軽度知的障害とは?働き方や仕事での困りごと、就労の相談先を解説

HOME大人の発達障害Q&A診断・特性軽度知的障害とは?働き方や仕事での困りごと、就労の相談先を解説

軽度知的障害は、知的障害のなかで最も症状が軽いグループに分類されています。しかし、活動できる範囲が広い分、日常生活や就業において困りごとを持っている軽度知的障害の方やそのご家族もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事は、軽度知的障害の特徴や原因、大人になってから軽度知的障害だとわかるケース、仕事上のよくある悩みと働き方、利用できる支援制度や相談窓口などについて解説します。

軽度知的障害とは

知的障害とは、読み・書き・計算、抽象的な概念の理解、金銭管理、コミュニケーションなどの知能の発達の遅れが発達期(おおむね18歳まで)にみられ、日常生活や職業生活に大きな影響が出る障害です。

厚生労働省やアメリカ精神医学会の定義において、知的障害は「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つに分けられています。したがって軽度知的障害は、症状が最も軽いグループに分類されます。

厚生労働省の定義では、軽度知的障害のIQ(知能指数)は51~70くらいの水準です。IQとは、IQテストにおいて「IQ=精神年齢÷生活年齢×100」で算出される数値です。成人の軽度知的障害の方の場合、知能の発達段階が8~11歳程度に相当します。

軽度知的障害の方は、簡単な読み書き、計算はほぼ可能です。また、身辺生活のほとんどを自分で行えます。このため一般企業で働く人や、通常学級で学ぶ人も多くいます。

軽度知的障害以外の知的障害の種類

先述したように厚生労働省の定義では、知的障害が4つに分けられています。ここでは軽度知的障害の障害の程度や身辺生活への影響がより明確にわかるように、「中度」「重度」「最重度」の知的障害についても解説します。

中度知的障害

中度知的障害は軽度知的障害より一つ重い知的障害で、IQでは36~50に相当します。成人後の中度知的障害の方は、知的発達が5~8歳程度にとどまります。

中度知的障害の方は簡単な読み・書き・計算が部分的にでき、身辺生活についても大部分が可能です。このため、簡単な文書を作れますし、単純作業であれば就業もできます。

一方、新しい環境や作業に自律的に慣れるのはむずかしいため、他人の支援が欠かせません。また、就業にあたっては訓練も必要です。

重度知的障害

重度知的障害のIQは21~35程度です。成人後の重度知的障害の方は、知的発達が3~5.5歳程度にとどまります。

重度知的障害の方は簡単な読み・書き・計算のほとんどができません。また、身辺生活についても一部しかできない状態です。働く場合には一般的に、障害福祉サービス事業所でサポートを受けながら就労します。また、学校においても障害者向けの学級で学ぶのが一般的です。

最重度知的障害

最重度知的障害は最も重い症状のある知的障害です。重度知的障害のIQは20以下で、成人の方の知的発達は3歳以下にとどまります。

最重度知的障害の方は読み・書き・計算がほぼできず、他人とのコミュニケーションもむずかしい状態です。また、身辺生活の大部分も支援が必要です。最重度知的障害では身体障害を併発している場合が多く、この場合、歩行や食事といった日常生活のサポートも欠かせません。

軽度知的障害と境界知能の違いとは?

境界知能とは、IQ70~85未満の「平均的」と「知的障害」の境界上にいる状態を指す言葉です。知的障害とはいえないものの、日常生活や社会生活に問題が出るケースが多いため、専門家の間で境界知能と区別しています。ただし、境界知能は診断名ではなく、公的支援の対象でもありません。

境界知能と軽度知的障害は以下の図のようにIQの区分で隣り合っていますが、発症率は大きく違います。

出典:厚生労働省|図 2.4 一般母集団における IQ の理論的分布と知能段階の分類

この統計分布における境界知能は理論上、全体の14%となるので、2021年時点では国内に約1,700万人も存在することになります。実際、学校や職場で大きな困難に直面してはじめて境界知能だと気づく人は多く、近年、社会問題として関心を集めるようになりました。

一方、軽度知的障害の人は理論上全体の約2.9%ですので、境界知能の方に比べると少数です。また、多くの場合、発達期(おおむね18歳まで)で知的障害だと診断され、公的支援を受けています。

参考:内閣府|第1編 障害者の状況等(基礎的調査等より)

知的障害の原因とは?

