聴覚過敏の診断テストはどこで受けられる?原因や症状、仕事中の対処法を解説

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聴覚過敏にはさまざまな症状があり、その原因も人によって異なります。聴覚過敏が疑われる場合、診断テストなどで自分の置かれている状態をいち早く把握し、適切な方法で対処することが大切です。

この記事では、聴覚過敏のセルフ診断テストの方法や、治療は何科を受診するかなどを解説します。また、聴覚過敏の原因や仕事中の対策方法などについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

聴覚過敏とはどんな状態?

聴覚過敏とは、周囲の物音や人の声などが必要以上に大きく聞こえ、音による不安やストレスを感じる状態のことです。気分や体調、ストレスの度合いなどによって症状の出方が変わり、場合によっては耳や頭の痛みを感じることもあります。

聴覚過敏は感覚が一般的な場合よりも敏感になる「感覚過敏」の一種で、視覚過敏や嗅覚過敏なども感覚過敏に含まれます。

聴覚過敏の特徴は、特性によりそれぞれ苦手な音が異なることです。苦手な音の一例として、掃除機の音や食器がぶつかる音、赤ちゃんの泣き声などが挙げられます。その他、パトカーや救急車のサイレンや電話の着信音など、突発的に鳴る音が苦手な方も少なくありません。

聴覚過敏の原因

聴覚過敏の原因は、以下の3つのパターンに分けると認識しやすいです。

  • 自律神経

聴覚過敏の原因が耳にある場合、耳の機能が働かなくなっていたり、何らかの耳の病気にかかっていたりするケースが考えられます。本来、耳には音が大きすぎるときにその音量を抑制する機能が備わっています。この機能がうまく働かなくなっていると、大きい音が大きいまま聞こえてしまうので、不快感やストレスなどにつながるのです。

また、突発性難聴やメニエール病といった耳の病気が聴覚過敏を引き起こしている可能性も考えられます。

脳が原因の場合、注目したいのが「選択的注意」という機能です。聞きたい音とそうでない音を振り分けるこの機能がうまく働かないと、脳がすべての音を取り込んでしまうため聴覚過敏を発症してしまうことがあります。また、片頭痛やてんかんなどの疾患によって脳細胞が興奮状態に陥り、選択的注意の機能が損なわれるケースもあります。

自律神経の乱れが原因の場合は、過剰なストレスなどから交感神経が過剰に働くことで、耳にも不調が生じるというパターンが多いです。

聴覚過敏と発達障害の関連性

注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害*の方は、聴覚過敏の状態になりやすいといわれています。特性により外部からの刺激に影響を受けやすく、聴覚以外の感覚も過敏になるケースも少なくありません。

実際に、感覚過敏の症状があることはDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)におけるASDの診断基準の1つにもなっています。また、特定の音が聞こえたときに耳を塞ぐといった行動が発達障害の方に見られる場合もあります。

ただし、このような傾向が見られるというだけで、発達障害と聴覚過敏の関係が科学的に解明されているわけではありません。

聴覚過敏のセルフ診断テスト

自分が聴覚過敏なのかわからない場合は、簡単なセルフ診断テストでチェックしてみましょう。これらはあくまで一例ですが、以下の項目にいくつか当てはまる場合は聴覚過敏の可能性があります。

  • 特定の音や声が苦手
  • 同じ音に対して不快感を覚える
  • 大きい音や声が聞こえると耳を塞いでしまう
  • にぎやかな場所が苦手

聴覚過敏では、トイレで水を流す音や時計の秒針が動く音、工事現場から聞こえる音などが苦手な方も多いです。大きい音や声が聞こえたときに拒絶反応を示すことも、聴覚過敏の方にありがちな行動の1つです。

また、デパートなどのにぎやかな場所へ買い物に出かけただけで疲れてしまうといった場合も、聴覚過敏に該当する場合があります。

聴覚過敏はどこで治療できる?

前提として、聴覚過敏は病名ではなく特性や症状の1つであり、聴覚過敏そのものに効果がある治療法は確立されていません。

聴覚過敏の原因がわからない場合は、まず耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。耳の疾患や不調が原因と診断されれば、治療を通して症状の改善が期待できるでしょう。

仕事などで強いストレスを感じている場合には、精神科や心療内科を受診してみてください。カウンセリングや投薬治療によりストレスが緩和され、聴覚過敏の症状も軽減する可能性があります。

聴覚過敏の方が仕事中にできる対策方法

職場にはさまざまな音があふれているため、聴覚過敏の方は音や周囲の話し声などが原因で作業に支障をきたすこともあるでしょう。ここからは、聴覚過敏の方が仕事中にできる具体的な対策方法を4つ解説します。

イヤーマフ

イヤーマフは耳を覆うことで周囲の音が聞こえないようにする防音道具の1つです。防音効果が高く、工事現場などの騒音にさらされる環境のほか、聴覚過敏などの特性がある方にも重宝されます。

イヤーマフは商品ごとにサイズや防音効果の高い音域などが異なります。そのため、自分が苦手とする音を防いでくれるか、自分の耳に合っているかといった点を確かめることが重要です。

またイヤーマフ以外にも、耳栓やノイズキャンセリング機能付きのイヤホンなどもあるため、使いやすい道具を選ぶとよいでしょう。

苦手な音を把握

仕事中にいやな音が聞こえると感じたときは、それが何の音なのかをまず特定しましょう。苦手な音の正体や、それがいつ終わるのかもわからない状態だと、感じるストレスはより強くなります。

「何時まで我慢すれば終わる」といった認識があるだけで、気分が今よりも楽になるはずです。また、苦手な音が特定できれば、音が聞こえる場所を避けたりイヤーマフなどの防音アイテムを装着したりと対策ができ、アイテムを選ぶ際も適切な商品を選びやすくなります。

リラックスする

先述のとおり、聴覚過敏の原因の1つにストレスからくる「自律神経の乱れ」があります。リラックスできる時間を作り、副交感神経を優位にすることで、聴覚過敏の症状が軽減される場合もあるでしょう。

リラックスしたいときは、以下に挙げる方法などが効果的です。

  • 軽い運動をする
  • 好きな本や映画、音楽を楽しむ
  • ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
  • ハーブティーを飲む

リラックスできる方法は人により異なるため、自分にとって心が休まる方法を見つけ、生活習慣に取り入れてみることをおすすめします。

環境を整える

聴覚過敏の方は、席の配置など職場の環境を整えることで働きやすくなる可能性があります。上司などに症状や困りごとを伝えて理解を得たうえで、デスクの位置を静かな場所に移す、防音アイテムを使用するなどの対策を講じるとよいでしょう。

また、静かな店でランチを取るなど、休憩時間の過ごし方を工夫することも大切です。

職場環境を整えても症状の改善が見られない場合は、休職や転職なども視野に入れてみてください。聴覚過敏などの症状に理解のある職場なら、大きなストレスを感じずに働けるようになるかもしれません。

聴覚過敏の方の仕事探しは就労移行支援がおすすめ

聴覚過敏の方が働きやすい職場を探すときは、就労移行支援サービスの利用がおすすめです。就労移行支援とは、障害のある方を対象に職業訓練などを通して一般企業への就職を目指す福祉サービスの1つです。

Kaienでも就労移行支援を行っており、主に以下のような支援を実施しています。

  • 職業訓練
  • 就活サポート
  • 定着支援

Kaienの職業訓練は、100職種以上の実践的な体験を通して自分に合った職種を把握できます。また、スキルアップ講座の受講により苦手な状況に対処する方法を身につけることも可能です。

そのうえで、聴覚過敏などの特性に理解のある企業の求人紹介や就活対策を、二人三脚でサポートしてもらえます。資格取得や書類作成、面接対策といった幅広い形でのサポートが受けられるため、働きやすい職場に転職できる可能性が高まるでしょう。

就職後は業務上の悩みについて相談に乗るなど、利用者の職場定着を支援するのも就労移行支援サービスの一環です。

聴覚過敏で働きにくさを感じている方や、転職を考えていて就労移行支援に興味がある方は、無料で見学会や体験利用も実施していますので、ぜひKaienまでお気軽にお問い合わせください。

適切な対処や支援を受けて聴覚過敏対策を

特定の音や声が不安やストレスの原因となる聴覚過敏の方にとって、さまざまな音があふれる環境での仕事は苦痛を感じることも少なくありません。まずは今回紹介したセルフ診断テストで、自分が聴覚過敏に該当するのか確かめてみることをおすすめします。

聴覚過敏の方は、イヤーマフを使う、職場環境を整えるといった対策で働きやすさを向上させることが重要です。それでも症状が改善しない場合は、休職や転職を視野に就労移行支援で適切なサポートを受け、自分に合った職場探しをすることも1つの方法です。

落ち着いた環境で働くためにも、適切な対処法や支援を選んで聴覚過敏への対策を講じると良いでしょう。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

聴覚過敏、は診断名ではありませんが、過敏さを持っている方にとって非常に悩ましい症状の1つですね。特に幼少期から聴覚過敏が強いと、他の方が全く気にならないような環境で、そこに居ることが辛いということが起こりますので、心身の発達にも大きく影響します。現状では、残念ながらこれをすれば治る、という治療法があるわけではないので、本記事にある通り、何かしらの対処をしていくことで環境への適応を上げていくことが必要です。最近では、ノイズキャンセリングイヤホンの登場で、かなり生活しやすくなる方も増えました。その使用が必要であるなら、学校や職場で理解してもらうために、診断書が必要な時もありますね。

尚、音への過敏さと表現されるとき、大きな音が耐えられない、など音そのものへの過敏があるのがまずは1つ。それ以外に、音への不耐性ではなく、色んな音が同じような音量で聞こえるために、その場で求められる音が聞けない、という意味で聴覚過敏と認識されている方も多いです。後者は特にADHD特性のある方にも多いのですね。聴覚過敏への対策の原則は環境調整と、活用できるデバイスを検討することですが、抗ADHD薬が役立つ場合もあり、主治医の居る方は相談してみることをお勧めします。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。