就活が上手くいかず、焦りや不安が大きくなると、うつ病のような症状が出る場合があります。内定が得られるまでの就活期間は人それぞれ異なるため、なかなか採用されないと就活が長期に及ぶこともあり、心身のバランスを崩す方も少なくありません。
本記事では、就活うつの原因やなりやすい人の特徴、就活うつの予防対策や対処方法を解説します。就活中で先の見えない不安を感じている方や、うつのような症状で悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
就活うつとは
就活うつとは、思うように就職活動が進まない状況(書類選考で何度も落ちてしまう、周りが内定をもらっているのに自分はまだ決まらないなど)に強いストレスを感じ、うつ状態になることをいいます。
就職活動は内定を得ないと終われないため、何社受けてもなかなか決まらないなど長期戦になる人も少なくありません。その結果、身体的な疲労や精神的な負担が蓄積していくと、次第に「外に出られなくなる」「人に会いたくなくなる」などの症状があらわれ、就職活動が困難になる就活うつになる可能性があります。
就活うつになる原因
就活うつになる原因には、就活を通じて主に以下のような状況に心身が強いストレスを感じてしまうことが挙げられます。
- 内定が取れない焦りやプレッシャー
- 周囲と比較してしまう
- やりたい仕事がない
- 学歴や能力のコンプレックスが強くなる
各原因について具体的にみていきましょう。
内定が取れないことへの焦りやプレッシャー
内定が取れないと、いくつもの会社説明会に行きエントリーシートを書いたり、面接の度に準備に追われ緊張したりという状態を何度も繰り返すことになります。なかなか就職先が決まらないと、「このまま就職できなかったらどうしよう」という焦りや、不採用通知が続くことのショックもどんどん大きくなるものです。就職留年への恐れや、親からのプレッシャーも負担になり、ネガティブ思考が強くなってしまうことで就活うつに陥りやすくなります。
周りと比べてしまう
就職活動中は、嫌でも周囲と自身の就活状況を比べてしまいがちです。友人は自分より先に決まった、もう何人も内定を得ているなどの情報を知るたびに、精神的な辛さが増していくこともあり得ます。最近はSNSなどで採用報告を見る機会もあり、自分だけが内定をもらえていないような気持ちになることもあるでしょう。
また、同じ企業を受けて自分だけが落ちたケースなど、企業とマッチしなかったのが理由だったとしても、友人と自身のレベルを比較してしまうこともあります。自身の就活が順調ならそれほど気にならないかもしれませんが、思うように進まない状況だと落ち込みが強くなるため、就活うつにつながりやすいのです。
やりたい仕事がない
やりたい仕事がない状態で就活をしていると、「この仕事をしたいから志望する」という明確な意思が持てず、会社説明会への参加や志望動機を考えること、面接へのモチベーション維持が難しくなります。「本当にこの仕事が自分に向いているのか」といった不安も生じ、次第に就活を続ける意欲が下がってしまうケースも少なくありません。将来のビジョンを持って就活している友人と自身を比べ、焦りや不安が募ることも就活うつの要因になります。
学歴や能力のコンプレックス
学歴や能力のコンプレックスにより、自己評価が低い方もいるでしょう。コンプレックスがあると、就活を開始した頃は前向きに臨めていたとしても、内定がもらえないことが続くと「自分なんて…」「どうせまた落ちる」といったネガティブ思考につながってしまいがちです。
特に発達障害*(グレーゾーンの方も含む)などの障害がある場合は、学生時代の生きづらさなどから自分の能力にコンプレックスを感じやすい傾向があります。不採用となる度に「自分は人よりできていないから採用されないのだ」と自己否定に陥り、その精神的な負担による二次障害として就活うつにつながる場合があります。
発達障害やグレーゾーンについては、以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
発達障害のグレーゾーンとは?仕事への影響や困りごと、仕事探しのポイントを解説
就活うつになりやすい人の特徴
一度就活うつになると、その症状により就活ができなくなる場合もあります。特に、以下のような特徴に当てはまる人は、就活うつになる可能性があるため確認しておきましょう。
- 真面目すぎる、完璧主義
- コミュニケーションが苦手
- 周りからの評価が気になる
- ネガティブ思考、自分に自信がない
- 自己肯定感が低い
- ストレスを溜めやすく上手く発散できない
- 周りに助けを求められない
- 思い悩むことが多い
- 学歴や能力にコンプレックスがある
複数が当てはまる場合は、就活うつにならないよう事前に対策しながら進めて行きましょう。就活うつの予防法や対処方法は後述します。
就活うつの症状チェックリスト
就活うつは就活のストレスが原因で起こるもので、うつ病になると治療が必要となり、就活の継続が難しくなる場合もあります。以下に、就活うつの症状のサインをまとめていますので、自身に当てはまる症状がないか確認してみましょう。
- やる気が起きず、常に気持ちが沈んでいる
- 不眠、夜中に何度も目が覚める状態が続いている
- 食欲がなく、疲れやすい
- イライラしやすくなった
- 集中力が続かない
- 人と会ったり話したりするのが億劫
- 就活していないときも不安や焦りが消えない
- 突然悲しくなったり涙が出たりする
- 動悸や息苦しさを感じるときがある
- 胃の不快感、吐き気、下痢がある
就活うつを予防する対策&対処法
就活うつになっては、就職活動に支障が出るばかりか日常生活にも影響が出るため、しっかりと予防と対策を講じる必要があります。もし、現在就活うつのような症状がある場合は、適切に対処して症状が悪化しないようにすることが重要です。
ここからは、7つの就活うつの予防策や対処方法をみていきましょう。
医療機関を受診する
就活中にうつっぽい症状がある場合には、無理をして就活のスケジュールを詰め込んだり、睡眠時間を削ってエントリーシートを書いたりするのは控え、休む時間を優先することが大切です。休養をとってもうつの症状が続く場合には、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
うつっぽい症状がある場合は、精神科や心療内科で診てもらえます。医師の判断のもと、適切な休養や治療を受けることが重要です。放置してしまうとより症状を悪化させてしまう恐れがあるため、「まだ大丈夫」と思わずに受診しましょう。
自己分析をしっかり行う
就活が上手く進まないと、「本当にこの仕事でいいのかな」「自分は何がしたいんだろう」といった迷いが生じることもあります。迷ったときには一度立ち止まり、自己分析を行って自分を見つめ直すことが大切です。
自分がやりたいことや得意分野、将来のビジョン、仕事に活かせる強みなどを再度しっかりと考えることで、受けたい企業やアピールできる自分の魅力が見えてくるでしょう。
志望企業の企業研究をする
企業理念や仕事で重視すること、どのような人物を求めているのかなど、志望する企業についてしっかり研究しておきましょう。志望企業を研究をすることで、本当にこの企業とマッチするのか、自分の能力を活かして貢献できるのかが見えてきます。志望動機や自己PRにも具体性が増すため、就活に臨む自信につながるでしょう。
可能であれば企業研究は早めに始めておくと、就活が本格的にスタートしたときの余裕につながります。
他者と自分を比較しない
就活では、他者と自分を比較しないよう考え方をコントロールするのも大切なポイントです。
内定獲得の早さに能力は比例しません。不採用だったのは相性が合わなかっただけ、自身とマッチする企業に出会うのに時間がかかる人もいれば、早い人もいるといったように捉え、周りは気にせず自分のペースで進めていきましょう。つい覗いてしまいがちなSNSは、さまざまな情報で気持ちが揺れることもありますので、就活中は見ないようにするのも心の安定を保つ方法です。
ストレス解消法を作っておく
