軽度発達障害とは?グレーゾーンとの違いや利用できる制度を解説

HOME大人の発達障害Q&A診断・特性軽度発達障害とは?グレーゾーンとの違いや利用できる制度を解説

「軽度発達障害とはどんなもの?グレーゾーンとはどう違うの?」と疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか。軽度発達障害は、障害の程度が軽い発達障害*¹と思われることが多いものの、実際はそうではありません。

この記事では、軽度発達障害の詳しい内容やグレーゾーンとの違い、発達障害の種類や特徴について解説します。発達障害の傾向がある方や発達障害と診断された方が利用できる支援についても紹介しますので、軽度発達障害について詳しく知りたい方はぜひ最後まで目を通してみて下さい。

軽度発達障害とは

軽度発達障害とは、かつて使われていた言葉で、知的障害を伴わない発達障害のことを意味します。

具体的には、知的な遅れのない高機能自閉症、アスペルガー症候群、学習障害*²(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などを指し、「知的障害が軽度である」という趣旨で使われていました。

「軽度発達障害」という言葉から「軽い障害である」と思われることも多いのですが、こうした発達障害では、知的な遅れがなくとも、重篤な困難さを持つケースが少なくありません。

「軽度発達障害」という言葉を使うことで、「障害そのものが軽度である」と誤解されることを危惧して、現在は使われないようになりました。平成19年3月には文部科学省からも「軽度発達障害」という表現を、原則として使わない旨の通達がなされています。

参考:厚生労働省「政策レポート(発達障害の理解のために)
参考:文部科学省「「発達障害」の用語の使用について

軽度発達障害とグレーゾーンの違い

軽度発達障害とグレーゾーンとの違いは、軽度発達障害が発達障害であるのに対し、グレーゾーンは発達障害とは明確に診断されていないといった違いがあります。

軽度発達障害とは、先ほども触れた通り、発達障害と診断される中でも、知的な遅れのないもののことです。

一方、グレーゾーンとは、発達障害特有の症状や特性が見られるものの、診断基準を満たしているわけではないため、発達障害だとはっきりと診断できない状態を指します。

なお、グレーゾーンとは、正式な病名や診断名ではありません。医師から「発達障害だとはっきりとは診断できませんが、発達障害の症状や傾向は見られます」などといわれたときに、グレーゾーンであると判断されます。

グレーゾーンについて詳しく知りたい方は、「発達障害グレーゾーンとは?特徴や困りごと、対策についても解説 」の記事も参考にしてください。

発達障害の種類と特徴

発達障害の症状や傾向を把握するために、以下では、発達障害の種類と特徴について解説します。

  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如多動症)
  • LD(学習障害)

詳しくは次の通りです。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)とは、人とのコミュニケーションが苦手、また、独特のこだわりを持つといった特性が見られる発達障害のことです。

かつては、「自閉症」あるいは「AS(アスペルガー症候群)」「広汎性発達障害」ともいわれていました。はっきりとした原因は解明されていないものの、多くの遺伝的な要因などが複雑にからまって起きる先天的な脳機能障害とされています。

ASDは、相手の考えを言葉や身振り手振りから理解することができなかったり、自分の考えをうまく伝えられなかったりします。そのため、職場や学校で人付き合いがうまくいかない、グループ行動、チームプレーがうまくできないといった特徴があります。

大人のASDについて詳しく知りたい方は、「大人のASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群・広汎性発達障害など) 」の記事も参考にしてください。

ADHD(注意欠如多動症)

ADHD(注意欠如多動症)とは、うっかり間違いが多く不注意である、じっとしていられず多動である、後先考えずに衝動的に動くといった特性が見られる発達障害です。

明確な原因は解明されていないものの、生まれつき脳機能の偏りがあるなど、脳に何らかの機能に異常があると考えられています。

ADHDでは、仕事や生活において忘れ物が多い、約束や期限を忘れてしまうといったことが少なくありません。また、じっとしていられないため、単調な仕事や課題をこなせないといったこともあります。突発的に行動が多いことや、短期でカッとなりやすいことから、対人関係において問題を起こしやすい傾向が見られます。

大人のADHDについて詳しく知りたい方は、「大人のADHD(注意欠如多動症)は治療で改善可能?原因や困りごとへの対処法を解説 」の記事も参考にしてください。

LD(学習障害)

LD(学習障害)とは、診断名を「限局性学習症」といい、理解力には問題がないものの、読み書きや計算などの特定の学習において困難が生じる発達障害のことです。

視覚的短期記憶や聴覚的情報処理といった認知能力の問題で、特定科目に学習困難な状況が現れるとされています。

字を読むことが困難なディスクレシア(読字障害)、字を書くことが困難なディスグラフィア(書字障害)、ディスカリキュリア(算数障害)といった症状が見られます。これら全ての障害を持つというわけではなく、一つの障害だけを持つことが少なくありません。

特定分野以外の能力には問題がないため、単に学習困難な分野を本人の苦手分野、あるいは個性と捉えられてしまい、障害と気付くのが遅くなることがあります。

大人のLDについて詳しく知りたい方は、「大人の学習障害/限局性学習症(LD/SLD)とは?特徴や診断方法、対処法を解説」の記事も参考にしてください。

発達障害の方の仕事に関する相談先

発達障害でお悩みの方が、仕事に関する相談をしたい場合に利用できる相談先について紹介します。

  • 発達障害者支援センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • ハローワーク
  • 就労移行支援事業所

詳しくは次の通りです。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは、発達障害者やその家族の日常生活のサポートなど総合的な支援を目的とした専門機関です。都道府県・指定都市が実施主体となり、自治体自ら、あるいは、都道府県知事などが指定する社会福祉法人などが運営しています。

発達障害者支援センターでは、発達障害者の日常生活や仕事、人間関係など、幅広い相談をすることが可能です。例えば、仕事・就労に関する相談をすると、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどと連携して情報提供などのサポートをしてもらえます。

各地域の発達障害者支援センターは下記のサイトなどで確認できます。

発達障害者支援センター・一覧 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者が自立して働いていけるように、就労支援と生活支援の双方を行う支援センターのことです。運営主体は、都道府県知事が指定する社会福祉法人、特定非営利活動法人、民法法人などで、全国に設置されています。

就労支援としては、就労前には、障害の特性や能力に合った職務の選定や、就職活動の支援が受けられます。また、職業実習のあっせんや職業準備訓練といった就職に向けた準備支援を受けることも可能です。就労後も職場定着に向けた支援が受けられます。

各地域の障害者就業・生活支援センターは、下記サイトの「障害者就業・生活支援センター一覧」で確認できます。

障害者就業・生活支援センターについて

ハローワーク

ハローワークとは、全国に設置されている公的な職業紹介所です。就労相談や職業紹介を受けることができます。

発達障害の場合は、障害者専門窓口の利用が可能です。障害者専門窓口を利用することにより、障害に理解のある専門のスタッフによるサポートが受けられます。

仕事をしたいが不安がある、どういった仕事が向いているか分からないといった相談も可能です。ハローワークが連携する支援機関で、実際に働く前に実習を受けるといったこともできます。

障害者支援に特化したサポートが受けられるため、一般の窓口を利用するよりも手厚い支援が受けられます。

ハローワークについて詳しく知りたい方は「ハローワークの障害者専用窓口とは?相談できる内容や利用の流れを解説 」の記事も参考にしてください。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、就労移行支援サービスを行う事業所のことです。

就労移行支援サービスとは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、一般企業などへの就労を希望する障害者に対して、就労支援を行うものです。具体的には、障害者に通所してもらうことで、作業実習や訓練の場を提供したり、職場探しや就職後の定着支援をしたりします。

就労移行支援とは別の障害福祉サービスに自立訓練(生活訓練)というものもあります。自立訓練(生活訓練)は、就職を目指して利用する就労移行支援とは異なり、自立した生活を送るために利用するものです。就労の前に、まずは親や周囲に手助けを得ずに自立した生活を送りたいといった場合に利用できます。

適切に支援を活用しよう

軽度発達障害とは、かつて広く利用されていた言葉で、知的な遅れのない発達障害のことを意味していました。軽度発達障害というと、障害が軽度だというイメージを抱かれることもありますが、決してそうではありません。

発達障害といっても種類や特徴はさまざまです。就労を希望する場合は、障害の特性を理解した専門家のサポートを受けるなど適切な支援を活用することがおすすめです。

就労移行支援や自立訓練(生活訓練)の利用を検討中の方は、ぜひKaienにご相談ください。

Kaienでは、発達障害の強みを活かした就労移行支援・自立訓練(生活訓練)を提供しています。発達障害に理解のある企業200社以上と連携し、独自の求人紹介も可能です。

ご相談やご見学は、オンラインでも開催していますので、お気軽にお問い合わせください。

*1発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます。
*2学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます

監修者コメント

発達障害は「ある、ない」のデジタル的な二進法で表現されるのではなく、複数の要素が複雑に絡み合った疾患であると考えられます。自閉スペクトラム障害(ASD)がその代表で、スペクトラムとは「連続体」と言う意味です。

スペクトラムを辞書で調べると「複雑な組成を持つものを成分に分解し、量や強度の順に規則的に並べたもの」とあります。例えば、光のスペクトラムは、分光器で波長の順番に並べたものになります。

では、自閉症や注意欠陥症を構成しているものは何かというと「社会性」もしくは「コミュニケーション」になるのですが、これを波長のような規則を持った要素に分解できるかはよく分からないところがあります。原始的な社会性やコミュニケーションであれば全世界的に共通した要素がありそうですが、アングロサクソン発祥の新自由主義社会におけるコミュニケーションが世界的に共通した要素を持つかは多分に疑問です。

このように社会性やコミュニケーションを扱う精神医学は、その時代を代表する文化圏(言い換えれば経済的に圧倒的優位な国のアカデミア)が診断基準を決めており、恣意性(あるいは官僚的合議制)から逃れることができないことに留意する必要があります。

監修:中川 潤(医師)

東京医科歯科大学医学部卒。同大学院修了。博士(医学)。
東京・杉並区に「こころテラス・公園前クリニック」を開設し、中学生から成人まで診療している。
発達障害(ASD、ADHD)の診断・治療・支援に力を入れ、外国出身者の発達障害の診療にも英語で対応している。
社会システムにより精神障害の概念が変わることに興味を持ち、社会学・経済学・宗教史を研究し、診療に実践している。


まずはお気軽に!見学・個別相談会へ!

見学したい・相談したい

予約専用ダイヤル 平日10~17時

東京: 03-5823-4960 神奈川: 045-594-7079 埼玉: 050-2018-2725 千葉: 050-2018-7832 大阪: 06-6147-6189