就活での業界調査は、自分に合った職場を探すための重要な第一歩です。特に障害がある場合、職場環境や仕事内容を細かくチェックする必要があるので、重要性はさらに高まります。
しかし、どんな業界があるのか、自分に合う業界や適職は何なのかがわからず、スタートで悩んでいる方もいると思います。そこでこの記事では、就活でスムーズに業界選びができるよう、代表的な業界の特徴や、業界を選ぶときのポイントなどを紹介します。
就活における業界とは
そもそも「業界」とは、各企業が提供している商品やサービスで分類するための枠組みです。スポーツ用品や動画配信といった、商品やサービスの「小さな」枠組みで分類するのではなく、メーカーや流通・小売といった大きな枠組みで分類します。
例えば、自動車やスポーツ用品といった、製品を作っている企業であれば「メーカー」に分類され、スーパーやコンビニといった小売業を営んでいる企業であれば「流通・小売」に分類されます。
業種、業態、職種との違い
「業種」「業態」「職種」という言葉は「業界」と混同しやすく、特に、業界と業種は勘違いされやすいので気を付けましょう。それぞれの概要は以下の通りです。
- 業種:取り扱う商品やサービスの種類を指す言葉(自動車、食品、アパレルなど)
- 業態:商品やサービスの提供方法やビジネスの違いを指す言葉(コンビニエンスストア、ホームセンター、百貨店など)
- 職種:実際の仕事内容の種類を指す言葉(営業職、事務職、エンジニアなど)
たとえば、百貨店で働いている総合職の方は、業界は「流通・小売」で、業種は「小売業」、業態は「百貨店」、職種は「総合職」となります。
就活の主な業界分類と特徴
以下の8種類が、就活で関わる代表的な業界です。
- メーカー
- 流通・小売
- サービス・インフラ
- 広告・出版・マスコミ
- 商社
- 金融
- IT・ソフトウェア・通信
- 官公庁・公社・団体
厳密には他にも業界がありますが、就活で関わる企業の多くは、上記のいずれかに分類されます。各業界の概要や仕事内容を見ていきましょう。
メーカー
メーカーとは製品の企画・製造を行う、いわばモノづくりを主とする企業が属する業界です。自動車や食品、医薬品、機械部品など、さまざまな製品を取り扱う企業があり、裾野が広い業界です。
また、担当している製造工程によって、主に以下の4種類に分類されます。
- 素材メーカー:製品に使う原材料を製造する
- 部品メーカー:製品の構成部品を製造する
- 加工メーカー:部品の加工や組み立てなどを行う
- 総合メーカー:素材から製品の組立てまでを一貫して行う
主な仕事内容は、製品の企画や製造、営業、研究開発などです。
流通・小売
流通・小売は、メーカーや卸売り業者などから仕入れた商品を、消費者に販売する企業が属する業界です。スーパーや百貨店などの実店舗に加えて、ECサイトのようなオンラインで販売する企業も含まれます。
仕事内容は、販売や店舗運営、バイヤー、商品開発、マーケティング、物流管理など多岐にわたります。一口に流通・小売といっても、企業内にはさまざまな部署があるので、配属される部署によって実際の仕事内容は大きく変わるのも特徴です。
サービス・インフラ
サービス・インフラは、介護や美容、冠婚葬祭など、商品としての形がない「サービス」を提供する企業や、電気や水道、ガスなどの「インフラ」を取り扱っている企業が属する業界です。
さまざまな業種が含まれるので、仕事内容は企業によって大きく異なります。そのため、仕事内容を知るには企業の詳細をよく調べる必要があります。また、あん摩マッサージ指圧師や理容師など、資格が必要な業種も多いです。
広告・出版・マスコミ
広告・出版・マスコミは、広告代理店や出版社、テレビ局などが属する業界です。テレビやインターネット、ラジオなどの情報媒体を用いて、情報発信を行います。
昔はテレビや紙媒体、ラジオなどが主な媒体でしたが、最近はインターネットの発展によって、Webメディアや電子書籍、Web広告、動画配信サービス、SNSなど、さまざまな情報媒体を取り扱うようになりました。
仕事内容は情報媒体によって異なりますので、まずは関わりたい情報媒体から決めるとよいでしょう。
商社
商社は国内外の商品やサービスを取り扱い、売り手と買い手を仲介する企業が属する、多様な業務を手掛ける業界です。さまざまな商品やサービスを幅広く取り扱う「総合商社」と、特定の分野に特化した商品やサービスを取り扱う「専門商社」があります。
仕事内容は、商品の選定や調達、営業、マーケティングなどで、海外の商品を取り扱う場合は、貿易の手続きや現地での買い付けなども担当します。また、大手商社の場合は、主に中小企業を対象に事業投資を行う場合もあります。
金融
金融は、主にお金を動かすことに関係する銀行や証券会社、保険会社、クレジットカードを取り扱う信販会社などが含まれる業界です。
仕事内容は、銀行は窓口業務や投資、ローンの相談など、証券会社は株式や投資信託といった金融商品の販売、保険会社は保険商品の販売及び管理、信販会社はクレジット取引の提供と管理が主な内容です。なお、一部の金融商品は銀行や保険会社でも取り扱う場合があります。
IT・ソフトウェア・通信
IT・ソフトウェア・通信は、IT(インフォメーション・テクノロジー/情報技術)を用いた製品やサービスの提供や、IT関連業務の請け負い、インターネットや電話などの通信サービスの提供などを行う企業が属する業界です。
近年急速に成長を遂げている業界で、特にIT業界ではプログラマーやSE(システムエンジニア)、Webデザイナー、データサイエンティストなど、さまざまな職種が存在します。
仕事内容は、システム開発や保守管理、データの分析、Webサイトの構築など、専門性が高いものが多いです。
官公庁・公社・団体
官公庁や公社、非営利団体が属する業界で、公共サービスの提供が主な業務です。具体的には、国家公務員や地方公務員、公立学校の教師、警察官、消防士、自衛隊、国公立の施設などが該当します。
