うつ病の回復期とはどんな状態?特徴や過ごし方、仕事復帰の目安を解説

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うつ病と診断され休養を取っている間、どうやって過ごすべきか、またいつ仕事に復帰したらいいか不安に思うこともあるのではないでしょうか。特に「回復期」といわれる時期は症状が落ち着いている分、このままでよいのか焦る気持ちもあるかもしれません。

今回はうつ病の回復期をテーマに、回復期の過ごし方や気を付けたいポイント、仕事復帰に向けて利用できる支援機関などを紹介します。うつ病の症状にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

うつ病とはどんな状態?

うつ病とは「気分障害」の1つで、一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった精神症状と共に、疲れやすい、眠れないといった身体症状があらわれます。こうした症状によって日常生活に支障をきたしてしまっている場合、うつ病が疑われます。

うつ病は、100人のうち約6人が生涯で一度はなるといわれており、誰にでも発症の可能性のある病気です。発症の背景には精神的ストレスや身体的ストレスが関係しているといわれていますが、明確な原因はわかっていません。悲しい体験だけでなく、ライフステージの変化などの嬉しいできごとも発症のきっかけになるといわれています。

うつ病の診断基準については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

うつ病でも働ける場所はある?向いている仕事とは?利用できる制度や支援先についても紹介

うつ病の回復過程

うつ病の回復過程は、大きく「初期」「急性期」「回復期」「再発予防期」の4段階に分けられ、段階ごとにうつ病の状態や症状が異なります。それぞれの過程を詳しく見ていきましょう。

初期

うつ病の初期は気分の落ち込みが続き、それまで興味のあったことに関心がなくなるといったメンタル面の不調が見られ始めます。また、寝つきが悪くなる、集中力がなくなるといった身体面の症状も特徴です。この段階で自分の状態に違和感を抱き、精神科などを受診してうつ病の診断を受け、休職する場合もあります。

うつ病の初期は気分の落ち込みが1日の中でも波があるため、躁うつ病を疑う方もいるかもしれません。しかし、躁うつ病は気分の落ち込みが半年以上続き、その後気分が高揚する躁状態が2~3ヶ月ほど見られるなど、うつ病とはメカニズムが異なります。

個人差があるものの、うつ病の初期段階はおおむね2週間ほど続くといわれています。

急性期

急性期は、ゆううつな気分や不安、イライラといった症状が特に強く出る時期です。気分がガクッと落ち込み、自分には価値がないと感じたり、焦燥感を抱いたりすることもあるでしょう。急性期は休職など休むことによって症状が一気に悪くなることもあることから、回復へ向かっていないのではと不安に思う方もいるかもしれません。

しかし休むことでうつ病の症状が強く出るのは、治療過程を順調に経ていることの証です。それまで張りつめていた反動が一気に出ている状態であり、この時期は何よりも十分に休養をとることが大切です。

急性期は3~6ヶ月ほど続くといわれています。この時期は記憶があいまいになる、頭がぼーっとして物事をよく考えられないといった症状もあらわれます。こうした症状が出ると不安かもしれませんが、無理をせずそういう時期だと理解して過ごしましょう。

回復期

回復期は、急性期の症状が落ち着きを見せ始める時期です。しかしまだ日によって症状に波があり、頭の中がもやもやしたり人に会うのを億劫に感じたりします。気分の上がり下がりを繰り返す時期だと理解しておきましょう。

この時期は少しずつ食欲が戻って睡眠が取れるようになり、中には1日15時間ほど眠るケースもあります。脳が休息を必要としているサインだと思い、眠いときは眠るようにしましょう。

回復期の後半から、主治医と相談しながら徐々に社会復帰の準備をしていきます。外に出たり体を動かしたり、活動量を少しずつ増やしていく時期です。しかし無理は禁物なので、一気にやりすぎないよう注意しましょう。

回復期は個人差があるものの、4~6ヶ月ほど続くといわれています。

再発予防期

再発予防期は回復期よりも気分の波が落ち着き、社会復帰する方も多い時期です。この時期はうつ病が再発しないよう、症状が見られなくなっても一定期間抗うつ剤などの服薬を続けます。

初めてうつ病になった方は、再発予防期に服薬を約4~9ヶ月続け、以前うつ病になったことがある方は服薬を約1~3年続けるのが一般的です。また、回復の兆しが見られない方や中高年の方、身内にうつ病患者がいる方は、うつ病が初めてだとしても服薬期間を長くとる場合があります。

うつの症状が落ち着くと治療や服薬の必要性を感じにくくなりますが、うつ病の5年以内の再発率は40%以上といわれているため、油断は禁物です。

うつ病の回復期の症状や特徴

うつ病の回復期はだいぶ症状が落ち着くものの、身体へのダメージはまだ残っています。身体の不調のほかに、集中力が続かなくてそわそわする、数日間調子が良かったのにまた気分が落ち込むなど、精神的な不調も引き続き起こりやすいものです。

一進一退を続けながら、少しずつ回復に向けて進んでいくのがこの時期の特徴といえます。

回復期にはとりあえず何かしようと手を付け始め、だんだんと根気よく続けることができるようになり、少しずつ「おもしろい」という感覚が戻ってくるという一連の回復の流れがあります。ただし、うつ病の原因は人それぞれなので、回復過程の長さにも個人差があることを忘れてはいけません。例え順調に進まなくても、焦らないことが大切です。

回復期の過ごし方の注意点

回復期は、状態が良くなったり悪くなったりと、症状の波を繰り返しながら進んでいきます。この時期はできることが増えていきますが、休養をおろそかにしてはいけません。あくまでも1番大切なのは身体を休めることです。

うつ病の回復期に、症状が良くなったからと自己判断で服薬をやめてしまうケースがあります。しかし、突然服薬をやめると再発のリスクが高まるため、主治医と相談しながら必要な期間は薬を飲み続けることが大切です。

また、うつ病の回復期は自殺の危険性も上がります。うつ状態のときは常に自殺の危険性がありますが、回復期は何事にも意欲が高まる時期なので、それが自殺への行動力へとつながってしまうケースがあります。

なお回復期とはいえ、あくまでも治療過程にある点を忘れてはいけません。重大な決断は後から後悔することを避けるためにも、症状が落ち着いてから行うようにしましょう。

くり返すうつ病は発達障害の可能性も

休養や治療を行ってもうつ病をくり返す場合、そのうつ病は発達障害*特性が影響している可能性があります。発達障害とは、先天的に脳機能の発達に偏りがあるため、本人を取り巻く環境や周囲の人々との関わりにミスマッチが生まれ、社会生活に困難が生じる障害です。

発達障害の特性によって生きづらさやストレスを抱え、それが要因となってうつ病などの精神疾患を発症することを、発達障害の「二次障害」といいます。発達障害の二次障害としてうつ病を発症した場合は、うつ病の治療のほかに発達障害の特性に対するアプローチを行わなければなりません。

発達障害の二次障害としてうつ病を発症し、うつ病の症状の方がひどい場合には、まずうつ病の治療を優先させます。発達障害の特性は社会に出て生きづらさを感じるようになってから気づくこともあるため、うつ病が長引く場合には発達障害の可能性も視野に医療機関などに相談してみましょう。

うつ病の方が仕事に復帰するタイミング

回復期の間に約7~8割ほど症状が安定してきたら、復職準備の目安です。主治医に復職の意思があることを伝え、主治医の診断のもと問題ないと判断されれば、「復職診断書」を作成してもらえます。復職は自己判断で決めないよう注意しましょう。

厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」によると、職場復帰できる状態の判断基準例は以下のとおりです。

  • 十分な意欲を示している
  • 適切な睡眠覚醒リズムが整っていて昼間に眠気がない
  • 労働時間帯に1人で安全に通勤できる
  • 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能

休養中に生活リズムが乱れてしまったり、体力が低下したりする方もいます。働いていた頃と同じ時間に起きて散歩をするなど、復職に向けて生活習慣を整え、体力を回復させることも大切です。

職場復帰の際に気をつけるポイント

職場復帰の際は、一気にペースを上げないよう注意が必要です。最初の1~2週間は「ならし運転」として、2~3時間ほどの勤務で助走期間をつくりましょう。職場復帰をして3ヶ月間はまだ症状の波があると考えられるので、本格的な業務は行わずに様子を見るのが理想です。

基本的には以前勤めていた職場に復帰するのが良いといわれますが、もし職場環境などに問題があり、配慮を得られない場合には転職も視野に入れましょう。職場復帰が不安な方は、後述する支援機関を利用するのもおすすめです。

うつ病の方の仕事に関する支援先

うつ病で仕事ができなくなり、社会生活や日常生活に不安を抱く方は多くいます。ここでは、うつ病やさまざまな障害・病気で仕事が困難な方を対象に、職場復帰のサポートや就職・転職支援を行っている支援機関を紹介します。

回復期に入り、少しずつ活動ができるようになったら利用を検討してみても良いでしょう。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、「職業訓練」「就活支援」「就業後の定着支援」など、就労に関するトータルサポートを行う機関です。事業所ごとにプログラム内容は異なり、仕事に必要な知識やスキル、自己管理の方法の習得など多岐にわたります。

就労移行支援は「障害福祉サービス受給者証」があれば利用できるので、休職中で元の職場に戻りたいという方にもおすすめできます。障害者手帳を取得していない、いわゆる「グレーゾーン」の方も利用可能です。

