カウンセリングは保険適用される?種類や方法、受けられる場所と選び方を解説

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心の悩みについて、カウンセリングを受けようかと考えたことがある方は多いのではないでしょうか? しかし、初めて利用する方にとっては、保険適用の有無や費用をはじめ、受けられる場所やカウンセリングの方法など、多くの疑問があると思います。

そこで本記事では、カウンセリングの費用に関する疑問に加えて、自分に合ったカウンセリングを選ぶポイントを解説します。カウンセリングを受ける場所や注意点、期待できる効果など、カウンセリングの基本についても説明しているので、参考にしてください。

カウンセリングとは

カウンセリングとは、心理学の専門知識を持った「カウンセラー」が、個人の悩みや課題を聞き取り、それらの整理や解決、改善などを支援する対話型のサポート方法です。医療分野においては「心理カウンセリング」と呼ばれることが一般的です。

カウンセリングの具体的な内容は、相談者の状態や相談の内容などによって異なりますが、一般的に以下の流れで進められていきます。

  1. 相談内容の聞き取り
  2. 課題の整理
  3. 解決に向けたサポート

カウンセリングは対面形式で行われることが多いですが、最近では電話やオンラインなどで受けられることも増えています。

カウンセリングはどんな人に必要?

治療にカウンセリングが用いられるのは、一般的に以下に当てはまる場合です。

  • 相談者が「考えて話せる状態」にある
  • 悩みの原因に「心理、社会的問題」が存在している
  • 経済的に、継続的なカウンセリングが可能
  • 相談者がカウンセリングの必要性を感じている

そもそもカウンセリングを行うには、対話ができる程度の気力が必要です。例えばうつ病がある方の場合、症状の程度にもよりますが深く考えることが難しい状態であれば、まだカウンセリングを受ける段階にはありません。

また、治療で必要と診断されていなくても、専門家の意見が聞きたいなどの希望があればカウンセリングを受けられる場合があります。まずは自分がカウンセリングを受けられる状態か見極め、必要性などを考えて受けるかどうか検討することが大切です。

カウンセリングは保険適用される?

カウンセリングは保険適用外の治療であるため、基本的に保険は適用されません。これは、医師の指示や医療機関との連携があっても同様です。ただし、例外的に医師が診察時に行うカウンセリングは保険が適用される場合があります。

例えば、医療機関と連携したカウンセリングルームで、カウンセラーによるカウンセリングを受けた場合は保険の適用外となりますが、初診時に医師が状況を把握するために行うカウンセリングは保険が適用される可能性があります。

カウンセリングの料金相場

カウンセリングの料金相場は、保険適用か自費診療かによって大きく異なりますが、実際のところ、自費診療となるのが一般的です。そのため、1回60分前後で約1万円が相場の目安となります。

費用面を考えると、保険適用となる医師によるカウンセリングを希望したくなりますが、医師は診察や薬の処方などを行う必要があるので、カウンセリングの時間を作るのは難しいのが現状です。

なお、カウンセリング費用の負担が大きく金銭的な余裕がない場合は、厚生労働省による無料相談窓口を活用するという方法もあります。

厚生労働省電話相談窓口

カウンセリングはどこで受けられる?

カウンセリングを受けられる主な場所は、以下のとおりです。

  • 精神科や心療内科
  • カウンセリングセンター
  • 民間のカウンセリングルーム
  • 学校のスクールカウンセラー
  • 保健所や精神保健福祉センター
  • 企業の医務室やカウンセリングルーム

カウンセリングは医療機関を受診しなくても受けることができます。カウンセリングセンターや民間のカウンセリングルームなどは有料ですが、企業や学校などでは無料で受けられる場合が多いです。また、近年ではオンラインで受けられるケースも増えています。

主なカウンセリングの種類

カウンセリングというと、1対1で会話をするイメージがあると思いますが、実際にはほかにもさまざまな種類があります。よく用いられる方法には以下のようなものがあります。

  • 来談者中心療法
  • 認知行動療法
  • 家族療法
  • グループカウンセリング

これらの中から、カウンセラーが相談者の傾向に応じて最適な方法を提案します。それでは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

来談者中心療法

来談者中心療法とは、利用者が主体となって自らの課題を整理し、解決へと導く方法です。相談者が対話を通して自己理解を深め、内面から変化することを目的としています。

この方法の場合、カウンセラーは積極的な指導や助言は行わず、相談者の話に共感しながら傾聴する聞き手となります。このとき、カウンセラーは以下の3つを尊重してカウンセリングを行うのが特徴です。

  • 無条件の肯定的受容:相談者を否定しない
  • 共感:相談者に共感を示す
  • 真正性:カウンセラーが自分を素直に表現し、相談者との信頼関係を築く

認知行動療法

認知行動療法とは、認知(物事の捉え方)や行動を意識的に変える心理療法の一種です。うつ病や不安障害など、多くの精神疾患の治療に用いられており、ストレスの原因になっている認知の偏りを理解し、改善していくことで継続的なストレスの軽減を目指します。

例えば「自分には価値がない」という否定的な考えを持っている場合、考えを再解釈するクセを付ければ、「自分の強みを活かせる場もある」という肯定的な考えを引き出すことにつながります。

家族療法

家族療法とは、相談者をIP(患者とみなされる方)として扱い、家族という構成単位におけるコミュニケーションが、IPの悩みにどのような影響を及ぼしているかを考察、改善していく方法です。例えば家庭内で長女が孤立している場合、以下のような可能性が考えられます。

  1. 長女が家族を避けがちになる
  2. 母親が原因を問い詰める
  3. 長女が反発し、さらに孤立する
  4. 父親が、母親の責任を追及する
  5. 家族全体が不和になり、長女の孤立が進む

カウンセラーはカウンセリングにより、上記のような家族内における悪循環を解きほぐすことを目指します。

グループカウンセリング

グループカウンセリングとは、共通の悩みがある人たちと共通のテーマに沿って会話をすることで、悩みの解決の糸口となる新たな気づきや価値観などを得る方法です。自分を似た境遇の人に重ね合わせることで、自らの考え方や行動を見直す効果も期待できます。

また、共通の悩みがある「仲間」と意見を交わし合うことで、「自分だけが苦しんでいるわけではない」と気づき、孤独感の緩和や心理的な安心感などを得る効果も期待できます。

カウンセリングに期待できる効果

ここで改めてカウンセリングに期待できる効果を整理しましょう。カウンセリングは基本的に、悩みの整理や理解から始まり、緩和や改善へと導くという流れで進んでいきます。

では、どのような効果によって心の悩みを緩和や改善へと導いていくのか、ここではカウンセリングに期待できる代表的な3つの効果を紹介します。

気持ちが軽くなる

カウンセリングを受けて、おそらく最初に実感する効果は「気持ちが軽くなる」ことでしょう。自分の中に抱えていた悩みを吐き出すことで、心の負担が和らいだり、安心感が得られたりします。

悩みの理解を進めるにしても、そもそも悩みに向き合う余裕がなければ対応は困難です。まずは専門知識を持ったカウンセラーに親身になって話を聞いてもらい、自分を労わるところから始めましょう。

また「安心して話してもいい場所」を得られることで、それまで言葉にできなかった悩みを吐き出すことができ、自分の中で気持ちが整理されていくこともあります。

自分を客観視できる

次に期待できる効果が「自分を客観視できる」ことです。カウンセラーとの対話の中で考えが整理されていき、悩みに冷静に向き合えるようになっていきます。

悩みがあるときは、偏った思考に陥ってしまい、自分を冷静に見られなくなりがちです。また、同じ考えが自分の中で堂々巡りしてしまうこともあるでしょう。

カウンセラーとの対話は、このような状態から抜け出すための良い機会になります。悩みを伝えることで自分の中で整理が進んだり、アドバイスから新たな視点を得られたりもするでしょう。

今後の方向性が見えてくる

自分を客観視できるようになると、悩みを解消するための課題が分かるようになり「今後の方向性が見えてくる」という変化が生まれます。

カウンセラーは課題を一緒に整理し、自分の価値観や希望に合った選択肢を見つけるサポートをしてくれます。課題の解決に向けて進んでいく際には、専門知識を活かした良き伴走者にもなってくれるでしょう。

現状を変えたいが1人では自信がないという方にも、カウンセリングは有用だといえます。

カウンセリングに向いていない人はいる?

