在職者向けのキスド会(土曜夕方に秋葉原と新宿で開催している、発達障害のある在職者向けのしゃべり場)での会話を皆さんの承諾をもとに記事にしています。
今回は「感覚過敏と切り替えの苦手さ」について議論しました。
聴覚での具体例
Aさん) 感覚過敏について各人が思うことを一人ずつ聞かせてもらえたらと思います。以前、NHKスペシャルで発達障害のことを放送していたのですが、健常者の方には聞こえないような小さい音が聞こえるという感覚過敏のことが取り上げられていました。Kaienのキスド会で知り合いになった方でも感覚過敏を訴える方がいました。僕は隣で小声で喋っているつもりだったのですけれども、ガンガン聞こえるからもっと小さく話してという方がいらっしゃったんです。
Bさん) 私の場合、遠くの音が普通の人よりも聞こえます。職場で遠くの部署の電話を取って自分の部署だと思って取ったら、実は遠い部署の電話で、取らなくてよかった電話を取ることなどです。逆に人の話が全然聞き取れない場合もあります。相手によりますが、相手が声を出していることははっきり聴こえるんですけど、話の内容は全然聞き取れないことがあって、感音性難聴なのかもしれないと疑ったこともあります。
Cさん) 小さいころから複数人で話していると聞き取れない言葉が何個も出てきてしまいます。人との会話が常に穴抜け状態になる感じです。自分の頭で想像して埋め合わせて何とか会話を理解します。それが何かの病気なのかどうかはよく分からないですけど会話するときは頓珍漢なことを言ってしまいやすいです。
Dさん) 自分は高い声の方。抑揚をつけすぎる声が苦手です。昔から嫌だったのが、母親が読み聞かせをする時、すごい抑揚のつける声でしゃべるんですけども、あれがあんまり好きじゃなかった…ですね。
あと先程話されたそのピストル音が苦手だということとか、鼻のすする音とか、一斉に会話されると聞き取れないというのが自分にも当てはまります。
Eさん) 音の大小、そうですね非常に気になります。ざわざわした声も雑談の時も本当に聞き取れないです。何度も聞いてしまう時もあってしつこいといわれたことも実際あります。あと電話の呼び出し音ですね。苦手な音もあって聞きすぎると頭痛がひどくなったり息苦しくなったりっていう事も実際あります。
Fさん) 体調が悪い時に気になることが多いです。例えばお風呂の換気扇とか寝る前の隣のテレビの音とかが気になったりします。
Gさん) 僕なんですけど音の大小に関しましては実はそれほど気にならない。ただ、自分が一人作業に本当に集中しているときに後ろからと声を掛けられるとすっごいびっくりしてしまいます。あと、駅や電車の中での会話も7、8割方聞こえないですね。
Hさん) 音の大小に関して私もあります。自分とは関係ない人と人同士がしゃべっていても、すごく気になってしまって、自分のことを話していたのではないのに気分が悪くなることもありました。
Aさん) 参考になりました。皆さんありがとうございました。
事例:職場で前の席の人が唸っている…
Eさん) 聴覚過敏について相談があります。働き始めて気づいたんですけど、集中すると周りの音が結構気になる傾向があるみたいで。
スタッフ) 集中したいときに周りの音が気になる?
Eさん) 前の人が作業中にずっと独り言を漏らしながら作業をしていまして。他人を変えるのは難しいので、どう気分を落ち着かせるか、気にならないようにするかということを相談したいと思っております。
スタッフ) 今はどういう風に対処されていますか?
Eさん) 上司にも相談したんですけども、本人に全く自覚がなかったようで、上司もこれ以上注意が出来ない。自分の環境だと音楽を聴きながら作業が出来るので、ずっとヘッドホンで聴いています。けれどずっと聴いていると疲れますし、何か考え事をすると、その音楽も気になってしまって。
Dさん) 一番単純な方法としては、ノイズキャンセリングヘッドホンはどうでしょうか。音が出ず、単に周囲の雑音を低減させるだけのヘッドホンがあります。それをはめていれば、少なくとも周りの音はあまり聞こえなくなる。
Eさん) 一度ちょっと検討したんですけど、結構値段が高い。
Dさん) 高いです。数万円はすると思う。
Aさん) 近くの席の方のしゃべり声は、障害特性の可能性はないのですか?
スタッフ) 障害特性の可能性が高いですね。独語と呼ばれています。
Eさん) 自分も日常だと結構独り言とか多いので、そういう特性があるっていうのは、理解しているんですけど。それでもなかなか、気になってしまって。
Aさん) でも僕の会社にもいますよ。自分は独り言のつもりで言ってるんですけども、第三者から見たら、誰かに話しかけてるように見えるっていう人がいるんですよ。初めはびっくりしたんですけども、皆もう分かりきったことで接してるんですよ。そういう人と分かった上で接している。
感覚過敏と切り替えの苦手さの「掛け算?」
スタッフ) 感覚過敏と最初表現されていましたが、今回のEさんの件では感覚過敏より切り替えの苦手さもあるかもしれないですね。
Eさん) 物事の切り替えの苦手さ?
スタッフ) はい。それと慣れっていうものがなかなか出てこないというか。
Eさん) ああ。まったく慣れません。
スタッフ) 感覚の慣れみたいなものだと思いますけど、違和感がずっとあるっていうのは確かに感覚過敏と言えるのかもしれないなとも思いました。一方で、そこから意識を変えようという風に切り替える「ああ、今ここじゃなくてこっちに集中しよう」っていうのができないっていうのも多分にありそうです。そのウンウン言っているのも、何分かにいっぺんとかそんな感じなんですか?
Eさん) 時々です。
スタッフ) そうですよね。だからその時は気になってしまうのはしょうがない。そこで切り替えられれば多分大丈夫だと思いますが、その切り替えが多分苦手なんだろうなとは思います。慣れは電車の音とかもそうですね。電車に乗っている間ずっとあの音が意識的に聞こえる人は結構つらいと思います。
多くの人はあれに慣れてしまうから、寝たりできますよね。
Eさん) なるほど。
スタッフ) だけど、すごく気になるキーキーとかっていう音が時々あって、「あれ何なんだろ、何なんだろ。」等と思ってずっとそのまま引きずってしまうか「あ、キーキーって嫌な音鳴ったな、だけど他のこと考えよう」みたいに、なれるかというと、それは、感覚過敏でも切り替えができたら多分大丈夫。
だから二つ(過敏と切り替え/慣れ)は要因が絡んでそうな気がしますね。
Eさん) どう切り替えるかですね。
スタッフ) もし音が気になってどうしようもない、防げないんだったら、どう切り替えるかということを意識した方が良いかもしれませんね。例えば、気になった瞬間にいつも切り替えるおまじないみたいなものを唱えて、もう一回集中し直すのはどうでしょう。
Cさん) あの、プロスポーツ選手がやってる類のあれですね。
スタッフ) そうですね。スタートでちょっと誰かがフライングしてしまってもう一回集中し直すといったシーンです。大体イニシエーションみたいなもので集中し直してますから。そういうのも試してみるのもいいのではないでしょうか。
Eさん) 意識してみようと思います。
ありがとうございます!
監修者コメント
感覚過敏は、その特徴がない人でないとわかりにくい世界ですよね。僕もクリニックで当事者の話を聞きながら想像しながら対処法をお伝えしています。
漫画「のだめカンタービレ」の主人公のだめのように、この過敏さを才能として、活かせればと思いますが、そういう人はごくごく一部です。しかし、医師としてお会いした中でも、一度聴いただけでピアノで再現した人も知っていますし、驚くほど音楽への造詣が深い人を知っています。よく「プロ顔負け」といいますが、プロレベルの人も多いです。
想像を絶する才能・素晴らしさでもありますし、裏を返せば想像を絶する苦しさなのでしょう。感覚過敏の苦しさが伝わる社会に早くなっていきたいものです。
監修 : 益田 裕介 (医師)
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニック 院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医 精神分析学会所属
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