うつ病になると、身体面と精神面の両方に症状が現れ、日常生活はもちろん仕事にも影響するでしょう。仕事で遅刻や欠勤が増える、職場での受け答えがうまくできなくなる、といった状況が続く場合、うつ病の可能性があり、できるだけ早く対応を行うことが重要です。
本記事では、うつ病の主な症状や仕事への影響、取るべき対応などについて解説します。うつ病で仕事を続けられなくなった際に利用できる経済的なサポートや、仕事に関する相談先も紹介しますので、ぜひお役立てください。
うつ病の症状とは?
うつ病になると、身体面や精神面にさまざまな症状が出ます。ここでは、うつ病の代表的な症状を紹介します。
身体面
身体面に現れるうつ病の症状としては、以下が挙げられます。
- 不眠、寝つきが悪い
- 過眠、朝起きられない
- 食欲不振・過多
- 体重の急な変化
- 疲労感が取れない
- 頭や首、肩まわりが重い、だるい
寝つきが悪く、早朝に意図せず目覚めてしまう、などの不眠の状態、または寝すぎて日中の遅い時間まで起きられない過眠の状態が続く場合があります。また、食欲が極端に少なくなり体重が急に減ってしまう、反対に食欲が増加して体重が増えてしまう、といったパターンも考えられます。
他にも、疲れがまったく取れない、首や肩こりのつらさが続くなどもうつ病に該当する場合があります。
精神面
精神面では、以下のような症状が現れます。
- 気持ちが落ち込む
- 憂うつで、悲観的な気分になる
- 不安を強く感じて落ち着かない
- 何事にもやる気が出ない
- 喜怒哀楽が少なくなる
うつ病になると、気持ちが落ち込み、その状態が長く続きます。また、明るく楽しい気持ちになることがなく、憂うつな気分や不安が強くなります。落ち着きがなくなり、場合によっては居ても立ってもいられずに気を紛らわせる行動をとることもあります。
うつ病になったら仕事への影響はどれくらいある?
うつ病になると、仕事にもさまざまな影響が出やすくなります。ここでは、うつ病による仕事での影響について具体的に説明します。
ミスが増える
うつ病になると、集中力ややる気が低下して、仕事でのミスが増えます。例えば、書類やメールでの誤字脱字が増える、締め切りや作業プロセスを忘れるといった行動が見られます。
仕事ができると言われている人でも、ケアレスミスを繰り返すようになることはうつ病では珍しくありません。他人から見て、明らかにパフォーマンスが落ちていると感じられる場合もあります。
遅刻や欠勤が増える
うつ病になると、仕事に行く時間になっても起きられない、体を動かせないといった状態に陥り、遅刻や欠勤が増える場合があります。不眠や過眠、気持ちの落ち込みなど、うつ病の身体面・精神面での症状が続くと、仕事に対して前向きな気持ちを持てなくなり休みがちになります。
うつ病が重篤化した場合などでは、遅刻や欠勤について会社へ連絡することができなくなり、無断での欠勤や早退、遅刻が増えるケースもあります。
周りとのコミュニケーションを避けるようになる
うつ病を発症した人は、職場でのコミュニケーションを避けるようになります。元々明るく社交的な人でも、うつ病になると暗く物静かな印象になり、同僚や上司との関わりや会話を避けるようになる場合があります。
また、食事会や飲み会などに参加しなくなる、休憩中の雑談や会議中の発言が減る、といったパターンも見られます。
離席が増える
うつ病になると、ストレスを感じやすくなります。また、感情が不安定になりやすく、人の多い場所にいると落ち着かなくなって、離席することが増える可能性があります。
集中力や注意力も低下するため、今何をしているのかわからなくなる、仕事に静かに取り組むことが難しくなる、といった状態に陥る場合があります。その結果、頻繁に席を立つ、目的もなくうろつく、といった行動につながるのです。
感情が不安定になる
うつ病を発症すると、気持ちが落ち込みやすい上、感情をコントロールすることが困難になる傾向があります。職場でも怒りっぽくなり、常にイライラして部下に声を荒げてしまう、上司や同僚に反抗的な態度を取る、といったケースが見られます。
普段は穏やかな人が、ちょっとしたことで怒鳴ってしまうパターンも、よくあるうつ病の症状と言われています。
整理整頓ができなくなる
うつ病になると、さまざまな物事への気付きや意欲が少なくなり、今まで問題なくできていた整理整頓が難しくなる可能性があります。片付けができなくなり、職場のデスク上に書類などが山積みになる、ロッカーに物が収まらなくなる、といったことが見られます。
自宅でも、家族などの同居人がいない場合には、足の踏み場もないほど部屋中に物が散乱することもあります。
受け答えがうまくできなくなる
うつ病になると、憂うつな気持ちになりやすく、人と会うことや人と会話をすることがおっくうになります。集中力や注意力が低下して、電話や対面での受け答えが悪くなるため、報連相や情報共有が適切に行えなくなる可能性があります。
結果的に、他人に迷惑をかける、仕事の進捗に影響を及ぼすといった事態を招く可能性が考えられます。また、人とのやり取りがストレスに感じられることで、電話を避けるようになり、仕事での電話もかけられなくなる、といったパターンも見られます。
身だしなみに気をつかえなくなる
うつ病により、仕事や日常生活における意欲がなくなってしまうことで、身だしなみがだらしなくなる場合があります。普段は気をつかっている人でも、美容室に長期間行かなくなった、化粧をしなくなった、服装が以前よりだらしなくなったなどの状態が見られるようになります。
うつ病の症状が出た場合の対応
うつ病を悪化させないためには、できるだけ早く必要な対応を取ることが大切です。ここでは、うつ病の症状が出た場合に取るべき対応について紹介します。
医療機関を受診する
うつ病の症状が出ていて仕事に影響している場合は、できるだけ早く精神科や心療内科などを受診することが重要です。身体面、精神面での不調を抱えながら仕事を続けることで、症状が悪化してしまう可能性があります。
人によっては、仕事が気になって病院に行く余裕がない場合もあるかもしれませんが、うつ病の症状が重篤化すれば休職や退職につながります。受診が遅れるほど治療期間が長引きやすいため、早めに専門医に相談しましょう。
上司や相談窓口に相談する
うつ病の症状により、仕事を今まで通り続けることが難しいと感じたら、上司や職場に設置されている窓口へ相談しましょう。仕事量や業務内容、働き方や環境について、上司に相談することで調整してもらえる可能性があります。
また、多くの企業では、メンタルヘルス対策として産業医や相談窓口を設置しており、職場における健康面や精神面の不安などについて相談できます。相談することでストレスが緩和されれば、うつ病の症状の軽減にもつながるため、利用を検討してみましょう。
休職をする
うつ病の症状がひどく、改善が見られない場合には、休職も検討しましょう。無理して仕事を続けると、さらに状態が悪化し、長期間の治療を余儀なくされることがあります。また、別の精神疾患を併発するリスクも考えられます。
マネージャー職など責任のあるポジションに就いている人や、自分の代わりがいないなどで、職場や同僚に迷惑をかけるのではと不安に思うこともあるでしょう。しかし、休職して治療に専念することで、その分職場に早く復帰できる可能性があります。どのくらいの休養が必要か医師と相談して、休職の制度があれば利用を検討すると良いでしょう。
うつ病で仕事を続けられなくなった時に利用できる経済面のサポート
うつ病で仕事を続けられなくなった場合、経済的なサポートを利用できる場合があります。経済面で不安を感じる人でも、収入や生活費を保証する制度や医療費の助成、税金の免除といった制度を利用することで、負担を軽減することが可能です。ここでは、4つの制度について紹介します。
傷病手当金
傷病手当金とは、病気や怪我、障害のために仕事を続けられず、休職が必要な場合に利用できる制度です。仕事を休まなくてはならず、収入が減ってしまう場合に健康保険(社会保健)の加入者と、その家族の生活を保障することを目的としています。
会社が加入している健康保険の被保険者であれば、雇用形態に関わらず受給の対象となり、支給金額は基本的には給与の約3分の2です。支給の期間は最長1年6ヶ月で、仕事を休んだ日を含む3日間は待機期間と見なされ、4日目以降から支給が開始されます。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、うつ病などの精神疾患に対する医療費の自己負担を軽減できる制度です。統合失調症や不安障害、知的障害など何らかの精神疾患により、通院による治療を続ける必要がある人が利用できます。申請窓口は、各市区町村の障害福祉課や保健福祉課などです。
公的医療保険による医療費の自己負担は通常3割ですが、自立支援医療を利用することで1割まで軽減されます。また、世帯所得などに応じて1ヶ月あたりの自己負担額に上限が設けられ、負担が多くなりすぎないように調整されています。
対象となる費用は、通院によって発生する診療や薬代の他、往診やデイケア、訪問看護なども含まれます。なお、制度が適用されるためには、都道府県が定める指定医療機関に通院する必要があります。
失業手当
失業手当とは、仕事を退職し、再就職までの一定期間に受給できる手当であり、うつ病で仕事を辞めた場合にも申請が可能です。ただし、失業手当は、退職後に就労できる状態の場合に利用できます。受給には求職活動の条件を満たす必要があり、働けない状態では受給できないため注意が必要です。
失業手当の受給期間や金額は、雇用保険の加入期間や退職前の給与、年齢などによって異なります。うつ病の症状がひどく、今すぐ働けない場合は、働ける状態になるまでに受給期間の延長手続きが可能です。
なお、前述した傷病手当金は就労できない状態で利用できる制度であり、失業手当とは併用できない点を覚えておくと良いでしょう。
生活保護
生活保護とは、生活に困窮している人に対して、最低限の生活を送れるように国が必要なサポートや保護を行う支援制度です。うつ病で働くことができず、公的支援や親族からのサポートが受けられない場合に、条件を満たすことで生活保護を申請できます。
申請は、各自治体の福祉事務所、または生活保護の担当部署・窓口で行います。ただし、生活保護は本当にサポートが必要な人だけを対象とした制度であり、一定の資産があるなどの場合は申請できない点に注意が必要です。
