精神疾患とは?精神障害との違いや種類・特性、利用できる支援制度を解説

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精神疾患は30人に1人はなるとされる決して珍しくない病気です。その一方で、精神疾患の症状や程度は人によってさまざまで目に見えない部分も多いため、一般の人が理解しにくい病気といえるでしょう。

そこで今回は精神疾患の方やそのご家族に向けて、精神疾患とは何か、精神障害と精神病との違いや種類、特性、治療方法などの全体像をわかりやすく解説します。また、精神疾患について相談できる窓口や活用できる制度、就職の際に利用できる施設なども詳しく説明しているので、精神疾患でお悩みの方は参考にしてください。

精神疾患とは

精神疾患とは、何らかの原因により脳機能に乱れが生じることで、心身の不調として感じられる病気です。たとえば気分が落ち込んだり、幻覚や幻聴が起こったり、体の中に何かがいる感覚を持ったりします。感情や思考、行動が不安定になることは人間誰しもありますが、その苦痛が大きく生活に支障をきたす場合に、精神疾患とみなされる場合が多いといえるでしょう。

精神疾患は誰にでも起こり得る病気です。一例を挙げれば、自分の特性に合わない職場環境によって精神疾患になる可能性があります。また、長時間労働や人間関係のもつれなどの精神的なストレスや、薬物やアルコールなどの外部要因によっても精神疾患が引き起こされます。

精神疾患の人はどれくらいいる?

厚生労働省による2017年の調査によると、精神疾患の患者数は全国で約419.3万人です。この人数は、当時の人口で30人に1人が精神疾患であることを示します。

精神疾患の患者数は増加傾向です。とくに、サービス業中心の仕事や生活のストレスが数十年前とは質が違ってきたことと、社会的な認知度も上がってきた中で、うつ病や双極性障害などの気分障害の患者が増えています。また高齢化が進む日本では、認知症の増加も全体の患者数に影響を与えています。

精神疾患数の内訳をみると、入院患者の数は約30.2万人、外来患者の数は約389.1万人です。入院患者の数は過去15年間で減少傾向にありますが、反対に外来患者の数は増加傾向にあります。

参考:厚生労働省「第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 参考資料」

参考:京都府「こんなに身近!精神障害のかたち」

精神疾患と精神障害の違い

まず、精神疾患や精神障害の定義は厳密に言うと学問的なところで細かな議論がなされていますが、ほぼ同じ意味として使用されています。ただし、精神疾患を「精神の疾患(病気)」という意味で使い、精神障害を「精神疾患によって生じる障害」という意味で区別して使う場合もあるでしょう。

国際的にまだ統一がなされていない部分もあり、医師や専門家によって診断名が異なる場合も少なくありません。本記事内においては、精神疾患という表現で統一しています。

ちなみに法律における精神障害者の定義としては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第5条によって「精神障害者とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害その他の精神疾患を有する者をいう」と定められています。

参考:厚生労働省「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

精神疾患と精神病の違い

一方、精神疾患と精神病は同じ意味ではありません。精神病、という言葉は古い言葉ですが、精神科医は統合失調症や一部の器質的精神障害など、幻覚や妄想を伴う一部の精神疾患に使うことがあります。

障害・病・症は何が違う?

医師から障害の診断を受けたとき、「~障害」「~病」、「~症」など病名に違いがあることに気が付く方もいるかもしれません。基本的に「~病」となっているものは原因などがしっかり特定されている場合に、「~症」のときは幾つかの症状が併存して、1つの疾病として考えてはいるものの、原因がはっきりわからないものとして使う場合が多いです。精神疾患の多くは後者に該当するため「症」が使われることが多いです。

「~障害」という病名に関しては、世界基準に病名を合わせる作業をした際に「障害」と訳したものが多く、その名前が広く普及しました。しかし、言葉の印象があまり良くないことや本来の意を尊重するために、精神疾患の新しい診断基準・診断分類であるDSM-5の発表にともない、精神疾患の診断名の変更が行われています。

以下は変更の一例です。

  • パニック障害→パニック症
  • 注意欠陥・多動性障害→注意欠如多動症など

ただし、上記のような変更が行われたものの、パニック障害や強迫性障害など広く普及している病名に関しては併記がなされており、多くの精神疾患では障害と症の表記が併記され使われています。害や強迫性障害など広く普及している病名に関しては併記がなされており、多くの精神疾患では障害と症表記が併記され使われています。

精神疾患の種類と代表例

ここからは、代表的な精神疾患の種類について概要と症状を紹介します。同じ精神疾患でも程度や症状の表れ方は人それぞれですので、あくまで概略的な知識として参考にしてください。

気分障害

気分障害とは、過度な落ち込みや高揚感があり感情が乱れる病気です。そのため、感情障害とも呼ばれます。気分障害は、大きく「うつ病」と「双極性障害(躁うつ病)」の2種類に分けられます。

うつ病

うつ病とは、脳のエネルギーが欠乏した状態といわれ、憂うつな気分が続いて何事にも意欲が起きない状態となります。こうした状態に一時的になることは誰でもありますが、生活や仕事に支障が出るほどの状態が一定期間持続すると、うつ病と診断されるのが一般的です。

一例として以下のような症状が現れます。

  • 朝起きたとき気分が強く落ち込む
  • 自分を無価値な人間だと考え死にたくなる
  • 起床時間の2時間以上前に目が覚める
  • 食欲不振で体重が落ちる

うつ病は、産後のうつ病や季節性のうつ病などいろいろなバリエーションがあり、程度や症状もさまざまです。

双極性障害(躁うつ病)

双極性障害とは、躁うつ病とも呼ばれ、気分が高揚した状態(躁状態)と気分が落ち込む状態(うつ状態)が交互に現れる症状です。交代の周期は数ヶ月~数年など人によって違います。

双極性障害は躁状態とうつ状態で表れる症状が全く異なるのが特徴です。躁状態の症状は次のとおりです。

  • ほとんど眠らずに働き続ける
  • 気が大きくなってお金遣いが荒くなる
  • 攻撃性が増して怒りっぽくなる
  • 自分は何でもできると思い込み、人の話を聞かなくなる

うつ状態のときの症状はうつ病の場合と同様です。

統合失調症

統合失調症とは、思考や感情がまとまらなくなる状態が続く精神疾患です。

統合失調症の特徴は幻覚(幻聴や幻視)、妄想です。一例を以下に示します。

  • あるはずがないものが見える(幻視)
  • 自分を非難する声や命令する声が聞こえる(幻聴)
  • 誰かに監視されていると感じる(注察妄想)
  • 無関係な物事を「自分への嫌がらせだ」などと結びつけてしまう(被害関係妄想)
  • 考えがまとまらない、相手の話の内容が理解できないためコミュニケーションが成立しない(連合弛緩)

統合失調症は約100人に1人がかかるとされており、決して特殊な精神疾患ではありません。

適応障害

適応障害(適応反応症)とは、職場や学校などの環境に適応できないことがストレスとなり、不安感や抑うつ感などが現れる症状です。原因となる環境に移ってから通常3ヶ月以内に症状が現れ、社会生活に支障が出るのが特徴です。

具体的には以下のような症状が挙げられます。

  • 憂うつな気分、不安感
  • 頭痛、不眠、腹痛
  • 飲酒、喫煙の量が増える

適応障害は就職や転職、進学などのように、環境が大きく変わったときに発生しやすい精神疾患です。

依存症

依存症にはアルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症などがあります。何かの物質や行為に強く執着し、やめたくてもやめられない状態になってしまうのが依存症です。

依存症が疑われる行動は以下のとおりです。

  • 睡眠や食事がおろそかになるほど依存対象にのめりこむ
  • 仕事や学校を休みがちになる
  • お金を工面するために手段を選ばなくなる

依存症は脳の報酬回路がコントロール不能になり、より強い刺激や満足感を求めるために起こります。そのため、治療を受けないと悪化する傾向があります。

また、基本的には、脳神経内科や外科が扱うことが多いのですが、精神科的要素を含むものとして、下記が挙げられます。

てんかん

てんかんとは、脳の全体または一部が過剰な電気運動をすることで発作が起きる症状です。

発作には次のような症状があります。

  • 全身がけいれんする
  • 意識を失う
  • 体の一部にこわばりやけいれんを感じる
  • 5~10秒くらい意識が曇り動作が停止する(その後は何事もなく活動する)
  • 手がぴくっと一瞬動き、物を落としてしまう
  • 無意識に口や舌、唇をくちゃくちゃと動かす
  • 無意識に手をモゾモゾと動かす

自分では気づきにくい場合が多いため、家族や友人、知人などの観察も重要です。てんかんの患者の多くは、内服治療によって一般的な生活を送っています。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳がダメージを受けたことにより、認知や行動に障害が出る症状です。たとえば、交通事故や脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などによって、高次脳機能障害になる場合があります。

主な症状は以下のとおりです。

障害の種類具体例
記憶障害思い出せない、覚えられない
注意障害集中が続かない、同時に複数のことができない
遂行機能障害臨機応変に対応できない、段取りが悪い
社会的行動障害小さなことでイライラする、がまんできない、こだわりが強すぎる、やる気がわかない
病識の低下客観的に見ることがむずかしくなり、自分の症状に気づけない
脳疲労脳が疲れやすいため、ミスが増えたり怒りっぽくなったりする
半側空間無視目に問題はないが片側を認識できない(左半身をよくぶつけるなど)
失行手足をうまく動かせない(着替えができないなど)
失認視覚や聴覚、感覚に問題はないが正しく認識できない(家族の顔をみても誰だかわからないなど)
失語言葉が出てこない、正確に言葉を理解できない

ダメージを受けた脳の部位や範囲によって、症状はさまざまです。

今回紹介した疾患は一部であり、「不安障害」「強迫性障害」「器質的精神障害」「睡眠障害」「パーソナリティ障害」なども診断としては挙げられます。

発達障害

発達障害*¹とは、脳機能の発達に関係する脳の特徴的な特性で、いわゆる「疾患」概念とは違い、特性があっても必ずしも病気とはみなされません。色々な種類があり、それぞれ特性が異なります。

種類 症状

自閉スペクトラム症(ASD) ・言語以外の方法で相手の感情や考えを読み取るのが苦手

・対人関係や社会関係の障害

・興味・関心の偏り、極端なこだわり

注意欠如・多動症(ADHD) ・不注意・多動(目的のない動き)

・多弁(過度なおしゃべり)

・突発的な言動を起こす(衝動性)

学習障害*² ・読む、書く、計算するなどが極端に苦手

発達障害の方の中には、特性のもたらす苦手さに苦しんでいるものの、知的能力が高いことで、単なる性格や個性の違いとして十分に認知されていないケースがすくなくありません。また、障害と言って良い状態になっていることが自覚できていない方も大勢います。

発達障害と精神障害の違い

発達障害は生まれながらに一定の特性があるのに対し、精神障害は生活している途中でストレスや何らかのなどの要因によって発症する後天的なものです。精神障害が発症するのは10代以降が多いのも特徴といえます。一方で発達障害は幼少期に分かるものもあれば、就職などを機に生きづらさなどを感じたことから発覚するケースも少なくありません。

しかし、発達障害の特性と、精神障害の症状は見分けがつきにくく、医師でも先天的な発達障害を見逃してしまうことがあります。精神障害をくり返す場合、発達障害が原因であることを見過ごされるケースも多く、症状がなかなか良くならないことも珍しくありません。

発達障害の方は、特性による生きづらさやストレスなどから起こる二次障害として精神障害を発症する場合があります。発達障害の有無によって治療法も異なるため、正しい診断を受けることが大切です。

精神疾患の原因とは?

精神疾患の原因は、「内因」「外因」「心因」の3つに分類されてきました。ただし、現代の医学では公式に採用されていないため、参考程度にしておくとよいでしょう。

原因具体例
内因遺伝、その病気にかかりやすい素質、生来の脳の働き方
外因一部の感染症、薬物や頭部外傷や全身疾患など、脳に直接影響を与える外部の原因
心因日常的なストレス、生活環境など

たとえば、統合失調症や双極性障害は、内因の精神疾患といえます。外因の精神疾患の代表は、感染症を原因とする脳炎や全身疾患による器質性精神障害です。職場になじめないストレスで発症した適応障害は心因の精神疾患といえます。

もちろん、これらの例は状況を簡略化した場合に過ぎません。内因・外因・心因が複雑に関係して発症する場合もあります。

精神疾患の代表的な治療方法

精神疾患の代表的な治療法は薬物療法と心理療法の2つです。それぞれについて解説します。

薬物療法

薬物療法とは、「向精神薬」と呼ばれる脳内の神経伝達物質に作用して症状を改善する方法です。主に次のような薬があります。

種類期待できる効果
抗不安薬不安や緊張を緩和する
睡眠薬睡眠を促す
抗うつ薬セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の動きを活発にしてうつ状態を改善する
気分安定薬双極性障害の躁うつの気分変動を抑える
抗精神病薬主にドーパミンやセロトニンが関与する病態を改善する

薬物療法は気分障害や統合失調症で基本となる治療法です。また薬物療法は、症状をいったん落ち着けて心理療法につなげる目的で行われる場合もあります。

心理療法

心理療法とは、患者と精神科医や臨床心理士/公認心理師などの専門家が話をしたり話を聞いたりすることで、自己理解や物事のとらえ方などを改善していく治療法です。心理療法は精神療法やカウンセリングと呼ばれることもあります。

心理療法の主な種類は次のとおりです。

種類方法
支持的精神療法患者の話に共感を持って耳をかたむけ、患者が自己理解することをサポートする療法
認知療法認識のゆがみや偏りを認識することを導く療法。積極的な助言やアドバイスが含まれる
行動療法社会生活を脅かす行動や症状(広場恐怖、薬物依存、衝動的な怒りなど)を、直接行動変化を促すことで変えていく治療
精神分析無意識を含めた心の底を理解するための分析方法
認知行動療法認知療法と行動療法を上手く組み合わせた、現在最も主流の精神療法

精神科デイケア

精神疾患のある人が就労や復学、社会参加などを果たすために、さまざまなリハビリテーションを受けられる、治療の一環です。施設に通って精神科デイケアを受けられます。

精神疾患について相談できる窓口

精神疾患について相談できる行政窓口は以下の3つです。患者本人とその家族のほか、友人、職場の上司や同僚などにも相談できます。

保健所

こころの健康や保健、医療、福祉などの相談ができます。アルコール・薬物依存症、ひきこもりなどの相談も受け付けています。

保健センター

「こころの健康状態が気になるが、医療機関を受診すべきかどうかわからない」というようなときに、精神保健(メンタル・ヘルス)に関するサービスを紹介してもらえます。また、医療や福祉についての身近な相談もできます。

精神保健福祉センター

精神保健福祉の専門的機関として、医師や精神保健福祉士などの専門家が多く在籍しているのが特徴です。こころの健康や精神疾患の医療についての相談ができます。

いずれも全国各地に設置されているので、地域の相談窓口をお探しください。

精神疾患がある方が利用できる制度

精神疾患がある方が利用できる制度としては、以下の6つがあります。

傷病手当金

病気やケガで働けない間、健康保険の被保険者とその家族を保障するための制度です。連続3日以上休んだ場合に、4日目以降に支給されます。支給期間は通算1年6カ月です。

自立支援医療制度

障害を治療するための医療費を軽減できる制度です。診療や向精神薬、精神科デイケアなどの医療費が原則3割負担のところ1割負担になります。

障害者手帳

身体機能に一定の障害があると認められた人に交付される手帳です。精神疾患では「精神障害者保健福祉手帳」が交付され、各種の福祉サービスや障害者求人を利用できるようになります。

障害年金

病気やケガで生活に支障が出たときに、現役世代から受け取れる年金です。国民年金の加入者は「障害基礎年金」、厚生年金の加入者は「障害厚生年金」が受けられます。

生活保護

生活が困窮した場合に健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立につなげるための制度です。食品や家賃などの費用だけでなく、医療費の一部も支給してもらえます。

精神疾患がある方が就職の際に利用できる支援

ここでは、精神疾患がある方向けの福祉サービス、就労サービスを提供している施設を紹介します。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般就労を目指す障害のある方が、職業訓練や適性に合った職場探し、就職後の職場定着などの支援を受けられる制度です。就労移行支援は、障害者総合支援法に基づき、社会福祉法人やNPO法人、民間企業などの就労移行支援事業所で行われています。

具体的には、社会生活や職業上のスキルについて、自分の強みや特徴を整理し、苦手への対処策を学べるのがメリットです。また、自分の障害の特性に合わせて、たとえば人との接触の少ない仕事を選んだり、疲労が溜まりにくい軽作業を選んだりといった職場探しをサポートしてもらえます。さらに、就職後に困っていることについての相談に乗ってもらったり、職場に環境改善を頼んでもらったりできるので、職場に定着しやすくなるでしょう。

こうした就労移行支援を利用することで一般就労に成功した例は数多くあります。具体的な就職事例や体験談については、以下の記事で詳しく紹介しておりますので、ご参考ください。

就職事例・体験談

就労継続支援

就労継続支援とは、障害のある方で一般就労がむずかしい場合に、仕事に関する能力を高めながら賃金をもらえる制度です。就労継続支援にはA型とB型があります。

就労継続支援A型は、雇用関係を結んで給料をもらいながら就労移行支援事業所で働くのが特徴です。そして、可能であれば一般就労を目指します。

就労継続支援B型は、障害のある方で雇用契約に基づく就労がむずかしい場合に、就労や生産活動を提供する制度です。年齢や体力の面で雇用されるのがむずかしい人も利用しやすいのが特徴です。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)とは、仕事を探す人のために求人情報の提供や、仕事に関する相談、職業訓練などのサービスを提供している施設です。ハローワークは厚生労働省が管轄しており、全国500カ所以上に施設があります。

ハローワークでは、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を持っている方の採用枠である「障害者求人」を閲覧可能です。また障害者用窓口では、障害に関する知識を持つスタッフから、求人紹介や就職に関する助言やアドバイスを受けられます。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方に対する専門的な職業リハビリテーションや自立支援プログラムなどを行っています。障害者職業カウンセラーや相談支援専門員、ジョブコーチなどの専門家の支援を受けやすいのが特徴です。

職業相談では、一人ひとりのニーズを聞き取り、適性を判断したうえで職業リハビリテーションを実施してもらえます。また、就業の準備訓練や作業支援といった自立支援プログラムも実施しています。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の職業生活における自立を支援しています。障害のある方の身近な地域において、就業移行支援所やハローワーク、地域障害者職業センターなどの雇用関連のサービスと、福祉事務所や保健所などの福祉サービスのネットワークをつなぐ役割を担っています。

このため就業面と生活面の一体的な支援を受けられるのが特徴です。たとえば障害の特性に合った就業を相談すれば、それに適した専門的な支援を地域障害者職業センターに依頼してもらえます。同時に、健康管理に活用できるサービスの利用調整を保健所に連絡してもらえます。

Kaienの就労移行支援

Kaienでは、発達障害に特化した就労移行支援を行っています。就職実績は過去10年間で約2,000人、就職率が86%に対して就職から1年後の離職率は9%と低いのも強みです。

Kaienでは主に以下のような支援を実施しています。

  • 100職種以上の実践的な職業訓練
  • 独自のカリキュラムで多方面のスキル習得
  • 障害に理解のある企業の求人を豊富に扱う就活サポート
  • 就職後も安心の定着支援

職業訓練では適職を見つけるための実践的な訓練が100種類以上もあり、自分の得意分野や興味を活かせる仕事探しが可能です。豊富な独自カリキュラムの中には、クリエイティブコースのような専門性を高められるプログラムもあります。

また、ライフスキル講座やスキルアップ講座など自分の強みや弱みを客観的に認識できるカリキュラムや、ビジネスマナーが学べる講座など、困りごとや苦手分野への対策も充実しているのが魅力です。

就活支援ではKaien独自の求人があり、発達障害や精神障害に理解のある企業200社以上と連携し、あなたに合った求人を見つけるサポートを行っています。働き方も様々で、3人に1人が給与20万円以上の企業へ就職できていることも強みです。

Kaienでは随時、見学会や体験利用を実施していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Kaienの自立訓練(生活訓練)

精神疾患がある方の中には、具体的な就労イメージが持てない方や生活リズムが不規則な方、感情のコントロールが難しい方などもいるかもしれません。そんなときは就労移行支援の前に、Kaienの自立訓練(生活訓練)を利用するのも1つの手です。

自立訓練(生活訓練)は障害者総合支援法に基づく福祉サービスに含まれ、生活の基盤をつくる生活スキルの獲得や自己理解を深めるためのトレーニング、サポート等が受けられます。

Kaienではスキルアップ講座や実践プロジェクトへの参加、カウンセリングを通して心身の自立をサポートします。就労へのモチベーションアップや、まずは生活基盤を整えたいという方は、ぜひ利用を検討してみましょう。

特性の違いを理解し適切な支援を利用しよう

精神疾患は誰にでも起こり得る病気で、その症状や程度もさまざまです。自分一人で悩まず医療機関にかかって診察、治療を受けることをおすすめします。

また、就職を考えている際に利用できる相談窓口や支援制度もたくさんあります。障害の特性に合った職場探しを支援している施設や、障害ゆえの苦手分野を克服するトレーニングを行っている施設などがあるので、自分に合った方法を探してみてください。

制度・支援を利用しながら、自分のペースで、就職や健康回復などの目標に取り組んでいきましょう。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます

監修者コメント

この記事は、Kaienさんが、精神疾患とは何かから始まり、その治療や利用できる社会制度まで解説した、非常に包括的な力作です。

精神疾患に関しては、読まれた方は随分身体疾患と違う、と感じられなかったでしょうか。例えば検査データや画像など、客観的データによる裏付けがほとんどの場合ありません。記事に挙げられている「てんかん」は診断に脳波というデータを用いる数少ない、「疾患である証拠」が客観的に示せる疾患ですが、実は歴史上日本では精神科が扱ったものの、現在は主に小児科と脳神経内科が扱っています。つまり精神疾患とは今は言えないんですね。記事中では扱われていませんが、感染症を原因とする脳炎や、甲状腺機能障害から発症する器質的精神病なども原因がわかっている精神疾患ですが、それは少数派。精神疾患の多くは未だにはっきりした原因がわかっていないのです。

また、発達障害は、診断基準に合致したら即診断されるような他の疾患とは一線を画す診断概念です。特性がありつつも診断無しで生活されている方もいれば、診断が無いことで却って理解や配慮が得られず苦しんでいる方もいます。

いずれにしても、精神障害の方には様々な支援手段や支援組織、そして支援制度があります。それらを上手く使いながら、療養と、自分が望む社会適応の良い状態を目指していくことが広い意味で治療の目的となるでしょう。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。


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