知的障害の原因は、生まれつき備わっている内的(先天的)要因と、出生前後の病気や傷害による外的要因に分けられます。それぞれ具体例を挙げながら解説します。

内的(先天的)要因

内的(先天的)要因としては遺伝性の病気と、妊娠前や妊娠時に生じる病気があります。例えば以下のような病気によって知的障害が残る可能性があります。

病気概要
ダウン症染色体異常によって起きる病気
多因子性疾遺伝的な要因と環境的な要因が合わさって発症する病気
てんかん脳神経細胞が過剰に興奮することで起きる病気
脳性まひ脳神経細胞の損傷で引き起こされる病気

上記のほかにも、内的(先天的)要因となる病気は多くあります。知的障害の原因の約8割は内的(先天的)要因です。

外的要因

外的要因とは、妊娠中や分娩中、出生後に発生した知的障害を引き起こす病気や傷害です。具体的には以下のような外的要因が挙げられます。

妊娠中・母体の栄養不足
・母体のアルコール、薬物中毒
・感染症(ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルスなど)
・脳の異常発達(孔脳症性嚢胞、異所性灰白質、脳瘤など)
分娩中・酸素量の不足(低酸素症)
・極度に未成熟な状態での出産
出生後・栄養不足
・劣悪な養育環境
・ウイルス性および細菌性の脳炎

外的要因はさまざまですが、いずれも新生児の脳へダメージを与えて知的障害を引き起こす点が共通しています。

大人になってから軽度知的障害と診断されるケースはある?

軽度知的障害を含めた知的障害は、18歳までの発達期に周囲の人が気づき医師の診断を受けるのが一般的です。しかし、先に紹介した境界知能に近いIQや身辺生活への影響が少ない人の場合、生活や仕事での困りごとが多くなって初めて、軽度知的障害と判明するケースがあります。

特に現在中高年の人は、大人になって軽度知的障害とわかる割合が多くなっています。その2004年以前では、知的障害を伴うことがあるADHD(注意欠陥、多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害*の支援法が成立しておらず、知的障害が教育課程で見逃されてきた可能性が高いことなどが理由として考えられます。

軽度知的障害がある方の仕事でのよくある悩み

軽度知的障害がある方は、仕事上で困りごとを抱える可能性が高いといえます。そのため日々のストレスが大きい人や、仕事が合わず転職を繰り返す人も珍しくありません。ここでは軽度知的障害の方のよくある悩みを具体例を交えて紹介し、どのような対策があるかも説明します。

仕事を覚えるのに時間がかかる

軽度知的障害の方は、文書を読むのが苦手なため、仕事を覚えるのに時間がかかる傾向があります。抽象的な概念での理解もむずかしいため、少しでも状況が変わると対応できない場合もあるでしょう。

このため、軽度知的障害の方は自分がわかる形でメモをとったり、図や絵など文字情報以外で仕事を覚えたりするなど工夫しています。また、就業先に対して段階的に教えてもらえるように頼んだり、ルーティンワークを割り当ててもらったりと合理的な配慮を求めるのも効果的です。

ただし、軽度知的障害の方の場合、障害の特性や強みにあった仕事を担当すると、簡易作業以外でも正確に集中力を持って取り組める場合が少なくありません。合わない仕事を無理に覚えようとするだけではなく、自分に合った職場や業務を選ぶ方法も検討するとよいでしょう。

職場や社会人としてのルールやマナーがわからない

軽度知的障害の方は「雰囲気」や「空気」といった暗黙のルールやマナーが理解しにくい傾向があります。そのため悪意なく、常識外の言動をとってしまうケースが少なくありません。

ルールやマナーは、後ほど紹介するハローワークや就業移行支援事業所における職業訓練で覚えられます。また、イラスト付きのルールやマナー表を作成して、決まりごととして覚えるのもよいでしょう。

しかし、戸締まりや火の始末といった重要なルール以外では、職場の人の理解さえあれば大きな問題にならないケースも多いといえるでしょう。ご家族や福祉スタッフなどを通じて職場の人に障害の特性を伝えておくだけも、無用な誤解を減らせます。

報連相がうまくできない

軽度知的障害の方は筋道だった会話や文書作成を苦手とする人が多く、報告・連絡・相談が不足しがちです。また、複数の人から仕事の指示や説明を受けると混乱してしまい、誰に何を伝えたらよいのかわからなくなってしまう場合があります。

このため、軽度知的障害の方に専任担当者(キーパーソン)を配置してもらえる職場が理想的です。専任担当者がいれば、軽度知的障害の方の作業状況を都度確認してもらい、報・連・相をカバーしてもらえます。また、業務の指示や説明を専任担当者に一本化できるので、軽度知的障害の方が混乱しにくくなるでしょう。

軽度知的障害の人の働き方とは?

軽度知的障害の方が仕事上で困りごとを持ちにくくするには、どのような働き方を選ぶかが大切です。働き方の大枠として決めておきたいのが一般枠としての就労、障害者雇用、福祉的就労のいずれの方法を選ぶかです。それぞれの概要や特徴を解説します。

一般枠としての就労

一般枠としての就労は、企業や公共団体と雇用関係を結んで給与をもらって働く「一般就労」と呼ばれる方法です。基本的に一般的な就業と同じと考えてかまいません。

軽度知的障害では、障害があると周囲の人が気づかない程度の症状の方もいます。このような方の場合は、障害があると伝える「オープン就労」と、障害があると伝えない「クローズド就労」の2つが選択可能です。

オープン就労にすると、障害の特性について職場の人の理解が得やすく、職場環境や業務内容について配慮してもらいやすくなります。しかし、給与が安くなったり、応募できる求人が限られたりするのがデメリットです。

クローズド就労を選ぶと、障害のない人と対等に扱われ、応募できる求人も多くなるのがメリットです。ただし、配慮やサポートを受けにくくなるので負担が大きくならないように注意する必要があります。

障害者雇用

障害者雇用とは、共生社会の理念をもとに実施されている障害者雇用の求人枠に応募して就職する方法です。障害者雇用は事業者の義務であり、従業員数の2.5~2.8%以上の割合で雇わなければならない決まりになっています。障害者雇用枠を活用すれば、一般の人と同じ条件で採用されるのがむずかしい場合もある障害者が、就業のチャンスを広げられるのです。

障害者雇用では不当な差別や不利な条件での雇用が厳格に禁じられています。また、障害の特性や程度に合った業務や環境を用意する合理的な配慮が義務となっています。労働条件についての保証と安心感があるのも、障害者雇用のメリットといえるでしょう。

福祉的就労

福祉的就労とは、施設の訓練を通じて就労に必要な知識を学んだり、特定の職業に必要な技術を身に付けたりする方法です。福祉的就労によってスキルが高まったタイミングで一般就労を目指せます。

福祉的就労では「就労継続支援」の制度を活用します。就労継続支援にはA型とB型がありますが、軽度知的障害の方はA型を利用する場合が多いでしょう。就労継続支援A型では、雇用契約を結んで給料をもらいながら施設に通所して働きます。一般の労働者と法律上同じ扱いになるため、最低賃金以上の支払いが保証されています。

この福祉的就労が向いているのは、一般就労するのがむずかしい人や、心身の不調で離職したので福祉的就労を経て一般就労に再トライしたい人などです。

軽度知的障害は障害手帳を取得できる?

軽度知的障害の方は障害手帳の種類のうち、知的障害や精神疾患のある方を対象にした「療育手帳」を取得できます。療育手帳の障害区分は自治体によって多少違いますが、おおむね次のように分けられています。

障害の程度基準例
最重度(A1)IQ~20(最重度知的障害)
重度(A2)IQ21~35(重度知的障害)
中度(B1)IQ36~50(中度知的障害)
軽度(B2)IQ51~70以上(軽度知的障害)

参考:厚生労働省|障害別にみた特徴と雇用上の配慮

療育手帳の審査はIQテストが中心ですので、軽度知的障害の方は軽度(B2)の療養手帳をもらう可能性が高いでしょう。ただし、身辺生活への影響も総合的に判断されるため、一般の人と同じように問題なく働けている人には交付されない可能性もあります。

療育手帳を取得すると、主に以下の援助が受けられます。

  • 特別児童扶養手当
  • 心身障害者扶養共済
  • 国税、地方税の控除、免税
  • 公営住宅の優先入居
  • NHK受信料の免除
  • 交通料金の割引

療育手帳の申請先は市区町村の窓口です。

療育手帳(愛の手帳)とは?申請方法やメリット、受給者証との違いを解説

軽度知的障害は障害年金をもらえる?

軽度知的障害の方が障害年金をもらうのは中度~最重度の知的障害の方に比べるとむずかしいですが、可能性はあります。受給がむずかしい理由は、軽度知的障害の場合、以下の障害1~3級に該当しない人が多いからです。

区分目安障害基礎年金障害厚生年金
障害1級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
障害2級知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
障害3級知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの×

出典:日本年金機構|第8節/精神の障害(p.60)

障害年金の支給は知的障害だけでなく日常生活や就労実態を総合的に考慮して決められるため、まずは行政窓口に相談してみることをおすすめします。

【2025年改正】障害年金は今後どうなっていく?概要を詳しく解説

軽度知的障害がある方の就労に関する相談先

軽度知的障害のある方は目的に応じて以下のような行政機関や民間サービスに相談できます。

相談先利用が向く人
ハローワーク職業相談や職業紹介を受けたい人
障害者就業就労について生活面を含めた幅広い相談をしたい人
地域障害者職業センター職業カウンセリング・職業評価を受けたい人
就労移行支援事業所一般就労に向けた実践的な支援を受けたい人

各相談先について解説します。

ハローワーク

厚生労働省が管轄するハローワークは、職業相談や職業紹介を受けられる行政機関です。軽度知的障害のある方に対しては、専門的な知識や経験を持ったスタッフが対応し、希望の職種や適性、障害の状態などをヒアリングしながらきめ細かな職業相談、職業紹介を受けられます。また、必要に応じて職場に適応するための訓練も受けられます。

先に紹介した障害者雇用の求人についても、ハローワークが窓口です。障害者雇用枠での就労を希望する方は、ハローワークで求人情報を探し、応募手続きを行いましょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、就労について生活面も含めて幅広く相談に乗ってもらえる行政機関です。

就労支援としては、職業準備訓練や職場実習を受けたり、就労のための面接に同行してもらったりできます。また、障害者就業・生活支援センターは他の機関への橋渡し役も担っており、必要に応じてハローワークや地域障害者職業センターにつないでもらうことも可能です。

就労に伴う生活面について相談がある際も、障害者就業・生活支援センターを活用できるでしょう。例えば日常生活や地域生活に困りごとがあれば、相談に乗ってもらったうえで福祉事務所や保健所に取り次いでもらえます。また、健康面の不安があれば、適切な医療機関と連携して対応を検討してもらえます。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは「どのような仕事が向いているか知りたい」「自分にできること、できないことを見極めたい」といった人に向く行政機関です。障害者職業カウンセラーや職場適応援助者(ジョブコーチ)などの専門家が在籍しており、障害の特性や程度に合った就業をアドバイスしてくれます。

また、大人になってから「仕事がうまくいかないのは障害のせいかもしれない」などと軽度知的障害を疑うようになった方も、地域障害者職業センターの専門家に相談するとよいでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、国から認可を受けた民間の事業者が一般就労を目指す障害者の方を支援している事業所です。事業所によって得意分野やサービスは違いますが、実践的な就労支援を受けられる点は共通しています。

就業支援としては、適性をみつけるためのカウンセリングや求人紹介サービスがあります。また、障害の強みや弱みを理解したうえで行う職業訓練やスキルアップのための講座などを受けられるのもメリットです。

さらに就業が決まった後は、就業定着の支援も受けられます。例えば仕事上の悩みを相談できたり、障害の特性に合わせた合理的な配慮を軽度知的障害の方に代わって要求してもらったりできるのです。

ただし、就労移行支援事業所を利用できるのは通算24カ月です。一般就労に向けた具体的な目標と計画を立てて、実践的な職業訓練や就職活動に取り組んでいくとよいでしょう。

しかし、就労を目指す前に、人との付き合い方や自分と障害を理解するといった段階から支援を受けたい人もいらっしゃるかもしれません。

こうした場合は、「自立訓練(生活訓練)」の利用がおすすめです。「自立訓練(生活訓練)は障害者総合支援法に基づく支援であり、自立に向けたソーシャルスキルを身に付けることを目的としています。ライフスキル、人との付き合い方や就職など社会参加について、トレーニングや相談、助言といった支援を受けることができます。

就労にお悩みなら就労移行支援の利用もおすすめ

軽度知的障害の方は、知的障害のなかで最も症状が軽いグループに分類されています。しかし、自律的な活動が多い分、日常生活で困ることも多いようです。また、障害の特性に合わない職種や職場を選んでしまうと、仕事のストレスも増えてしまいかねません。

そのような負担を抱えているときは、各種の支援制度や相談窓口を積極的に活用するとよいでしょう。一般就労を目指す場合には、実践的な職業訓練や職業カウンセリング、就業定着支援などを受けられる就労移行支援の活用がおすすめです。

就労移行支援事業所を運営しているKaienでは「就労や自立に具体的なイメージを持てない」「年単位でゆっくりと自己理解を深めて就業先を決めたい」などとお考えの軽度知的障害の方を支援しています。

またKaienでは就労移行支援とは別に、自立に向けたソーシャルスキルを身に付ける障害福祉サービス「自立訓練(生活訓練)」も提供しています。就労移行支援は「就職」が目的ですが、自立訓練(生活訓練)はその名の通り「自立」を目指します。まずは自身の障害を知り、自己理解を深めたいという方は、自立訓練(生活訓練)の利用がおすすめです。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

監修者コメント

知的障害は従来は精神発達遅滞と言われたりしましたが、最新のアメリカの診断基準DSM-5‐TRでは「知的発達症(知的能力障害)」の訳語が当てられています。呼称が色々あるので、文書を読み解く際には注意してください。

軽度の方はIQの数値上は低いと感じるかもしれませんが、必ずしも幼少期からわかるとも限りません。勉強も得意なものは得意であったり、正直IQを測るまでは低さに全く気づかれることが無い方もいます。ただ、何かしらの形で、生活の中に苦手さがあることで不適応な側面が出てきて、受診に至っている方が多いのです。全体的な知的側面に低さがあるという診断は、その時期が遅いほど、御本人にとってもご家族にとってもショックを受けることもあるかもしれませんが、今とは別な方向性を含めて、より良い生活を目指すことに繋がることになるはずです。本記事にある通り、どのサービスを利用するかは、本人とご家族の現状にあった支援を選ぶよう必要に応じて福祉の窓口にいる方と相談してください。必要な支援は、知能指数(IQ値)だけで判断できるものではありません。実際に生活上何ができて何ができないか、本人の性格傾向や向き不向き、精神症状はあるのか、などによって支援内容が決められるでしょう。

監修 : 松澤 大輔 (医師)

2000年千葉大学医学部卒業。2015年より新津田沼メンタルクリニックにて発達特性外来設立。
2018年より発達障害の方へのカウンセリング、地域支援者と医療者をつなぐ役割を担う目的にて株式会社ライデック設立。
2023年より千葉大子どものこころの発達教育研究センター客員教授。
現在主に発達障害の診断と治療、地域連携に力を入れている。
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、医学博士。