うつ病からの就職・復職を目指すときに利用できるサポート
うつ病の人が就職・復職を目指す際に、サポートや支援制度を利用することでスムーズに仕事を再開できる可能性があります。ここでは、うつ病からの就職や復職の際に利用できる相談先や支援場所を紹介します。
ハローワーク
ハローワークは、厚生労働省が管轄している公安職業安定所です。全国500箇所以上に設置されており、就職や転職を目指す人に対して職業紹介や雇用保健の手続き、求職相談などを提供しています。
ハローワークには、障害のある人の就職活動を支援するために、専門的な知識を持つ職員や相談員が在籍しています。福祉施設や就労支援者と連携して、就職から職場定着まで一貫した支援を行っています。
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターとは、うつ病などの心の病気や健康に関する相談ができる支援機関です。精神保健福祉法に基づき、全国の各都道府県や政令指定都市に設置されており、在籍する精神保健福祉士や臨床心理士、保健師などの専門家に相談できます。
メンタルヘルスに関する困りごとなど幅広い相談が可能で、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。また、医療機関・支援機関の情報提供や、精神科デイケアのプログラムなども提供可能です。地域によって「こころの健康センター」「心と体の相談センター」など名称が異なる場合があります。
障害者就業・生活支援センター
障害者就労・生活支援センターとは、障害がある人の仕事と生活を総合的にサポートする公的機関です。身体障害や精神障害、知的障害のある人が、自立して働き続けながら安定した生活を送るために、必要な支援を提供します。障害者手帳を持っていない人も利用可能です。
就労に関する相談や定着支援、職場への同行、支援機関の紹介といった就労サポートが受けられます。生活面では、家庭訪問などを通した健康管理や金銭管理のアドバイス、障害者手帳の取得や障害者年金の申請など幅広く相談できます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、障害がある人が専門的な職業リハビリテーションを受けられる機関です。各都道府県に最低1箇所ずつ設置されており、ハローワークや企業、医療や福祉などと連携して、個人のニーズに合わせて職業相談や職業準備支援、リワーク支援を提供しています。
また、事業主に対しても、雇用管理上の課題分析や専門的なアドバイスを行っています。障害者本人だけでなく、障害者雇用や障害者支援に携わる人も利用することが可能です。
就労移行支援
就労移行支援とは、障害のある人が一般企業への就職を目指すために、必要なサポートを提供する通所型の障害福祉サービスです。利用者は、就労移行支援事業所にて一般企業での就労に必要な職業訓練や就職活動の支援、就労定着に向けたサポートを受けられます。
事業所によって具体的な支援内容は異なりますが、就職に役立つ知識やスキルの習得、自己管理の方法を学ぶことができます。さまざまなプログラムを通して、就労に関する健康管理や人間関係、求められるスキル、就職活動における不安を解消し、安定した就労に向けて取り組むことが可能です。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)とは、障がいのある人が自立した生活を送れるように、日常生活で必要なさまざまな能力の維持や向上を目的とした訓練や相談を行うサービスです。障害者総合支援法で定められた指定障害福祉サービスの1つで、親や周囲の人の手助けがなくても健やかに毎日を送れることを目指します。
支援機関によって提供しているサービスは異なりますが、生活に必要な食事や生活リズムに関するスキル、人との付き合い方や就労に向けたトレーニング、助言などがあります。生活基礎力を取り戻したい、高めたい人や、就労や自立の具体的なイメージが少なく、じっくりと自己理解を深めていきたい人が多く利用しています。
うつ病は早めの対応が重要
うつ病になると、身体面や精神面でさまざまな症状を引き起こし、今まで通りの日常生活や仕事が困難になる可能性があります。仕事では、集中力や判断力の低下からミスが増えてパフォーマンスが下がる、遅刻や欠勤が多くなる、周囲とのコミュニケーションを避けるようになる、といった影響が考えられます。
うつ病の症状が出た場合、もしくは疑われる段階であっても、できるだけ早く対処することが重要です。医療機関を受診し、上司や職場の窓口に相談するとともに、症状がひどい場合には休職も視野に入れましょう。
うつ病で仕事を続けられなくなった場合、経済面のサポートを受けられる制度を申請できる場合があります。今回紹介した就職や復職についての相談場所や支援機関も参考に、うつ病の早期回復に向けて必要な対応を取りましょう。
Kaienでは、就労移行支援や自立訓練などの障害福祉サービスを提供しています。一般企業への就労を希望する人や、自立した生活を目指す人に向けて、個別サポートが可能です。見学や個別相談会を随時開催しており、オンラインでの個別相談も利用できますので、まずはお気軽にご利用ください。