障害があって日常生活や仕事で困っている方は、障害年金を受給できる可能性があります。どのような条件を満たせば障害年金を受け取れるのか確認し、該当する方は申請することで生活の一助となるでしょう。
この記事では、障害年金がもらえる条件や支給金額、申請方法、支給までの流れなどについて解説します。障害年金をもらう際の注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
障害年金とは
障害年金とは、障害の状態になったときに支給される年金のことです。障害の状態とは、身体や精神の障害、病気、ケガなどで仕事や日常生活に著しく制限を受けている状態を指します。
障害年金を受給するためには、公的年金に加入していなくてはなりません。障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類に分けられます。障害の原因となる病気やケガなどで初めて診察を受けた日に、国民年金に加入していた場合は障害基礎年金が、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金が適用されます。
なお障害という名がついていますが、障害年金の支給を受けるうえで、障害者手帳は必ずしも必要ではありません。
障害年金の受給対象は?
障害年金の対象となる病気やケガは、大きく「外部障害」「内部障害」「精神障害」の3種類に分けられます。以下の表では、それぞれに該当する障害の例を示しています。
外部障害 | 肢体(手足)の障害、視覚障害、聴覚障害など |
内部障害 | 心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、がん、糖尿病など |
精神障害 | 双極性障害、てんかん、統合失調症、知的障害、発達障害*など |
なお、発達障害の方は精神障害に該当するため、条件を満たせば障害年金の支給を受けられます。
障害年金がもらえる3つの条件
障害年金の支給を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。障害基礎年金と障害厚生年金でそれぞれ条件の異なる部分もあるため、自分が当てはまるほうの要件を押さえておくとよいでしょう。
ここでは、障害基礎年金と障害厚生年金に共通する3つの受給要件を紹介します。
初診日要件
初診日とは、障害の原因となった病気やケガについて、医師や歯科医師の診察を初めて受けた日のことです。この初診日が、続く2つの要件である「保険料納付要件」と「障害状態要件」の判定を行う基準日となります。
初診日は病院で証明してもらう必要があります。初めて診察を受けた病院と現在通っている病院が違う場合、最初の病院で証明を出してもらうことが必要です。
健康診断で異常が発見された日が初診日とみなされる場合や、先天的な知的障害を伴う発達障害の場合は出生日が初診日になることもあります。
保険料納付要件
保険料納付要件では、初診日の前日までにどの程度保険料を納めているかがポイントとなります。
具体的には、初診日がある月の2ヶ月前までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間で納付している、もしくは正式に保険料の免除を受けている必要があります。つまり、3分の1を超える期間で公的年金を違法に滞納していると、障害年金は受けられないということです。
ただし、初診日が2026年3月末日までの場合、特例要件が適用されます。すなわち、初診日がある月の2ヶ月前までの1年間に保険料を滞納していなければ、障害年金の支給要件が満たされるのです。
障害状態要件
障害認定日に一定以上の障害状態であることも認定要件の1つです。障害認定日とは、初診日を起点として1年6ヶ月が経過した日、もしくは1年6ヶ月以内で症状が固定し、治療の効果がそれ以上は期待できなくなった日を指します。
障害認定日に一定以上の障害状態であると認められた場合、その翌日から障害年金が支給されます。障害があったとしても、初診日から1年6ヶ月が経過する、もしくは症状固定と認められるまで障害年金は受給できません。
なお、障害認定日に一定以上の障害状態に該当しなくても、後日状態が悪化して年金支給が認められるケースもあります。
障害基礎年金の受給要件
障害基礎年金の受給要件として、初診日に以下いずれかの状態であることが挙げられます。
- 国民年金に加入している
- 20歳未満、もしくは日本国内在住の60歳以上65歳未満で、年金制度に加入していない
そのうえで、初診日の前日における保険料納付要件を満たしている必要があります。さらに、障害認定日、あるいは20歳になったときに、障害の状態が障害等級の2級または1級に該当していなくてはなりません。なお、20歳未満の方は保険料納付要件を満たす必要はありません。
障害厚生年金の受給要件
障害厚生年金の支給を受けるためには、初診日の時点で厚生年金に加入している必要があります。また、初診日の前日において保険料納付要件を満たしていることも受給要件の1つです。さらに、障害認定日に障害の状態が障害等級の3級から1級のいずれかに該当していなくてはなりません。
障害基礎年金が支給されるのは障害等級表に定める1級と2級のみですが、障害厚生年金では3級も支給対象となります。つまり、障害基礎年金では受給要件を満たさない障害の状態でも、障害厚生年金では受給が認められる場合もあるのです。
障害年金はどのくらいもらえる?
障害年金の支給金額は、年金の種類や障害の等級によって決まります。また、障害厚生年金のみで支給される可能性がある障害手当金についても知っておくとよいでしょう。
ここからは、障害基礎年金と障害厚生年金、そして障害手当金の受給金額について解説します。
障害基礎年金の受給金額
障害基礎年金の受給金額は年度によって異なります。2024年4月分からの受給金額は以下の通りです。
1級
1956年4月2日以後に生まれた方 | 102万円 |
1956年4月1日以前に生まれた方 | 101万7,125円 |
2級
1956年4月2日以後に生まれた方 | 81万6,000円 |
1956年4月1日以前に生まれた方 | 81万3,700円 |
障害基礎年金の受給者に扶養している子どもがいる場合、上記の金額に子供の人数に応じた金額が加算されます。加算額は、子ども2人までは1人につき23万4,800円、3人目以降は1人につき7万8,300円です。
障害厚生年金の受給金額
障害厚生年金では、報酬比例の年金額が適用されます。報酬比例の年金額は過去の報酬や年金の加入期間などで変動するため、同じ等級でも一人ひとり受給金額が異なります。2024年4月分からの障害厚生年金の等級別受給金額は以下の通りです。
1級 | (報酬比例の年金額)×1.25+(配偶者の加給年金額) |
2級 | (報酬比例の年金額)+(配偶者の加給年金額) |
3級 | (報酬比例の年金額) |
「配偶者の加給年金額」は生計を一にする65歳未満の配偶者がいる場合に支給されるもので、2024年4月分からは23万4,800円です。障害厚生年金の障害等級1級または2級に該当する方は、上記の金額に加えて障害基礎年金の支給も受けられます。
なお、3級の方には以下の最低保障額が定められています。
3級
1956年4月2日以後に生まれた方 | 61万2,000円 |
1956年4月1日以前に生まれた方 | 61万300円 |
障害手当金について
障害手当金は、厚生年金に加入している方が利用できる制度です。障害の原因となった病気やケガが初診日から5年以内で治り、なおかつ障害厚生年金の支給要件を満たさない程度の軽い障害が残った場合に受給できる可能性があります。
障害手当金では、報酬比例の年金額の2倍の金額が一時金として支給されます。2024年度における障害手当金の最低保障額は以下の通りです。
1956年4月2日以後に生まれた方 | 122万4,000円 |
1956年4月1日以前に生まれた方 | 122万600円 |
障害年金の申請方法
障害年金の申請は、障害認定日に行う場合と、障害認定日以降に状態が悪化してから行う場合があります。いずれの場合でも、申請の際は以下の書類が必要です。
- 年金請求書
- 基礎年金番号通知書、または基礎年金番号がわかる書類
- 住民票や戸籍謄本など、本人の生年月日が明記された書類
- 医師の診断書
- 病歴・就労状況等申立書
- 受診状況等証明書
- 受取先金融機関の通帳など
配偶者や子どもなどの加算対象者がいる場合、配偶者の所得証明書や子どもの在学証明書など、追加で書類が必要になります。正確な必要書類については、年金事務所などで前もって確認しておくことが重要です。
必要書類をそろえたら、年金事務所や自治体の窓口などで障害年金の申請を行います。
障害年金の支給までの流れ
年金事務所や自治体の窓口で年金請求書を提出すると、日本年金機構による支給要件の審査が始まります。障害年金の支給が決定した場合、年金証書と年金決定通知書が送付されます。請求書の提出から通知書の送付までにかかる期間は約3ヶ月です。
通知書が送付されてから、実際に障害年金が支給されるまでにはさらに1~2ヶ月ほどかかります。申請から支給開始まで、トータルで約5ヶ月かかるということを覚えておきましょう。
障害年金の支給が開始されてからも、年金額は障害の状態に応じて変わります。定められた時期における障害状態確認届の提出が求められるほか、障害の状態が悪化した場合に年金額の改定を請求することも可能です。
障害年金をもらう際の注意点
障害年金は申請すれば必ずもらえるわけではなく、時効を迎えるケースもあります。認定の内容によっては更新手続きなども必要になるため、障害年金の注意点は事前に押さえておくのが賢明です。
ここからは、障害年金をもらう際の注意点を4つ紹介します。
更新が必要な場合がある
障害年金には「永久認定」と「有期認定」の2種類があります。
障害の程度が今後も変わらないと認められた場合は永久認定が受けられ、以降は更新の必要がありません。一方、障害の状態が変わり得るとする有期認定の場合、一定期間が過ぎたら更新の手続きを行う必要があります。
有期認定の場合、誕生月の3ヶ月前に障害状態確認届が日本年金機構より送られてきます。この書類に診断書欄があるので、主治医に書いてもらったうえで誕生月の末日までに提出するのが更新手続きの流れです。
申請しても障害年金をもらえない場合がある
医師の診察を受けて障害年金を申請しても、支給が認められない場合もあります。不支給になるケースとしては、診断書の内容と申立書の内容が一致していない場合や、申立書の内容が薄い場合などが挙げられます。
不支給の決定に納得がいかない場合、審査を請求することも可能です。審査請求は決定から3ヶ月以内に行うことができ、その決定にも納得がいかない場合は2ヶ月以内なら再審査請求ができます。
障害年金には時効がある
障害年金を受給するためには、基本的に障害認定日に申請する必要がありますが、あとから遡って申請することも可能です。障害認定日に受給要件を満たしていたのに申請しなかったという方は、遡って申請するとよいでしょう。
ただし、障害年金の受給には時効があります。障害認定日から時間が経っていても、障害年金を請求すること自体は可能です。しかし、遡れるのは5年分までとなっているため、早めの請求を心がけましょう。
障害厚生年金と傷病手当金は同時受給できない
基本的に、障害厚生年金と傷病手当金は同時に受給できません。傷病手当金は、会社などに属する人が病気やケガで働けなくなったときに支給される手当金で、健康保険の一制度です。
この傷病手当金は、障害基礎年金となら同時に受給できます。また、障害厚生年金の日額が傷病手当金の日額よりも少ない場合、差額分が支給されることもあります。
2025年の障害年金制度改正について
厚生労働省から「障害年金制度」に関する改正法案が打ち出され、2025年に従来の制度が見直される運びとなりました。障害年金制度の改正検討が行われるのは40年ぶりのことです。
従来の体制には、初診日が条件とわずかにズレるだけで障害厚生年金を受け取れない、支給額が大きく変わってくるといった問題がありました。また、障害等級が3級の場合、障害厚生年金の対象から外れてしまうと、障害年金自体を受け取れないことも懸念材料の1つでした。これらの問題を受けて、今回改正が検討されることとなったのです。
改正法案では、会社を退職後の病気やケガも一定期間内は障害厚生年金を受給できる措置にすることなどが検討されています。改正法案が可決された場合、不平等な扱いを受ける方が減ることが予想されます。
働いていても障害年金はもらえる?
働いていても障害年金を受給することは可能です。人工透析など生活の質が明らかに下がるケースや、視力や聴力などの数値で障害の程度を表せる場合は、就労の有無がほとんど審査に影響しません。
一方、発達障害などの精神疾患は、就労が審査に影響を与える可能性があります。とはいえ、働いているからといって必ずしも不支給になるとは限りません。障害があって仕事に困難を抱えている場合は、福祉サービスの1つである就労移行支援の利用がおすすめです。
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障害年金がもらえる対象か条件を確認しよう
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、受給するためには一定の要件を満たす必要があります。種別によって支給を受けられる等級や受給額が異なるため、申請の前に受給条件を確認しておくとよいでしょう。
また、障害年金は働いていても受給できる可能性があります。発達障害でなかなか仕事が見つからない、まずは働きたいと考えている方は、Kaienの就労移行支援の利用がおすすめです。見学会や個別相談会を無料で随時開催しているので、お気軽にお問い合わせください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。