長い時間をかけて内定企業を探す就活は、ただでさえ大変です。明確なスケジュールが定まっているわけではないため、「いつまで続ければいいかわからない」といった声もよく聞かれます。発達障害*などの障害がある場合は特に、就活の進め方に自信がなかったり、無事に内定が出るのか不安だったりする方も多いでしょう。
今回は就活のスケジュールや内定をとるポイント、発達障害の方が受けられる就職支援について解説します。これから就活を控えている発達障害の方は、ぜひ参考にしてください。
就活はいつまで続ければいい?
就職活動をいつまで続けるべきか、明確な基準があるわけではありません。仮に内定をいくつも持っていても、納得できなければ大学卒業ぎりぎりまで就活する人もいるでしょう。
しかし「この時期までは続ける就活生が多い」というような、大体の目安はあります。就活終了の時期の目安や、タイムリミットを見ていきましょう。
就活終了の時期の目安
マイナビの「2025年卒大学生活動実態調査(10月中旬)」によると、2024年4月を境に内定率が6割を超え、そこから右肩上がりになります。8月に内定率が89.8%とほぼ9割に達し、そこからはほぼ変わりません。10月に内定式を行う企業も多いため、それまでに諸々の手続きを行うと考えると、8月が就活終了時期のひとつの目安となっているようです。
同じようにリクルートの「就職状況調査 2025年卒」でも、2024年4月に内定率が6割を超えて以降、右肩上がりの数字となっています。7月から8月にかけて内定率が9割を超えるため、やはり夏が就活終了時期の目安のようです。
就活のタイムリミットはいつまで?
大学4年生の夏までに内定がもらえなかった場合の就活のタイムリミットは2種類あります。1つ目は大学4年生の12月頃、2つ目は卒業間近である大学4年生の3月頃です。
大学4年生の12月頃は、ちょうど企業の秋選考が終わる時期です。企業の中には夏以降の内定辞退者の補填のために、9~12月にかけて秋選考を行うところがあります。その場合、夏までの選考とは異なり、職種や条件が限定的になっていることがあるので注意が必要です。
秋選考よりも企業数がかなり少なくなるものの、一部の企業は大学4年生の3月頃まで選考を行っています。新卒カードが使える大学4年生の3月までが、最終的な就活のタイムリミットといえるかもしれません。
一般的な就活のスケジュール
就活をいつまで行うべきか把握するために、一般的な就活のスケジュールを覚えておきましょう。インターンを含めると、一般的な就活スケジュールは以下のようになります。
- インターンシップ:大学3年生の夏頃から
- 会社説明会:大学3年生の4月頃から
- エントリー・選考開始:大学3年生の1月頃から
- 内定:大学4年生の6月頃から順次内々定
外資系の企業は上記のスケジュールよりも早く選考が始まる傾向にあります。経団連に加盟する一般企業のいわゆる「就活解禁日」は大学3年生の3月1日ですが、多くの企業がそれよりも前に選考を開始しているのが実情です。
障害者雇用の就活事情
厚生労働省が発表した「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」によると、2023年6月の時点で推計9万1,000人の発達障害の方が障害者雇用で働いています。業種は卸売業・小売業が40.5%ともっとも多く、次いでサービス業(14.6%)、製造業(10.2%)となっています。
発達障害の方の雇用数が多いのは従業員数1,000人以上の大企業(41%)で、2番目に多いのが従業員数30~99人の小企業(19.9%)でした。しかし所属部署の人数でいうと、最多が5~29人の小規模な部署(61.3%)で、次いで30~99人の中規模の部署(22.4%)です。
また、週所定労働時間は、通常(30時間以上)が60.7%ともっとも多く、次点が20時間以上30時間未満(30%)でした。
調査結果より発達障害の方の就職先の傾向としては、障害者雇用を実施する大企業に就職し、配慮が届きやすい小規模な部署に配属され、一般の方と同じ時間働くケースが多いようです。
ただし気をつけたいのは、障害者雇用と一般雇用の就活スケジュールは異なるという点です。実は障害者雇用の多くは、卒業後に就活をして内定を得るケースが多くあります。そのため、大学卒業までに就職をしなければと焦らなくても大丈夫です。
内定が出ず就活が終わらない原因
発達障害などの精神疾患がある方は、体調不良で就活が満足に行えない場合が多いです。体調を見ながら就活を進めていても、内定がなかなかもらえず就活が終わらないと不安が大きくなるかもしれません。
ここでは、内定が出ない理由として考えられる要素を見ていきましょう。
自己分析・自己理解が不十分
就活を円滑に進めるうえで、自己分析や自己理解はとても重要です。自分のやりたいことや興味のある分野があやふやだと、どの業界や企業を中心に受けるべきかわかりません。
面接で入社後にやりたいことを聞かれても、自己理解が不十分だと具体性に欠け、企業側に熱意も伝わりにくいです。企業側はやる気や熱意のある学生を採用したいわけですから、志望理由に具体性がないと他の就活生との差別化は難しくなるでしょう。
