ADDとは?症状やADHDとの違い、対処法について解説

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「注意欠如多動症(ADHD)」の人の割合は米国の調査では11%ともいわれ、非常に一般的な症状になってきました。近年、注意欠如多動症のネガティブな側面だけでなく、「多動性」の持つフットワークの軽さや興味の多彩さが強みとして評価されつつあります。

注意欠如多動症は「ADD」と「ADHD」の2つの言葉が使われることがありますが、どちらも「注意欠如多動症」を指す同じ言葉なのでしょうか?考えるヒントになるのは「注意欠如多動症」には、「注意欠如」と「多動性」の2つの特徴が入っていること。ここが「ADHD」と「ADD」の違いのポイントです。(※なお新しい診断基準ではADDは正式な診断名ではなくなりました)。

この記事ではADDとADHDの違いや、ADHDの特性の1つである脳内多動に関する困りごとと対処法を解説します。ADHDの方が利用できる支援機関も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ADDとは

ADDとは、生まれつきの脳機能の特性により、注意力の低下や衝動的な行動が起こる障害です。「ADD」という診断名は過去に使われていましたが、現在では「ADHD(注意欠如多動症)」の一部とされています。

ADDの特徴は、不注意が目立つ点です。ADDは「Attention Deficit Disorder 」の略で、日本では「注意欠如障害」と訳され、不注意優勢型のADHDと表現される場合もあります。具体的には、集中力が長続きしない、忘れ物が多い、スケジュールを守れないといった困りごとが起きる傾向があります。

ADHD(注意欠如多動症)とは

ADHD(注意欠如多動症)とは発達障害*¹のひとつで、物事への注意や集中力が散漫になりやすい「不注意」、じっとしていることが苦手な「多動性」、思いつきで行動してしまう「衝動性」が主な特性として挙げられます。

ADHDは集中力や遂行機能といった脳機能の偏りが原因と考えられており、先天的なものです。子どもの頃に気付かなくても、大人になってから日常生活に支障が出てADHDだとわかるケースも少なくありません。

ADHDの特性による困りごとへの対処法として、環境の調整や社会スキルのトレーニング、薬物治療などがあります。

ADHDの特徴

ADHDの特徴は、「注意欠如・多動症」と訳されることでもわかるように、「注意欠如」と「多動性」です。それぞれどのような症状であるのか、具体例を挙げながら説明します。

「注意欠如」とは

「注意欠如」というのは注意や関心を保つのが難しい人。あるいは注意関心が一つのものにはまりすぎるとそこから離れられなくなってしまう人です。例えば、朝の支度をするときにテレビ、食事、トイレ、化粧、などと段取り良くこなさないといけないのに、床のちょっとした汚れが気になって拭き掃除をしていたらいろいろ気になってしまい、いつの間に時間が経って会社に遅刻してしまうことが多いような状態です。あるいは、提出する資料に自分の名前を書かないといけないという注意を受けながら、実際に記入するときには他のことを考えてしまって名無しのまま抜け漏れた資料を提出してしまうことが多いことなどが具体例としてあげられます。注意欠如は、英語では “Attention Deficit”(注意 欠けている)となります。

「多動性」とは

「多動性」については先に英語訳を考えましょう。多動性は英語では “Hyperactivity” 。ハイパーアクティビティと読むと分かるように、「すごく動いちゃう」という意味となります。発達障害*¹のあるお子さんはじっとしていられない、椅子に座っていられない、衝動的に動いてしまう、というようなことがあり、そのような状態のことを多動性と呼びます。

「注意欠如」に比べると周囲の人が気づきやすく、このため子どもの時に診断された人はこの「多動性」を指摘されることが多くなります。例えば興味のあるものしか見えず、車道に飛び出してしまったり、授業中に座っていることができなかったりなどです。一方で年齢とともにある程度多動性は収まる人が多く、大人では顕著な例はあまり見られない特徴になります。ですので、大人の「注意欠如多動症」というのは、そもそも多動が認められない状態の事のほうが一般的ともいえます。

ただし大人になっても、ずっと座っていると体がムズムズする人や、手や指を動かしていないと落ち着かないなど、周囲からは「多動性」としては分かりづらいものの、「落ち着きの無さ」という印象を持たれる人はいるでしょう。

ADD・ADHDの二次障害とは

ADD・ADHDの特性により、周囲との関係でストレスが生じ、心身に影響が出ることがあります。このように本来の特性から派生する問題が「二次障害」です。

二次障害は、主に自分自身に向かう形で症状が現れる「内在化障害」と、他者や環境に向かう行動的な問題である「外在化障害」の2つに分かれます。

【内在化障害の例】

  • うつ病:気分の落ち込みや無気力
  • 不安障害:強い不安感やパニック発作
  • 適応障害:職場や学校などの環境への適応が難しくなる症状
  • 強迫性障害:不安や強迫行動が繰り返される症状
  • 引きこもり

【外在化障害の例】

  • 反社会的行動(暴力や器物破損など)
  • 家出

こうした二次障害は、周囲の理解とサポートによって予防、緩和できることがあります。

ADD と ADHD の違いは「多動性の有無」

上記において「注意欠如」と「多動性」について説明しましたが、「注意欠如多動症」でよく使われる ADD と ADHD の違いは、この「多動性」が認められるか認められないかの違いです。

ADD (Attention Deficit Disorder)注意欠如障害
ADHD (Attention Deficit Hyperactivity Disorder) 注意欠如多動症

最後に共通してついている “D” は “Disorder”(障害)を表しています。また「ADHD」を表記する場合、「AD/HD」と “D” と “H” の間にスラッシュを付ける人もいますが、これは、「注意欠如(AD)」の部分と「多動性(H)」の部分を分けるためです。”AD” と “H” の “Disorder” という意味とお考えください。

新たにADDと診断されることはない

ADDという診断名は、1980年に出版された「DSM-Ⅲ(精神障害の診断・統計マニュアル第3版改訂版)」によって登場しました。DSMとはアメリカ精神医学会が発行する国際的な診断基準です。1987年に改訂された「DSM-Ⅲ-R」では、ADDの診断基準に新たに多動性の有無が加えられ、診断名が「ADHD」に変更されました。ADDは改訂前の診断名のため、現在新たにADDと診断されることはありません。

またDSMとは別に、世界保健機構が定めた国際疾病分類の「ICD」があります。ICDでは長らくADDという診断名が使われていましたが、1990年に改訂された「ICD-10」にて、ADDがADHDに統合されました。

ADHDにおける脳内多動とは

脳内での活動が過剰になる脳内多動は、ADHDの特性の1つです。行動面で落ち着いて見えていても、次々に考えが浮かんでまとまりがなくなったり、思考がめまぐるしく変化したりと、頭の中が多動状態になります。多動・衝動性優位型のADHDの方の場合、こうした思考や行動のコントロールが効きにくく、集中力や注意力が散漫になって仕事や生活に影響を及ぼすケースも少なくありません。

また脳内多動に費やすエネルギーだけでなく、その衝動性をコントロールすることに神経をすり減らし、疲れやすくなってしまうというのも脳内多動の特徴です。周囲の環境に合わせることにエネルギーを使うので、1日のスケジュールに休憩を組み込んで、心と体を休ませる時間を意識的につくるようにしましょう。

「注意欠如」もとらえ方によっては「脳内の多動」

一方で、「注意欠如(AD)」の部分も「多動性(H)」で説明できるので、「ADHD」という診断にするということも考えられます。「注意欠如」は別の視点で考えてみると「脳内の多動」だからです。体に「多動」が出ると目立ち、「多動性障害」といわれるかもしれませんが、周囲からはすぐにわからなくても、「ミスが多い」、「いろいろなことが気になる」、という「注意欠如」の状態は、脳が上手に集中を保てておらず暴走してしまっている「多動」な状態とも考えられます。ですので、厳格に「注意欠如(AD)」の部分と「多動性(H)」の部分を区分けしづらいので、ADHD と言われることが多いと当社では考えています。また上述の通り、体がムズムズするや手や指などを動かしていないと落ち着かないなどの、落ち着きの無さという意味で体の多動が残る人もいるでしょう。

脳内多動によるADHDの方の困りごと

脳内多動によるADHDの方の困りごととして、主に以下があります。

  • 集中力が続かない
  • 優先順位付けやマルチタスクが苦手
  • 衝動的な行動や発言をしてしまう
  • 疲れやすい

脳内多動は思考が次々と浮かぶため、1つの物事に集中することが難しく、結果としてどのタスクが重要かを判断するのが苦手な傾向にあります。また、実行機能の弱さや処理速度の遅さ、中枢性統合の能力の低さなどから優先順位付けが難しいほか、注意が分散しやすいため複数のタスクを同時に進めることが困難です。

これにより、場の雰囲気を考えず発言・行動をして対人関係や日常生活、仕事においてトラブルを引き起こすケースも少なくありません。こうした脳内多動の衝動性をコントロールすることにエネルギーを使い、疲れやすくなる点も困りごとの1つです。

ADD・ADHDの困りごとへの対処法

ADD・ADHDの困りごとに対処するには、どのようにしたらよいのでしょうか。ここでは、環境を変える方法や、規則正しい生活を送る方法、医療機関や支援機関に相談する方法について解説します。

環境を調整する

ADD・ADHDの方への環境調整とは、ストレスや困りごとを減らすために、障害の特性に合わせて周囲の環境を整えることを指します。一例を挙げると次の通りです。

  • 集中力を保ちやすくする:耳栓をしたり、静かな環境を用意してもらったりする
  • 見える化する:やるべきことをメモに書き、目に見える場所に貼っておく
  • スケジュール管理の工夫:予定表を色分けするなど視覚的に理解しやすくする

環境調整によって苦手な分野を補うと、ストレスや困りごとが減り、本来の能力を発揮しやすくなります。

規則正しい生活を送る

規則正しい生活を送ることは、ADD・ADHDの特性を持つ方にとって、ストレスの低減に役立ちます。例えば、決まった時間に寝起きすることで生活リズムが整い、睡眠が改善され、集中力を保ちやすくなります。

また、バランスの取れた食事を取る習慣を身につけると、疲れにくくなり、注意力が持続しやすくなります。このような習慣を身につけることで、ADD・ADHDに起因する困りごとが生じにくくなるでしょう。

医療機関を受診する

ADDやADHDが疑われる場合、医療機関での診断が重要です。インターネットで入手できるセルフチェックなどは傾向を知るための参考程度にしかならないため、疑問や不安がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。

医療機関での治療法としては、認知行動療法と薬物療法が代表的です。

認知行動療法

認知行動療法は、物事の受け取り方や行動のパターンを見直し、ストレスや困難に対処しやすくする方法です。特性に起因する悩みや困りごとに焦点を当て、思考の偏りや行動を少しずつ変えていきます。

認知行動療法を通じて、自分の行動パターンや感情をより理解できることが期待できます。また、ストレスがかかる状況での具体的な対処法を学べる機会がある点もメリットです。結果として、習慣や行動の偏りが改善され、日常生活や社会生活の負担が軽くなります。

薬物療法

薬物療法は、ADDやADHDの特性により日常生活や社会生活に困難を感じる場合に、症状を軽減するための治療方法です。薬物の投与によって、注意力や集中力が向上して業務や学習がスムーズになったり、衝動的な行動が抑えられたりする効果を期待できます。

薬の種類や効果には個人差があるため、医師と相談しながら適切な薬を選ぶことが重要です。また、薬物療法と環境調整の併用によって、より効果が期待できる場合もあります。

支援を受ける

ADD・ADHDの困りごとは、なるべく一人で抱え込まないようにしましょう。専門的な知見を持った支援機関やそのスタッフの支援を受けることは、困りごとの対処策をみつける手段の一つです。

次項でADHDの方が利用できる相談先について詳しく紹介します。

ADHDの方が利用できる困りごとに対する相談先

ADHDの方が抱える困りごとに対する相談先として、発達障害者支援センターや精神保健福祉センター、就労移行支援所などがあります。

発達障害者支援センターでは、ADHDをはじめとした発達障害の方やその家族を対象に、相談や療育支援、専門機関との連携などの支援を行います。精神保健福祉センターは精神面の健康と福祉に関するサポートを行い、必要に応じて専門医療機関への紹介やカウンセリングを行う公的機関です。

就労移行支援は障害のある方の就職をトータルサポートする機関で、職業訓練から就職活動、就職後の定着支援まで一貫した支援を提供します。

Kaienの就労移行支援

Kaienの就労移行支援では、利用者の方のペースや特性に合わせたオーダーメイドのプログラムを提供しています。

職業訓練では、事務や軽作業から伝統工芸、技術職まで、100種類以上の仕事を常時体験できます。脳内多動といった困りごとに対処するためのカリキュラムも豊富で、ソーシャルスキルを学びながらそれぞれの特性と付き合う方法を学べます。

就活サポートでは、Kaienが提携する200社以上の会社の求人をもとに、利用者の方に合った職場を探します。提携する会社はどこも障害に理解があるほか、就活は担当カウンセラーが二人三脚でサポートするため、無理なく進めていけます。就職後も生活上の問題や業務の悩みの解決のため、Kaienのスタッフがこまやかに定着支援を行います。

Kaienでは無料で見学会や体験利用を随時実施しています。興味のある方はぜひ、お気軽にご連絡ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

Kaienの自立訓練(生活訓練)は、自分の障害特性を見つめ直し将来を再設計することを目的に、講座・実践プロジェクト・カウンセリングの3本立てで自立への訓練を行います。

講座やプロジェクトには、これまで行ってきた数千人の支援データをもとに、自立に必要なスキルを厳選して落とし込んでいます。訓練内容は生活やコミュニケーションといったソーシャルスキルの習得や、そこで学んだ内容を実践的に身に付ける2~8週間のプロジェクト、担当スタッフとの1対1のカウンセリングなど、多岐にわたります。どのプログラムでも、利用者の方が自身の特性を理解し、無理なく自立生活を送れるようKaienのスタッフが親身にサポートするので安心です。

脳内多動の特性に合わせた対処法を

ここまで ADD と ADHD の違いをまとめてきたものの、ADD と ADHD の診断の違いは参考程度に考えてください。現在ADDと診断されることはありませんが、そもそも「注意欠如多動症」診断は医者によって適用基準が異なりますし、ADHD がピュアに見られるケースは少なく、他にも「LD/SLD(学習障害*²/限局性学習症)」や「ASD(自閉スペクトラム症)」が重なっている場合が一般的と言えるからです。

つまり診断名は、自分の特徴を考える上での一助程度に頭の片隅に留めておくのが良いでしょう。必要なのは自分の状態を診断名にとらわれずに理解することと、その対策をすることです。

就労移行支援所をはじめとした各支援機関では、自分の特性に合わせた働き方や困りごとへの対処法を学ぶことができます。気になる方は、ぜひ支援機関の利用を検討しましょう。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます

監修者コメント

ADDという診断名は現在使われなくなったので、これから診断されることはないですね。従来はある程度、多動性があるかどうかによって診断は分けていたものの、正直その意味はそれほど無いため、個人的には妥当に感じます。とはいえ、特に女性のADHDの方では幼少期も多動性が目立たないことがあるので、不満を持つ方はいるかもしれませんが…。

診断名の元になっている、「不注意(Attention-deficit)」ですが、単純に集中できないこと、と受け取ってしまうとそれは誤解です。ADDの方(ADHDの方も)の不注意は、集中できないことではなく、「その場に応じた注意の転換が困難」と理解したほうが良いでしょう。過集中という言葉もある通り、好きなこと、興味のあることにはむしろ過剰に集中できる部分があります。その一方で、過集中状態でない時には、何かしら感覚が刺激されてしまうとそちらに注意が向いてしまい、目的達成の障害になってしまうことが多いのです。例えば、ちょっとした刺激(人の声や電話の音など)でやろうと思っていたことを忘れてしまう、仕事に集中しようと思っても机の上の郵便物を目にした途端必要が無いのにそちらを開け始めたり…など。そのばにふさわしい注意力を発揮するためには、記事にあるような工夫や、場合によっては服薬による補助も必要になるでしょう。何が自分に必要か、支援者や主治医とよく相談してみてください。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。




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