仕事内容は、省庁や市役所などの場合は事務仕事が中心で、一部技術職や栄養士といった専門職も採用しています。教師や警察官などは、それぞれ専門的な仕事が中心ですが、事務や会計を担当する職員を採用する場合もあります。
障害者雇用率の高い業界
2023年に厚生労働省から発表された「障害者雇用状況」の集計結果によると、障害者雇用率の上位5位は医療・福祉関連の3.09%、生活関連サービス業・娯楽業の2.46%、電気・ガス・熱供給・水道業の2.41%、運輸業・郵便業の2.39%、農・林・漁業の2.38%となっています。
これを、企業規模別で見ると、1,000人以上の2.55%がもっとも高く、最も規模が小さい43.5〜100人未満の1.95%に向けて、少しずつ割合が減少しています。
ただし、障害者雇用を扱っているのは大企業がほとんどで、仕事内容は全般的に専門職または軽作業や事務補助が多い傾向にあります。どの業界を選んでも業務内容は似通っているため、障害者雇用で仕事を探す場合は業界や業種を絞って就活する必要性は低いといえるでしょう。
就活で志望業界を絞るポイント
就活にあたって志望業界を絞る際には、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
- 自己分析をする
- 業界研究をする
- GATB(一般職業適性検査)を受ける
- 支援機関に相談する
進める順番としては、まず自己分析で自分を理解し、それから業界との相性を考えていく流れがスムーズでしょう。とはいえ、慣れないことに1人でとり組むのは大変なので、最初から支援機関に相談するのもありです。
ちなみに業界を絞り込む数は、ある程度選択肢を確保するために、2〜4つ程度をおすすめします。
自己分析をする
業界選びで最初に取り組むべきことは、自己分析による自分自身の整理です。自分の強みや弱み、価値観、興味関心などを書き出して、自分の基礎データを把握しましょう。
自己分析の方法にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的な3つの方法を紹介します。
- 自分史:人生の時系列順に、成功体験や失敗体験、頑張ったことなどを書き出す
- モチベーショングラフ:人生のモチベーションを時間軸に沿ってグラフにする
- マインドマップ:得意なことや成功体験などからアイデアをつなげたマップを作る
業界研究をする
業界研究は、業界の理解を深めて自分との相性を考えるためのステップです。一般的な手順は以下のとおりです。
- 業界を選ぶ
- 業界のトップ企業を調べる
- 業界全体の情報収集を行う
2から具体的な調査に入りますが、まずトップ各業界の企業は、業界ごとに企業の売上やシェアなどをまとめたWebサイトや書籍で調べられます。売上上位5社の経営方針や社長挨拶、企業理念、事業内容などを調べ、大まかな業界の傾向を把握しましょう。
最後に、業界全体のWebサイトやニュースサイト、就職情報サイトなどで、業界の動向やトレンドなどを調べ、業界が社会で果たしている役割を理解していきます。
GATB(一般職業適性検査)を受ける
GATB(一般職業適性検査)とは、自分の能力に合った職業を探すための適正テストです。紙筆検査と器具検査を行い、仕事上で主に必要とされる9種の能力を測定し、自分の得意分野や苦手分野を整理します。
- 検査対象年齢:13歳以上45歳未満
- 所要時間:紙筆検査45~50分、器具検査12~15分
- 検査する適性能:知的能力、言語能力、数理能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ、手腕の器用さ
GATBは、ハローワークや障害者職業センターなどで無料で受けられます。受ける場合は、事前に電話またはメールで予約しましょう。
支援機関に相談する
就活では以下のような支援機関を積極的に活用することをおすすめします。専門知識を有する支援員やスタッフによる客観的な評価や適性のある業界の提案などを通して、新たな気づきを得られるはずです。
- 就活エージェント:個別面談を通じてマッチした企業の紹介や企業との調整など就活の全面サポート
- ハローワーク:障害の有無を問わず求人紹介や安定就労のためのトータルサポート
- 就労移行支援:障害がある方の一般就労を目標に、求人の紹介やスキルアップ支援などを行う
なかでも就労移行支援は、就活に必要なスキルの習得から就活支援、定着支援までを一貫して行ってくれます。いつでも相談できる心強い味方になってくれるでしょう。
Kaienの就活支援
Kaienの就労移行支援は、就職率86%、1年後の離職率9%、3人に1人が月給20万円以上という高い水準にあります。対象者は18歳以上、65歳未満の障害または難病がある方で、多くの場合自己負担額0円で利用できます。
サービス内容は、自分に合った適職が分かる職業訓練や、社会スキルの習得や自己理解を促す講座、200社以上と連携した求人の紹介などです。
また、発達障害*のある大学生や大学院生、専門学生の方を対象に就活支援を行う「ガクプロ」というサービスも提供しています。就活支援の前段階として、障害の理解や学習・生活面の伴走も行っているので、就活の時期になる前から利用できます。
Kaienでは随時、見学会や体験利用を実施しています。興味のある方はお気軽にご連絡ください。
就活は適職を見極めて業界を選ぼう
自分に合った仕事を見つけるには、自分と企業の特徴のマッチングが大切です。まずはじっくりと自己理解を深めて、業界研究を通して相性の良さそうな企業を探しましょう。
自己理解と業界研究は、どちらも1人でとり組むのは大変です。Kaienを始めとした支援機関を積極的に利用して、希望する働き方や目標を明確にしながら、一歩一歩進んでいきましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。