また、自分の強みや弱みを把握していないと、自分に対する客観的な視点が欠けてしまいます。長所だけでなく自分の欠点も十分に理解し、そのうえで欠点を補えるような行動ができる学生は、採用する側にも魅力的に映ります。
自己分析のやり方に自信がない場合は、就職支援機関などにも相談してみましょう。
志望先の選び方に問題がある
企業選びの軸ができていないと、有名企業や大企業ばかりを受けてしまい、なかなか内定が出ないケースに陥りやすいです。
有名企業や大企業は倍率も高く、単純にそれだけで内定を得るのが難しくなります。加えて人気企業は多数の応募者から選べるため、スキルや学歴といった選考基準を高く設定していることが多くあります。
ネームバリューだけに注目しないで、希望する業界や望む働き方など自分の企業選びの軸をしっかり確立すれば、おのずと自分に合った志望先を見つけられるでしょう。
エントリー数が少ない
エントリー数の少なさは、内定がもらえる確率の低下につながります。
リクルート就職みらい研究所の「就職白書2023」によると、2023年卒の就活生の平均エントリー数は16.02社で、内定数は平均2.51社でした。16社エントリーしたとしてもそのうちの14社には落とされてしまう計算なので、いかにエントリー数を増やすことが大切かわかります。
ただし、やみくもにエントリー数を増やせば良いというわけではありません。エントリー数を増やしすぎると1社1社への準備が不十分になる恐れがあります。しかし、「本命企業だけ」と数社しかエントリーしないと、その分内定への道が遠のいてしまいます。
エントリー数が極端に少ない方は、会社規模や業種・職種を絞りすぎてないかもう1度見直してみましょう。
就活の基本的なマナーが身についていない
面接では、身だしなみや所作、言葉遣いといった就活の基本的なマナーもチェックされます。その際の印象が悪いと、落とされる可能性が高くなるでしょう。
発達障害の方の場合、特性により一般的な基準との感覚のズレや不適切な言葉遣い、場にそぐわないふるまいをしてしまうケースが少なくありません。ノックの回数やお辞儀の角度、挨拶の仕方、清潔感がある格好をしているかなど、面接の前に一通りの就活マナーを確認しておきましょう。また、面接の際はコミュニケーション能力も判断されます。面接官や他の学生の話をきちんと聞く姿勢がとれているか、アピールに夢中になって相手の話を遮ってないかなど、細かな部分にも気を付けましょう。
自分のマナーが適切か心配な方は、就職支援機関などに相談して第三者の目線で見てもらうのもおすすめです。
発達障害の方の就活準備のポイント
発達障害の方は、その特性により就活で苦労することも少なくありません。発達障害の方の就活準備のポイントを見ていきましょう。
3年生までに単位を取得しておく
就活準備をするうえで大切なのは、3年生までに卒業に必要な単位を取得しておくことです。大学4年生になると、就活・授業(単位)・卒論(卒研)と同時に進めることが多く、ただでさえ大変です。
発達障害の方は、その特性から一度にたくさんのことをこなすのが苦手という方が少なくありません。就活が本格的に始まる大学3年生の1月頃までに卒業に必要な単位を取得しておけば、大学4年生は就活と卒論だけに注力できます。具体的には、4年次に週に1~2日学校に行けば十分という環境にしておくと安心です。
そのためには大学1~2年生の早い段階から、就活を見越して履修や授業への出席、レポートの提出などを気にしておきましょう。
家族にサポートしてもらう
近年の就活は情報戦の様相が強く、就活生はさまざまな企業の中から自分に合う企業を選び就活を進めていきます。また、就活は採用過程においてエントリーシートの提出やSPIなど、期日が決まっているものも多くあります。
優先順位づけやマルチタスクが苦手な方にとって、情報の海の中から企業を選び、期日に間に合うよう同時並行で複数の書類を用意するといった作業はなかなか難しいのが現状です。家族の方が具体的に作業内容をナビゲートしてあげたり、身だしなみや言葉遣いをアドバイスしてあげたりすると特性による苦手をカバーでき、混乱せず進めていけるでしょう。
しかし、家族が介入しすぎて本人の意志とは異なる就活になってしまわないよう注意が必要です。あくまでも本人の考えを尊重し、家族はサポートに徹するように心がけましょう。
大学の就職課を頼る
一般的な就活エージェントは、トップ校の学生の採用に長けた媒体であり、必ずしもすべての学生に向いているわけではありません。就活においてもっとも活用できるのは、大学の就職課です。大学の就職課は、その大学に所属する学生に向いている求人を紹介してくれます。発達障害があることを伝えれば、発達障害の方にも適正がある求人を教えてくれる可能性もあるでしょう。
大学の就職課は一般的な就活エージェントよりも学生との距離が近い分、より現実的な就活をサポートしてくれます。
障害者雇用は支援機関に相談
発達障害の方で障害者手帳を取得している場合は、一般雇用のほかに障害者雇用にも応募できます。しかし障害者雇用の求人は、大学の就職課ではほとんど扱いがありません。障害者雇用を検討している場合は、就労移行支援や新卒応援ハローワークなど、専門の支援機関に相談するようにしましょう。
