8050問題とは?発達障害との関連性や相談先を解説

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近年、「8050(はちまるごうまる)問題」が注目されています。これは、長期のひきこもりや就労の困難さを抱える50代の子どもと80代の親が同居する家庭で、生活の困窮や周囲からの孤立に陥っているケースを指します。

この記事では、8050問題の背景や発達障害*¹との関連性、相談できる窓口について詳しく見ていきましょう。

8050問題とは?

8050問題とは、80代の親が50代の子どもの生活を支えており、経済的な困窮や社会的孤立に陥っている家庭が多く存在するという社会問題を指します。このような問題を抱える家庭は子どもが無職や引きこもりである場合が多く、高齢の親の年金で生活しているケースも少なくありません。

こうした状況で親が要介護状態になったり亡くなったりすると、生活基盤が失われ、子どもがさらに深刻な孤立や貧困に陥る可能性があります。年金を得るために親の死亡を誰にも知らせず、遺体遺棄事件に発展したケースも見られました。

8050問題の背景

8050問題の背景には、ひきこもりの高齢化が大きく関係しています。ひきこもりと聞くと若年層をイメージする人も多いかもしれませんが、近年では中高年層のひきこもりも少なくありません。

厚生労働省の調査によると、親と同居している40〜50代の未婚者は1995年の120.6万人から2010年には263.5万人に増加しています。もちろん、これに該当するすべての人がひきこもりというわけではありませんが、8050問題の背景のひとつといえるでしょう。

ひきこもりに至る原因はさまざまで、ハラスメントを受けての退職やリストラ、親の介護を理由に離職を余儀なくされるケースが少なくありません。このように、社会や家庭で複雑な要因が重なってひきこもり状態が長期化すると、親の年金に依存して生活する状況が続いて8050問題が深刻化する原因となります。

参考:〜地域包括支援センターにおける「8050」事例への対応に関する調査〜報告書

発達障害の二次障害としてのひきこもりとは?

ひきこもりの原因は人それぞれですが、近年、発達障害との関連も指摘されています。発達障害には、「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」「学習障害*²(LD)」の大きく3つのタイプがあり、それぞれ特性や困りごとを抱えています。これらの特性が、ひきこもりの原因になるケースも少なくありません。

例えば、ASDの人にはコミュニケーションが苦手という特性があり、対人関係のトラブルがきっかけでひきこもりとなってしまう場合があります。このように、発達障害の特性によって周囲の環境に適応できず、精神的な負担が積み重なることで、ひきこもりが二次障害として現れることがあるのです。

8050問題の主な問題点

8050問題で指摘されている主な問題点として、次の3つが挙げられます。

  • 経済的な問題
  • 介護に関する問題
  • 孤立に関する問題

それぞれの問題点について、以下で詳しく見ていきましょう。

経済的な問題

8050問題に該当する家庭では、多くの場合、子どもが親の年金に頼って生活しています。そのため、親が要介護状態になった際に子どもが金銭管理をうまくできず、生活が困難になるケースが見られます。

また、親が亡くなって年金の受給が止まると、収入が途絶えて生活が立ち行かなくなるケースも珍しくありません。このように、親の年金に依存している状況は家庭の経済状況を不安定にし、深刻な経済的問題を引き起こす要因となっています。

介護に関する問題

介護に関しては、「親の介護のために子どもが就労できない」と「親の介護の必要性を子どもが判断できない」という2つの問題が指摘されています。

親の介護に追われ就労が難しくなると、子どもの収入が減少し、結果として親の年金に頼らざるを得ない状況が生まれます。これがひきこもりのきっかけとなり、8050問題に発展するケースも少なくありません。

また、長期間ひきこもりが続いている子どもは判断を親に任せていることが多く、親の介護が必要な状態でも適切に対応できない人も多くいます。このような状況は親がさらに負担を負うことになり、深刻な問題です。

孤立に関する問題

8050問題に直面している家庭は、周囲や公的機関に相談できずに孤立してしまう傾向があるのも問題です。親子が社会的に孤立した状態が続くと支援の手が届きにくく、問題が表面化しないままさらに深刻化してしまいます。

また、親が亡くなった後に子どもが孤立したままになるという問題も無視できません。このような状況では生活の困難が増すだけでなく、周囲との関係が断たれて適切な支援が受けられず、最悪の場合は子どもの死亡につながる可能性もあります。

ひきこもりや発達障害に関する相談先

ひきこもりや発達障害に悩んでいる場合は、家庭内で抱え込まず、外部に相談することが大切です。適切な支援につなげることで、8050問題で指摘されているような深刻な問題に発展するのを回避できる可能性が高まります。

以下で、ひきこもりや発達障害に関する相談先を紹介するので、ぜひ活用してください。

ひきこもり地域支援センター

ひきこもり地域支援センターは、各都道府県に設置された行政運営の専門相談窓口で、ひきこもりに関する幅広い支援を行っています。社会福祉士や精神保健福祉士といった資格を持つ支援員が常駐しているため、専門的な支援が受けられます。

医療機関や就労支援機関、民間カウンセラーなどと連携し、それぞれの事情や状況に応じたサポートが受けられるのが特徴です。ひきこもりに悩むご本人はもちろん、ご家族からの相談も受け付けています。ひきこもりが原因でさまざまな困難を感じている場合は、ひきこもり地域支援センターに相談してみてください。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方が自立した生活を送れるよう、就業面と生活面の両方からサポートする福祉施設です。利用者には就業支援担当と生活支援担当がそれぞれ付き、就労に関する相談や日常生活に関する助言を行います。

センター窓口での相談や家庭訪問などを通じて、生活習慣の形成や健康管理、金銭管理などのスキル習得を支援し、安定した生活と就労を目指します。ひきこもりなどで就労や生活に不安を感じる方が安心して社会に参加できるよう、幅広く支援を行っている施設です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、ハローワークなどの就労支援機関と連携しながら障害のある方に専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。職業リハビリテーションでは職業能力の評価や就労に必要な訓練、就職後の職場適応支援などを行い、就職から職場定着までを一貫してサポートします。

地域障害者職業センターでは職場にジョブコーチを派遣し、障害のある方と事業主の双方に対する助言や支援も提供しています。職場で長く働けるよう、実践的な支援を受けられるのが大きなメリットです。

就労移行支援

就労移行支援は、障害のある方が一般企業への就職を目指すための支援を行う施設です。障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスのひとつで、利用者は事業所に通いながら必要な支援を受け、就職に向けた準備を整えます。

就労移行支援では、まず利用者に合わせた個別支援計画を作成します。それぞれの障害特性や状況に応じて就職活動を進められるため、自分のペースで取り組めるのが特徴です。具体的な取り組み内容としては職業訓練や面接練習、職場実習などがあり、実践的なスキルを習得できます。

また、職場選びの助言や職場定着のための支援も受けられるため、長期的に安定した就労を目指せるのも大きなメリットです。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活を送れるよう支援する障害福祉サービスです。日々の生活を支える基礎的なスキルとして、食生活の整え方や生活リズムの安定、金銭管理、家事などの習得を目指します。自立訓練(生活訓練)は安定した生活の確立を目的としているため、「就職活動の前に生活基盤を整えたい」という方に適しています。

自立訓練(生活訓練)の修了後は、就労移行支援を利用することも可能です。すぐに就職活動に踏み出すことが難しい場合は、自立訓練(生活訓練)で生活面の準備を整えてから、就職活動への段階的な移行を目指しましょう。このように、自立訓練(生活訓練)は自立への基礎を築きたい方におすすめの支援サービスです。

一人で抱え込まず適切に支援を利用しよう

8050問題に直面している場合は、適切な支援を利用することが大切です。ひきこもりや発達障害に関する相談先は複数あり、各施設は日本全国の自治体に設置されています。周囲から孤立してしまうと問題がより深刻化する可能性があるため、一人で抱え込まずに周囲や専門窓口に相談してみましょう。

Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)を実施しています。専門家推奨の充実したプログラムを用意しており、高い就職率と定着率が特徴です。見学・個別相談会やオンライン個別相談を実施しているので、まずはお気軽にご相談ください。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます。