大人のADHD(注意欠如多動症)は治療で改善可能?診断方法や治療法と改善策を解説

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テレビやネットなどで取り上げられる機会が増えてきたADHD(注意欠如多動症)は発達障害*の一種です。ADHDは幼少時から特性が顕著に見られることも多いですが、中には大人になってからADHDに気付き、生活上や仕事上の困りごとを抱える方もいます。

この記事では、大人のADHDの診断方法や代表的な治療薬とその副作用や注意点、治療薬以外の治し方や改善策について紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

大人のADHD(注意欠如多動症)とは?

ADHD(注意欠如多動症)は、子どもだけに見られるものではなく、大人になってからADHDと診断されるケースもあります。

子どものADHDというと「衝動的に話し出す」「じっと座っていられず動き回る」などの特徴が一般的です。一方、大人のADHDの場合、注意の持続が困難あるいは細部まで注意が向かないために、仕事や家事でのケアレスミスや物忘れが多いといった特徴が見られます。

ADHDの特性を持っていても、子どもの頃には症状が目立たずに見過ごされることがあります。そのため、成人後、就職や結婚などでライフステージが変わり、人間関係や行動範囲が複雑化した際に対処しきれず、問題が表面化して症状に気づくケースも少なくありません。

医学的に使われているものではありませんが、ADHDの特性は以下の3つのパターンに分けるとわかりやすいため、ここで紹介します。

  • 不注意優勢型

「うっかり」ミスや忘れ物、約束を忘れる頻度が高く、気が散りやすい。長時間集中できない場合や、片付けが苦手な場合などもある

  • 多動・衝動優位型

心と体が落ち着かず、じっとしていることが苦手で衝動的に行動してしまう

  • 混合型

不注意優勢型と多動・衝動優位型の特徴を併せ持つ

ADHDの特徴と原因について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。 

大人のADHD(注意欠如多動症)とは?向いている仕事や困りごとへの対処法

大人のADHDは治療で改善できる?

ADHDは生まれつきの特性であるため完治するものではありませんが、治療薬によって特性の一部緩和や改善は可能です。治療は精神科や心療内科などにかかり、定期的に通院して行います。処方された治療薬を飲むことで、神経伝達物質である脳内のドーパミンやノルアドレナリンなどのバランスを調節し、ADHDの特性である「不注意」や「多動・衝動性」を抑えます。

また、治療には服薬以外にも行動療法、環境調整、心理療法などを一緒に行うのが一般的です。グループ・プログラムなどの行動療法や、医師や臨床心理士からカウンセリングを受けて自分の行動や考え方の整理をし、ストレスを少なくする心理療法、生活リズムの見直しや職場の環境改善を行う環境調整などが挙げられます。これらを服薬と一緒に行うことで、ADHDの特性の緩和や改善が見込まれます。

ADHDの診断方法

ADHDの診療は精神科や心療内科で、問診や各種検査に基づいて行われます。また、診断にはアメリカ精神医学会が発行した「DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル/最新版はDSM-5-TR)」が参照されます。主に行われる検査方法は次のようなものが挙げられます。

  • CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales)

ADHD症状の度合いを測定する心理検査で、18歳以上が対象。検査を受ける人が自分で記入する自記式と家族など周囲の人が記入する観察者評価式に分かれている

  • ADHD-RS(ADHD-Rating Scale/ADHDアセスメント)

18歳以下が対象で、ADHDの特性に関する18項目の質問に保護者・教師など周囲の人が回答する形式の検査方法。家庭版と学校版に分かれており、結果は4段階で評価される

ADHDの診断方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

大人のADHDは何科に行けばいい?受診から診断までの流れや医療機関を探す方法を解説

ADHDの代表的な治療薬

ADHDの特性の緩和・改善が期待できる薬として、日本で処方が認められている治療薬がコンサータ、ストラテラ、インチュニブ、ビバンセです。これらは、それぞれ薬が効き始める時間や効果の持続時間、身体への影響などが異なります。

コンサータやビバンセは、ADHD適正流通システムの対象とされている薬です。ADHD適正流通システムとは、不適切な使用や転売・横流しなどを防止する目的で対象薬の流通を厳しく管理するもので、登録された医師のみが対象薬を処方できます。

以下では、ADHDの代表的な治療薬と概要について解説しますので参考にしてください。

コンサータ

コンサータはADHDの治療薬として日本で初めて厚生労働省から承認を受けた治療薬で、不注意の特性に特に効果があります。出社前など、1日1回朝に服用することで日中まで効果が続き、薬が切れるタイミングもはっきりしているのが特徴です。

コンサータは主にドーパミンの再取り込みを抑えて、脳内の情報量を調節することで症状を改善させます。

ストラテラ

ストラテラはADHDの特性全体に効果のある薬です。主にノルアドレナリンの再取り込みを抑えて活性化させ、ドーパミン代謝を調整します。1日1回もしくは2回の服薬で、コンサータより副作用が感じにくいのが特徴です。

ただし、ストラテラを飲んでから効果が効き始めるまで数週間程度かかる点に留意しましょう。

インチュニブ

インチュニブはコンサータ、ストラテラに次ぐ3番目のADHD治療薬で、脳の情報伝達効率を高め、脳の状態を良い方向に調整する作用があります。効果は体質が合えばとても高いのですが、コンサータやストラテラとは作用の仕方が大きく違うのが特徴です。1日1回の服薬です。

主に、ADHDの特性である多動・衝動性や感情不安定のほか、チックや反抗挑戦性障害(反抗挑発症)を併発している方にも特に効果が期待できます。

ビバンセ

ビバンセは6~18歳の小児を対象とした国内で最も新しいADHD治療薬で、コンサータと同様に中枢神経刺激薬に分類されます。欧米では第一選択として使用されるポピュラーな治療薬です。

ビバンセは体内に吸収されるとアンフェタミンに変化し、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを高めて神経伝達物質の量を増やします。

二次障害に対する治療薬

発達障害の方は生活や人間関係、仕事などにおいて。特性による困りごとやストレスを抱えてしまうことが少なくありません。このようなストレスが原因で不安障害やうつ病などの精神疾患を併発する場合もあり、これを発達障害の二次障害といいます。二次障害に対して処方される薬は症状や状態などによりさまざまで、医師の診断に基づき処方されます。例えば、薬の分類としては、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、感情安定薬、睡眠薬などが処方されます。

薬の種類によっては効果を高め合うものもあれば、逆に増悪反応を起こすリスクもあるため、自己判断で服用をやめたり増減させたりするのは危険です。量を調整したい場合などは、必ず医師に相談して副作用なども確認するようにしましょう。

ADHDの治療薬に副作用はある?

ADHDの治療薬に限らず、薬には多かれ少なかれ副作用があります。ADHDの治療薬の場合は食欲不振、吐き気、頭痛、眠気、不眠などがあり、副作用の出方は人によりさまざまです。副作用の程度も薬の効き目と同じように個人差があるため、実際に服用してみないとわかりません。

例えば不注意傾向の改善のためにコンサータを服用し、注意力は高まったものの眠れなくなってしまったというケースもあります。このように、ADHDの治療薬は1回だけでは副作用を含めて効き目がわからないため、主治医とよく相談しながら量や種類を決めることが重要です。

治療薬を服用する際の注意点

治療薬の服用を検討する際は、依存性や長期服用による影響について知っておく必要があります。ADHDの薬もそうですが、時に同じ量では効きづらい耐性という現象が起きることもありますので、服薬するうちに、効きづらい自覚を持つようでしたら主治医と相談しましょう。ADHDの薬に関して、診断が正しければ依存は殆ど問題になりません。

ADHDの処方薬の中には、「この薬を飲まないと不安になる」といった精神依存が出るケースもありますが、服用をやめれば次第になくなっていきます。まずは休薬日を設けるなど、徐々に薬から離れられるよう工夫することが大切です。治療薬はあくまでADHDの特性を緩和させる補助的手段であり、薬の効果により自信が取り戻せれば服用を続ける必要はありません。仕事や私生活で例え失敗しても、前向きな考え方を持てるようになれば薬をやめることを検討してもよいでしょう。その際も自己判断はせず、医師の判断を仰ぐことが大切です。

治療薬以外にADHDの治し方はある?

ADHDの特性は生まれつきの脳機能のかたよりによるものなので、治療は完治させるというよりも症状や特性の状態を改善したり緩和させたりすることが目的です。治療薬以外の治療法としてはカウンセリングや生活習慣の改善、認知行動療法などがあります。治療薬とカウンセリングなど、同時に複数の方法を試すことも有効です。

以下で4つの改善方法を詳しく解説していきます。

カウンセリングによる自己理解

カウンセリングをすることにより、自身のおかれている状態や症状を客観視でき、自己理解を深めることができます。カウンセリングは医療機関や支援機関などで受けることが可能です。薬の服用により、生活や仕事で「失敗が減った」「失敗しても自分を責めなくなった」などの成功体験を、カウンセリングの際に伝えるだけでも自信に結びつきます。

また、医師や専門家とのカウンセリングだけでなく、友人や家族とコミュニケーションをとるだけでも自己理解につながります。自分自身を知るためにも、身近な人に相談してみましょう。

規則正しい生活習慣を身につける

睡眠不足や食生活の乱れは、生活の質を下げることにつながるので要注意です。規則正しい生活習慣を身につけることで、失くしものが減る、気が散りにくくなるといった効果も期待できます。ADHDの方は睡眠障害のある方も多く、不眠によって注意力に影響が出ることも少なくありません。

生活リズムを整えたい場合は、後述する自立訓練(生活訓練)も有効なので、自分だけでは生活習慣を整える自信のない方は利用を検討してみましょう。

認知行動療法

認知行動療法は物事のとらえ方や行動の偏りについて考え、ストレスを少なくしていく方法です。治療として受けられる医療機関はまだ多くはありませんが、特性に対する困りごとについてグループで話し合う「グループ・プログラム」などが、方法の1つとして挙げられます。

悩みを共有することで対処法を知り、知識を習得できるほか、自己理解を深める効果も期待できるでしょう。

適切な支援を受ける

自分だけで問題を抱えるのではなく、適切な支援を受けるのも1つの手段です。支援先は相談したい内容によって異なり、日常生活に対する困りごとがあれば発達障害者支援センターや精神保健福祉センターなど、就労の相談ならば就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどが利用できます。

主な支援先については後述しますが、各支援先によって目的や支援内容が異なるため、自分に合った支援先を選ぶことが大切です。

ADHDとわかったら?知っておきたい相談先

ADHDという診断を受けたとき、もしくは「ADHDかもしれない」とわかった際には、専門家への相談も検討してみましょう。ここでは、日常生活や就労に関する困りごとについて相談できる専門機関を紹介します。

日常生活の困りごとに対する相談先

日常生活におけるさまざまな困りごとを相談できる場所として、以下の相談先があります。

  • 発達障害者支援センター
    ADHDなど発達障害がある方への総合的な支援を目的とした専門的機関で、都道府県・指定都市に設定されている
  • 精神保健福祉センター
    精神保健や精神障害のある方の福祉に関する相談および指導を行う施設で、各都道府県に設置されている
  • 自助グループや家族会
    ADHDの特性による困りごとを抱えた人が集まる場所で、困難をうまく乗り越えるアドバイスやアイデアを共有できることもある

就労に関する支援機関

就労に関する主な相談先として、下記があります。

  • 就労移行支援事業所:ADHDなど障害のある方を対象とし、一般企業への就職サポートや定着支援を行う場所
  • 地域障害者職業センター:障害のある方向けの職業リハビリテーションや就職継続支援などを提供する場所で、都道府県に設置されている
  • 障害者就業・生活支援センター:障害がある方の職業生活における自立を目的とし、就労面や生活面に関する相談や支援を行う機関
  • ハローワーク:求人紹介やセミナーなど就労全般をサポートする場所(発達障害の理解がある専門チューターの配置や相談業務がある場所も)

これらの機関では、支援や相談を利用するための対象条件が設定されている場合もあるので、気になった方は相談が可能かどうか直接問い合わせてみましょう。

Kaienの就労移行支援

Kaienでは発達障害に特化した就労移行支援を行っています。就職実績は過去10年間で約2,000人、就職率86%に対して就職から1年後の離職率は9%と定着率の高さも強みです。

Kaienの就労移行支援では主に以下のような支援を実施しています。

  • 100職種以上の実践的な職業訓練
  • 独自のカリキュラムで多方面のスキル習得
  • 豊富な求人を扱う就活サポート
  • 就職後も安心の定着支援

就活支援ではKaien独自の求人もあり、ADHDなどの発達障害がある方に理解のある企業200社以上と連携し、あなたに合った求人を見つけるサポートを行います。働き方も様々で、3人に1人が給与20万円以上の企業へ就職できているのも特徴です。

Kaienでは通所はもちろんのこと、在宅で支援が受けられるオンラインサービスも実施しています。興味を持たれた方は、無料で相談会や体験利用も実施していますので、お気軽にご相談ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

生活習慣を整えたい方やまだ働く自信を持てない方は、就労移行支援の前に自立訓練(生活訓練)の利用がおすすめです。Kaienの自立訓練(生活訓練)は、障害理解や自立した生活に向けた基盤を整えるサポートを行っています。KaienではADHDの方は約26%利用しており、自立訓練を終えて就労移行を目指す方も多い傾向にあります。

Kaienの自立訓練(生活訓練)の主な支援内容は以下の通りです。

  • 生活スキルやコミュニケーションを学べるソーシャルスキル講座
  • 講座で学んだ内容を実践するマイ・プロジェクト
  • 担当スタッフとの1対1のカウンセリング

実際にKaienの自立訓練を行った方の中には「自分の得意・不得意がよく理解できた」、「コミュニケーションを通じて感情のコントロール方法を学んだ」などの意見もあります。利用する際は9割以上の方が無料なので、ぜひお気軽にご相談ください。

大人のADHDは特性に合った治し方や改善方法を探そう

大人のADHDの特性は生まれつきのものですが、治療薬や対処法を工夫することで状態の緩和を図れます。カウンセリングや相談などによる自己理解、規則正しい生活習慣、認知行動療法なども困りごとを減らす方法として有効です。加えて、適切な支援を受けることで、問題解決への道筋を見つけやすくなる可能性があります。自分の特性に合った治し方や改善方法を探してみてください。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

自分がADHDじゃないか?と疑問を持つ方はますます増えているようです。特に成人女性に多いようで、実際私の外来でも成人で初診に至った方が大勢いらっしゃいます。これは大人になってから発症した訳では無いと考えられています。小さい頃はADHD特性があっても「子どもなら当たり前」と言われたりして見逃され、「上手くできないこと」が軽く見られてしまうことが多いのです。能力のある方の場合には、成人するまでの環境下では何とかやってこられたり、周囲の自然な配慮によって問題視されてこなかったという方も大勢います。ADHDは脳の特性という性質上、治療で無くす類のものではありませんが、医療的には抗ADHD薬という手段があり、とても役立つこともわかっています。日常生活上の工夫は不可欠ですが、それに加えて医療に相談という手段も恐れずに考えてもらえればと思います。

また、ADHDは不安症、うつ病、双極症を合併することが多く、そちらの治療から開始されている方もいます。その場合、症状が強ければ優先されるべきはそれぞれの疾患治療になりますが、一方でADHDへの対策、治療も重要なことがわかってきました。自分には特性があるのでは?と疑う方は主治医と是非相談してみてください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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