就活中は一日に就活スケジュールを詰め込んでしまったり、何か就活をしていないと不安で少しでも時間があれば情報収集をしたりと、無理をしてしまいがちです。しかし、このような状態が長期に渡ると疲労が溜まり、心身のバランスを崩す可能性も少なくありません。好きなことをする日を作る、アロマで心を落ち着ける、軽くジョギングするなど、自分なりのストレス解消法を作り、息抜きすることも大切です。
一人で悩まず相談する
就活の悩みや不安は、自分一人で抱え込むとネガティブな思考が堂々巡りしてしまい、うつの症状が悪化してしまうこともあります。抑うつ防止のためにも、一人で悩まず周囲に相談しましょう。
身近な人の方が相談しやすい場合は、家族や就活を経験した先輩に打ち明けてみてください。大学のキャリアセンターや相談窓口、新卒ハローワークなど、さまざまな支援機関を活用するのもおすすめです。他者に相談すると悩みを言語化でき、自分の考えを整理できます。さまざまな考え方や、新しい情報を得られることもあるため、話しやすい相手にまずは相談してみましょう。
働き方や就活の視野を広げる
発達障害などの障害がある場合は、一般雇用だけでなく障害者雇用という選択肢もあります。障害者雇用は一般雇用よりも求人が少なく、大学の就職課などでは扱いがないケースが多いですが、障害があることを前提としているため理解や配慮を得やすいというメリットがあります。自分に合う職場環境や業務内容で無理なく働きたい方に適した選択肢です。
障害者雇用の場合は大学卒業後から就活を始めるケースも多いため、在学中に内定をもらわなければと焦る必要はありません。卒業後に就労移行支援などの支援機関を経て就職するケースもあります。
なお、障害者雇用に応募するには障害者手帳が必要なため、事前に申請し取得しておきましょう。
就活うつになる前に支援機関を頼ろう
就活うつになって就活が困難になると、場合によっては内定が得られず就職留年も検討しなければなりません。そうなる前に支援機関に頼れば、専門家のサポートのもと就活することができ、心身のストレス軽減にもつながります。
うつ病や発達障害などの障害のある方が就活の際に頼れる支援機関には、就労移行支援やハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどがあります。中でも、就労移行支援は一般企業への就職に強く、職業訓練を受けながら障害の特性に適した企業への就職が目指せます。就活の悩みを相談したり、自身の適性や強みを見つけたりと、就職に向けて手厚い支援が受けられるのも魅力です。
Kaienの支援サービス
障害があり一般企業への就職を希望する方や、今後の就職に向け自立した生活を目指す方、就職活動に向けて在学中から準備を始めていきたい方には、Kaienの支援サービスがおすすめです。
Kaienでは、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、ガクプロを通して、発達障害の方に特化した支援を行っています。就労移行支援では、豊富な職業訓練やスキルアップを目指す講座を受講でき、障害者に理解ある企業と連携して独自求人を含む多数の求人紹介が可能です。
自立訓練(生活訓練)では、生活習慣の改善やコミュニケーションの取り方など、自立した生活に向けて個々の目的に応じた実践的なプログラムで生活スキルの習得に取り組んでいきます。
ガクプロでは学生を対象に、就活の面接練習や同世代の仲間作りなどを通し、就活中の不安を軽減しながら自分に合った企業への内定を目指し準備を進められます。
就活への不安や悩みがある方は、ぜひお気軽にKaienまでご相談ください。
就活うつは早めの対策と適切な対処を
なかなか内定が決まらず就活が長期化すると、誰もがネガティブ思考に偏りやすく、就活うつになる可能性があります。就活うつはうつ病と同様、一度発症すると回復に時間がかかり、就活の継続が難しくなることも少なくありません。
現在、就活中でうつっぽい症状がある方は、早めに医療機関を受診する、周りに相談するなど適切に対処しましょう。就活をサポートする支援機関もありますので、就活うつになる前に、頼ることも検討してみてください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます