外に出たくない・何もしたくないと感じたことがある人も多いかと思いますが、この状態が長く続く場合には注意が必要です。心身の疲労やストレスが原因となっているケースが多い一方で、病気や障害が潜んでいる可能性もあります。
本記事では、こうした感情を抱く原因や、裏に隠れている可能性のある病気・障害について解説します。意欲が低下しているときの対処法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
外に出たくない・何もしたくないと感じる原因
外に出たくない・何もしたくないという感情は、誰にでも起こり得る自然な反応です。しかし、その原因は人によって異なり、心や体の状態が影響していることも少なくありません。
ここでは、外に出たくない・何もしたくないと感じる原因として考えられるものを5つ紹介するので、こうした感情に悩まされている人はぜひチェックしてみてください。
環境の変化
転勤や転職、引っ越しや結婚など、身の回りの環境が大きく変化する出来事があると、心と体に大きなストレスがかかります。たとえ結婚や昇進のようなポジティブな変化であっても、期待や責任が伴い、知らず知らずのうちに負担がかかっている可能性もあります。
このようなストレスが積み重なると気力が低下し、外に出たくない・何もしたくないといった無気力な状態に陥る人も少なくありません。
個人の気質や特性
病気や障害による認知のゆがみや不安を感じやすい性格、完璧主義などの気質がある人は、日常生活の中でストレスや不満を抱えやすいのが特徴です。ちょっとした出来事にも過剰に反応してしまい、緊張や不安が蓄積されやすい人もいるでしょう。
また、完璧主義の人は物事を理想通りに進められないと自分自身に否定的な感情が芽生え、気分の落ち込みを引き起こすことがあります。
こうした負の感情が積み重なると、外出する気力が湧かなくなって「何もしたくない」といった無気力な状態に陥ってしまうケースが多く見られます。
心の疲労
心の疲労が溜まると、心を守るための防御反応として外に出たくない・何もしたくないといった感情が湧いてくることがあります。心の疲労は人によって原因が異なりますが、例えば人間関係のストレスや仕事でのプレッシャーがその一因となっているケースも多いです。
これらの要因が積み重なると、心のエネルギーが消耗し、日々の生活への意欲が低下することがあります。
身体の疲労
外に出たくない・何もしたくないと感じるのは、身体の疲労や体調不良が原因かもしれません。例えば「胃腸の調子が良くない」「微熱がある」「身体の凝りやむくみを感じる」といった症状があると、身体が回復するまで無気力や意欲の低下といった状態が続くことがあります。
こうした身体の不調はストレスとなり、心の疲れを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
生活リズムの乱れや睡眠不足
生活リズムの乱れや睡眠不足が続くと、日中に眠気や疲れを感じることが多くなります。また、夜ふかしが続いたり食事を抜いたりしている人は、それが原因で心身に不調をきたしているのかもしれません。
このような状態が続くと自律神経が乱れ、倦怠感や無気力を引き起こすことがあります。外に出たくない・何もしたくないと感じたときは、日々の生活を振り返ってみてください。
外に出たくない・何もしたくないと感じた際の対処法
外に出たくない・何もしたくないという感情は珍しいものではありませんが、そのまま放置してしまうと心身の不調を招き、日常生活に支障をきたす可能性があります。不調の原因を少しでも取り除くために、自分に合った対処法を試してみましょう。
ここでは、外に出たくない・何もしたくないと感じた際の対処法を5つ紹介するので、参考にしてください。
休息を十分に取る
心身の疲労やストレスを和らげるためには、まず休息を十分に取ることが大切です。体をしっかりと休めることで、心の負担も軽減されます。可能であれば、有給休暇を利用して長期休暇を取るなど、休息に専念できる環境を整えるとより効果的です。
無理をして活動を続けるよりも、一度立ち止まってしっかりと休んでみてください。心身のエネルギーが回復し、自然とやる気が湧いてくるでしょう。
十分な睡眠時間を確保する
睡眠不足に陥ると、外に出たくない・何もしたくないという感情を引き起こしやすいため、十分な睡眠時間を確保することが重要です。また、疲労が蓄積していると無気力な状態が続いてしまうため、睡眠を取って回復させなければなりません。
特に「忙しい日々が続いている」「つい夜ふかしをしてしまう」と感じている場合は、意識的に睡眠時間を長く取るよう心がけましょう。質の良い睡眠は心身のエネルギーを回復させ、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになります。
規則正しい生活を送る
先ほど紹介した通り、生活リズムの乱れは意欲の低下や無気力を引き起こす原因になります。「寝る時間と起きる時間が毎日違う」「食生活が乱れている」といった不規則な生活習慣がある人は、意識的に規則正しい生活を送ってみてください。
毎日同じ時間に起床し、バランスの取れた食事を取ることで、体内時計が整ってきます。これをしばらく続けることで、自然と規則正しい生活が身につくでしょう。心身の疲労が回復しやすくなり、意欲が徐々に戻ってくることが期待できます。
適度な運動を取り入れる
適度な運動を取り入れることは、心身のリフレッシュにつながります。運動は身体に適度な疲労を与え、夜の寝付きを良くする効果が期待できるため、夜ふかしが続いている人や寝付きが悪いと感じている人にもおすすめです。
外に出る気力が湧かない場合は、室内でできるストレッチから試してみてください。これらの軽い運動でも血行が促進され、心身がリラックスしやすくなります。
医療機関を受診する
ここまで紹介してきた対処法を試してもなかなか改善しない場合は、何らかの病気が潜んでいる可能性もあるため、医療機関の受診をおすすめします。医師による診察やカウンセリングを受けることで、自分では気づかなかった原因が明らかになることもあります。
原因を特定できれば適切な対処法が見えてくるため、解決への糸口となるでしょう。症状の悪化を防ぐためにも、早めに医療機関を受診してみてください。
外に出たくない・何もしたくないに隠れている病気や障害とは?
外に出たくない・何もしたくないという感情は、単なる気分の落ち込みだけでなく、病気や障害が関係していることもあります。心や体が発するサインを見逃さないために、その背景にどのような病気や障害が潜んでいる可能性があるのかを理解しておきましょう。
ここでは、外に出たくない・何もしたくないに隠れている病気や障害を8つ紹介します。
発達障害
発達障害*¹とは先天的な脳機能の発達に関係する障害で、注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害*²(LD)などが代表的です。これらの障害は単独で現れることもあれば、複数の症状が組み合わさって見られることもあります。
発達障害のある人は、「周囲とのコミュニケーションがうまく取れない」「物事を整理して行動するのが難しい」といった特性を持ち、それが原因で大きな負担やストレスを抱えることも少なくありません。
このようなストレスが蓄積すると、意欲の低下や無気力感が生じることがあります。これを「二次障害」といい、発達障害の二次障害として外に出たくない・何もしたくないと感じるケースもあるのです。
厚生労働省が公表した「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、ひきこもりに関する相談者の約30%に発達障害の診断があったことが指摘されていて、実際に多くの発達障害の人が無気力や意欲の低下を感じていることがわかります。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠障害や疲労感などの症状が見られる病気です。ストレスや本人の気質、薬の副作用など、発症のきっかけはさまざまです。うつ病になると強い倦怠感や気分の落ち込みが続き、外に出たくない・何もしたくないといった感情に見舞われることがあります。
適応障害
適応障害とは、職場や学校など周囲の環境にうまく適応できず、ストレスが蓄積されて心身に不調をきたしている状態です。症状は人によって異なり、不安感や抑うつ気分を引き起こすこともあります。そのため、適応障害の影響で外に出たくない・何もしたくないと感じる人も少なくありません。
睡眠障害
睡眠障害は、「なかなか寝付けない」「夜中に何度も目が覚める」など、睡眠の質が低下している状態を指します。このような状態が続くと心身の疲労が蓄積し、外に出たくない・何もしたくないといった感情が湧きやすくなります。さらに、慢性的な睡眠障害はうつ病を引き起こすこともあり、意欲の低下や無気力を悪化させるおそれがあります。
自律神経失調症
自律神経失調症は、自律神経の乱れが原因で起こる症状の総称です。ストレスの蓄積や生活リズムの乱れ、更年期障害などによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、心身にさまざまな影響を及ぼします。「やる気が出ない」「気分が落ち込む」といった感情を引き起こすケースもあり、外に出たくない・何もしたくないと感じる人も少なくありません。
統合失調症
統合失調症は精神疾患のひとつで、幻聴や妄想などのさまざまな症状が現れる病気です。症状の中には「物事に関心を持てない」「何もしたくない」といった感情鈍麻と呼ばれるものも含まれます。このような感情の鈍化によって日常的な活動への意欲が低下し、「外に出たくない」といった状態が続くことがあります。
慢性疲労症候群
慢性疲労症候群とは、日常生活に支障をきたすほどの強い疲労感が6か月以上続く状態のことです。この疾患は疲労感だけでなく、集中力の低下や睡眠障害を伴う人もいます。その結果、意欲の低下や無気力を引き起こし、外に出たくない・何もしたくないと感じるケースが見られます。
回避性パーソナリティ障害
回避性パーソナリティ障害とは、他人からの拒絶や批判に強い恐怖を抱き、外部との交流を避けようとする障害です。原因は明確になっていませんが、幼少期から臆病だった人や褒められた経験が少ない人、いじめなどで強く否定された経験がある人に多く見られる傾向があります。
この障害では、人との交流を避けようとして「外に出たくない」と感じたり、失敗を恐れるあまり「何もしたくない」と思ってしまうケースもあります。
外に出たくない・何もしたくない時は十分な休息が重要
外に出たくない・何もしたくないと感じる背景には、心身の疲労や病気、障害が隠れていることがあります。原因によって適切な対処法は異なるものの、まずは十分な休息を取ることが回復の第一歩です。焦らず、一度ゆっくりと休んでみましょう。
気分の落ち込みや意欲の低下を強く感じる場合は、就労移行支援や自立訓練(生活訓練)といった福祉サービスの利用も検討してみてください。就労移行支援は一般企業への就職をサポートするサービス、自立訓練(生活訓練)は自立した日常生活を送れるよう支援するサービスです。
これらのサービスを活用することで、適切な支援を受けながら自分のペースで生活リズムや心身の健やかさを取り戻せます。特に、就労移行支援は在宅でも利用できるため、外出に苦痛を感じる方でも利用しやすいでしょう。
症状がつらい場合は一人で抱え込まず、周囲の人や地域の障害福祉窓口、医療機関などを頼ってみてくださいね。
*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます。