認知症になったら使える制度はある?制度ごとの特徴を解説

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ご自身やご家族が認知症と診断されたら、不安や戸惑いを感じるのは当然です。しかし、適切な支援制度を活用すれば、生活の質を保ちながら安心して日々を過ごすことができます。公的なものから民間のサービスまで幅広い支援制度があるため、どのようなものがあるか知っておくだけでも不安が少し解消されるでしょう。

本記事では、認知症と診断された際に役立つ支援制度を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

認知症とは?

認知症とは病気や障害などによって、脳の神経細胞の働きが低下し、認知機能が低下する状態を指します。認知症になると記憶障害や言語障害などが表れ、日常生活全般に支障が出ます。

認知症には複数の種類がありますが、似た症状を持つ発達障害と混同されるケースも少なくありません。例えば、レビー小体型認知症とADHDは即時記憶が困難という共通点があるため、誤診されやすい傾向にあります。

発達障害と認知症の大きな違いは病状が進行するかどうかです。認知症は徐々に進行していく点が特徴です。ただ、発達障害と認知症が併発するケースもあるため、見分けが難しいケースもあります。

認知症になったら使える公的な制度

認知症と診断された方のために、生活の支えとなる公的制度が用意されています。日常生活や経済面、就労などさまざまな支援制度があるため、状況に応じて活用しましょう。

ここでは、認知症になったら使える公的な制度を紹介します。

日常生活に関する支援制度

認知症と診断されると、まず日常生活に関する不安を抱く方が多いかと思います。まずは、日常生活に関する支援制度を3つ紹介するので、チェックしておきましょう。

介護保険サービス

介護保険サービスは、介護が必要な本人や家族を支えるための公的なサービスです。それぞれの介護の必要度に応じて、訪問介護・訪問看護・デイサービス・ショートステイ・介護老人福祉施設などの多様なサービスが用意されており、1〜3割の自己負担額で利用できるのが特徴です。

サービス利用には、地域の障害福祉窓口または地域包括支援センターで申請し、要介護認定を受ける必要があります。通常は65歳以上の方が対象ですが、若年性認知症と診断された場合は40歳以上の方もサービスを利用できます。

成年後見人制度

成年後見人制度は、認知症などで判断能力が衰えてしまった方のための保護・支援制度です。成年後見人制度には、次の2種類があります。

  • 任意後見制度:将来の認知症に備えて事前に支援内容を決めておく制度
  • 法定後見制度:すでに認知症と診断されている方が利用する制度

後見人が対応する業務は、主に次の2つです。

  • 財産管理:不動産や預貯金の管理、相続手続など
  • 身上保護:介護・福祉サービスの利用契約や履行状況の確認など

法定後見制度では、必要な保護・支援などの事情を考慮して、家庭裁判所が選任します。本人の親族以外に、法律や福祉の専門家やその他の第三者が選ばれることもあります。

日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業は、判断能力が低下しているものの、適切な支援を受けることで自立した生活を続けられる方を対象とした制度です。一人暮らしをしている認知症の方は、福祉サービスに関する情報提供や契約の代行、行政手続きや医療費の支払い手続きなど、日常生活のさまざまな場面で支援が受けられます。

日常生活自立支援事業の利用を希望する場合は、最寄りの社会福祉協議会に相談しましょう。現在の生活状況や希望する支援内容についての確認が行われ、要件に該当すると判断されれば制度を利用できます。

経済的な支援制度

認知症の方が安心して生活を送るためには、日常生活に関する支援だけでなく、経済的な支援も欠かせません。ここでは、認知症の方が利用できる経済的な支援制度を紹介します。

自立支援医療制度

自立支援医療制度は、精神疾患による通院治療のための医療費の負担を軽減できる制度です。対象となる疾患・障害には、次のようなものがあります。

  • 統合失調症
  • うつ病などの気分障害
  • 薬物依存症
  • パニック障害
  • 知的障害
  • アルツハイマー病型認知症
  • 血管性認知症
  • てんかん など

自立支援医療費制度の利用を希望する場合は、お住まいの自治体の担当窓口に申請してください。申請には医師の診断書や同じ医療保険世帯の方の所得状況がわかる資料などが必要です。また、この制度は通院による治療が対象で、入院する場合には適用されません。

高額療養費制度

高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。認知症では医療費が高額になるケースもありますが、この制度を活用することで経済的負担を軽減できます。

自己負担額の上限は所得や年齢によって異なり、いくつかの条件を満たすと負担をさらに軽減する仕組みも用意されています。申請先は加入している公的医療保険の窓口で、国民健康保険に加入している方は各自治体、企業の健康保険組合に加入している方は原則勤務先に申請してください。

高額介護サービス費

高額介護サービス費は、介護サービスの利用にかかる自己負担が一定の限度額を超えた場合に、その超過分が支給される制度です。介護保険サービスの自己負担額は1〜3割に抑えられるものの、認知症の方が介護サービスを長期的に利用すると費用がかさむこともあるでしょう。経済的な負担が大きいと感じる場合は、この制度の活用を検討してみてください。

自己負担の限度額は、世帯の収入に応じて異なります。高額介護サービス費の利用を希望する場合は、お住まいの自治体の介護保険担当窓口で手続きを行ってください。

障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

認知症は記憶障害などの症状が見られるため、精神障害に位置づけられます。そのため、自治体に申請すると障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の取得が可能です。障害者手帳を取得すると、公共料金の割引や税金の一部控除など、経済面でのメリットがあるため、取得を検討してみましょう。

特別障害者手当

特別障害者手当は、著しく重度の障害があり、在宅で常時介護が必要な20歳以上の方を対象とする手当です。収入などの条件を満たせば、月額2万8,840円(2024年4月より適用)が支給されます。

在宅介護が条件となっていますが、有料老人ホームやグループホームは施設入所に該当しないため、特別障害者手当の対象です。また、特別養護老人ホームなどに短期入所した場合も、施設入所には該当しません。

家族介護慰労金

家族介護慰労金は、要介護者の家族を支援するための制度です。要介護者が施設を利用せず在宅で介護を受けている場合、その介護者に対して自治体から慰労金が支給されます。

支給額は自治体によって異なりますが、年額約10〜12万円が受け取れます。支給要件も自治体によって異なるため、詳細はお住まいの自治体の障害福祉窓口に問い合わせてみてください。

傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった人に手当金が支給される制度です。健康保険に加入している方が利用できる制度で、認知症と診断されて就労不能となった場合も対象となる場合があります。

支給額は給与の約3分の2に相当する金額で、支給期間は支給開始日から通算して1年6か月です。受給するには加入する健康保険組合への申請が必要なため、詳しくは勤務先の窓口に確認してください。

障害年金

障害年金は、病気やケガによって日常生活や就労が制限される方が受け取れる年金です。該当の病気やケガで初めて医師の診療を受けた際に、国民年金に加入していた方は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた方は「障害厚生年金」を利用できます。

認知症で障害年金を申請するには、65歳未満で発症する若年性認知症である必要があります。ただし、65歳以上であっても初診日が65歳未満であれば申請は可能です。

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、低所得者世帯や高齢者世帯、障害者手帳の交付を受けた人がいる世帯などを対象とした支援制度です。生活支援金や住宅入居費、介護サービスを受けるための費用などが借りられます。

貸付利子は、連帯保証人がいる場合は無利子、いない場合は年1.5%です。貸付条件や限度額、償還期限などは資金の種類によって異なるため、詳細はお住まいの自治体の社会福祉協議会へお問い合わせください。

生活保護

生活保護は、さまざまな事情で生活に困窮している方を支援するための制度です。生活保護を申請する権利は誰にでもあるため、認知症で働けなくなり、経済的に厳しい状況にある場合にも申請できます。

生活保護で支給されるのは、最低生活費から年金などの収入を差し引いた金額です。最低生活費は、年齢や世帯の人数などによって定められています。生活保護の対象となるかどうかの基準は細かく定められているので、詳細はお住まいの自治体の福祉事務所にお問い合わせください。

就労に関する支援制度

若年性認知症は65歳未満の方が発症する認知症で、症状や進行具合は人によって異なります。働き盛りの方も多いため、今後の就労について不安を抱えている方も少なくありません。若年性認知症と診断されたら、就労に関する支援制度の活用も検討してみてください。

就労に関する支援制度のひとつに、就労移行支援があります。就労移行支援とは、一般企業への就職を目指す障害者の方を支援する制度です。事業所に通いながら、就労に必要な訓練や就職活動のサポートが受けられます。

就労移行支援では一人ひとりに合わせた個別支援計画を作成するため、自分のペースで就労を目指せるのがメリットです。また、就職後の定着支援として、職場でのコミュニケーションや業務に関するフォローアップも受けられ、安心して働くことができます。

就労移行支援の利用を希望する方は、お住まいの障害福祉窓口や医療機関、ハローワークなどに相談してみてください。

認知症になったら使える民間の制度

認知症の方が使える支援は、公的なものだけでなく民間の制度もあります。ここでは、認知症になったときに使える民間の制度を紹介するので、利用できるものがないかチェックしてみましょう。

生命保険の高度障害特約

生命保険に加入している方は、高度障害特約がついていないか確認してみてください。高度障害特約がついていて、認知症の症状が高度障害と認められた場合、死亡時と同等の保険金を受け取れる可能性があります。

高度障害と認定される基準や受け取れる保険金は、加入している生命保険によって異なるため、詳細は生命保険会社の担当者に確認が必要です。

住宅ローン(団体信用生命保険)の高度障害特約

住宅ローンを組んでいる方は、多くの場合、団体信用生命保険に加入しています。団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が死亡または高度障害を負った場合に、残債分の金額と同額の保険金が支払われる仕組みです。保険金は借り入れをした金融機関が受け取り、残りの返済に充てられるため、以降の住宅ローンの支払いは免除されます。

認知症の症状によっては高度障害と認定され、住宅ローンの支払いが免除される可能性があるため、借り入れをしている金融機関に問い合わせてみましょう。

認知症になったら使える制度は多種多様

認知症の方やその家族が利用できる支援には、公的なものから民間の制度まで多岐にわたります。日常生活や経済面、就職活動など、さまざまな方面から支援を受けられるため、必要に応じて積極的に活用してくださいね。

公的な制度は自治体の障害福祉窓口や社会福祉協議会で相談を受け付けているので、困りごとや不明なことがあれば問い合わせてみましょう。民間の制度を利用したい場合は、加入している生命保険会社や借り入れ先の金融機関へ個別に連絡が必要です。

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