メニエール病とは?働きやすい職場環境や向いている仕事、支援制度を解説

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メニエール病は、強いめまいや難聴などの症状を長期間にわたってくり返す病気です。その症状の特徴から、仕事に影響が出てしまうケースも多くあります。メニエール病の方のなかには、症状と付き合いながら働ける仕事を探している方もいるでしょう。

この記事では、メニエール病の主な症状や原因、働くうえで症状が出た場合の対処法について解説します。また、メニエール病の方が仕事を探す際に利用できる支援制度も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

メニエール病とは

メニエール病とは、強いめまいや耳鳴り、難聴といった症状がくり返し起こる病気です。30~50代の罹患率が高く、女性の発症が多い傾向にあります。

メニエール病は突発性難聴と症状が似ており、見極めが難しいといわれています。突発性難聴の場合はめまいの症状が必ず起こるわけではなく、仮に起こったとしてもメニエール病のようにくり返すことはありません。

対してメニエール病はめまいが代表的な症状の1つで、発作をくり返すことで日常生活に支障が出てしまう点が特徴です。また、メニエール病の症状の辛さから、うつ病や神経性障害を併発してしまうケースも少なくありません。

メニエール病の主な症状

先述の通りメニエール病の主な症状には、めまいや耳鳴り、耳がつまったような耳閉感が挙げられます。難聴も代表的な症状で、一般的には低音から聞こえづらくなるといわれています。メニエール病のめまいは何かに誘発されて起こるわけでなく、突発的に生じる点が特徴です。

メニエール病のめまいは、しばしば「回転性」と表現されます。これは、自分や周囲のものが動いたり回転したりするように感じるめまいであるためです。めまいが続く間は吐き気や冷や汗が伴うことも少なくありません。

メニエール病のめまいは通常数十分~数時間ほど続きますが、まれに20時間以上続く場合もあり、個人差が指摘されています。発作が始まると立っているのが困難になるため、メニエール病が原因で仕事が続けられなくなるケースも多くあります。

メニエール病の原因

メニエール病は、内耳の内リンパ液の量が増えすぎる「内リンパ水腫」により発症します。

内耳には、体のバランスをとる三半規管や耳石器、音を感じ取る蝸牛(かぎゅう)といった器官があります。通常、これらの器官は一定量の内リンパ液で満たされています。しかし、内リンパ液の量が過剰になると内耳の働きが阻害され、めまいや耳鳴り、難聴といった症状を引き起こしてしまうのです。

こうした内耳の内リンパ液の異常は、ストレスや睡眠不足、疲労が引き金になるといわれています。またメニエール病の治療内容には、投薬のほかにストレスコントロールや生活リズムの改善なども組み込まれることが多いようです。

メニエール病の診断

メニエール病の診断は、聴力検査や眼振検査、画像検査、平衡機能検査などを用いて行います。

聴力検査と眼振検査で難聴や眼振の度合いを調べ、画像検査ではMRI等で内耳を撮影し、どの部分に内リンパ液が溜まっているかを確認します。また、足踏み検査などで平衡機能に異常がないかも調べます。

メニエール病の難聴の症状は、発達障害*や精神障害の症状や特性と間違われるケースがあります。発達障害は先天的に脳機能の発達にかたよりがあり、聴覚処理に問題がある場合も少なくありません。発達障害の方の聴覚問題には、複数人での会話の聞き取りが困難など、難聴と思われる症状が存在します。

メニエール病の症状を発達障害の特性と混同し、メニエール病の発見が遅れてしまうケースがあるため注意が必要です。

メニエール病による仕事への影響と対処法

メニエール病の回転性のめまいは、仕事に影響を与える症状の1つです。発作が始まると、数十分から数時間ほど症状が続くため、業務を行うことが困難になります。めまいに伴う吐き気や冷や汗といった症状も、仕事の進行を妨げる原因になるでしょう。

また、耳鳴りや難聴は会議や電話対応、業務連絡などにも支障をきたします。

メニエール病の症状は突発的に起こるため、予想ができません。そのため、急に仕事を休んだり早退したりしなければならず、就業に不安を抱く方も多いでしょう。

ここからは、メニエール病の症状があるなかで仕事をする場合の対処法を紹介します。

職場に相談する

対処法の1つとして挙げられるのが、職場に相談し周囲の理解を得ることです。

職場の上司にメニエール病と診断されたことを伝え、どのくらいの頻度で発作が起こる可能性があるのか、発作が起きた際にどのような対処が必要なのか、詳しく知らせましょう。

症状の実態が分からないと、職場でもどう対処したらよいか分からず混乱してしまいますが、事前に情報を得ることで配慮がしやすくなります。

働き方を変える

メニエール病の治療には、ストレスの軽減や生活リズムの改善が不可欠です。残業や業務過多によるストレスや寝不足などの状態が続くと、症状が悪化しかねません。仕事における心身の負担を極力減らすことが、安定した状態を持続させるうえで重要になります。

また、メニエール病の症状には波があります。発作が起こった際に出勤時間や勤務体制を調整したり、波が落ち着くまで業務量を減らしてもらったりするなど、状況に応じて働き方を変える方法も有効です。在宅勤務が可能であれば、そちらに切り替えてもらうのもよいでしょう。

ただし会社によっては、こうした配慮が難しい場合もあります。万が一就労環境の改善が見込めない場合には、仕事を変えることも検討しましょう。

休養する

強いめまいや吐き気、難聴といったメニエール病の症状が頻発する場合は、無理をして仕事を続けずに一定期間しっかりと休養しましょう。メニエール病の発作は突然起こるため、頻発する時期は業務を続けること自体が困難ですし、発作への不安からストレスも抱えやすくなります。

発作が頻発する時期はゆっくり休んで治療に専念し、波が落ち着いたら職場に復帰することをおすすめします。メニエール病の症状が原因で仕事を辞め、再就職を目指すとしても、状態が落ち着くまでは休養が先決です。

休職を検討する

職場に休職制度がある場合は、制度を利用するのもおすすめです。休職制度は、病気や怪我などで就業が困難になった際、会社に籍を置いたまま一定期間休める制度です。どのくらいの期間休めるかは会社によって異なり、また休職制度を利用できる条件も会社ごとに違います。

もし働いている会社に休職制度がない、もしくは自分が利用条件に該当しないといった場合でも、有給休暇を使用して休養をするという方法もあります。まずは職場の上司や産業医などの窓口に相談してみましょう。

メニエール病の方に向いている仕事

メニエール病は、一度症状が治まっても再発しやすい傾向にあります。そのため、メニエール病の方に向いてる仕事や職種を探すというよりは、長期的な就業を考えたうえで、発症要因であるストレスや疲労の少ない仕事を選ぶことが大切です。

例として、人付き合いが少なく、人間関係に関するトラブルが少ない仕事や、ノルマや成果を求められない仕事が挙げられます。労働時間が長く残業が常態化している職場は、心身ともに負担がかかりやすいためおすすめできません。

障害者手帳の取得も視野に

メニエール病の症状が重い場合、障害者手帳を取得できる可能性があります。障害者手帳を取得すると、医療費の助成や税金の減免といった金銭面の援助を受けられるほか、障害者雇用での就業も可能です。

障害者雇用を行っている企業であれば、業務において障害の程度に合わせた配慮を受けられる可能性も高いでしょう。

メニエール病は、身体障害者手帳の対象となる疾患のうち、「聴覚又は平衡機能の障害」に分類されます。ただし、メニエール病と診断されただけでは障害者手帳を取得できません。症状が交付基準に該当しているかが重要となるため、障害者手帳を申請する際は、まず主治医に相談しましょう。

メニエール病の方が利用できる就労支援制度

メニエール病で就労が困難になり、転職や再就職を検討している方は、国や自治体、NPO法人が実施している就労支援制度の利用もおすすめです。

就労支援制度は、身体障害や精神障害、難病のある方が就労を目指すためのサポート制度です。代表的な支援制度に「就労移行支援」と「就労継続支援」が挙げられます。

以下で、就労移行支援と就労継続支援の具体的な支援内容を紹介します。

就労継続支援

就労継続支援とは、一般企業で働くことが困難な障害のある方を対象に、就労の場を提供する福祉サービスです。同時に、職業指導や生活支援、一般就労へのサポートも行います。

就労継続支援は「A型」と「B型」の2種類に分かれており、それぞれの事業所が就労の場となります。

A型事業所は、障害や難病があり一般就業が難しいものの、適切なサポートがあれば雇用契約にもとづく就労が可能な方が対象です。一方でB型事業所は、障害や難病があり、なおかつ体力や年齢の関係で一般就業やA型事業所での就労が難しい方が対象となります。そのため、A型事業所とB型事業所は、雇用契約の有無が異なります。

なおA型は18歳以上65歳未満の年齢制限が設けられていますが、B型には年齢制限がありません。

就労移行支援

就労移行支援は、障害や難病がある方が一般就業を目指し、職業訓練や就活支援、定着支援といったサポートが受けられる福祉サービスです。離職中の方だけでなく、休職中で復職を考えている方も利用できます。

支援内容は、一般企業への就職に向けたトレーニングやソーシャルスキルの習得、利用者に合った求人の紹介などが挙げられます。また、就職後も安定して働き続けられるよう、職場定着のサポートも行います。

就労移行支援は、「障害福祉サービス受給者証」があれば利用できます。そのため、障害者手帳を持っていない方や、発達障害のグレーゾーンの方でも利用可能です。

細かな支援内容は事業所によって異なるため、就労移行支援を検討している方は各事業所のプログラムを調べてみましょう。

メニエール病の方の仕事探しは就労移行支援がおすすめ

Kaienでは発達障害に特化した就労移行支援を行っており、利用者の方の目線に立ち、特性やペースに合わせてプログラムを進めることを大切にしています。

Kaienには、スキルアップ講座や就活講座など、社会スキル・自己理解に関する講座が50種類以上あるほか、100職種以上の実践的な職業訓練を行っています。こうしたカリキュラムを通してメニエール病の対処法を学び、症状と付き合いながら働ける仕事を探すことができます。

またKaienは、障害や病気に理解のある200社以上の企業と連携しているのが強みです。他事業所にはない独自求人も紹介しており、過去10年間で約2,000人がKaienの就活サポートを経て就職していきました。

就職活動では担当カウンセラーが二人三脚で親身にサポートするので、メニエール病への配慮がある職場をあせらず探していきましょう。

また就職後もメニエール病の症状に悩まされず働けるよう、スタッフが利用者の困りごとや不安の解消に向けた定着支援も行っています。

Kaienでは、無料の見学会や体験利用も随時実施しておりますので、気になる方はぜひ、お気軽にご連絡ください。

無理なく働ける環境で仕事をするために

メニエール病は過度なストレスや寝不足、疲労の蓄積が引き金となり発症する病気です。再発率も高く、一度治っても無理をして働き続けると、またぶり返してしまう恐れがあります。そのため、発症原因となる心身の負担が少ない環境で仕事をすることが大切です。

メニエール病の方が仕事を探す際は、就労移行支援の利用がおすすめです。専門スタッフのサポートを受けながら、豊富なプログラムをもとに自分に合う仕事が探せます。就労移行支援で、あせらず無理なく働ける職場を探していきましょう。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます


監修者コメント

メニエール病はコラムにありましたように、女性に多い内耳性の疾患で、メンタルクリニックにも良くいらっしゃいます。実は、19世紀を代表する画家であるヴィンセント・ヴァン・ゴッホがメニエール病だったかもしれないと言われています。一般的にはゴッホは精神に失調をきたした(双極性感情障害と考えられています)と言う意見が有力です。

しかし、福岡の耳鼻科医である安田先生は、1979年に学会誌でゴッホが兄妹に宛てた手紙を解析して、めまい、聴覚異常、胃症状などの記載はメニエール病に該当すると述べ、名作「星月夜」の渦巻く星空がメニエール病の発作の所見に酷似していると指摘しました(安田、1979)。

ゴッホが双極性感情障害だったか、メニエール病だったかは、永遠に分からないかもしれません。ただ、治療薬の発展した現代ではメニエール病に苦しむ方にも就労の道が開かれています。主治医やスタッフにご相談ください。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。