう。

リワークセンターでリワーク支援を受けるメリット

リワークセンターでのリワーク支援を受けるメリットを、以下の5点に分けて解説します。

  • 段階的なサポートを受けられる
  • 自己理解を深められる
  • 働き方やキャリアの振り返りができる
  • 体力や持久力の向上を目指せる
  • 個人に合わせたプログラムを立ててもらえる

段階的なサポートを受けられる

リワークセンターでは、利用者の身体面・精神面の状態に合わせて段階的なサポートを受けられます。

仕事を離れた後の復職にあたっては、不安やプレッシャーを感じるでしょう。リワークセンターを活用すれば、いきなり復職するのではなく少しずつ仕事や生活に慣れていけるため、復職後の生活の変化に対するストレスが軽減されます。毎日リワークセンターに通うことで通勤するための体力がつき、生活リズムが自然と整うこともメリットです。

復職に必要なスキルの向上やならし業務、職場体験などの実践的なサポートも受けられるので、復職の準備が整うまで無理なく訓練を進められるでしょう。

自己理解を深められる

リワークセンターでの支援を通して、自己理解を深められるのもメリットです。仕事を離れた理由やメンタルの不調の原因について振り返ると、自分がどこまで頑張れるのか、得意なこと・不得意なことは何か、しっかりと見つめ直せます。

リワークセンターでのカウンセリングやプログラムを通して、自分だけでは気づかなかった特性に気づくこともあるでしょう。施設によっては適職診断を実施している場合もあり、より自分に合った職場に出会える可能性が高まります。

自己理解が深まると、将来のキャリアプランや人間関係の築き方を考え直すことにもつながります。リワークセンターでの支援により、以前よりも自信を持って職場に復帰できるようになるでしょう。

働き方やキャリアの振り返りができる

自分の働き方やキャリアを振り返る時間が持てることもメリットです。職場復帰に向けた準備を進める中で、自分のキャリアを見つめ直しましょう。

復職に成功しても、病気が再発したり再び強いストレスを感じたりして、再度休職に至ってしまう人も珍しくありません。リワークセンターでは専門スタッフとのカウンセリングを通じて、仕事に対する不安や悩みを整理し、自分に合った働き方やキャリアプランを再確認できます。

たとえば、以前の職場で何がストレスになっていたのか、どのような環境であればより快適に働き、自分の力が発揮できるのかなどを具体的に考えることができます。このような支援を通じて自分の得意な分野を見極めれば、より自分に合った働き方でのキャリアアップを目指しやすくなるでしょう。

体力や持久力の向上を目指せる

リワークセンターでは、休職中に落ちてしまった体力や持久力の向上も可能です。

仕事を一度離れると、作業への集中力が落ちてしまいがちです。精神的な病気を発症している場合は家の外に出るのもつらくなり、通勤するための体力がなくなってしまう場合もあるでしょう。

リワークセンターでは、無理のない範囲で徐々に体力を回復させるためのプログラムが提供されます。たとえば、ウォーキングやストレッチなど、身体を動かす訓練を通して少しずつ日中活動への持久力を高められます。また、運動の習慣をつければ、職場に復帰した後も朝から夕方までの勤務に耐えられる体力を維持できるでしょう。

体力が回復することで集中力が持続しやすくなり、物事に前向きに取り組めるようにもなります。復職後に安定して勤務を続けるためにも、体力づくりは重要です。

個人に合わせたプログラムを立ててもらえる

リワークセンターでは、利用者それぞれの病状や体調、特性に合わせてリワークプログラムを立ててもらえます。

リワーク支援では誰もが同じサポートではなく、一人ひとりの状態やニーズに合わせたプランをつくることが重要です。リワークセンターでは主治医と連携して病状を的確に把握し、利用者の希望を丁寧にヒアリングした上で、適切なリワーク支援を行います。

たとえば、メンタルヘルスの回復状況に課題がある場合や職場復帰への不安が強い場合は心理療法などの支援が、通勤や作業のための体力が落ちている場合は運動プログラムが優先されるでしょう。

特に、就労移行支援などの民間の施設では柔軟にプログラムを立ててもらいやすい傾向があります。診断内容や病状にもよりますが、どのような支援を受けたいのか希望がある場合や、職場復帰への不安が強く何から手を付けてよいのかわからない場合は、積極的に検討してみましょう。

復職には自立訓練(生活訓練)の利用もおすすめ

スムーズに復職し、その後も自立して生活していくためには、自立訓練(生活訓練)を受けるのもおすすめです。

自立訓練では、発達障害などの特性を踏まえた自分の得意・不得意を見つめ直し、起きてから眠るまで自立した生活を送るための訓練を行います。就労移行支援やリワーク支援は就職・復職を目的とした支援ですが、自立訓練は生活リズムの適正化や金銭管理など、自立して生活できる状態を目指す訓練です。

Kaienでは、発達障害のある方向けに自立訓練(生活訓練)を提供しています。数千人におよぶ支援実績をもとに一人ひとりに合わせて調整された、実践的なプログラムを提供している点が特徴です。

自立訓練と就労移行支援の違い、また併用できるのかどうか詳しく知りたい方は、こちらのページもご参照ください。

自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いや併用についても解説

リワークセンターや自立訓練(生活訓練)の利用で社会復帰を目指そう

精神的な病気や強いストレスといった事情での休職・退職から立ち直り職場復帰を目指すなら、リワークセンターの利用を検討してみましょう。

病気や特性についての知識を持ったスタッフが、主治医と連携しながら利用者に合ったリワークプログラムを作成し、就職支援や復職後のサポートを行ってくれます。病気・特性の種類や身体面・精神面の状態によって必要なプログラムが変わるため、相談会やカウンセリングで率直に自分の希望や思いを伝え、適切なサポートを受けることが重要です。

また、生活リズムや金銭管理など、復職だけでなく生活面にも不安があるなら自立訓練(生活訓練)を利用するのもおすすめです。

自分に合ったサポートを受け、復職や自立した生活を目指しましょう。