リワーク

リワークとは、うつ病などの心の病気で休職している方の職場復帰をサポートするプログラムです。医療機関や公的機関、その他民間の事業所で受けることができます。

リワークは「休職から復職への心身の負担を減らす」「働き続けられるスキルを身につける」ことを目的としており、模擬業務やストレスコントロールなど、さまざまなプログラムを提供しています。毎日決まった時間に通所して生活リズムを安定させる、仕事に近いオフィスワークを体験するといったプログラムもあります。

ハローワーク

ハローワークは転職や就職に関する支援を実施する機関です。全国に500ヵ所以上あるため、一度は見たことがあるという方も多いでしょう。

ハローワークでは一般就労だけでなく、うつ病などの精神疾患がある方向けのサポートも行っています。障害や疾患に関する専門知識を持つ職員が配置され、うつ病の方の就職や転職を支援しているほか、再就職への相談にも応じています。

各市町村に1つはあるので、再就職が不安な方は足を運んでみましょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、うつ病などの精神疾患や障害がある方の「就労」と「生活」を一緒にサポートする機関です。

就労支援では、利用者との面談をもとに希望や適性に合わせた支援計画が作成され、職業スキルの確認や履歴書作成、面接準備のサポートなど、就職に向けた取り組みを支援します。生活支援では、健康管理のサポートと、障害年金や障害福祉サービスの申請など、複雑な手続きの相談にも応じています。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、うつ病などの精神疾患や障害のある方を対象に、専門的な職業リハビリテーション支援を行う施設です。

厚生労働省の研修・試験を修了した専門のカウンセラーやジョブコーチ、相談支援員が在籍し、専門性の高さが特徴です。ハローワークや一般企業、福祉施設などと連携して、利用者一人ひとりに合わせたリハビリを行っています。

Kaienの就労移行支援

Kaienでは、利用者の方の特性や希望に合った仕事を見つけられるよう、職業訓練や各種スキル講習、就活サポートなどを中心に就労移行支援を行っています。

例えば職業訓練では、オフィスワークからクリエイティブ系の職種まで、100職種以上を実践的に体験できます。また各種スキル講習では、ライフスキル講座、スキルアップ講座、就活講座など、50種類以上の講座を自由に受講可能です。自身の特性を理解し、苦手への対処方法を学ぶことができます。

就活サポートでは、うつ病や発達障害といった精神疾患に理解のある企業の求人を紹介します。Kaienは200社以上の企業と連携しているため、他の事業所にはない独自の求人も応募可能です。カウンセラーが二人三脚でサポートするので、安心して就活に専念できます。

Kaienでは無料で見学会や体験利用を随時実施しているので、気になる方はぜひお気軽にご連絡ください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

うつ病の方の中には、生活リズムがまだ整っていない、働く自信が持てないという方もいるでしょう。そんなときは就職を目指す就労移行支援の前に、生活の自立を目指す自立訓練(生活訓練)の利用がおすすめです。

Kaienの自立訓練(生活訓練)は、生活習慣を整えるための生活スキルや自身の特性理解など、講座の受講や実践プロジェクトを通して習得していきます。担当スタッフと1対1のカウンセリングも行い、メンタル面のケアやサポートも行うので安心です。

就活の前にまずは生活習慣を改善したい方、自分の将来をしっかり考えたい方は、ぜひKaienの自立訓練(生活訓練)の利用をご検討ください。

うつ病の回復期は仕事復帰に向けて過ごし方を意識しよう

うつ病の回復期は、主治医と相談のうえ社会復帰の準備ができる時期です。しかし、あくまでも治療の過程にあることを忘れてはいけません。気分の上がり下がりを繰り返す時期でもあるので、無理せず過ごすことを第一に考えましょう。

仕事の復帰に不安を感じる方は、就労移行支援をはじめとした支援機関の利用もおすすめです。機関ごとにさまざまなサポートを行っているので、職場復帰への心配ごとが軽減するかもしれません。

うつ病は誰もがなり得る病気です。違和感を見逃さず、早い段階で休養を取るようにしましょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

うつ病はとてもポピュラーな疾患であり、世界では3億人以上、日本だけでも100万人以上の方が罹患しています。そして一番の治療は「休養」です。抗うつ薬では?と考える人もいるかもしれませんが、休養無しに回復するのは非常に難しいです。その際、多くの人にとって、長期の休養を取る、というのは初体験でしょうから、そこには大きな心理的ハードルを感じても当然です。ですが、休養は大事です。回復の過程はゆっくり考えることが大事で、焦らずに休養してください。また、その時に心配な経済的な問題に関しては傷病手当がとても役立ちます。それ以外にも経過によって有用な支援というのはありますので、本記事も参考に主治医と相談してください。​​そして、支援者、特にご家族や直属の上司のかたなど近い方は、根気強く本人の回復をサポートしてもらえればと思います。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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