発達障害*の方は、障害者手帳を取得していれば障害者雇用と一般雇用の両方に応募できます。一般雇用では、新卒の場合にエントリーシート(ES)の提出が必要です。障害者雇用でも一部の大手企業で提出が求められることがあるため、書き方のポイントを押さえておくとよいでしょう。
この記事では、エントリーシートの主な項目やその書き方、発達障害の方が記入する際に気をつけたいポイントなどについて解説します。発達障害の方が就職や転職のときに利用できる支援機関も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
就職・転職におけるエントリーシート(ES)とは
エントリーシート(ES)とは、就職活動の一環で学生が企業に提出する書類のことです。基本的にフォーマットが決まっており、自己PRや志望動機などを通じて企業に人材としての自分の価値をアピールする目的があります。
就職活動では、エントリーシートの内容で次の選考に進めるかどうかが判断されます。エントリーシートが通過できなければ、面接はもちろんWebテストなども受けられません。以降の面接でも、エントリーシートは参考資料として使われる場合が多いです。
エントリーシート(ES)と履歴書の違い
エントリーシートと履歴書の主な違いは、問われる内容にあります。ESで問われるのは、志望者がその企業にかける熱意や自分の人柄です。一方、履歴書には志望者の名前や住所などの基本情報を確かめる目的があります。
また、履歴書はコンビニなどでも入手できますが、エントリーシートは企業のホームページなどでしか入手できません。
履歴書の書き方については以下記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。
障害者雇用で採用される履歴書とは?志望動機や配慮事項の書き方、作成ポイントを解説
エントリーシート(ES)の主な項目と書き方
エントリーシートで自分の熱意や人柄を最大限伝えるためには、正しい書き方を押さえておくことが大切です。項目ごとのポイントを知り、限られたスペースで効率的に自分の魅力をアピールするとよいでしょう。
ここからは、エントリーシートの主な項目とその書き方について解説します。
基本情報
エントリーシートの基本情報では、氏名や生年月日、住所、連絡先などを記載します。氏名の振り仮名は、「ふりがな」とあればひらがなで、「フリガナ」とあればカタカナで書きましょう。生年月日はその他の部分と西暦または元号で統一し、送付時点の年齢も「満〇歳」と記載します。
住所は都道府県から始め、マンション名なども忘れずに記入しましょう。電話番号は固定電話と携帯電話の両方を書きますが、固定電話がなければ携帯電話だけでも問題ありません。携帯電話が複数ある場合は、日中に連絡がつきやすい番号を選びましょう。
なお、印鑑を押す場合は記入より先に捺印を済ませておくのが賢明です。後から捺印して失敗した場合、すべて書き直さなくてはなりません。
志望動機
志望動機の項目では、なぜその企業に応募したのかを具体的に説明します。ポイントは、企業の経営理念や業務内容と自分の希望を結びつけることです。その企業に就職すれば自分のやりたいことが実現し、企業の成長にも貢献できるということを論理的にアピールしましょう。
また、関心があるプロジェクト名や商品名などを具体的に盛り込むことで、明確なビジョンを持っていることが伝わります。他社と比較したうえで「その企業でなければならない理由」もはっきりと説明することが重要です。
自己PR
自己PRでは、自分の人柄や得意なことをアピールします。このとき、応募する企業の雰囲気や経営方針を踏まえて、自分がマッチ度の高い人材であることを訴えましょう。自分の強みを書く際は、具体的なエピソードを盛り込むことで説得力を高められます。エピソードは、その行動に至った背景にも言及すればロジカルで納得のいく文章になるはずです。
また自分の強みだけでなく、弱みに触れるのも一つの方法です。自分に欠けている部分を冷静に分析し、どのような方法で克服してきたのかを伝えることで、向上心や問題解決能力の高さをアピールできます。
長所短所
長所短所を書くときは、まず自分の特徴を考えてみましょう。「行動力がある」「慎重に物事を進める」「人と関わるのが好き」など、特徴を書き出したうえで長所短所として伝えられる部分を探していきます。
長所を伝える部分では、具体的な成功体験などを盛り込んで主張の説得力を高めましょう。一方、短所についてはどのような対策を心がけているのかを併記することが大切です。
「独りよがりなところがあるので、人の気持ちを尊重するよう気を付けている」といった書き方をすれば、短所を伝えながらも成長できる人間であることをアピールできます。
学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)
ガクチカは就職活動でも重視されるポイントの1つです。ガクチカを書く際は、エピソードを通じて自分の人となりを企業に伝えることを意識しましょう。困難に突き当たったときにどのような創意工夫で乗り越えたのかを説明すれば、くじけずに努力できる人間であることをアピールできます。
また、達成した数字など具体的な成果を盛り込むことで、エピソードの説得力を高められます。その経験を通して人間的にも成長できたと伝えれば、今後の伸びしろも感じさせる内容となるはずです。
なお、企業は現在の人物像を知りたいと考えているため、中学や高校ではなく大学時代のエピソードを選びましょう。
エントリーシート(ES)に障害は記載する?
エントリーシートに障害のことを記載すべきなのか、悩んでいる方も多いでしょう。結論から言うと、会社から配慮や調整を受けたいのであれば、障害については記載することをおすすめします。
障害のある方に合理的配慮を提供することが義務づけられている背景もあり、企業側は雇用する前に求職者の障害の特性や事情を把握したいと考えています。障害のことを事前に伝えておくことで、企業も必要な配慮を用意しやすくなるでしょう。
特に、障害者雇用でESが必要な場合は、障害について事前に説明することで話がスムーズに進むはずです。
発達障害の方のエントリーシート(ES)の書き方のポイント
発達障害の方は、エントリーシートを書く際に障害特性を踏まえたポイントを押さえておくことが大切です。結論から書くなどの基本的なテクニックも踏まえながら、エントリーシートの書き方を確認しておきましょう。
ここからは、発達障害の方がエントリーシートを書くときに気をつけたい点を紹介します。
障害特性や配慮事項を明確に伝える
エントリーシートに障害のことを記載する場合は、障害の診断名や具体的な症状、通院状況などを明確に伝えましょう。障害者手帳の種類や等級、取得日などについても記載が必要です。
障害特性によって困難が生じる仕事内容については、より具体的に伝える必要があります。対人面や体調面、指示の受け取り方など、困難が生じる部分でどのような配慮が必要なのか、例を交えながら説明しましょう。
例えば、コミュニケーションに困難がある場合は、社外の人とあまり関わらない部署に配属してもらうなどです。また、音がすると気になって集中できない場合は耳栓をして働けるようにしてもらうのも一例として挙げられます。
このように、発達障害の方は自身の障害特性とその対応策をセットで伝えることが重要です。
結論から書く
エントリーシートのどの項目でも、結論から書き出すことで論旨が伝わりやすい文章になります。自分が特に伝えたいと思う重要なポイントを最初に書くことを意識しましょう。
発達障害の方の中には、特性により要点を整理したり文章をまとめたりするのが苦手で、思いつくままにESを記載してしまうケースも少なくありません。そんなときは、「PREP(プレップ)法」を実践してみましょう。
結論から書き、最後にもう一度結論を出してまとめる論法のことを「PREP法」といいます。「結論(Point)」「理由(Reason)」「具体例(Example)」「結論(Point)」の順番で書くことで、わかりやすく説得力のある文章を書くことができます。
過去の体験など具体的なエピソードを盛り込む
エントリーシートで自分の魅力や人となりを伝えるために、具体的なエピソードを盛り込むことも大切です。漠然とした主張だけでは説得力に欠けるため、過去の体験などを取り上げ、説得力のあるクオリティの高い文章に仕上げましょう。
例えば、妥協をせずに取り組み成果を出した、さまざまなアイデアを出して何かを成功させたなど、特性による強みを成功体験に結びつけられると障害を強みに変えられます。
エピソードでは、その体験で得た学びについても説明することで、自発的に成長できる人材であることをアピールできます。障害と向き合ううちに自分の強みに気づいたエピソードなども、前向きな姿勢を伝えるうえで効果的です。
誤字脱字や初歩的なルールの確認
エントリーシートに誤字脱字はないか、記述ルールは守れているかといった点を確認することも重要なポイントです。
発達障害の方は、特性によって誤字脱字や基本的なルールの見過ごしといった初歩的なミスをする可能性があります。企業の採用担当者は大量のエントリーシートをチェックするため、初歩的なミスがあるだけで弾かれてしまうケースも懸念されます。
エントリーシートを書き終えたら、書いた内容は慎重にチェックしましょう。修正テープなどは使えないため、ミスがあった場合は再度書き直さなければならないので注意が必要です。
エントリーシート(ES)は作成後に添削を
エントリーシートにミスや過不足があっても、自分だけでは気づけない可能性があります。完成度をより高めるために、書き上げたエントリーシートは第三者に添削してもらうのがおすすめです。
就活エージェントや大学のキャリアセンターでは、エントリーシートの添削を行っています。志望動機や自己PRの書き方について具体的なアドバイスも受けられるため、積極的に活用しましょう。
発達障害の方は、就職活動の支援を行っている機関を利用する方法もあります。どのような支援機関があるのかを知り、エントリーシートの添削の際に活用するとよいでしょう。
エントリーシート(ES)対策に利用できる支援機関
発達障害の方の就活支援を行っている支援機関には、就労移行支援やハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどがあります。
就労移行支援は障害のある方の就職を支援する福祉サービスで、職業訓練や就活支援などの総合的なサポートを行っています。ハローワークでは就活に関するセミナーを開催しており、障害について職員に相談することも可能です。
障害者就業・生活支援センターでは、就業と生活に関して幅広い相談を受け付けています。エントリーシートの書き方に悩んでいる方は、これらの支援機関をぜひ活用してみてください。
KaienのES対策
Kaienでも、発達障害の方向けにエントリーシートの添削をはじめとした就活支援サービスを行っています。
Kaienのガクプロは、発達障害の学生の方に向けた就職活動の支援サービスです。利用者は職業体験や就活に関するセッションに参加でき、オンラインでも面接の練習ができます。発達障害に理解のある企業の独自求人も扱っており、累計300人超の内定者を輩出している実績も魅力です。
就労移行支援では、自分の適職がわかる職業訓練や、障害理解を深められる講座などのカリキュラムを豊富に用意しています。就職活動を担当カウンセラーが手厚くサポートし、就職後も業務上の困りごとなどについて相談できる定着支援が利用できます。
ESの添削だけでなく、就職活動を総合的にサポートしてほしいと考えている方は、ぜひkaienのガクプロや就労移行支援をご活用ください。
エントリーシート(ES)の書き方を押さえた就活対策を
就職活動のエントリーシートでは、企業に自分の熱意や人柄を伝えることが重要です。自己PRやガクチカで具体的なエピソードを披露しつつ、自分が企業に必要な人材であることを積極的にアピールしましょう。
発達障害の方は、ESに自身の障害特性や配慮事項を記載しておくと、企業側の理解を得やすくなります。ESを添削してほしい方や就活の進め方に悩んでいる場合は、Kaienのガクプロや就労移行支援を利用して、プロのサポートを受けることをおすすめします。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。