カウンセリングは多くの人にとってプラスに働く方法ですが、カウンセラーと話すエネルギーがまだない方や、話すこと自体がストレスに感じる状態の方は、まだカウンセリングを受けられる段階にないといえます。この場合は、人と話せるレベルにまで回復するために、休養を優先しましょう。

また、発達障害*(特にASD/自閉スペクトラム症)の方は、特性により具体的な回答を求める傾向があるため、共感や気づきを重視するカウンセリングがかえってストレスになる場合があります。このような場合は、カウンセリングの方法をYes/No形式や選択肢を提示するやり方にするなどの工夫が必要です。

ほかにも、考えや気持ちの言語化が苦手な方は、カウンセラーに自分の思いを伝えること自体がストレスに感じる場合があります。その場合、説明に図や絵を用いる、あらかじめ悩みを文章にまとめておくなどの工夫が求められます。

カウンセリングを受ける際の注意点

カウンセリングを受ける際には、特に事前準備は必要ありません。ただし、以下のように、いくつか事前に知っておきたいポイントがあります。

  • うまく話そうと頑張らない
  • 効果をすぐに期待しない
  • カウンセラーとの相性を見極める

カウンセリングでは医師の診察のように要点を伝える必要はありませんし、短期間での変化を生むものでもありません。自然な「対話」によってゆるやかな変化を期待するものだと理解しておきましょう。

うまく話そうと頑張らない

カウンセリングでは、話をうまく整理して伝えようと気負う必要はありません。話を引き出すのはカウンセラーの役割なので、相談者は自然体でただ思ったことを話すだけで大丈夫です。

もちろん、うまく言葉にできなくても問題ありません。表現できる範囲で伝えれば、カウンセラーが適切な質問を投げかけてくれるので、自然と対話が進んでいくでしょう。言葉に詰まることを恐れず、自分のペースで話せばよいのです。

それでも心配な場合は、事前に話したいことをメモにまとめておくのもよいでしょう。話すのが難しい場合、メモをカウンセラーに見せて伝えることもできます。

効果をすぐに期待しない

カウンセリングは1回で劇的な変化を生むものではなく、継続することで少しずつ効果を実感していくものです。例えば、数回通い続けることで、自分の思考や感情のパターンに気づき、行動に変化が及ぶといった感じです。

カウンセラーとの信頼関係が構築されていくと、次第に話せる範囲が広がっていき、より深い悩みにも取り組めるようになるでしょう。

また、改善策が分かっても、自分の心が現状を受け入れて先へ進もうとするためには時間がかかります。結果を焦らず、カウンセラーと協力しながら無理のないスピードで進めていきましょう。

カウンセラーとの相性を見極める

カウンセラーとの相性は、悩みの話しやすさやアドバイスの受け入れやすさなど、多くの面に影響を及ぼします。話しやすいと感じるカウンセラーが相手であれば、リラックスして悩みを打ち明けられますし、アドバイスも素直に受け入れられるでしょう。

カウンセラーとの信頼関係は、カウンセリングのステップを進めていくための重要な要素です。担当者の変更は珍しい話ではなく、カウンセラー側も相性があることは理解しているので、どうしても話しにくいと感じる場合は、遠慮せずに変更を申し出ましょう。

カウンセリングを選ぶポイント

自分に合うカウンセリングを選ぶ主なポイントは以下の3点です。

  • 話しやすさ
  • カウンセラーの資格・得意分野
  • カウンセリングの方法

カウンセリングで自分の悩みを引き出し、解決へと導いてもらうためには、カウンセラーが十分な知識や視点を持っていること、そして最適な方法によるアプローチが大切です。では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

話しやすさを重視

カウンセリングにおいて、カウンセラーとの対話は重要です。悩みや自分の思うことを素直に話すことが、問題解決の糸口につながります。そのため、カウンセラーとの話しやすさを重視する必要があります。

カウンセラーの人柄や雰囲気、相性など自分が話しやすい相手や環境かどうかを基準に選ぶようにしましょう。

カウンセラーの資格・得意分野

カウンセラーの資格や得意分野は、悩みを相談するうえで重要です。代表的な資格には以下のようなものがあります。

  • 公認心理師
    心理学(人間の心理や行動を化学的に解明する学問)に基づく専門的な知識や技術を持つ
  • 臨床心理士
    臨床心理学(心の問題の原因や解消法を研究する学問)に基づく専門的な知識や技術を持つ
  • 産業カウンセラー
    従業員や職場などを支援する心理カウンセラー
  • 家族心理士
    家族間で起こる心理的問題に対して支援を行う

公認心理師や臨床心理士のような、カウンセリング全般に関する資格をベースに、産業カウンセラーや家族心理士のような、特定の分野に特化した資格を見ていくとよいでしょう。

また、カウンセラーによって得意としている分野は異なるため、自分が相談したい悩みとマッチしているかどうかも確認する必要があります。

カウンセリングの方法

カウンセリングの方法を選ぶ際には、認知行動療法やグループカウンセリングといった「カウンセリングの手法」と、対面やオンラインといったした「カウンセリングの受け方」に着目しましょう。

特に、心の悩みがあるときは思ったように行動できないことも多いので、負担の少ないカウンセリングの受け方を選ぶのがおすすめです。必ずしも対面で行う必要はなく、家から出るのが難しい場合や、対面だと緊張してしまうような場合などは、オンラインや電話でも問題ありません。無理なくカウンセリングを続けられることを第一に、手法と受け方を選びましょう。

仕事についての相談はキャリアカウンセリングを

キャリアカウンセリングとは「キャリアカウンセラー」と呼ばれる専門家が、キャリア全般に関する悩みを支援するものです。例えば、適性や希望に合った仕事、キャリア形成の方向性の提案、就活の支援などを行います。

キャリアカウンセリングは民間と行政の両方で行われており、それぞれ以下のような特徴があります。

  • 民間
    キャリア相談サービスや転職サービス、個人のキャリアカウンセラーなどが行う。多くの場合有償だが、専門的かつ個人に寄り添ったカウンセリングが受けられる。オンラインで受けられるサービスも多い。
  • 行政
    市役所やキャリアセンターなどの公共機関で受けられる。スポットでの相談を前提としている場合が多い。

Kaienの就職・転職支援

Kaienでは、障害がある方を対象に、一般企業への就職を目指す「就労移行支援」と自立生活を目指す「自立訓練(生活訓練)」というサービスを実施しており、その一環としてキャリアカウンセリングを行っています。

例えば「就労移行支援」では、職業訓練と組み合わせて月に2回、30分ずつ個別のカウンセリングを行います。定期的に自分の長所や改善点を整理して、今後の方向性を具体化するのが狙いです。

Kaienには200社以上と連携した豊富な求人があるので、カウンセリング結果を進路に反映しやすい点も強みです。まだ働く自信が持てないという方は、自立訓練(生活訓練)で生活の基盤を整えていきましょう。自立訓練(生活訓練)終了後に、就労移行支援に移ることも可能です。

カウンセリングの費用は事前に確認を

カウンセリングは多くの場合、保険が適用されないので、相場が1回あたり1万円前後と高額になってしまいます。しっかり効果を得られるように、カウンセラーの資格や得意分野、自分との相性などを確認して利用しましょう。

また、仕事に関する悩みなら、キャリアカウンセリングを使うのも手です。無料で利用できる場合や、Kaienのように就職支援と一体になっている場合もあります。自分に合いそうなサービスを見つけたら、この記事で説明したことを踏まえて、上手く活用してみるとよいでしょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。