障害者グループホームは、障害のある方が地域社会の中で支援を受けながら自立した生活を送るための施設で、正式名称は「共同生活支援事業」といいます。さまざまなタイプのグループホームがあり、支援内容や対象者が異なるため、入居を希望する方は事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、障害者グループホームの種類やサービス内容、利用料金や入居のための手続きなどを解説するので、参考にしてください。
障害者グループホーム(共同生活支援事業)とは?
障害者グループホームは、障害のある方が必要な支援を受けながら暮らせる共同生活の場です。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、利用者は他の入居者や支援員と交流しながら社会生活を送ることができます。
具体的な支援内容は、食事の提供や入浴・排泄の介助、金銭管理の指導などです。障害者グループホームの利用によって、障害のある方の自立を支援し、社会的孤立を防ぐ効果が期待されています。
障害者グループホームの住居は、共同生活型と単身型の大きく2つの形態に分けられます。それぞれの特徴について、以下で見ていきましょう。
共同生活型
共同生活型は、一軒家で複数の利用者が共同生活をするグループホームです。他の入居者や支援員と顔を合わせる機会が多く、コミュニケーションが生まれやすいため、社会性が身につくというメリットがあります。
単身型
単身型はマンションやアパート形式のグループホームで、利用者はそれぞれの個室で生活をします。交流できる場は別途設けられていますが、共同生活型と比べると一人暮らしに近い生活を送れるのが特徴です。将来的に自立した一人暮らしを目指す場合、単身型のグループホームでの暮らしが良いシミュレーションになるでしょう。
障害者グループホームのサービス内容
知的障害や発達障害*など、それぞれの障害に特化したグループホームが存在します。また、受けられるサービス内容も、グループホームによってさまざまです。
一般的な障害者グループホームでは、支援員が日常生活における介助や金銭管理の指導、食事や入浴の準備などを行っています。夜間まで支援員がサポートするケースもあれば、13時から22時など勤務時間が決まっているケースもあります。
また、勤務時間外でも支援員と電話やメールで連絡が取れるよう体制を整えているグループホームも見られます。
障害者グループホームにはどんな人が暮らしている?
障害者グループホームは障害福祉サービスのひとつとして提供されており、障害福祉サービス受給者証を取得している方が利用できます。意外に思われるかもしれませんが、障害者手帳は必須ではありません。
主な対象は、なんらかの障害があり、適切な支援があれば問題なく共同生活を送ることができる18歳以上の方です。基本的に障害の種類に関わらず利用できますが、グループホームによっては「知的障害者向け」や「発達障害者向け」など、特定の障害に特化した支援を提供している場合もあります。
入居するグループホームにもよりますが、日中の活動場所が求められることも少なくありません。その場合は、一般雇用や障害者雇用で働いたり、就労継続支援や就労移行支援、自立訓練といったサービスを利用したりするケースが一般的です。
また、障害者グループホームは利用者の障害支援区分によって国からの報酬が決まる仕組みとなっており、障害支援区分が低いほど報酬は少なくなります。そのため、「非該当」や区分が低い人は利用を断られたり、入居後のサポートが手薄になったりするケースも見られる点には注意が必要です。
このように、各グループホームが提供する支援内容や対象者には違いがあるため、自分に合ったところを選ぶことが大切です。
障害者グループホームの種類
障害者グループホームは、大きく次の5つの種類があります。
- 介護サービス包括型
- 外部サービス利用型
- 日中活動サービス支援型
- サテライト型
- 通過型
それぞれのグループホームの特徴について、以下で詳しく見ていきましょう。
介護サービス包括型
介護サービス包括型は、主に夜間や休日に介護などのサポートが必要な方のための障害者グループホームです。食事の提供や入浴・排泄の介助、就労先との連絡調整など、障害のある方が安心して日常生活を送れるよう、支援員がさまざまな面からサポートを行います。
介護サービス包括型は、障害者グループホームの中でも事業者数と利用者数が特に多いのが特徴です。
外部サービス利用型
外部サービス利用型は、主に夜間や休日に日常生活のサポートを提供する障害者グループホームです。利用者は入浴の介助といった介護サービスも受けられますが、介護については委託契約を結んだ外部のホームヘルパーが担当します。
介護サービス包括型はグループホームの支援員が介護も担当するのに対して、外部サービス利用型の支援員が担当するのは日常生活に関する相談や援助です。利用者側から見ると提供されるサービスの内容は大きく変わりませんが、介護サービスの担当者が介護サービス包括型と外部サービス利用型では異なっています。
日中活動サービス支援型
日中活動サービス支援型は、夜間や休日だけでなく、1日を通して介護が必要な方を対象とした障害者グループホームです。障害のある方の高齢化や重度の障害を持つ方にも対応できるよう、2018年に創設されました。
日中活動サービス支援型のグループホームでは、重度心身障害者の短期入所や一時的な宿泊にも対応しています。日常生活で必要な介護に加え、外出や余暇活動の支援など、安心して地域生活を送るためのサポートも受けられます。
サテライト型
サテライト型は、支援を受けたり他の利用者と交流したりできるグループホームから少し離れた場所で一人暮らしができる住居のことです。実際の一人暮らしにより近い形で生活できるため、将来的に自立した生活を送りたい方に向いています。
基本的には一人で生活しますが、支援員が1日に数回住居を巡回し、必要な場合にはすぐにサポートできる体制を整えているところもあります。また、グループホームを訪れて食事や交流、困りごとの相談を行うことも可能です。
通過型
通過型は、将来的に一人暮らしへ移行することを目的とした障害者グループホームです。基本的に3年間の利用期間が定められており、利用者はこの期間に一人暮らしに向けた準備を進めます。
通過型のグループホームは自立した生活を目指す人を対象としているため、比較的軽度な障害を持つ方の利用が多い傾向にあります。また、東京都では入居対象者の条件として「日常生活を維持できる程度の収入があること」「一定程度の自活能力があること」などを求めています。
通過型のグループホームでは、生活スキルの習得や自己管理の向上を図りながら、安心して次のステップへの準備ができます。日常生活に関する相談やサポートも行っているため、段階的に自立を目指したい方におすすめです。
障害者グループホームの利用にかかる料金とは?
障害者グループホームを利用する際には、障害福祉サービス利用料や家賃、光熱費などの費用が発生します。障害者グループホームの利用を検討している方は、具体的にどのくらいの料金がかかるのかも気になるポイントでしょう。
ここでは、グループホームの利用にかかる障害福祉サービス利用料と家賃・光熱費について、詳しく見ていきます。
障害福祉サービス利用料
障害者グループホームは、障害福祉サービスのひとつです。障害福祉サービスは世帯の収入状況に応じて区分と利用者負担上限月額が設定されていて、上限以上の料金はかかりません。
障害福祉サービス利用料金の区分と負担上限月額は、以下の通りです。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯※3人世帯で障害者基礎年金1級を受給している場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯※収入が概ね670万円以下の世帯が対象 / 入所施設利用者(20歳以上)もしくはグループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合「一般2」に該当 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
障害者グループホームへ入居すると、親世帯とは別の世帯となります。そのため、入居者本人が市町村民税課税世帯に該当しない場合は負担上限月額が0円となり、障害福祉サービス利用料が無料になるケースも少なくありません。
家賃や光熱費
障害者グループホームを利用する際には、障害福祉サービス利用料のほかに家賃や光熱費がかかります。具体的な金額は地域や入居するグループホームによって異なるため、詳細は個別に確認が必要です。家賃相場は、地方都市で月3〜4万円、都市部で4〜6万円程度になります。
光熱費や食費は、月額料金が定められています。家賃同様、金額は入居するグループホームによって異なるため、入居を希望するグループホームに個別に確認してください。
実際の自己負担額は、人によって大きく異なります。家賃については国や自治体から補助が出るため、相場よりもかなり安く入居できるケースも少なくありません。
一方で、年収が一定額を超えると、家賃や光熱費のほかに先ほど紹介した障害福祉サービス利用料金がかかってきます。この場合、グループホームに入居するよりも、一般の物件で一人暮らしをするほうが生活費を抑えられる可能性があります。
障害者グループホームの探し方とは?
障害者グループホームへの入居を希望する場合の相談先は、お住まいの自治体の役所や相談支援事業所が基本です。窓口で障害者グループホームへ入居したい旨と希望条件を伝えると、担当者が入居可能なグループホームを探してくれます。
ただし、条件に合うグループホームがすぐに見つかるとは限らず、条件に合う場所が見つかっても、空きがなければ入居はできません。この場合は、希望の条件を伝え、該当するグループホームに空きが出たら連絡をもらえるようお願いする形になります。
障害者グループホームに入居するための手続き
障害者グループホームに入居するには、次のような流れで手続きを進めます。
- 自治体に申請して「障害福祉サービス受給者証」を取得する
- 入居したいグループホームを決める
- 個別支援計画を作成する
- 入居するグループホームと契約する
障害者グループホームを利用するには、障害福祉サービス受給者証が必要です。お住まいの自治体の障害福祉窓口で申請し、取得手続きを進めてください。
次に、自治体の窓口や相談支援事業者に相談し、入居したいグループホームを探しましょう。グループホームは事前見学も可能なので、環境をしっかり確認して選ぶことが大切です。
個別支援計画は障害福祉サービスを利用する際に作成する書類で、一人ひとりに合わせた支援内容を記載します。サービス事業者が作成し、利用者や保護者の同意を得て交付されます。
個別支援計画を作成したら、利用者とグループホームが契約を結び、入居となります。手続きの開始から入居まで、1〜2か月程度かかると考えておきましょう。
気になったグループホームがあれば問い合わせてみよう
障害者グループホームは、障害のある方が安心して生活し、自立を目指すための障害福祉サービスです。グループホームには介護サービス包括型や外部サービス利用型、サテライト型などさまざまな種類があり、それぞれ支援内容や利用条件が異なります。
入居を希望する場合は、まず自治体の役所や相談支援事業所に相談し、障害福祉サービス受給者証の取得手続きを進めましょう。気になるグループホームがあれば問い合わせて詳細を確認し、自分に合う環境を見つけてくださいね。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。