就労移行支援では、障害のある方向けの一般就労の求人と一緒に、障害者雇用の求人も紹介しています。また新卒応援ハローワークも一般就労と障害者雇用の両方の求人を紹介しており、特に障害者雇用では大企業の求人が多い点も特徴です。
発達障害の方の就活が長引く場合の対処法
発達障害の方で就活が長引いてしまい、いつまで就活を続ければ良いのかわからなくなっている方もいるでしょう。ここからは、発達障害の方の就活が長引く場合の対処法を解説します。
特性理解や自己分析をやり直す
就活が長引く場合は、自分の障害特性や価値観の理解が十分でない可能性があります。そのため、改めて自己分析からやり直してみると良いでしょう。
特性理解や自己分析が足りていないと、面接の場でPRした自分と本当の自分の姿にズレが生じてしまいます。また、どういった働き方をしたいか、将来のビジョンが明確でないと自分と合わない企業ばかり選んでしまうかもしれません。
自己分析を行う際は、これまでの経験を振り返りながら「将来なりたい自分像」「仕事選びで重視するポイント」「強みと得意分野」などを、それぞれ具体的に紙に書き出してみましょう。1人では自信がないという場合は、親や友人、就職支援機関のスタッフなど、第三者に相談するのもおすすめです。
企業研究を行う
志望動機を考えるうえで、綿密な企業研究は欠かせません。企業の魅力や課題点、入社した場合に自分がどう貢献できるかを具体的に説明できると、熱意も伝わりやすいです。
企業研究を行う際は、以下の情報を参照してみましょう。
- コーポレートサイトや就活サイト
- OB・OG訪問
- プレスリリースや最新の企業ニュース
コーポレートサイトや就活サイトでは、企業の歴史や事業内容、経営ビジョンといった基本情報を把握できます。OB・OG訪問では、実際にその企業で働いている人のリアルな声を聞けるため、企業の雰囲気や業務内容を具体的につかむことができるでしょう。加えて、プレスリリースや最新の企業ニュースを見ておくと、企業の旬の話題がわかるだけでなく、企業が世の中にどういった影響を与えたいのか読み取ることができます。
支援機関を活用する
就活は、エントリーシートや面接、SPIテストなどの選考を経て進みます。
より具体性があり、熱意のあるエントリーシートを作成するために、支援機関にエントリーシートの添削をしてもらうと良いでしょう。就活支援機関では添削だけでなく、面接の予行演習なども行っています。
エントリーシートの添削では、誤字脱字や言い回しの修正だけでなく、志望動機の内容や自己PRの方法をプロの目から見てアドバイスしてもらえます。面接の予行演習は、敬語やビジネスマナーの練習、面接官を相手にリラックスして喋る練習にも最適です。
発達障害の学生向けの就活支援
Kaienでは、発達障害の方向けの就活支援を実施しています。
Kaienの就労移行支援
Kaienの就労移行支援では、常時100種類以上の実践的な職業訓練が受けられます。また就活までの基礎知識やビジネススキル、ソーシャルスキルを学べる講座も豊富に用意している点が特徴です。自分の特性に合った職種を探しながら、就活に必要なマナーやスキルを身につけられます。
Kaienの自立訓練(生活訓練)
まだ働くことに自信が持てない、すぐに就活ではなく生活リズムを整え、自己理解を深めたいという方には自立訓練(生活訓練)がおすすめです。Kaienの自立訓練(生活訓練)は、自分を見つめ直して将来を再設計するための講座や実践的なプロジェクト、担当スタッフとの1対1のカウンセリングなどを行っています。まずは就活のための基盤をしっかり作ることが大切です。
ガクプロ
Kaienが運営する「ガクプロ」は、発達障害やグレーゾーンの学生の方を対象とした就活支援サービスです。就活のハードルとなる発達障害の特性への対処法を学べるほか、エントリーシートの作成サポートや志望企業の選定支援などを個別に受けることができます。就労移行支援よりもより就活に特化したサービスです。
マイナーリーグ
「マイナーリーグ」は、障害者雇用専門の就職・転職サイトです。学生だけでなく幅広い年齢の方の就活を支援するサービスで、発達障害などに理解がある企業の求人を掲載しています。受けられる配慮の内容も調べたり、自身の強みを活かせる仕事を探すのに役立つでしょう。支援者と内容を共有しながら選考を進められるので、1人での就活は不安という方も安心です。
就活をいつまで続けるかは事前の対策がカギ
就活に終わりが見えないと、いつまで続ければ良いのかわからず不安になることもあるでしょう。発達障害の方や未診断でもグレーゾーンに該当する方は、就活の過程で特性がハンデとなる場合も少なくありません。だからこそ、事前の対策が鍵となります。余裕を持って十分な対策を練っていれば、苦手をカバーしながら就活を進められます。また、支援機関をうまく活用することも大切です。
Kaienでは、学生の方向けの就活支援サービスも用意しています。頼れるサポートを受けながら、ぜひ後悔の少ない就活をしてください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。