発達障害の方のコミュニケーションの特徴とは?苦手な理由や対処法を解説

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発達障害*の方は、その特性によりコミュニケーションに支障が生じやすい傾向があります。人それぞれが苦手とするコミュニケーションは異なるため、どのようなコミュニケーションを苦手とするのかを理解し、対処法を考えていくことが大切です。

本記事では、発達障害の方のコミュニケーションの特徴や、コミュニケーションを苦手とする理由、対処法を解説します。コミュニケーションに関する悩みを相談できる支援先も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

コミュニケーションが苦手なのは発達障害が原因?

まず前提として、発達障害の方が全員コミュニケーションを苦手とするわけではありません。

発達障害が原因でコミュニケーションが苦手なのではなく、障害の特性によりコミュニケーションに支障が生じ、コミュニケーションに苦手意識を持つ方が多いというのが実際です。

発達障害にはASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、SLD/LD(限局性学習症/学習障害)などいくつかの種類があり、それぞれ特徴や苦手分野が異なります。また、コミュニケーションを苦手とする理由は必ずしも発達障害の特性とは限らず、コミュニケーションに関する疾患や単なる性格によるものである場合もあります。

そもそもコミュニケーションとは

そもそもコミュニケーションとは「話す・伝える」ことをコミュニケーションと考える方も多いですが、他にも以下のようにさまざまな種類に分けられます。

  • 言語(言葉で話す)
  • 非言語(しぐやさ表情、声のトーンなど)
  • 受信(相手が伝えたいことを理解する)
  • 発信(自分の意見や考えを相手に伝える)
  • 勢い乗り(周りの雰囲気に合わせられる)
  • 口頭(口頭で伝える・理解する)
  • 文章(文章で伝える・理解する)

そのため、コミュニケーションが苦手だと思っていても実は一部分で、得意な分野もあるなど、全てのコミュニケーションが苦手とは限らないのです。まずは自分がどのコミュニケーションを苦手とするのかを理解しましょう。

発達障害の方のコミュニケーションの特徴

発達障害はASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、SLD/LD(限局性学習症/学習障害)などに分けられ、それぞれ特性の種類によりコミュニケーションで苦手と感じる部分が異なります。ここでは、発達障害の方のコミュニケーションの特徴を、特性ごとに詳しく見ていきましょう。

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴

ASD(自閉スペクトラム症)の方は、コミュニケーションにおいて心の理論の欠如や中枢性統合の弱さといった特性により、相手の気持ちや周囲の空気を読むことを苦手とします。思ったことをそのまま話してしまう傾向があり、誤解を与えるような発言も多くなるため、相手に不快感を与えてしまいがちです。会話がかみ合わなかったり、余計なことまでしゃべり過ぎてしまったりすることもあります。

相手の曖昧な表現や細かい言葉のニュアンスを汲み取るのが苦手で、指示が理解できないことや、雑談のようなやりとりに支障が生じることも少なくありません。また、会話する際に目を合わせることが苦手なのもASDの方の特徴です。そのため、根暗・冷たいなど相手にネガティブな印象を与えてしまうこともあります。

ADHD(注意欠如多動症)の特徴

ADHD(注意欠如多動症)の方は、うっかりミスが多い、衝動的に行動してしまう、集中力が続かない、といった特徴があります。そのためコミュニケーションの面では、不注意によるミスが続いたり、指摘を受けてもなかなか直らなかったりして迷惑をかけ、相手を怒らせてしまうことや関係性を悪化させてしまうことがあります。

また、話を最後まで聞いていられず、相手の話に割り込んで自分がしゃべりだしてしまうことで、円滑なコミュニケーションが困難になったり、相手を理解できず関係性を築けなかったりすることも少なくありません。

SLD/LD(限局性学習症/学習障害)の特徴

SLD/LD(限局性学習症/学習障害)の方は、読み書きや計算など特定の分野の学習能力に困難があるのが特徴です。人によって読むことが苦手、書くことが苦手、計算が苦手というように苦手分野に違いがあります。

コミュニケーションの困難さに直接的に関係する障害ではありませんが、自分が苦手とする分野の業務に対応できない、時間がかかり過ぎる、指示内容が理解ができないといったことから、仕事の面などで周囲の足を引っ張ってしまうことになりがちです。

また、仕事において主な連絡手段がメールなどの場合は、スムーズな情報伝達が難しいこともあります。こうした失敗や迷惑をかけてしまうことが多くなり、自信をなくしやすいことが、コミュニケーションが苦手と感じる要因の1つといえます。

発達障害グレーゾーンの方のコミュニケーションの注意点

発達障害のグレーゾーンとは、特性があり発達障害の疑いが認められるものの、全ての診断基準を満たさず医師の診断が下りていない状態をいいます。ASDのグレーゾーンの場合は隠れASDや薄い自閉などとも呼ばれることがあります。

隠れASDの方は、周囲に合わせようと無理をしすぎてしまい、過剰適応の状態になりやすいため注意が必要です。隠れASDの方の場合、正確に相手の意図を読めるわけではないため必要以上に気を配りすぎ、周囲とのコミュニケーションにズレが生じてしまうことも少なくありません。

対人関係がうまくいかないなどのストレスがうつや食欲不振、不眠など後天的な精神疾患である二次障害を起こすこともあります。二次障害を発症して病院を受診し、発達障害が発覚するケースも珍しくありません。

発達障害以外のコミュニケーションに関する疾患

コミュニケーションが苦手と感じる原因には、発達障害の特性によるもの以外に以下のような疾患が関係しているケースもあります。

  • コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症):挨拶や報告・連絡・相談など社会生活に関するコミュニケーションが困難
  • 社交不安症:簡単な自己紹介など、注目されたり人前で何かをしたりすることに強い恐れや不安がある
  • 場面緘黙:慣れない環境など、特定の場所や状況で言葉が出なくなる
  • 知的障害:複雑な会話や文章が理解できず周りについていけない

コミュニケーションに関する疾患の多くは、はっきりとした原因や治療法が分かっていないのが現状です。ただいずれも適切な対処が必要なため、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。

仕事におけるコミュニケーションに関する困りごと

発達障害の方は特性により仕事上で生じる困りごとが異なります。障害の特性ごとにありがちな困りごとは以下の通りです。

ASD・周囲から噂されているように誤解し、孤立してしまう
・改善点などをやんわりと伝えられず、ストレートな言い方で相手を戸惑わせてしまう
・上司から注意を受けても相手の目が見られず、自分の評価を下げてしまう
・余計なことまで話してしまい、周囲に迷惑をかける
・仕事を勝手に自分のやり方で進めたり、指示されたとおりにできず、信用を失ってしまう
ADHD・話を最後まで聞けず、自分の意見を一方的に話してしまう
・仕事の優先順位が付けられず、計画的に進められない
・うっかりミスが多く迷惑をかけてしまう
SLD/LD・読み・書き・計算の苦手分野がある業務に対応することが困難で、周囲に遅れをとってしまう

仕事上のコミュニケーションに関する対処法

発達障害のある方が、仕事上のコミュニケーションに関する困りごとに対処する方法は「特性や発達障害に対する自己理解を深める」「職場に理解や配慮を求める」「発言の量を減らす」「特性に合った仕事を選ぶ」などが挙げられます。

障害の特性によるコミュニケーションの困りごとは、苦手な部分だけを直そうとしたり、自分一人でどうにかしようと努力したりして解決するのは難しいものです。それぞれ対処法を詳しく解説していきますので、ぜひ実践してみてください。

特性や発達障害に対する自己理解

コミュニケーションを苦手とする原因に発達障害の特性が関係している場合は、障害の特性を含めて自己理解を深めることが大切です。自己理解を深めることで、フォローして欲しい部分や自身の力に活かせる部分などを相手に伝えることができ、働きやすい環境の実現やコミュニケーションの改善につなげることができます。

これまでの経験を振り返りながら、苦手な面だけでなく、得意な面にも目を向け自分の強みや弱みを見つけましょう。自己理解の際には、自分だけの説明書を作る、言葉に出すなど、言語化するといった方法もおすすめです。

職場に理解や配慮を求める

障害のある方が、障害のない方と平等な社会生活を送るために、一人ひとりの困りごとに応じた配慮をしていこうという考え方を「合理的配慮」といいます。職場では上司や同僚に、障害の特性によりコミュニケーションに支障が生じていることを伝え、理解や配慮を求めましょう。

例えば、曖昧な表現を理解するのが難しいASDの方は、作業の進め方や納期などを明確な言葉で指示してもらえるよう配慮を求めると良いでしょう。合理的配慮を求める際は、障害の特性により苦手とするコミュニケーションや、どのような配慮が必要なのかを具体的に伝えることが大切です。

発言の量を減らす

話す、伝える、といったコミュニケーションに支障が生じている場合は、自分の発言量を減らすことを試みましょう。発言するときに思うままに話すのではなく、内容を短く端的にまとめることを意識してみてください。

リフレーミング(物事をポジティブに置き換えること)やアサーション(自己主張しつつ相手の主張も受け入れること)は会話やコミュニケーションの技法として取り入れられることが多いですが、つい余計なことまでしゃべってしまうASDの方や、しゃべりだすと止まらなくなるADHDの方などの場合は、まず自身の発言量を減らすことが大切です。言いたいことの半分も言えていないというくらいが適量な場合も多いため、話したいことを端的にまとめる練習から始めてみましょう。

特性に合った仕事選び

障害の特性や自身の苦手なこと、得意なことに関して自己理解を深めるうちに、今の仕事が自分にはあまり合っていないと気づき転職を考えるケースもあるでしょう。発達障害があると、転職するのは難しいのではと思う方もいるかもしれませんが、各地に就労移行支援事業所やハローワークなど、発達障害の方の就職を支援する機関があります。

支援機関を利用することで就職活動のサポートが受けられ、一人で求人や就職先を探すよりも障害の特性に合った仕事を見つけられるでしょう。自身の特性に合った仕事に就きたい方は、一人で悩まず支援機関の利用を検討してみてください。

Kaienの就労移行支援

Kaienの就労移行支援では、発達障害の特性に合う職場や職種で働きたい方々の就職活動から就職後の安定就労までをトータルサポートします。一人ひとりの適性や強みを活かせる仕事を見つけられるよう、100種類以上の実践的な職業訓練が可能なほか、障害の特性を理解し、スキルや苦手なことへの対処法などを身につけるカリキュラムも50講座以上用意しています。

さらに、障害に理解のある200社以上の企業と連携し、独自求人の中から特性や適性に合う職場を紹介できるのも強みです。担当カウンセラーと共に就職活動を進め、就職後も3年半にわたり安定就労を支援します。就職・転職をご検討の際は、ぜひKaienにご相談ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

障害の特性やコミュニケーションに関して自己理解を深める際には、自立訓練(生活訓練)を受けるのも方法の1つです。Kaienの自立訓練(生活訓練)では、障害のある方の自立した生活を支援するため、障害理解や自立した日常生活、今後の進路選択の方法や社会的スキルの向上などのプログラムを用意しています。発達障害の特性や合理的配慮の求め方、コミュニケーションの方法などを講座や実践的なプログラムで学べるため、自己理解のやり方が分からない方は利用を検討してみてはいかがでしょうか。担当スタッフとカウンセリングをしながら進めていくため、困りごとをすぐに相談できる環境が整っています。

特性を理解し無理のないコミュニケーションを

発達障害の方が苦手と感じるコミュニケーション方法は、障害の特性によって異なります。コミュニケーションの困りごとがある環境で無理を続けても、人間関係の悪化や、失敗が重なりストレスが溜まる可能性も高く、改善に向かうのは厳しいでしょう。特性や苦手なコミュニケーションを正しく理解し、周囲に配慮を求めたり、特性に合う仕事を探したりするなど、無理なく働ける環境を考えていくことが大切です。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

良好なコミュニケーションを取りたい、と誰しも思う反面、なかなか上手くいかないのも事実ではないでしょうか。発達障害特性のある方の場合、本稿に上げられた特徴のために、自分の考えや気持ちを十分に伝えきれない方が多いのは確かです。コミュニケーションに問題があるという指摘は受け入れるのが難しいときもあるでしょうが、誰しも一度は自分のコミュニケーションスタイルを見直す機会を持つべきとも感じます。ある本によれば、日本人はとりわけハイコンテクストなコミュニケーションを取っているようです。それは、文脈依存性に、暗黙の了解が多いコミュニケーションです。言語化が厄介な、なんとなくふんわりとした発想を共通の土台にしてもいるので、私達は世界中で一番コミュニケーションの難しい世界で暮らしているのかもしれません。人と十分な意思疎通が図れてないなと感じたり、職務の上で問題を指摘されたときには、一度支援者と自分のコミュニケーションスタイルについて相談してみてください。良好なコミュニケーションは、練習と実践によって身につけられる「技術」でもあると考えてみましょう。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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