発達障害*にはさまざまな特性があり、その1つに「常同行動」と呼ばれるものがあります。常同行動のパターンは人によって異なりますが、周囲の人間にとっては意図がわからないものが多く、不審に思われてしまうケースも少なくありません。また、自傷行為を伴う常同行動もあります。
今回は常同行動の例や、行動が起こる原因、その対処法などを解説します。常同行動に悩む方が頼れる支援機関も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
発達障害の方に見られる常同行動とは?
常同行動とは、「周囲からは意図がわかりにくい繰り返し行われる行動」のことです。発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)の方によく見られる特性で、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル(最新版はDSM-5-TR)」では、発達障害の診断基準に常同行動の有無が含まれています。
体をリズミカルに前後にゆする、同じ場所をうろうろするなど、常同行動のパターンは人によってさまざまです。また、常同行動は発達障害だけでなく、知的障害のある方にもしばしば見られ、発達障害特有の動きというわけではありません。
加えて常同行動は発達障害の診断基準に含まれるものの、常同行動があるからといって必ずしも発達障害だとは限らないので、注意が必要です。
大人のASD(自閉スペクトラム症)については、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
大人のASD(自閉スペクトラム症)とは?症状や特徴、診断基準を解説
ASDと併存しやすい常同運動症(常同運動障害)
ASDの方によく見られる常同行動ですが、仕事や日常生活に支障をきたすほど症状が強く出ている場合は常同運動症(常同運動障害)と診断されるケースがあります。常同運動症は、生後3年以内の早い段階で常同行動が頻繁にあらわれ、社会生活に支障をきたす状態のことです。常同行動には、壁に頭を打ちつける、自分の体を噛むといった自傷行為も含まれます。また、こうした行動が薬やほかの疾患では説明できない点も特徴です。
常同運動症は発達障害と併存するケースが見られます。特にASDの方の併存率は約44%と高く、ADHD(注意欠如多動症)の方の併存率はおよそ30%とされています。
常同行動としてよく見られる行動例
常同行動としてよく見られるパターンを以下にまとめました。
- 同じところをぐるぐる回る
- 歯をカチカチならす
- 意味のない言葉を繰り返す
- 手を打ち鳴らす
- 手を一定のリズムでひらひらさせる
- 体を前後にゆする
- 無意識に頭を振る
- 壁に頭を打ちつける
- 自分の体を噛む
常同行動の場合、上記のような動きが時と場所を選ばず行われます。
発達障害ではない方でも、落ち着かないと貧乏ゆすりをしたり廊下を行ったり来たりすることがあります。発達障害の方の場合、常同行動がこうした自分を落ち着かせるためのルーティンになっているケースも少なくありません。ただし、周りに理解されづらい行動であったり、自傷につながる行動であったりするために、周囲からは異質に映ってしまいがちです。
常同行動をする原因
発達障害の方が常同行動をする理由は人により異なりますが、考えられる原因として大きく2つに分けられます。1つは先ほど触れたように、心を落ち着かせるためで、もう1つは刺激を得るためです。
どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
心を落ち着かせるため
自分にとっての不快な刺激やストレスを遠ざけ、心を落ち着かせるために常同行動をする場合があります。
ASDの特性として、感覚過敏や五感のかたよりが挙げられます。そのため、雑音や人混み、蛍光灯の光など、周囲が気にならないような刺激にも強いストレスを感じるケースが少なくありません。また、独特のこだわりやコミュニケーションの困難さによって、対人関係でストレスを抱える場合も多いです。
このような不快な刺激やストレスを受けた時に、心を落ち着かせる手段として常同行動をすることがあります。常同行動に意識を向けることで、刺激やストレスを軽減できる場合があります。
刺激を得たいため
感覚過敏とは反対の感覚鈍麻もASDの特性の1つです。
刺激を感じづらい時に、手を叩くといった常同行動で刺激を得るというケースもあります。これは、自ら常同行動を行うことで欠けた感覚を補おうとする「自己刺激行動」の一種といえるでしょう。
刺激を受けると脳内で快楽物質のドーパミンが放出されます。その時に感じた心地良さが習慣化すると、常同行動となってたびたび繰り返されると考えられています。
大人の発達障害の方の常同行動への対処法
大人の発達障害の方の場合、常同行動が仕事などの社会生活に影響してしまう場合があります。常同行動への対処方法として、以下が挙げられます。
- 代替の行動に変更する
- 周囲に理解を求める
それぞれ詳しく見ていきましょう。
代替の行動に変更する
常同行動が日常生活に支障をきたす場合、より安全で目立ちにくい代替の行動へ変更する方法が有効です。たとえば、手を打ち鳴らす代わりに握力ボールを握る、体をつねる代わりに緩衝材のプチプチを潰すなど、同じような刺激を得られるけれど目立ちにくい行動が代替行動として挙げられます。
代替行動を定着させるには、無理なく続けられるものを選ぶことが大切です。常同行動を無理に減らそうとすると、かえってストレスの原因になるため、適切な形で発散することを目指しましょう。
周囲に理解を求める
先ほど述べたように、常同行動は発達障害の特性の1つであり、無理に抑えようとするとストレスの原因となります。また、やめようと思って簡単にやめられるものでもありません。
仕事においては、発達障害の特性として常同行動が出てしまうことを周囲に伝え、合理的配慮を求める方法も有効です。たとえば、会議などの集中する場面で手が動いてしまう場合は握力ボールを握る許可をもらう、常同行動が出ても過剰な指摘を控えてもらうといった内容が挙げられます。
知識がない状態で常同行動を見ると、不審に感じてしまう場合もあるでしょう。事前に周囲に常同行動について説明や相談をすることで、不要な誤解を避けられます。
大人の発達障害に関する相談先
大人の発達障害の方が、仕事や日常生活について相談できる主な支援機関を以下にまとめました。
- 発達障害者支援センター
- 精神保健福祉センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 就労移行支援事業所
- 自立訓練(生活訓練)
発達障害者支援センターや精神保健福祉センターでは、カウンセリングや特性に応じた支援プログラムを通して、発達障害の方をサポートします。また、発達障害者支援センターは職場や学校、労働関係機関と連携し、発達障害の方が働きやすく学びやすい環境づくりを行います。
障害者就業・生活支援センターでは、個別相談や就労支援プログラムのほかに、企業と連携し障害のある方の雇用促進をサポートしている点が特徴です。
就労移行支援事業所は障害のある方の一般就労の支援を、自立訓練(生活訓練)は生活能力の向上と自立のサポートを行っています。
Kaienの支援サービス
Kaienでは、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)を通して、障害のある方の日常生活や社会生活をサポートしています。
Kaienの就労移行支援では、職業訓練から就活支援、就職後の定着支援までを一貫して担当します。ソーシャルスキルやコミュニケーションスキルを学べる講座があるほか、就活支援ではKaienと提携している200社以上の企業をはじめ、発達障害に理解のある職場への就職をサポートするのが特徴です。
自立訓練(生活訓練)では、感情コントロールやストレスケアの方法、生活リズムの整え方など、自立した生活を目指した多様なカリキュラムを提供しています。実践を通して進めるカリキュラムが多い点が魅力です。
Kaienでは無料で見学会や体験利用を随時実施しているので、気になる方はぜひお気軽にご連絡ください。
発達障害の常同行動は周囲の理解も大切
発達障害の常同行動は特性によって起こるもので、心を落ち着かせたり鈍くなっている感覚を補ったりするために行われます。無理に抑えるとかえってストレスになってしまうため、行動そのものをなくすのではなく、常同行動を適切な形に代替する、周囲の人へ伝え理解を得るといった対処が大切です。
自分だけでは対処が難しい場合は、1人で抱え込むのではなく、支援機関に相談するようにしましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます