感覚過敏とは?発達障害との関連性や種類ごとの対処法を解説

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「雑音が気になって仕事に集中できない」「チカチカ点滅する蛍光灯を見ていられない」といった感覚過敏で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。感覚過敏とは、日常生活に支障をきたすほど感覚が敏感であることです。発達障害*¹で、この感覚過敏の特性を抱えている人も少なくありません。

この記事では感覚過敏とは何か、また発達障害との関連性や、感覚過敏の種類ごとの対処法について解説します。感覚過敏でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

感覚過敏とは?

感覚過敏とは、音や光、触り心地、臭い、味などといった刺激に対する感覚が、日常生活に支障をきたすほど過敏であることです。

聴覚や視覚、臭覚、触覚、味覚といった五感以外でも、痛みの感覚や、気温を感じる感覚、身体のバランスを感じる感覚といったさまざまな感覚における過敏さがあります。

必ずしも全ての感覚において過敏であるわけではなく、一部の感覚だけ過敏であるケースが多いといえるでしょう。感覚過敏とは、病気ではなく特性とされています。

感覚過敏とは反対に、刺激に対して感覚が鈍いといった特性もあり、これを感覚鈍麻といいます。感覚鈍麻では、例えば、大きな音に対する反応が鈍い、臭いに鈍感などといった症状が見られます。

感覚過敏は体調や疲労によって症状の出方が異なるため、日々の体調管理が重要となります。

代表的な6つの感覚過敏の症状と対処法

感覚過敏の代表的な例としては次の6つが挙げられます。

  • 聴覚過敏
  • 視覚過敏
  • 触覚過敏
  • 嗅覚過敏
  • 味覚過敏
  • その他の感覚過敏

以下では、それぞれの症状と対処法について詳しく解説します。

聴覚過敏

聴覚過敏とは音を感じる感覚が過敏であることです。

「聴力には問題がないのに人が話している言葉が聞き取れない」という症状である、聴覚情報処理障害(APD/LiD)の方は聴覚過敏になりやすい傾向にあります。

人によって敏感になる音、不快に思う音はさまざまです。大きな音が苦手な場合や、小さくても特定の音が苦手な場合、小さな音も大きな音も同じ音量に感じられるといった場合もあります。

【聴覚過敏の例】

  • 周囲の話し声に苛立って仕事に集中できない
  • 車のクラクションや救急車のサイレンに過剰に驚き疲弊する
  • 雨や風の音で落ち着かなくなる
  • パソコンのタイピングやエアコンの音などが耐えられないほど不快に思える
  • 子どもや赤ちゃんの泣き声が不快で耳をふさがずにはいられない

対処法としては次のような方法が考えられます。

【聴覚過敏の対処法】

  • 苦手な音のする環境と距離を取る
  • 耳栓やヘッドフォンをする
  • ノイズキャンセリングのイヤフォンを使う
  • 音のする機材にカバーをかけるなど防音対策を取る

無理に耐えたりせずに、苦手な音を避ける工夫が効果的です。

関連記事:聴覚過敏とは?原因や対策、発達障害との関連性も解説

関連記事:​​聴覚情報処理障害(LiD/APD)に向いている仕事はある?対策や支援サービスを解説

視覚過敏

視覚過敏とは、太陽の光や照明など、目に入る刺激に対して気分が悪くなったり不快になったりと過敏に反応することです。どのような目の刺激について苦手と感じるかは個人差があります。

【視覚過敏の例】

  • 太陽の光や室内照明が眩しくて目を開けていられない
  • 点滅する蛍光灯を見ていると吐き気をもよおす
  • 一度に多くの情報を見なければならないといった状況で気分が悪くなる
  • 人混みや交通量の多い場所にいるとめまいがする
  • 特定の色を見ると気分が悪くなる

対処法としては、下記のようにできるだけ、苦手な光や光景を遮ることがポイントといえます。

【視覚過敏の対処法】

  • 光の眩しさを避けるサングラスや遮光メガネを使う
  • 間接照明を使うようにする
  • 情報端末で文字を見るのがつらい場合は音声読み上げ機能などを利用する
  • 人混みや交通量の多い場所は避ける
  • 苦手な色を避ける

触覚過敏

触覚過敏とは、肌に触れる刺激や感触に対して、不快に感じたり痛みを感じたり過敏に反応することです。どんな素材や感触に対して苦痛と感じるかは、個人差があります。さらに、触覚は全身にあるため、体のどの部分で不快に感じるかといった点も、人さまざまです。

【触覚過敏の例】

  • 服の縫い目やタグを不快に感じるため着れない服が多い
  • 特定の素材の肌触りが苦手で着ることができない
  • マスク着用に痛みや息苦しさを感じる
  • 化粧ができない
  • 人に触れたり触れられたりすることが苦手
  • 雨や風に当たるとひどく不快感を覚える

触覚過敏の対処法としては次のようなものが挙げられます。できるだけ苦手な刺激を軽減させることが大切です。

【触覚過敏の対処法】

  • 肌触りがよいと思える衣類を利用する
  • マスクを着用しなければならない場所やシチュエーションを避ける
  • 化粧をしなければならない職場やシチュエーションを避ける
  • 周りの理解を得て、人と触れないようにする

嗅覚過敏

嗅覚過敏とは、臭いに対して過敏であることです。香水や芳香剤などの臭いをかぐと、気分が悪くなったり、頭痛を引き起こしたりします。苦手な臭いには個人差があり、一般に良い臭いとされるものでも、体調不良を起こすことがあります。

【嗅覚過敏の例】

  • 香水やアロマの香りをかぐと吐き気をもよおす
  • タバコの臭いをかぐと頭痛になる
  • 食べ物の臭いで気分が悪くなる
  • 柔軟剤の香りを不快に感じる
  • トイレの芳香剤の臭いで体調不良になる

臭覚過敏の対処法は、苦手とする臭いをかがなくてよい工夫をすることといえます。

【嗅覚過敏の対処法】

  • マスクを着用して臭いを避ける
  • ハンカチで鼻を覆って苦手な臭いを避ける
  • 苦手な臭いのものに近づかない
  • ガムを噛んで臭いを紛らす
  • 周囲の理解を得て臭いを避ける

味覚過敏

味覚過敏は、味の変化や触感に対して過敏であることです。好き嫌いではなく、口の中が敏感であるため、特定の刺激や触感のある食べ物が食べられないといったことが起こります。

【味覚過敏の例】

  • 特定の触感の食べ物が不快で食べられない
  • 苦手な味覚が多く、食べられるものが限られる
  • 味の変化が苦手で、いつも同じものを食べる
  • 油っこい料理や濃い味付けの料理が食べられない
  • 辛い食べ物など刺激のある料理が苦手
  • 味の混ざった料理が苦手

味覚過敏の場合は、食べられるものが限られるため、栄養バランスが偏るという問題を生じることもあります。味覚過敏の対処法としては、苦手なものを無理に食べないことが重要であるものの、栄養のバランスを考えて食事を取ることが大切です。

【味覚過敏の対処法】

  • 苦手な調味料や調理方法を避ける
  • 好きな調味料や食材、調理方法で作られた栄養バランスのよい食事を取る

その他の感覚過敏

ここまでに紹介した5つの感覚過敏の他にも、動きやバランスの感覚が過敏で乗り物酔いなどをしやすい「前庭覚過敏」、動きを感じ取る感覚が敏感で物を落としやすい「固有覚過敏」など、さまざまな感覚過敏があります。

内受容感覚の過敏もよく見られる感覚過敏です。内受容感覚とは「内臓感覚」とも呼ばれ、心拍数や呼吸、空腹感や喉の乾きなど、身体の中の感覚のことを指します。

内受容感覚が過敏だと身体からの信号をより強く感じ、不快感や不安につながる場合があります。例えば、軽い頭痛でも激しい痛みに感じられ、日常生活に影響が出るケースもあるでしょう。

天気や気圧の変化によっても内受容感覚に影響を与える場合があり、頭痛や身体のだるさなど痛みや不快感を引き起こす可能性があります。

感覚過敏と発達障害との関連性

発達障害の人の中には、感覚過敏の特性を持つ人も少なくありません。

以下では、発達障害のある人の感覚の問題を調査した国立障害者リハビリテーションセンターの調査結果に基づいて、感覚過敏と発達障害との関連性について解説します。

最も顕著なのは聴覚過敏

発達障害の人においては、感覚の問題が深刻であることが広く知られています。国立障害者リハビリテーションセンターでは、そうした発達障害の人の抱える感覚の問題について調査しました。

その結果、最もつらい感覚の問題が生じているのは「聴覚」であると回答した人が全体の約55%と過半数を占めました。視覚、触覚、嗅覚の問題とする回答がそれぞれ10%程度だったことと比較すると、発達障害の人の感覚の問題で最も顕著なのは「聴覚過敏」であるといえます。

出典:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害のある人の感覚の問題の実態が明らかに」

障害特性による悩みの違い

国立障害者リハビリテーションセンターの調査では、ASD(自閉スペクトラム症)、 ADHD(注意欠如多動症)、 LD(学習障害*²)といった障害特性別にも、感覚の問題を調査しています。

その結果、ASDの人では、最もつらい問題として「触覚」の問題を挙げる人が、ASDでない人と比べて相対的に多いと分かりました。一方、LDのある人では、最もつらい問題として「視覚」とする回答がLDでないとする人と比べて相対的に多く見られました。

このように障害特性によって、抱えやすい感覚の悩みは異なるといえます。

出典:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害のある人の感覚の問題の実態が明らかに」

年齢によっても異なる

国立障害者リハビリテーションの調査ではさらに、感覚の問題を年齢別にも調査しました。

その結果、味覚に問題について、問題があるとした人の割合は、18歳未満の未成年者層で多く、30~49歳の中年層、50代以上の中高年層で少ないと分かりました。若い年齢の方が味覚の問題を抱えている人が多い傾向にあり、感覚の問題は年齢によっても違いがあるといえます。

出典:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害のある人の感覚の問題の実態が明らかに」

感覚過敏の原因とは?

聴覚過敏や視覚過敏などさまざまな種類がある感覚過敏ですが、明確な原因がわかっているわけではありません。しかし、次の3つが原因になりうると考えられています。

  • 刺激に対し脳がうまく機能せず過剰に反応している
  • 耳や目、鼻などに異常があって感覚が正常に働いていない
  • 過剰なストレスで感覚が過敏になっている

理由の1つ目は、脳の機能の問題です。刺激に対して脳が何らかの理由で過剰に働いていることが挙げられます。

2つ目は、耳や目、鼻といった感覚を感じる器官が損傷していて、刺激を正しく感じられず過剰に反応するといったものです。

3つ目としては、過剰なストレスの影響で、刺激を感じやすくなっていることが挙げられます。

感覚過敏の場合どの科にいけばいい?

感覚過敏にお悩みの場合は、専門医に相談するのがよいといえます。しかし、どの科を受診すればいいのか悩むこともあるでしょう。

感覚過敏で受診をする場合には、症状のある器官に関する診療科を受けることがおすすめです。

  • 聴覚過敏:耳鼻咽喉科
  • 視覚過敏:眼科
  • 触覚過敏:皮膚科
  • 臭覚過敏:耳鼻咽喉科
  • 味覚過敏:口腔科、耳鼻咽喉科

なお、発達障害を抱えた人で、感覚過敏の受診をしたい場合は、かかりつけの精神科や心療内科の主治医に相談するのもよいといえます。

対処法や過ごしやすい工夫を考えてみよう

感覚過敏とは、視覚や聴覚といったさまざまな感覚において、日常生活に支障が出るほど過敏であることです。

発達障害の場合は、特に聴覚過敏を抱えるケースが多く、また発達障害の中でもASDを持つ人は他の発達障害に比べて触覚過敏を抱えやすい傾向が見られます。

感覚過敏は個人差も大きな特性です。無理に我慢せずに、自分にあった対処法や過ごしやすい工夫を考えて実行するようにしましょう。

発達障害で感覚過敏も抱えつつ、生活や就労にお悩みの場合には、ぜひKaienにご相談ください。

Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)を提供しています。豊富な支援実績があるため、あなたの特性を踏まえた自立に向けたサポートや就労支援が可能です。

ご相談やご見学は、オンラインでも開催していますので、お気軽にお問い合わせください。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます

監修者コメント

感覚過敏は五感の全てにおいて成り立つものですが、特に発達障害の8割以上に感覚過敏があるという調査があります。このうち一番多いのは聴覚過敏で半数弱を占め、特定の音や賑やかなところが苦手とのことでした。また、年齢を経るにつれて感覚過敏が治まる人が3割弱いらっしゃる反面、ほとんど変わらない人は5割と多くいらっしゃいました。*

感覚過敏において、発達障害の方とHSP(ハイパー・センシティブ・パーソン)の方でどう違うかという疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。主観的なことなので比較が難しいのですが、「他者性」の有無というキーワードを使うと分かりやすいかもしれません。つまり、発達障害の方は他者と自分との関係に疎いため、感覚過敏も「音が大きく聴こえてわずらわしい」と他者性がなく物理的に捉えます。一方、他者に敏感なHSPの感覚過敏は「あの音からショパンのエチュードが聴こえて、昔の彼女と聴いていた風景が蘇った」と、他者とのエピソードが絡むのです。

* https://www.fnn.jp/articles/-/703290

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


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